加奈はブランコが好きだ。
靴を飛ばすのが好きだ。
飛んで行った靴に当たったのが俺だった。
「イテテ…。」
すぐさまその靴のニオイを嗅いだ。
通常のニオイだった。異常なし。
その中で、ほのかに懐かしいものを感じた。
自然と顔がほころぶ。
あいつのニオイ。
あいつのことが好きだった。
少しだけ付き合って別れてしまったけど、何年もの間悶々としていた。
悶々というより、ストーキング行為に近いこともしてしまった。
そのような行為のせいで永遠に会えなくなってしまった。
拒絶されてしまった。
あの一件が自分にどれだけの影響を与えたのか。
なんであれ経験はするものだというけど、
果たしていい影響を与えたのだろうか?
靴のニオイを嗅ぐ。
もちろん、加奈は存在しないがニオイはそこにあり続ける。
これこそが執着であり、俺のすべてだ。