ここから本文です

<児童虐待>「孤立する親救いたい」…幼少期虐待経験の女性

毎日新聞 10月8日(木)13時13分配信

 児童相談所が対応した2014年度の児童虐待件数で、大阪府は5年連続で全国最多となる1万3738件を記録した。「周囲から孤立した親を一人でも救いたい」。育児に追い詰められた親を支援する大阪のNPO法人に今年3月、幼少期に母親から虐待されて育った女性(38)=大阪府枚方市=がカウンセラーとして加わり、体験を生かしている。

 ◇大阪でカウンセラーに…体験生かし

 「職場でストレスを抱え、息子にあたってしまう」「転勤してきたばかりで周囲に頼れる人がおらず、子供に手を上げてしまった」

 大阪市のオフィスビルの一室で活動するNPO法人「虐待問題研究所」(上原よう子代表=06・7878・8933)には、多い月で約30件の電話や訪問による相談がある。上原さんも幼い頃に実父らから暴力を受け、その過去を虐待防止に生かそうと3年前にNPO法人を設立した。

 女性は同じ境遇を持つ上原さんの活動をインターネット上で知り、カウンセラーに応募した。女性によると、虐待が始まったのは6歳の頃。両親が離婚し、引き取られた母親からだった。「あんたは父さんに捨てられた子だ」。連日の暴力に加え、罵声も浴びせ続けられた。

 小学校でいじめられ不登校になった時、古びた自宅アパートの台所で首元に包丁を突きつけられ、「学校に行け」と怒鳴りつけられたこともあった。女性は「虐待の理由は分からなかった。頼る親戚もなく、耐え忍ぶしかなかった」と話す。

 高校卒業後に就職したが、人間関係がうまく築けず職を転々とした。何度も自殺を考えるようになった。「自分の心がどうなっているのか。一度向き合いたい」。女性は20代の時に通信教育などで心理学を学び始め、カウンセラーの民間資格を得た。「いつか自分のように孤立した人の頼りになってあげたい」と考えていたという。

 女性は31歳で結婚し、今は幼稚園に通う長女(5)を育てる。思い通りにならない子育ては、相談相手がいなければストレスがたまることも想像できるようになった。女性は「虐待のつらさと子育ての大変さを知る立場から、少しでも役に立ちたい」と話した。【千脇康平、遠藤浩二】

最終更新:10月8日(木)13時42分

毎日新聞

TPP薄氷合意 日米中の思惑

異例の延長を重ねTPP交渉の閣僚会合は大筋合意に達した。参加国の日米、TPPへの警戒感がにじむ中国、それぞれの思惑は。