「有給休暇なし、病気・介護休暇なし、産前・産後休暇なし。休むのは自由だが、その分の給料は払いません」──。このような会社があったとして、読者は就職を検討されるだろうか。
日本では制度上、有給休暇のない職場はあり得ない。労働基準法39条により、勤続半年で10日、勤続6年半で20日の法定年次休暇の付与が義務付けられているからだ。
ヨーロッパにはフランス(30日)、イギリス(28日)をはじめ有給休暇の充実した国が多い。だがアメリカには有給休暇についての連邦法の規定がない。そのため「有給ゼロ」の会社が少なくない。そういう職場では前述のように、欠勤して旅行に行くことは認められても、休んだ分の給料はカットされる。
「過半数が有給休暇ゼロ」という階層
有給休暇を保証してくれない国はOECDのなかではアメリカだけである。だが、米政府が労働者を見捨てているととらえるのは早計だ。労働時間や最低賃金といった基本的な条件は公正労働基準法により定められている一方で、「福利厚生の内容は国が定めるべきものではなく、労働者と雇い主の間で取り決められるべきもの」という考え方が背景にあるのだ。
こうしてアメリカの民間企業の福利厚生は「市場の手」に委ねられてきた。しかし、自動車メーカーのように組合が力を持ってきた業種はさておき、サービス業や建築などの業種では労働者の立場が弱く、ことに小規模の企業では有給休暇がなかったり、あっても僅かな日数であることは珍しくない。
経済政策研究センター(CEPR)の調査によれば、アメリカの低賃金労働者(全労働者の時給の中央値の3分の2に満たない人)のうち、何らかの有給休暇を得ている人は49%に過ぎず、過半数が有給休暇ゼロで働いているという。