中国地方で30メートルから35メートルに達する見込みです。
(車掌)己斐西天満町間間もなく運転を再開します。
今日は乗車賃は頂きません。
どうぞ。
(松浦明孝)
原爆投下の僅か3日後。
焼け野原の広島を路面電車が走った。
運転したのは10代の少女だった
(鐘の音)
(雨田豊子)出発…進行。
(鐘の音)
復興の第一歩となるその電車を人々は「一番電車」と呼んだ
昭和18年広島電鉄は家政女学校をつくった。
入学したのは広島市の郊外や島根県の農村からやって来た少女たちだった。
戦地に向かった男性に代わって車掌として乗務に就いた。
翌19年少女たちは運転も任されるようになっていった
(セミの鳴き声)すみません。
車内は大変混み合っています。
できるだけ中に詰めて下さい。
おはようございます。
ありがとうございます。
おはようございます。
ありがとうございます。
(男性1)おい。
おい!なんで謝らんのじゃ。
お前がぶつかってきたんじゃろ。
(男性2)何もそんなけんか腰にならんでも…。
(男性1)あほか!朝からけんか売っとるのはお前じゃろうが!他のお客さんの迷惑になります。
やめて下さい。
(乗客)けんかじゃったら外でやれ!バカタレが!何や?誰じゃ今バカタレ言うたんは。
誰じゃ!
(男性1)お前か?いや私は…。
(男性1)バカタレ言うたんはお前かと聞いとるんじゃ。
いや私は何も…。
やめて下さい。
やめて下さい!
(男性1)お前は黙っとれ!えっ!?あっ!あなた…あなた今運転手を突き飛ばしましたね?
(男性1)あぁ?もし彼女に何かあった場合電車は誰が動かすのでしょうか?
(男性1)何?私も他の乗客たちもそれぞれ行く場所があって毎日この電車に乗るんです。
あなたもそうじゃないんですか?
(乗客)そうじゃ!
(乗客)急いでるんじゃ!
(乗客)はよ走らせえ!
(乗客)そうじゃそうじゃ!
(乗客たちの声)フンッ!大丈夫ですか?大丈夫です。
ありがとうございます。
あ…いえ。
雨田さん私今日は朝からとても口うるさい上役に呼び出されてるんです。
遅れたら叱られます。
どうか速やかに運転をお願いします。
はい。
(幸子)切符をまだお持ちでない方はいらっしゃいますか?
(鐘の音)出発進行!
(鐘の音)
(幸子)うわ〜おいしそうじゃねえ!食堂の御飯が少なくなっておなかがすくって手紙を書いたの。
そうしたらお母さんが送ってくれたんよ。
一緒に食べよ?えっ食べてもええん?うん!アハッ!よし食べよ。
いただきます。
いただきます。
いただきます。
(3人)う〜ん!甘いねえ。
(幸子八重子)う〜ん!今日ね怖いお客さんが乗ってきて大変じゃったんよ。
ねえ?そうなんじゃ?こぎれいな格好したぶち大きい人が助けてくれたんよ。
フフフ。
あれは役人さんじゃろうか。
利発そうで穏やかそうですてきな人じゃった。
またじゃ。
昨日は軍人さんでおとといは医学生さんじゃったな。
豊ちゃん女の幸せはねえええ男のお嫁さんになる事じゃろ。
せっかく広島まで来て電車に乗っとるんじゃけぇしっかりお婿さんを選ぶ目養わんと。
なっ?さっちゃんうちら田舎におったら貧乏で女学校なんか入れんかったんよ。
勉強も車掌もしっかり頑張らんと。
いずれは運転手も任されるかもしれんのじゃけんね。
大丈夫よ。
私には豊ちゃんっていう立派ないとこの先生がおるけぇ。
それとこれとは関係ないじゃろ。
(八重子)豊子さんがおったら百人力じゃもんね。
(幸子)そうじゃな。
(八重子)うん。
フフフ。
・ただいま。
(松浦加代子)おかえりなさいお父さん。
(松浦佐和子)おかえりなさい。
どうしました?正和。
(佐和子)扇風機がバラバラになりました。
(松浦正和)動かんようになったんで取り付けを直していました。
そうですか。
それは困りましたね。
動かない扇風機では意味がないですからね。
直りますか?大丈夫。
機械が動くのには全て仕組みがあるからね。
仕組みを理解すれば目をつぶったって直せます。
(はんだづけの音)
(はんだづけの音)
(子供たち)あっ!お父さんは戦闘機や戦艦の仕組みも全部分かっとるんですよね?ええ。
お父さんはその部品を調達するのが仕事ですから。
ネジやボルトの一本一本までその役割を理解してます。
でもお父さん役所を辞めて広島電鉄で働く事になりました。
広島電鉄?チンチン電車の?どんなお仕事になるんですか?う〜ん…それは行ってみないとね。
お兄ちゃん佐和子さあ御飯にしましょう。
・
(正和)またおかゆかあ…。
(加代子)お兄ちゃん!・
(佐和子)欲しがりません勝つまでは。
・
(加代子)…でしょ?
長い役人生活を精算しての転職だった。
役職は電気課長。
戦況悪化の中不足する物資の調達と円滑な輸送を求められたのだ。
妻を亡くして半年後の事だった
また板挟みだ。
(車掌)電鉄前電鉄前です。
レバー戻して。
はい。
ブレーキ離さない!はい。
(急ブレーキ音)何やってんだ!
(豊子幸子)すいません!シラミにかまれたみたい。
痒うて。
え〜ただいま家政女学校の二期生が運転の実習訓練をしております。
戦況が厳しい今女性運転手を育てる事は日本国を支える事にも通じております。
どうかご了承下さい。
(車掌)ありがとうございました。
(幸子)痒いもんは痒いんよ。
(車掌)ありがとうございました。
しっかりせんと。
(車掌)ありがとうございました。
(川の水音)さっちゃんしっかり洗うたらシラミもおらんようなるよ。
シラミがおらんかったら失敗もせんかったよ。
うち勉強嫌いじゃけど運転するぐらいなら授業の方がええ。
(八重子)でも授業はほとんど無くなってしもうたけぇ運転頑張るしかないよ…。
さっちゃんシラミ退治に体も洗わにゃいかんね!もうちょっちょっとちょっと何するん!?あぁっ!あ〜!
(豊子と幸子のはしゃぐ声)
(幸子)やったな!仕返しじゃ!八重ちゃんいくか。
次は八重ちゃんじゃ!
(幸子)次は八重ちゃんじゃよ!いけんの!ほんまにいけんの。
堪忍して。
うち…あれが来たんじゃ。
「あれ」って?何じゃ?初潮…。
痛いんね?初潮は。
ううん痛うない。
よいしょ〜!お祝いじゃ〜!赤飯はないけど。
や〜ええってほんまに!
(幸子)八重ちゃんの大人になったお祝いじゃ!
昭和20年に入ると広島にもアメリカ軍の空襲が本格的に始まった
私は変電所の重要設備を郊外へ避難させる疎開作業を命じられた。
しかし…
(カバンをたたきつける音)あの仮眠中のところ申し訳ないんですけども水銀整流器の疎開準備その後どうなってるでしょうか?報告書が上がってません。
え…え〜あぁ…えっと…。
(安永正一)あぁそれはまだ手つかずですね。
まだですか?
(安永)はい。
松浦さん本社の命令かもしれませんけどわしらあの他の課の穴埋めもやらにゃいけんのです。
そ…そうです。
なかなか疎開作業まではねえ…。
じゃあ一緒にやりましょう。
(安永)分かっとらんですね。
わしらにも優先順位っちゅうもんがあるんですよ。
藤本さん交代お願いします。
(藤本)あぁ。
しかし市内の8キロに送電してるのはこの千田町変電所なんです。
広島電鉄の心臓部なんです。
その心臓部を2人で回しとるもんで。
人手不足は深刻だった
おはようございます。
あっおはようございます。
(行商の女性)あ…いつもすまんねえ。
運転手は運転席を離れたらいけんじゃろ。
(行商の女性)あ…。
腹すいとるじゃろ。
江波だんごじゃ。
よかったら食べてくれ。
わしは森永。
第154師団砲兵補充隊の森永勘太郎じゃ。
雨田さんあんたの背中には大和撫子の気品がある。
これなら銃後の日本も安心じゃ。
下の名前は?教えてくれんか?
(乗客)早う電車走らせや!
(乗客)ほうじゃ何しとんじゃ!
(森永)教えてくれたらすぐ降りるけぇ。
豊子いいます。
ええ名前じゃ。
ほいじゃまた乗るけんの。
(鐘の音)八重ちゃんきれいじゃ。
フフッ。
八重ちゃんはこう鼻がスーッと通って大人っぽいんじゃな。
そう?やっぱり大人になった女は違うんじゃね。
ちょっとやめてよ。
それにしてもおなかすいたなあ。
豊ちゃんこのおだんご食べるね。
あ…それ…。
あんまりおいしゅうないね。
あんた文句言うなら食べんでええ!みんなまともに食えんようなっとるんじゃけぇ…文句ばっかり言いなさんな。
(森永)だんごは腹の足しになったか?はい。
よかった。
食べられる時に食べんとの。
ところで豊子さんはどこの出身じゃ?高田郡粟屋村です。
わしは呉なんじゃ。
この間の空襲大丈夫でしたか?家族はの。
でも街が焼けて知り合いも死んだ。
今度の休みはいつじゃ?日曜日です。
ほいじゃあ一緒に写真館へ行こう。
嫌か?
(森永)待ったか?行こうか。
(店主)お母さん笑顔になってみましょうか。
・はい…。
・
(店主)撮りますよ。
はい!
(シャッター音)お疲れさまでした。
写真は3日後に出来ますから。
ありがとうございました。
これで戦地へ行く覚悟ができました。
(すすり泣き)母さんさあ行こう。
(泣き声)・さあ行こう。
(泣き声)
(店主)どうぞ。
あんたは…どこへ出征かね?
(店主)お連れさんは婚約者かな?あ…いえ。
妹です。
妹がどうしても写真を撮りたいと言うんで。
きれいに撮ってやって下さい。
(店主)じゃ撮りますよ。
笑顔になってもらいたいなあ。
ハハハ…。
そうですね。
じゃあいきます。
はい!
(シャッター音)
(店主)お疲れさまでした。
すまんかった。
何か…何か欲しいものあるか?罪滅ぼしじゃ。
今は何かと品不足じゃろ。
石鹸。
石鹸?なかなか手に入らんで…電車の中はいつもぎゅうぎゅうで暑うて汗をかくんです。
じゃけぇ乗務服を石鹸で洗いたいです。
ほうか…じゃあ今度会う時持ってくる。
ほんまですか?あぁ必ず。
そん時はまた会うてくれや!よかった…。
ほいじゃあ…またの。
(空襲警報)早く寮に戻れ!森永さんいつ出征ですか!防空壕に入れ!
(空襲警報)
空襲警報が鳴る度に作業が中断する。
疎開作業は思うように進まなかった
(ため息)そしたら白いのをつけて。
白いやつ。
ゴシゴシゴシゴシ…。
(息を吹きかける音)ほらできた!どれ…。
うわっできたねえ。
そっちのがきれいだねえ。
ありがとう。
そろそろお父さん仕事に行きます。
もし空襲が来たらすぐに防空壕に入るんですよ。
はい。
いってきます。
いってらっしゃい。
(車掌)次は紙屋町紙屋町です。
(走行音)暑い…。
(「ラジオ体操」)予備の水銀整流器疎開の件ですが…。
あぁ…すんません。
体操してからでええですか?はい。
(車掌)次は電鉄前電鉄前です。
(ブレーキ音)
(地鳴りのような音)
(豊子の荒い息遣い)いやあああ!お父ちゃんお母ちゃん…助けて…。
お父ちゃん…お母ちゃん…!何なんだ…何なんだ一体…。
(部下)松浦課長!建物の下に社員が大勢埋まったまんまです!誰か!誰か〜!動ける者はいるか!
(部下)おい!手伝うてくれ!さっちゃん八重ちゃん。
豊子さん…さっちゃんの背中…ガラスが…いっぱい刺さっとる。
(幸子)あぁ…豊ちゃんじゃ…。
(荒い息遣い)正和!加代子!佐和子!
(加代子)お父さん!
(佐和子)お父さん!みんな無事だな?大丈夫です。
よかった…ハァ…よかった!会社の仲間を助けにお父さんまた戻らなければならない。
しばらく帰れない。
正和佐和子と加代子の事頼むぞ。
(正和)お父さん!僕も行きます!駄目じゃ。
広島で何が起こっとるか知りたいです!駄目だと言うたら駄目じゃ!絶対に街に入るな!頼む。
(泣き声)
(幸子)痛い…痛い…。
(八重子)さっちゃん…。
さっちゃん頑張って。
(幸子)もう…もう無理じゃもう無理じゃ…。
痛い…。
(幸子)痛い…。
学校の避難所へ行ってお医者さんに背中のガラス抜いてもらわにゃ…さっちゃん死んでしまうかもしれんのよ。
さあ立って。
(八重子)さっちゃん…。
わがまま言わんで…。
わがままなんか言うとらん!もうここで死ぬんじゃ。
なんで…?なんでこんな目に遭わんといけんの?自分の足で歩けん人がこんなたくさんおるのに…さっちゃん生きとるんよ!自分の足で歩かんにゃ!鬼…鬼!豊ちゃんは鬼じゃ!もう地獄に落ちたらええんじゃ!地獄はここじゃ。
今おる所が地獄じゃ!もう勝手にしたらええ!鬼!豊子さん!
(幸子の泣き声)
(幸子の泣き声)さっちゃん…行こう?行こう…?
(泣き声)痛いよ…痛いよぉ…痛いよぉ…。
痛い…。
さっちゃん…。
街は一瞬にして焦土となった。
広島電鉄本社は倒壊
被害を免れた車両に対策本部が設けられた
これで社員名簿は全部だな?
(部下)はい。
みんな聞いてほしい。
この前代未聞の大惨事を前に社長は「社の再建に尽力せよ」と命じられた。
今から電車復旧の見通しを立てる。
復旧!?街じゅうが焼けてしもうたのにですか?
(清水)本土決戦がささやかれてるんだ。
軍事輸送の見通しを立てるんが我々の責務だ。
しかしがれきの下敷きになっとる社員の救出を急がなければいけません!そがいな当たり前の事言われんでも分かっとる!じゃが復旧もやるしかないんじゃ!そこでじゃ…誰かに現場の陣頭指揮を執ってもらわにゃならん。
君しかおらんようだ。
なあ松浦君。
現場の指揮頼むで!
被害を確かめに街を歩く。
全て無くなっていた
(藤井)電柱と架線はほとんど燃え落ちてますね。
広島は…死んでしまった。
(藤井)新しい資材いうてどこで調達できるんですか?
(息が漏れる声)本当に…電車の復旧を優先すべき時なんじゃろうか…。
(藤井)え?何ですか?あの…沢田峰子いう14歳の娘を捜しています。
お心当たりはありませんでしょうか?申し訳ありません。
分かりません。
背はこのぐらいで二重まぶたのほほの赤い娘なんですが…。
申し訳ありません。
分かりません。
ほうですか…では県庁はどの辺りでしょうか?娘がその辺りで疎開作業に来とってわしは市内は不慣れで立往生しとりました。
この線路に沿って10分歩いて頂くと交差点があってそれを右に曲がった橋の先にあります。
(沢田)線路を10分…橋…。
助かります。
無事でよかった。
さっちゃん八重ちゃんうちらも急ごう。
残ってる。
地面に…線路だけは残ってる。
己斐から西天満町間は被害が少ないです。
(幹部)その間にゃ鉄橋が2つある。
電車が通過して崩れるかもしれんど。
線路だけは残ってます。
ここはまず被害のなかった廿日市変電所から送電し…。
この区間を走らせましょう。
被害状況を赤く記す。
爆弾による破壊と大火災で市内中心部の路線はほとんど赤く染まった。
最も被害が少なかったのは己斐と西天満町の間。
そこから復旧作業を始める事にした
翌朝から生き残った社員たちが作業を始めた。
しかし運転手のめどは立っていなかった
(女学生たち)さえちゃんさえちゃん!
(苦しげな声)先生みんな苦しんどるんですがなんとかならんもんじゃろか?
(女学生)先生。
先生先生!
(女学生たち)さえちゃん!さえちゃん!さえちゃん…!さえちゃん…やだよ…!
(女学生)さえちゃん!
(女学生たちの泣き声)・豊子!豊子!帰ろう!みんな心配しとる。
なっ?帰ろう!
(高村)娘さんを帰す事はできません!
(秀一)一体何を言うとるんですか?なんで娘を連れて帰れんのですか?雨田君はけがも軽い。
彼女にはここに残って負傷者の手当てをしてもらわにゃいけません!早くしろ。
お父ちゃんうち帰れんよ。
みんなを残して帰れんよ…。
豊子…。
高村さん己斐から西天満町間で電車が復旧しました。
試運転が成功したんですか?はい。
明日から家政女学校の生徒さんたちにも運転に戻って頂きたいんです。
家政女学校の諸君注目!けがの軽い者は立ってくれ。
短い距離ではあるが電車が復旧する事となった。
けがの軽い者は乗務に就くよう指示する。
この非常事態に我ら家政女学校がお国の役に立てるんだ!必死に逃げて生き抜いて…なのに…生きとるせいで友達が死んどるのにうちら電車の運転するんじゃね!雨田!誰かが…誰かがやらなければならないんです。
君も私もやらなければならないんです。
お願いします。
また運転するんじゃね…。
豊ちゃんあの軍人さんにまた会えるかもしれんよ。
うち爆弾が落ちる3日前に会うたんよ。
出征が決まったけぇ伝えてほしいって言われたんよ。
石鹸をくれるって約束したんよ。
(幸子)泣いても…ええよ。
いってらっしゃい豊ちゃん。
(車掌)己斐西天満町間間もなく運転を再開します。
今日は乗車賃は頂きません。
8月9日何も無くなった街に一番電車が走った
出発…進行。
(鐘の音)
(車掌)西天満町西天満町です。
一番電車は僅か1.4キロの折り返し運行だった
ご苦労さま。
乗客は避難する市民や家族を捜す者たちだった
あんた…あん時の。
今日はお金は頂いてないんです。
遠慮せんと何か好きなもの買いんさい。
あんたみたいな娘じゃったよ。
今日やっと娘を見つけたんじゃ。
あんたよう頑張っとるのう。
これからわしみたいなもんが大勢ここへ来るじゃろうよ。
電車があればどんだけ助かるか。
乗せてくれてほんまにありがとう。
(車掌)間もなく己斐行き発車します。
(泣き声)
(鐘の音)
一番電車は走った。
次は市内中心部の路線の復旧だった。
私は軍に電柱と架線の供給作業員の応援を要請した
そして何より市内全域に電気を送る千田町変電所の修復を急がなければならなかった
しかし変電所は屋根が吹き飛びがれきが散乱
配電盤の電線はほとんど断裂していた
(安永)何やっとるんですか?そうですか。
無事で何よりでした。
どうでしょう?一緒にここを復旧させませんか?ここが復旧できなければ全線で電車を動かす事はできません。
全線?本気で言うとるんですか?はい。
そりゃあ無理ですよ。
あんただって家族がおるでしょう。
家族を助けにゃならん時に電車なんぞ復旧しとる場合ですか!一番電車に市民が詰めかけました。
家族を捜す人や遺品を捜す人。
これから避難所に食糧も運ばなければなりません。
電車が走れば復興の手助けになる。
復興?長崎にも新型の爆弾が落ちたんですよ。
これから日本はそれどころじゃのうなるかもしれんのに復興なんぞそんな夢みてどうするんですか!夢じゃありません。
ここを修復すれば電車が走ります。
ここを一番よく知ってるのはあなたたちです。
お願いします。
これなら使えるのう。
私たちは不眠不休で修復作業を行った
回想運転手は運転席を離れたらいけんじゃろ。
さっちゃん。
さっちゃん。
さっちゃんは?さっきお母さんが迎えに来て帰ってしもうた。
(八重子)けがもひどいんで先生も帰りんさいって。
さっちゃんのお母さんが食べんさいって。
後で一緒に食べようね。
(玉音放送)このまま八重ちゃんを放ったら下を向いたままになるよ。
最後まで真っ暗なんて八重ちゃんかわいそうじゃ。
ここは抵抗値がゼロですね。
通電したらショートします。
安永さんまだ不良箇所がありますね。
見直して下さい。
ええ。
終戦後も私たちは作業を続けた
これは?長うはないかもしれんですね。
新型爆弾のせいらしいです。
下痢も止まらんみたいで。
すぐに今すぐに家族のところへ帰って下さい。
わしらには優先順位があるって言ったじゃないですか。
分かっとらんですね。
分かりません!わしは…死ぬほどあの爆弾が憎いんです。
憎うて…悔しいて。
安永君奥さんと赤ん坊が亡くなったんです。
(安永)このままじゃみんな無駄死にです。
電車が走りゃあこの街は動きだすんですよね。
そのためにここを広島電鉄の心臓を生き返らせんといけんのですよね。
藤本さんまだ生きとる分どうにも腹がすきますね。
ほうじゃのう。
(正和)お父さん!おかえりなさい。
(加代子佐和子)おかえりなさい。
みんな無事だな。
(加代子)配給これだけでした。
お父さんの仲間が腹をすかしとるんです。
彼らが腹をすかしては広島に電車が走らんようになるんです。
佐和子ちゃん。
そのキュウリお父さんに下さい。
佐和子我慢できるね?うん。
ありがとう。
ハァハァハァハァハァ…。
どうぞ。
ハァハァハァハァ…。
ハァハァハァハァ…。
遠慮なく。
いただきます。
うまいです。
うまいですね。
投入します。
お願いします。
(動作音)ハッ…ハァ…。
ハァ。
お疲れさまでした。
お疲れさまでした。
千田町変電所の修復によって市内の路線が少しずつ復旧していった
(女性)もうすぐおばあちゃんちに着くけんね。
人を乗せものを運び少女たちが運転する電車は広島の街を走った
(高村)本日をもって家政女学校は解散となる。
電車乗務も終了する。
今後は復員した男性が電車を走らせる。
残念ながら卒業証書も渡す事はできない。
しかし必ずや家政女学校で学んだ事は将来の役に立つはずである。
解散。
雨田さん。
間に合ってよかった。
女学校解散の事何もできなくて。
私は広島のお祭りが好きでした。
えべっさんにとうかさん。
祭りには屋台が並んでにぎやかだったでしょ?ずらりと並んだちょうちんもきれいだった。
よく妻と一緒に子供を連れて出かけたもんですよ。
でもね…しばらく祭りは開けないでしょうね。
何もかも焼けてしまいましたからね。
妻は2年前に病気で亡くなったんです。
新型爆弾が落ちた時よかったって…こんな広島を見せずにすんでよかったって思いました。
大切な人にあんなにひどいところは見せたくなかったんです。
子供たちにも街に入るなと言いました。
勝手ですよね。
雨田さんにはあれだけ大変な運転をお願いしたのにね。
でも近いうちに必ず子供たちを連れていくつもりです。
今は焼け焦げた街ですけど生きてるものは見なければいけない。
何にも無くなるという事がどういう事か見なければいけないんです。
きっといつか祭りも復活するでしょうね。
その時は訪ねてきて下さい。
あの〜…。
何?そろそろ家に帰ります。
あっ引き止めてすみませんでした。
ありがとうございました。
こちらこそ。
(豊子)さっちゃん頑張れさっちゃん頑張れさっちゃん頑張れ。
頑張れ。
豊ちゃんよりか悪い私は。
頑張れ頑張れ。
頑張れ頑張れ頑張って!頑張ってても痛いの。
頑張ってあんた若いんじゃけの。
頑張りんさいよ。
つえが必要だから。
(取材者)お疲れさまでした。
2015/10/01(木) 22:00〜23:15
NHK総合1・神戸
戦後70年「一番電車が走った」[解][字][再]
平成27年度文化庁芸術祭参加作品。70年前ヒロシマに奇跡が起きた。被爆からわずか3日後、路面電車が焦土の街を走った。人々は復興への希望を込めて一番電車と呼んだ…
詳細情報
番組内容
昭和20年、広島では戦地に赴く男性に代わり少女たちが路面電車を運転していた。雨田豊子16歳は電鉄会社の家政女学校に学び、乗務の毎日。会社に期待され軍需省から引き抜かれた電気課長の松浦明孝44歳は職場の人手不足に悩んでいた。8月6日、原爆投下。二人は生き残るが、路線は壊滅状態に。会社は本土決戦の物資運搬に備え復旧を訴える。社員や少女たちは苦闘、葛藤しながら、3日後に電車を走らせた…。実話をドラマ化。
出演者
【出演】黒島結菜,阿部寛,清水くるみ,秋月成美,中村蒼,新井浩文,山本浩司,宇野祥平,モロ師岡
おしらせ
〜平成27年度文化庁芸術祭参加〜
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドラマ – 国内ドラマ
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