7人の女弁護士 2015.10.02


(雷鳴)
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)そろそろ上がろ。
先どうぞ。
(アナウンサー)「この火事で火元となった部屋に住んでいた45歳の男性…」
(杉本美佐子)あら?南條さん今日リョウ君とうちですき焼きだって約束したんじゃなかったの?
(南條宏美)あ〜そうなんですよ。
そう言ったんですけどねなかなか終わんなくて。
お腹空かして待ってるわよ。
(宏美)あっはい。
(飯島妙子)ああ〜もう!テレビ消してもらえません?
(木下五月)あっごめんごめん。
もうちょっとだけ。
(アナウンサー)「世界選手権の日本代表を決める…」
(五月)この子この子!この子いいのよねぇ。
ああこの子ね。
この間の大会で優勝して今度世界選手権に出るのよね。
何てったっけ?何とか…。
(五月)高梨明美です。
ああ高梨明美だ。
そうそう…。
このクールな感じがいいんだよねえ。
(麻生恵理)マラソンなんかする人の気が知れないですけどね。
(田代千春)でも1回走ったらうん百万円ねんて。
嘘!確かオリンピックで金メダルとったら1千万円よ。
1千万!?いいな。
だから金メダルとればでしょ。
ああとればね。
(藤堂真紀)遅くなりました!
(妙子)ありがとうカルビ弁当。
飯島さんすいませんカルビ弁当売り切れでした。
えー!もうカルビモードだったのに。
画面の中の高梨明美は栄光のゴール目指して懸命に走っていた。
しかしその栄光も…
(アナウンサー)「優勝は高梨明美!」
殺されたのは遠藤恭一27歳
「とりあえず今はホッとしてます」「沿道の方々の声援にも…」
そして殺したのは…
(電話の呼び出し音)
(警察)「はいこちら110番です」男の人を…殺しました。
翌朝の新聞もテレビもその話題でもちきりだった
女子マラソンの日本のエース高梨明美殺人容疑で逮捕
(アナウンサー)「…世界選手権代表の高梨明美選手が男性を刃物で刺し逮捕されました」
高梨明美殺人容疑で逮捕
(記者)姫野監督ご自身は高梨選手の代表辞退についてはどうお考えですか?まだ今の時点では…。
どうなんですか?監督自身の考えを訊いてるんですよ。
(記者たちの非難の声)
(翔子)高梨が刺してしまった遠藤という男はここ最近ずっと高梨につきまとっていたんです。
つまりストーカーっていう事ですか?そうです。
警察にも何度も相談したんですけど結局つきまといはなくならなくてとうとうこんな事に…。
それはお気の毒でしたね。
これは正当防衛ですよね?突然襲いかかってきた相手から自分を守ろうとして刺してしまったわけですから当然正当防衛という事になりますよね?それはまあ警察の捜査の結果を待たないと今の段階では何とも言えませんけど。
正当防衛じゃないと困るんです!何とか高梨を無罪にしてもらえないでしょうか?無罪にならないと世界選手権代表の座も辞退しなければなりません。
選手生命だって…。
どうか皆さんのお力で高梨を無罪にしてやってください。
お願いします。
柿原さん!柿原さんチームメイトとして高梨さんの事件どう思われますか?一言だけお願いします。
何て言って欲しいんですか?「あの殺人事件以降チーム姫野内には緊迫した雰囲気が漂っています」私この裁判受けるの反対です。
どうして〜?冷たいわねぇ。
だってもし負けたら高梨さんの無罪を勝ち取る事が出来へんかったらってリアルに考えた事あります?判官びいきの日本人の事だからファンは黙っちゃいないわね。
黙っちゃいないって暴動とか?
(恵理)あり得るんじゃないんですか?日本中が世界選手権で彼女が活躍してくれる事に期待してたわけだし。
そうなるとうちの事務所もたたじゃすみませんね。
(五月)まさか〜。
まっいずれにしたって評判を落とすのは確実。
そんなリスクの大きい裁判受ける?受けましょう。
そう来なくちゃ。
本気ですか?所長。
だってここは女性のための駆け込み寺でしょ?困っている女性がいたらたとえどんな人でもほっとけないじゃないの。
さてそれでは担当を誰にするかって事なんですが…。
日本中を敵に回す覚悟のある人いますか?はい!えっ!無実を証明すればいいんですね?
(妙子)簡単に言ってくれるわね。
やってみなくちゃわからないじゃないですか。
あなたのその自信はどこから来るわけ?何事も経験ですから。
はいわかりました。
じゃあ藤堂さんにやってもらいましょう。
はい!でもあなただけだとなんか不安だからね…。
飯島さんと麻生さんもフォローして頂戴。
ね。
よろしくお願いします!今回使用したナイフはいつも持っていたんですか?ええ。
もちろん練習の時は持ってませんけど。
いつもはどこに?バッグの中です。
ロッカー室でストーカーに襲われてとっさにバッグからナイフを取り出した?そうです。
(恵理)で無我夢中で刺してしまったという事ですね?…そうです。
ナイフはいつから持っていました?え?護身用に以前からナイフを携帯していたんですか?あの男につきまとわれるようになってからです。
ナイフを持っていた気持ちわかります。
そんな男につきまとわれたら怖いですもんね。
裁判の事は私たちに任せてください。
あなたの行為は正当防衛だったという事を必ず立証してみせます。
(検察官)午後7時30分頃所持していたナイフで殺意を持って同人の胸部を5回刺しよって同人に胸部刺創傷の傷害を与え失血死にて死亡せしめたものである。
罪名及び罰状殺人。
刑法199条。
以上につきましてご審理願います。
(裁判長)今検察官が読み上げた公訴事実の中で何か違っている事がありましたか?ナイフで刺してしまった事は認めますけど殺意を持ってという事はありませんでした。
(裁判長)弁護人の意見はいかがですか?はい。
弁護人は被告人の無罪を主張します。
被告人が行った行為はストーカーから逃げたいがためにやむをえず行ってしまった行為です。
つまり正当防衛であったと弁護人は考えます。
殺人暴力性犯罪
犯罪はいつあなたの身に降りかかるかもしれない
このドラマははからずも事件の当事者となってしまった女性を司法の場で救うべく日夜戦い続ける7人の女弁護士たちの活躍を描くものである
(北村一平)例のストーカー俺の先輩が司法解剖したんだ。
胸を5か所も刺されてたんだって。
それって正当防衛になんのかな?してみせます!余計なチャチャ入れないでくれる!はいはい。
つまみまだ?
(藤堂雅人)彼氏の前でよくそういう態度とれるよな。
考え直した方がいいっすよ。
いつも悪いね。
居候君何か言った?出来た弟にもっと感謝しろよ。
ほら。
何?高梨選手の事載ってるよ。
え!?
(北村)「高梨選手につきまとっていたストーカーは仕組まれてた」「仕組まれてた」ってどういう事?ライバル選手が高梨選手を潰すためにストーカーさせたんじゃないかって。
ライバル選手って誰?いや〜イニシャルKの選手としか書いてないけど。
K…。
柿原沙織しかいないよ。
何て言って欲しいんですか?柿原って高梨選手と同じチームだろ。
(雅人)はい。
この前のレースで高梨選手に負けて代表逃したんだよな?ああ…。
監督の事も2人で取り合ってる?
(北村)三角関係かぁ。
泥沼だな。
まさか…。
警察が被告人の訴えを真摯に聞きストーカー対策の最善の努力をはらっていたならそもそも今回の事件は起こらなかったんじゃありませんか?お言葉ですが我々警察はストーカー対策には最善の努力をはらっておりました。
でしたらどうして被告人の告訴を受理しなかったんですか?被告人は遠藤恭一を告訴したいとあなた方に何度も訴えましたよね。
受理しましたよ。
受理した?嘘よ。
いつ告訴を受理したんですか?5月4日です。
それは事件が起こった日じゃないですか!そうです。
我々が全力を挙げてストーカー被害を食い止めようと日々努力している矢先に今回のような事件が起こってしまった事は警察官として痛恨の極みであります。
調子いい事言わないでください。
事件が起こったんで自分たちの体裁を取り繕うために慌てて受理したんでしょ?違いますか?答えてください。
警察は市民の味方なんじゃないんですか?
(裁判長)弁護人は発言に注意してください。
あなたはやっぱり弁護士には向いてない。
弁護人が法廷であんなに興奮して裁判官の心証悪くする以外に何があるっていうのよ。
すいませんでした。
あっ。
大丈夫なんでしょうか?裁判。
ご安心ください。
まだまだこれからですから。
あの…1つお訊きしてもいいですか?はい。
この記事ご覧になったと思うんですけど…。
ここに出てくる「K」って柿原選手の事ですよね?こんな記事が出てうちとしても困惑しているとこです。
(翔子)柿原が高梨にストーカーを差し向けるなんてそんな事ありえません。
でも高梨さんが世界選手権の代表から外れたら代わりに柿原さんが代表になるのは間違いないんですよね?それは我々が決める事ではありませんから。
じゃあ代表が決まった直後から高梨さんがストーカーにつきまとわれたというのはどうなんですか?それは確かにそうですけど…。
柿原とはまったく関係はありません。
そんな事出来る子ではありませんから。
そうですか。
(恵理)はぁ…ストーカー男の事調べても無駄骨なのかなあ。
でもストーカーが仕組まれていたものだとしたら情状酌量の材料に十分なるんじゃないんですか?ですよね?本当に彼女が仕組んでいたとしたら?え?そんな事になったらチーム姫野は完全に崩壊するわ。
高梨さんも柿原さんも。
下手したら2人とも代表の座を逃す事になるわよ。
目をつぶれって言うんですか?真実を追究するのが私たち弁護士の仕事じゃないんですか?いいんじゃない。
あなたはあなたのやり方でやれば。
裁判どうなります?気になるんでしたら傍聴にいらしたらどうですか?練習休みたくありませんから。
探り入れて来たのかしら?
結局私たちはストーカーをしていた遠藤恭一という男の事を調べる事にした
麻生さんちょっと!
遠藤が撮ったおびただしい数の写真は常に高梨選手につきまとっていた事を物語っていた
すいませんちょっといいですか?はい。
こちらの男性なんですけど…。
遠藤という男はいわゆるパチプロだった
誰に訊いても金に汚い男だという評判
(岡部)あいつ最近いい金づるが出来たとか言ってたよ。
金づる?ああ。
コレか?って訊いたら「まあそんなもんだ」とか言ってたな。
それはいつぐらいからですか?あ〜っと…2か月位前?ストーカーを始めた時期と一緒だわ。
(アナウンサー)「さあサボイナを先頭に形成されているトップ集団ですがまだ動きは見られません」「日本代表を決めるこのレース。
チーム姫野の高梨明美」「今高梨がここで高梨が飛び出しました」「チームメイトの柿原もぴったり高梨の後ろに付いて行っています。
30キロを過ぎたところで…」こんにちは。
1人だと練習大変じゃないですか?何か訊きたいことがあるんでしょう?高梨さんをストーカーしていた遠藤恭一の事なんですけど。
弁護士さんも私を疑ってるんですか?疑っているわけではありません。
ただ…。
別に疑われても構いませんけど。
もし仮に私がその人に頼んでストーカーをやらせていたとしたら私も罪になるんですか?はいなります。
だったら高梨さんも罰せられるべきよ。
あの人の方がよっぽど汚い事してるわ。
どういう意味ですか?監督とだって…。
汚い事…。
監督と?トレーニングはちゃんとやってるんだろうな?スクワットとか腹筋とかそれぐらいは出来るだろう。
ここを出たらすぐに走れるように少しでも筋力を落とさないようにトレーニングは続けるんだ。
どうした?もう走れません。
何言ってるんだ。
世界選手権なんて無理です。
お前がやった事は正当防衛だ。
ここにいる弁護士さんたちがきっとお前を無罪にしてくれる。
そうなれば堂々と世界選手権に出ていいんだ。
もう無理です。
監督だってわかっているはずです。
お前なら大丈夫だ。
あとの事は俺に任せればいい。
わかったか?天罰です。
きっと…天罰が下ったんです。
どうもありがとうございました。
姫野さん。
さっき高梨さんが言ってた「天罰」ってどういう意味ですか?さあ…。
失礼します。
高梨がそう言ったんですか?確かに「天罰が下った」って言いました。
天罰?
(恵理)姫野監督はその意味をわかってたみたいなんですよね。
すみません。
私にはちょっと…。
そうですか。
柿原さんもちょっと気になる事を言ってたんですけど…。
柿原が?あの人の方がよっぽど汚い事してるわ。
心当たりあるんですか?たぶん柿原は2か月前の選考レースの事を言ってるんだと思います。
2人の間に何かあったんですか?給水ポイントでのアクシデントの事ですよね?そうです。
(アナウンサー)「さあいよいよ優勝の行方は同じチーム姫野に所属する高梨と柿原の2人に絞られてきました」「後続を引き離し2人がどこまで記録に近付くのかが注目されます。
さあいよいよ40キロ地点」「最後の給水ポイントに差しかかりました」「まずは高梨が自分のスペシャルドリンクを取りに行きます」「おおっと高梨が誰かのスペシャルドリンクを落としてしまいましたね。
どうも柿原のドリンクのようです」「柿原のドリンクです。
柿原拾えません」「柿原はあきらめてそのまま走り出しました」「柿原最後の給水が出来ませんでした」そのアクシデントが勝敗に影響したんですか?しました。
柿原は高梨の後ろにずっと付いて体力を温存していました。
あそこの給水で失敗さえしなかったらおそらく高梨に勝っていたでしょう。
いえ確実に勝ってました。
でもそれって高梨さんはわざと柿原さんのドリンクを落としたわけじゃないですよね。
そうだとは思うんですけど…でも負けた柿原にしてみれば…。
高梨さんの言ってた天罰ってその事だったのかしら?そのアクシデントが原因で柿原さんが高梨さんを恨んでいたという事は十分考えられます。
ほんでストーカーを雇って嫌がらせした。
確証はないんですけど。
でも遠藤がストーカーを始めた時期は選考レースの直後です。
しかも遠藤は同じ頃金づるをつかんだと仲間に話しています。
でも同じランナー同士でそこまでアンフェアな事するかなあ。
私はそういう事は信じたくないなあ。
いや女同士って何するかわからないわよ。
何だかんだ言っても女同士の方が結構陰湿なんじゃない?もしそれが事実だったとするとよ今回の事件では高梨さんは加害者というよりもむしろ被害者なんだっていう事を裁判で印象付けられるわね。
そうなんです。
ちょっと待ってよでもね…。
それを暴く事はチーム姫野にとってデメリットの方が多いわね。
飯島さんにも言われました。
でも私は…。
ホントに刺したのかしら?
(一同)ん?何?どうしたの?ああ…高梨明美はホントに遠藤恭一を刺したんでしょうか?ホントに刺したのかしら?
(一同)ん?何?どうしたの?ああ…高梨明美はホントに遠藤恭一を刺したんでしょうか?ああ…でも取リ調べでも捜査でも特に矛盾したところはなかったと思うんだけど。
うん確かにそうなんですけど何度か接見してるうちに何て言うか…何か違和感のようなものを感じたんです。
違和感?高梨さんは接見の時もいつも冷静でしょ?うん…。
決して感情を表に出しませんよね。
うん。
ビデオでマラソンのレースも観たんだけどやっぱりそうなの。
そうそう。
彼女はいつもね冷静沈着なレース運びで崩れたりしないの。
だけど犯行の時は違った。
遠藤の胸を思いっきり5回も刺してるんです。
あれは自分を見失って無我夢中で刺したっていう刺し方です。
(宏美)いくら冷静な人でも突然ストーカーに襲われたら取り乱さない?だけど襲われてすぐに自分のバッグからナイフを取り出してるんですよ。
(妙子)そこまではかなり冷静だったと思います。
ストーカーをナイフで威嚇しておいてそのまま必死で走れば高梨さんだったら楽々と逃げられたはずです。
確かに…。
よし。
じゃあ事件最初からもう一度洗い直してみましょう。
(一同)はい。
ねえ。
(一平)ん?5回も人を刺すってどういう心理状態なんだろ?うーん…もし殺意や恨みがないっていうならよほどの興奮状態だろうな。
ホントに彼女がやったのかな?え?もしかして高梨さんは誰かをかばって…。
ううんもしかしたらチーム姫野を守ろうとして自ら罪を被っているのかもしれない。
チーム姫野の誰かが真犯人だって事?柿原沙織とか?それはわからないけどもしそうだったとしたら私がやってる事ってこれでいいのかな?彼女を助けるための弁護が逆に彼女をつらい目に遭わせるかもしれない。
そんなのって…。
なんだよ真紀らしくないな。
真相究明に向かってまっしぐら!それが真紀だろ?でも…。
自分が信じたとおりに行動すればそれでいいんじゃないか?一平…。
真紀。
あ!凶器のナイフってホントに高梨さんの物かな?…もう!
(姫野)高梨がナイフを持っていたという事に関しては私も引っかかっていました。
どうしてですか?ストーカーにつきまとわれるようになってしばらくして私がスタンガンを持つように勧めたんです。
そしたら高梨はそういう物は持ちたくないと。
あどうぞ。
事件当日の高梨さんの行動なんですけど事件が起こった午後7時半頃このスタジアムにいた事は間違いないんですか?それは間違いありません。
(姫野)直前まで柿原と一緒に練習してましたから。
そろそろ上がろ。
先どうぞ。
(妙子)当然柿原さんもその時刻にはここにいたわけですね?
(姫野)そういう事です。
監督はどちらに?私はここで仕事をしていました。
事件の事はいつ気が付いたんですか?お恥ずかしい話ですが警察が到着してからです。
どうして高梨さんは真っ先に監督に知らせなかったんでしょうか?さあ…それは。
警察には高梨さん本人が電話したんですよね?そうなんだよな?はい。
私が連絡するように勧めました。
栗田さんもずっとこのスタジアムにいたんですか?いえ私は高梨から電話をもらって事件の事を知ってそれからスタジアムに来たんです。
それは何時ぐらいですか?電話をもらったのが8時頃でその時自宅にいたんで自分の車ですぐ駆け付けて着いた頃はもう8時半をまわっていたと思います。
(雨の音)ちょっとお話聞いてもいいですか?今なら練習の邪魔にはなりませんよね。
事件があった日なんですけど高梨さんは雨が降ってきたんですぐに上がったそうですね。
(恵理)あなたは?しばらく走ってそれからトレーニングルームに行きました。
1人で?ええ。
そこには何時ぐらいまで?パトカーのサイレンが聞こえてくるまで。
監督とはその日会ってます?練習が始まる前に。
その後ずっと監督室にいたとおっしゃってるんだけど。
だったらそうなんじゃないですか?マネージャーの栗田さんは8時半頃ここに来たそうですが。
あの日は栗田さんには会ってません。
でも来てたのは確かです。
会ってないのにどうしてわかるんですか?傘を置き忘れてたから。
そこに。
じゃあその日は栗田さんに会ってるんじゃないんですか?傘を渡すのに。
次の日に渡したんです。
事件があってそれどころじゃありませんでしたから。
もういいですよね?この前何を言いかけたんですか?あのほら…高梨さんの事で「監督とだって」って言いましたよね?あの人監督には何やっても許されるから。
どうしてですか?本人に訊いてください。
高梨さんは誰かをかばっているんだと思います。
誰かって?おそらく姫野監督ではないでしょうか?
(一同)え?
(五月)ちょ…何でそれじゃあ実は姫野監督がストーカーを殺したって事?しかも高梨さんと姫野監督って。
え?何?何?確認したわけじゃないんですけど選手と監督以上の関係があるんじゃないかって。
やだ…出来てるって事!?スクープじゃない!昔さ栗田さんがランナーだった頃栗田さんとも噂があったのよね。
え?栗田さんってあのマネージャーの?そう栗田選手と高梨選手で監督の奪い合いか!?禁断の三角関係!とかいってさー!ちょっといい加減にしなさい。
すいません…。
続けて。
姫野監督は高梨さんを守ろうとして思わずストーカーを殺してしまった。
でもそんな事が公になればチーム姫野の存続自体が危ない。
そこで高梨さんは自ら罪を被ったんじゃないでしょうか?でもそんな事したら代表の座を失うかもしれないのよ。
そりゃ監督は大事な人かもしれないけどそこまでしてかばうかしら?だから頼んできたんじゃないですか?正当防衛で何としても無罪を勝ち取ってほしいって。
そうか…姫野監督が自首しても無罪はまず無理でしょうけど高梨さんだったら無罪になる可能性あるからね。
(千春)ただいま戻りました。
(宏美)おかえり。
(五月)お疲れさま。
(宏美)雨もう上がった?あー!どうしたの?裁判所に傘忘れた…。
田代さんでもそんな事あるんですね。
だって出る時降ってなかってんもん。
あの傘メッチャ高かってん。
(一同笑い)
(五月)ちゃんと傘立てに入れといたんでしょ?
(千春)鍵…あれ?傘立ての鍵…。
雨…雨…。
あ!ちょ…ちょっとどこ行くの?話まだ終わってないわよ!すいません気象庁行ってきます!
(一同)気象庁?先日あなたは私たちの前で「あの人は何やっても監督には許される」そう言いましたね。
覚えてますか?はい。
あの人とは誰の事ですか?高梨さんの事です。
(恵理)ここにいる被告人は何をやっても姫野監督には許される。
あなたはそう思っているわけですね?
(恵理)許される理由は?言えません。
どうして言えないんですか?マネージャーの栗田さんから口止めされてますから。
被告人は何をやっても姫野監督には許される。
さきほどの証人はそう言っていましたがその事について何か心当たりはありますか?柿原は私と高梨の関係の事が頭にあってあのような事を言ったんだと思います。
今おっしゃったあなたと被告人との関係というと具体的には?私と高梨は婚約をしています。
婚約者という事は被告人のプライベートに関してはよくご存知ですよね?それは…まあ。
あなたは先日被告人と接見した時に被告人の口から「天罰が下った」という言葉が出た事を覚えていますか?はい。
天罰です。
天罰とは文字通り天が下す罰です。
被告人は天から罰を下されるような罪を以前犯していたという事でしょうか?恐らくはある選手の選手生命を奪ってしまったと思い込んでいてそれをずっと気にしてるんだと思います。
具体的にはどのような事があったんですか?4年前の事です。
ある大きな大会前の練習中に事故が。
(姫野)高梨が後方からその選手の足を引っかけてしまい転倒させてしまったんです。
その選手はひざの靭帯を痛めました。
ですが大事な大会が目前に控えていて私の制止を聞かずにそのまま練習を続けました。
その結果ひざをさらに悪化させ結局そのまま引退に追い込まれました。
その選手とはどなたですか?現在はマネージャーをしております…。
(姫野)栗田翔子です。
事件当日の事をお訊きします。
あなたがあの日スタジアムに到着したのは何時頃でしたか?夜の8時半頃です。
その日はスタジアムに来たのはその時が初めてですか?そうです。
いま証言した事はすべて真実ですか?真実ですか?私の事疑ってるんですか?今証言した事はすべて真実ですかと訊いてるだけです。
弁護人は証人が偽証していると思ってるんですか?ここは大事な点なので念のため確認してるだけです。
(裁判長)証人は今答えた事に間違いはありませんか?間違いありません。
(裁判長)弁護人は質問の仕方に注意して質問を続けてください。
では質問を変えます。
あなたはいつもスタジアムには車で通っているそうですね。
スタジアムの駐車場に車を止めた時もし雨が降っていたらどうしますか?いつも車の中に傘を入れてありますからその傘を差していきます。
ではもし雨が降っていなかったらどうですか?普通傘なんて差していかないんじゃないんですか?持ってもいかない?その時降ってなかったら持っていきません。
間違いありませんね?
(検察官)異議あり。
弁護人はさきほどから事件とは関係ない質問を繰り返しています。
(裁判長)異議を認めます。
(裁判長)弁護人はその質問で何を聞き出そうとしてるんですか?一連の質問は今回の事件の真相を明らかにするための重要な質問です。
もう少し続けさせてください。
弁護人は質問を続けてください。
ただし手短に。
あなたは事件があった翌日スタジアムで柿原沙織さんからご自分の傘を受け取りましたね?はい。
どうしてその時柿原さんから傘を受け取ったんですか?前の日にスタジアムに置き忘れたからです。
つまりあなたは事件当日スタジアムに傘を置き忘れた。
間違いありませんね。
間違いありません。
証拠として申請しました事件当日の気象データを証人に示します。
この気象データを見ると事件当日スタジアム付近で何時に雨が降り始めて何時に上がったのかが詳細にわかります。
あの日は寒冷前線の通過に伴ってこのスタジアム付近でも午後7時頃から雨が降り始めました。
かなり激しい雨でした。
そして雨が上がったのが午後8時頃。
私もこの日この時間にコンビニに買い物に行っていたので雨が上がったのをよく覚えています。
あなたがスタジアムに到着した時刻すなわち午後8時半頃には寒冷前線は通過しもう星空も広がっていました。
ですがあなたの証言から推測するとその時あなたは車から傘を持ち出してスタジアムに向かったという事になります。
一方あなたは雨なんか降っていなかったら傘は持っていかないと証言しましたよね?あなたの証言は明らかに矛盾していませんか?どうしてそんな矛盾した証言をあなたがするのか。
実はあなたがスタジアムに到着したのはちょうど激しく雨が降り始めた午後7時過ぎだった。
あなたの目的はスタジアムで被害者である遠藤恭一に会う事。
しかしそこで何らかのトラブルとなりあなたは遠藤をナイフで刺してしまった。
だからあなたはスタジアムに到着した本当の時刻を言えなかった。
違いますか?答えてください。
逃げる場所はありませんよ。
裏切り者!やっぱりしゃべったじゃない!あなた私の身代わりになれたらうれしいって言ったよね?
(翔子)嘘つき!何がうれしいよ!やっぱり自分だけよければいいんじゃん。
(翔子)自分だけ走れればいいんじゃない!
(翔子)自分だけ脚光を浴びて自分だけ日本中から期待されてあんた昔からそういう人よ。
違う…。
ケガさえしなかったらあなたなんかに絶対負けなかった。
あなた二度も私の人生めちゃくちゃにしたのよ。
私の人生返してよ!返して!
(裁判長)証人は勝手に発言しないように。
栗田さんあなた勘違いしています。
今私が言った事はすべて私の推測です。
高梨さんはあなたの事なんて何1つ話してませんよ。
遠藤恭一を殺害した事認めますね?
(遠藤)ああ?金出せない?
(遠藤)だったらあんたのやった事マスコミに売るしかないな。
(遠藤)その前に監督に言っちゃおうか。
そんな事絶対にさせない。
あんた監督に惚れてるもんな。
高梨さんはあなたに申し訳ないという気持ちを抱いたまま4年間必死で走り続けてきたんです。
それがどれだけつらい事かあなたが一番よくわかっていたはずです。
そんな彼女の気持ちに付け込んで自分の身代わりにするなんてあなた卑怯です。
何してるの?ああ…。
きゅ…救急車!死んでる!
(翔子)あなたのためよ…。
あなた守ろうとして!明美身代わりになってよ!あなたのためにしたんだから!あなたのためにしたんだからね!翔子は私のために!うぬぼれないで。
私が遠藤を雇ったのよ。
あなたがみーんな私から奪ってったから。
私の選手生命も姫野監督も…。
あなためちゃくちゃにしたくて私がストーカーやらせたの。
でもそれは本当のあなたじゃない。
チーム姫野にマネージャーとして残った時あなたは本気でチームのためになりたいと思っていたはずです。
じゃなかったら4年も続けられるわけがありません。
でしたら私たちの事務所に来た時はどうでしたか?あの時のあなたの心には曇ったところはなかったはずです。
少なくとも私にはそう見えました。
どうか皆さんのお力で高梨を無罪にしてやってください。
お願いします。
あの時のあなたが本当のあなたです。
どうかきちんと罪を償ってください。
終わります。
高梨選手は自ら世界選手権代表の座を辞退し再スタートした
そして栗田翔子の弁護は私たち7人の女弁護士事務所が担当する事になった
栗田翔子さんの弁護南條さんがするんですよね。
うんそう聞いてるけど。
藤堂さんよくやりたがりませんでしたね。
そんなわけないやん。
ほら。
お願いします。
栗田さんの弁護私にもやらせてください。
だってあなたは忙しいでしょ。
ほらね夜は彼とデートもしなきゃならないでしょ。
そんな…所長。
あのねこの件は南條さんにお願いしましたから。
え?南條さん!私にもやらせてください!お願いします。
そう言ってくると思った。
よしじゃあ…一緒にやろうか?はいありがとうございます!まったくねこんなにしつこい子だと思わなかったわよ。
はい!皆さんお茶の時間ですよ。
今日は信州小布施の栗かの子。
今の時期にどうして栗なんですか?決まってるじゃない。
栗田さんの弁護がうまくいきますようにでしょ。
栗!2015/10/02(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
7人の女弁護士[再][字]

7人の個性あふれる豪華女優陣が、絶妙なチームワークで、いっぱいの愛情と熱き正義感を持って、女性たちの事件を魅力的かつパワフルに解決、救っていくミステリー。

詳細情報
◇番組内容
ストーカーを護身用のナイフで刺殺してしまったマラソンランナーの明美(遊井亮子)が、殺人容疑で逮捕される。正当防衛を立証して欲しいとマネージャーの翔子(菊池麻衣子)から依頼された真紀(釈由美子)が、後輩ランナーの佐織(宮地真緒)と接触すると・・・
◇出演者
釈由美子 原沙知絵 井上和香 柴田理恵 南野陽子 川島なお美 野際陽子
永井大 武田航平 菊池麻衣子 遊井亮子 宮地真緒 中村繁之 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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