1プロフェッショナル 仕事の流儀「肝臓外科医 高山忠利」 2015.10.03


6時間に及ぶ手術が成功した。
よかったね。
男性は3つの病院で治療が不可能と言われ余命宣告を受けていた。
この難手術を手がけたのは一人の医師。
腕は一流。
しかし素顔は怖がりで心配性。
怖がりゆえに手術は極めて丁寧。
その姿勢を貫く事で3,500人もの命を救ってきた。
肝臓の手術数で年間トップを走り続けるスゴ腕外科医。
無数の血管が複雑に入り組み「血の塊」と言われる肝臓。
最も手術が難しい臓器の一つと言われ僅かな狂いが大出血を引き起こす。

(主題歌)30年前には手術で5人に1人が亡くなった肝臓がん。
高山は不可能と言われた手術法に世界で初めて成功。
治療の可能性を大きく広げた。
駆け出しの30代。
初めて手術した患者を亡くした。
この夏一刻の猶予も許さない難しい患者がやって来た。
数ミリ手元が狂っただけで命を落とす複雑な手術。
全身全霊で持てる力を出し尽くす信念の医師に密着!高山はここで医学部長兼消化器外科の教授を務めている。
高山は500人の医師のトップにいながら毎朝必ず患者のもとに足を運ぶ。
直接顔を見ないと気持ちが落ち着かない。
かなりの心配性だ。
高山のもとには年間500人以上の患者が全国から訪れる。
多くが他で手術が難しいとされた患者だ。
高山の手術の5年生存率は64%。
難しい手術ばかりを手がけているにもかかわらず全国平均を上回る。
この日の患者は70代の男性。
埼玉の病院から紹介を受けてやって来た。
12センチ以上になる巨大な腫瘍を抱えていた。
血管の塊と言われる肝臓。
手術中の出血量がその成否を分けると言われている。
たとえ腫瘍が取りきれても出血が多ければ回復が遅れたり命に関わる場合もある。
高山は出血を抑えるために過剰とも思えるほど慎重を期する。
通常は縛る必要がないと言われる微細な血管に至るまで高山は見つけたものは全て縛る。
そうする事で平均1リットルと言われる手術中の出血量を300ミリにまで抑え込む。
見つけては縛り見つけては縛り。
その数は200本以上に上る。
高山の徹底した慎重ぶりは腫瘍の切除のしかたにも現れる。
一般的に肝臓がんでは腫瘍が出来た部分を大きく切り取る事が多い。
しかし今回の患者は肝機能が低いためその方法では回復が遅れたり肝不全になるリスクが上がる。
そのため高山は腫瘍の形に沿ったギリギリのラインで切ると決めた。
切断面が広くなれば縛る血管は飛躍的に増える。
繊細な技術が求められ時間もかかるがあえて複雑な方法を選ぶ。
6時間の手術が終わった。
巨大な腫瘍にもかかわらず出血は平均の6割以下に抑え込んだ。
(手術スタッフ)ありがとうございました。
自らを極度の心配性だと言う高山。
その性格は使う道具にも表れている。
中でも高山が特注したこだわりの道具がある。
肝臓を切るために使う特殊な鉗子だ。
これまでの鉗子は刃先の目が粗く細い血管を傷つける事があった。
そこで高山はどんなに細い血管でも守れるよう先端に目の細かい特殊なチップを付けた。
6月下旬。
僅かな可能性にかけある男性が高山のもとを訪れた。
これまで3つの大病院を渡り歩いたが手の施しようがないと言われていた。
石川さんは腫瘍のうちの一つが肝臓の奥深くの難しい場所にあった。
しかし高山は手術は可能だと判断した。
しかし今回の手術にはいつも以上に難しい要素があった。
石川さんはこれまで薬で治療を行ってきたため腫瘍の一部が壊死し周囲との癒着が進んでいた。
癒着を剥がしながらの手術は大量出血のリスクが極めて高い。
いってらっしゃい。
これまで3,500回もの肝臓手術を手がけてきた高山。
それでも慎重に慎重を重ねて進めていく。
手術開始から3時間。
2つある腫瘍のうち最初の1つを切除した。
いよいよ手術の山場。
肝臓の奥深くにある腫瘍に挑む。
予想していた以上に癒着がひどい。
腫瘍と血管の境界線すらも分からない。
癒着を半分ほど剥がした時だった。
高山が出血に気付いた。
癒着の奥に大出血を起こしかねない重要な血管が隠れていた。
どんなに慎重に準備をしても出血のリスクと背中合わせの肝臓手術。
医師となって35年。
こうした修羅場をいくつもくぐり抜けてきた。
プレッシャーのかかる場面の連続。
不安を一つ一つ潰さなければ耐えられない。
手術開始から5時間。
腫瘍を取りきった。
出血量は平均の10分の1ほど100ミリ以下に抑えてみせた。
ありがとうございました。
ご家族の方いらっしゃいました。
右側にいらっしゃいますよ。
よかったね。
よかったね。
よかったね〜。
よかったよかった。
高山のもとに手紙が届いた。
肝臓がんの手術を終え退院した石川さんからだった。
手紙には「おなかの手術の痕が今では家族の宝になっている」とつづられていた。
どこまでも慎重さを貫き通す事で多くの命を救い続ける高山。
その信念は30代の頃の苦い経験によって培われた。
高山は東京の米屋の長男として生まれた。
医師になるのが夢だった父の勧めで医学部に進学。
命を救う現場に立ちたいと外科に進んだ。
当時肝臓がんの治療はれい明期。
診断の技術が確立しておらず手術の成功率は極めて低かった。
高山が立ち会った手術でも大量出血などで患者が次々と亡くなった。
30歳の時転機が訪れる。
研修で訪れたがんセンターである医師の手術を見る事になった。
肝臓の分野で世界をリードしていた…その手術は出血が少なく患者の多くが元気に退院していった。
自分もいつかあんな医者になりたい。
高山は意気込んだ。
半年後高山は初めて肝臓がんの執刀医を任された。
患者は50代の男性。
腫瘍も小さく簡単な手術に思えた。
手術は無事成功。
ところが3か月後思いがけない事が起こった。
がんが再発。
あっという間に全身に転移し男性は息を引き取った。
そのがんはベテラン医師でも診断が難しい極めて特殊なものだった。
高山は命を預かる怖さを嫌というほど突きつけられた。
高山はこれまで以上に強い不安に駆られるようになった。
不安を少しでも打ち消そうとさまざまな手術に立ち会いその手法を必死で目に焼き付けた。
手術が終わる度に必ず復習のノートをつけ一歩一歩経験を積んでいった。
それから3年後。
高山にあの幕内から連絡が入った。
「生体肝移植の手術に協力してほしい」。
当時生体肝移植は国内でまだ1例しか行われておらず極めて難しいものだった。
患者は7歳の少女。
36歳の父親が自分の肝臓を半分提供するという。
娘と父親。
2つの命を同時に預かる大手術。
絶対に失敗は許されない。
高山に大きな不安が押し寄せた。
高山は血液の流れを何度も何度も確認し血管を傷つけない安全なルートを探した。
必死の思いで血管を糸で縛り慎重に手術を進めていった。
そして16時間に及ぶ闘いの末難手術を無事成功させた。
その時高山に一つの信念が芽生えた。
不安だからこそ万全を期してできる事は全てやり尽くす。
高山はその思いを胸に難しい手術を次々と成功させていった。
国内トップの手術数を誇る今も気持ちはあの時と変わらない。
7月上旬。
夫に付き添われ一人の女性がやって来た。
2週間前埼玉の病院で胆管がんが見つかり急きょ高山を紹介されてきた。
胆管がんは手術が非常に難しいと言われている。
胆管は胆汁を肝臓から腸へと流す管だ。
この場所のがんは転移しやすいため周辺の肝臓も併せて切除しなければならない。
更に残った胆管と小腸をつなぐ手術も必要となる。
その胆管は細いもので僅か1.5ミリ。
しかも破れやすいため難易度が極めて高い。
高山にとっても覚悟の要る手術となる。
(高山)はい。
じゃあ頑張ってやりましょう。
ありがとうございました。
(高山)はいどうも。
4日後。
夫の美智雄さんが見舞いにやって来た。
三宅さん夫婦は35年にわたって精肉店を営み2人の子供を育て上げてきた。
老後は孫の成長を見守りながら夫婦でのんびり過ごそうと思っていたやさきにがんが見つかった。
(美智雄さん)それを楽しみにしてんだね。
翌日高山は精密検査の結果をもとに手術の方針を検討していた。
喜久枝さんの腫瘍は胆管のほぼ真ん中に位置している事が分かった。
この場合肝臓の右葉と左葉どちらを切除する方法もあるが左葉を切除し右葉を残した方が肝臓を多く温存できる。
ただし小腸とつなぐ胆管の数が3本に増え手術はより複雑で難しくなる。
判断を迫られる難しい場面。
しかし高山は左を切ると即決した。
あえて困難な道を選ぶ。
手術の日を迎えた。
離れて暮らしている2人の子供も駆けつけた。
何日だ?4日?東京武道館?
(手術スタッフ)よろしくお願いします。
開始直後高山が先へ進もうとする助手を止めた。
僅かな出血も絶対に見過ごさない。
肝臓が現れた。
腫瘍の場所を慎重に確認する。
メスを入れようとした瞬間また手術を止めた。
腫瘍のすぐ近くに血管が走っていた。
安全を確信できるまで何度でも確認する。
(血管の音)いき過ぎいき過ぎ。
こっちこっち。
この辺45度。
ここからが手術の山場。
直径1.5ミリの管をつなぐ繊細な作業が迫っている。
僅かなミスも許されない。
腫瘍を全て取り除いた。
いよいよ胆管をつなぐ手術に取りかかる。
もし裂ければ重い合併症を引き起こし命に関わる。
慎重に慎重に。
全ての手術を終えた。
(手術スタッフ)ありがとうございました。
3時間後。
三宅さんは無事に目を覚ました。
しっかり取りきれて終わってますから。
うまくいったって。

(主題歌)2週間後。
(高山)手術が先々週の水曜日だから…久しぶりだから。
大丈夫?倒れないでよ。
久しぶりでしょう。
ゆっくりゆっくり。
翌日。
三宅さんは孫の柔道大会に出かけた。
(拍手)
(拍手)まあ細心に仕事を全うして途中で決して妥協せず患者さんの利益を守る。
2015/10/03(土) 01:10〜02:00
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀「肝臓外科医 高山忠利」[解][字][再]

国内トップの手術実績を誇る肝臓外科医、高山忠利。大出血と隣り合わせの難手術を圧倒的に丁寧な手術で成功に導く第一人者だ。命をかけた大手術に挑む信念の医師に密着!

詳細情報
番組内容
年間300件、国内トップの手術実績を誇る肝臓外科医、高山忠利。新たな手術法を確立し、治療の可能性を切り開いてきたエキスパートだ。肝臓は無数の血管が複雑に入り組み、「血の塊」と言われる。一歩間違えれば大出血につながる難手術を、細心さを徹底した丁寧な手術で成功に導いてきた。この夏、一刻の猶予も許さない厳しい病状の女性が高山の腕を頼りやってきた。命をかけた大手術。全身全霊で闘う信念の医師に密着!
出演者
【出演】肝臓外科医…高山忠利,【語り】橋本さとし

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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日本語
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