大きなハチがびっしり!世界最大級のミツバチオオミツバチです。
一斉に飛び立ち取材班を攻撃。
この恐ろしいハチを狙うタカがいます。
ハチクマです。
番組ではこれまでハチクマとスズメバチとの攻防を2度にわたってご紹介。
ハチクマは驚きのワザで巣を攻略してきました。
しかし今回さらなる強敵が登場。
オオミツバチはその数5万匹!スズメバチをはるかに上回ります。
凶暴で執念深い性質を持ち相手をどこまでも追跡。
ハチクマ危うし!さらに巣が謎の巨大化。
オオミツバチをハチクマは攻略できるのか。
史上最大の決戦です。
(テーマ音楽)毎年春ハチクマは日本に渡ってきます。
翼を広げると1.3メートル。
ハチが主食という珍しいタカです。
渡ってきたハチクマは日本各地の森で子育てをします。
7月。
森の中でハチクマの巣を見つけました。
ヒナが2羽います。
ふ化して1週間ほどでしょうか。
もう一羽の親鳥が何か運んできました。
ハチの巣です。
親鳥は巣ごとハチの幼虫をとってきたんです。
幼虫にはたんぱく質やビタミンなどがたっぷりと含まれています。
栄養満点。
ヒナの成長にはうってつけの食べ物なんです。
次々とハチの巣を持ち帰る親鳥。
ある調査では子育て中に親が運ぶ食べ物のうち2/3以上がハチだったそうです。
それにしても恐ろしいハチの巣を一体どうやってとってくるんでしょう?研究者と共にその謎に挑んだのが2008年の番組。
無人カメラを使い4年間の苦労の末狩りの撮影に初めて成功したんです。
こちらがその映像です。
地面に降りたハチクマ。
脚で穴を掘っています。
この穴の中に目的のハチがいます。
クロスズメバチ。
地中に巣を作るハチです。
たくさんのクロスズメバチがハチクマを取り囲みました。
巣を掘り返されて怒っています。
ところがハチクマ全く気にする様子はありません。
穴に体を入れ…。
おおっ!大きな塊。
ハチの巣です。
いともたやすく掘り出しました。
ほかの動物ならこう簡単にはいきません。
こちらはハチクマよりはるかに大きいツキノワグマ。
やはりクロスズメバチの巣を襲って食べようとしています。
うわ!ハチに刺されたようです。
あイタタタタタ!地面に体をこすりつけハチを払おうとしています。
しかしハチは攻撃をやめません。
毛の間に入り込み毒針で刺し続けます。
痛そうですね。
とうとう逃げ出してしまいました。
一方ハチクマは痛がるそぶりすら見せません。
不思議ですね。
顔を見ると細かい羽毛がウロコのようにびっしり。
羽毛はかたく簡単には針を通しません。
ハチクマは全身かたい羽毛で覆われているんです。
その特別な体でハチクマはほかの動物が手を出しにくいハチの巣を独占できます。
たっぷりとハチを食べて大きく成長したヒナ。
ふ化してから40日ほどで巣立ちを迎えます。
9月。
ハチクマの渡りの季節です。
子育てを終え越冬地の東南アジアに渡ります。
しかし渡った先でハチクマがどんなハチを食べているのかはこれまで謎でした。
その謎に迫る手がかりを見つけた人がいます。
慶應大学の樋口広芳博士。
ハチクマに発信器をつけ渡りの詳細なルートを解明しました。
博士が注目したのは秋と春の渡りの違いです。
秋日本を出発したハチクマは休むことなく南下。
1か月から2か月かけてインドネシアやフィリピンなどの越冬地に渡ります。
そこで3か月ほど過ごすと春に渡りを再開。
日本に戻っていきます。
しかしその途中に謎があります。
1週間から1か月ほどハチクマたちがとどまる場所があるんです。
ハチクマはここで何か重要なハチを食べているに違いない。
博士はそう考えました。
ハチクマはどんなハチを食べているのか。
3月取材班はタイの南部を訪ねました。
春の渡りの途中多くのハチクマがとどまる場所です。
早速有力な情報がありました。
ハチミツをとる農家の人がハチクマがハチを襲うところを目撃していたんです。
オオミツバチ?それは東南アジアなどにすむ世界最大級のミツバチ。
体長は2センチほど。
日本のミツバチと比べるといかに大きいかわかります。
毒針の大きさも圧倒的。
毒の量は3倍近くにもなります。
農家の人に巣を案内してもらいました。
木の幹に大きな塊がぶら下がっています。
これがオオミツバチの巣です。
幅は1.5メートルほど。
よく見ると表面で何か動いています。
なんと全部ハチ!オオミツバチがびっしりと巣に張り付いているんです。
その数最大で5万匹!巣では幼虫が育てられたっぷりとハチミツが蓄えられています。
ハチクマの獲物として確かに不足はありません。
私たちは巣の近くに撮影用の拠点を作ることにしました。
ハチクマに警戒されないよう植物で周りをカムフラージュ。
ハチクマはどのようにオオミツバチの巣を襲うのか。
準備は万端。
さああとは待つだけです。
1週間後。
動きがありました。
ハチクマが近づいてきたんです。
巣を狙っています。
かすめました!一斉に飛び回るオオミツバチ。
巣に接近したハチクマを激しく警戒しています。
その様子をうかがうハチクマ。
相手の勢いを測っているんでしょうか。
さあどうする。
再び行きました。
狙いを付けると翼を縮めて急降下。
いよいよ攻撃か!ところが急旋回。
巣とは反対方向に飛んでいきます。
一体どうしたんでしょう?もう一度見てみます。
ハチクマのすぐ後ろ。
1匹のハチが追いかけています。
まさかこの1匹に恐れをなしたんでしょうか。
そのまま去っていきました。
ちょっと待った!ヒゲじいやっぱり来ちゃいましたか。
そりゃそうでしょう。
ハチクマはかたい羽毛のおかげでスズメバチだって平気のはずでしょ。
いくら大きいからってミツバチ相手に何で簡単に逃げちゃうんですかね。
そう思いますよね。
実はオオミツバチにはほかのハチにはない恐ろしい性質があるんです。
それを確かめるため巣に近づいてみることにしました。
えっだ…大丈夫なの?はい。
安全のため防護服を着用します。
そして小型カメラを棒の先につけて巣を撮影します。
うわ〜ななんだかこっちも怖くなってきましたぞ〜。
さあ巣が見えてきました。
ハチを刺激しないよう慎重に近づきます。
(ハチが体を震わす音)ああれ?
(ハチが体を震わす音)ななんですか?この不気味な音。
これはですねオオミツバチたちが体を震わせて音を出し集団で威嚇しているんです。
威嚇ですか!うわ〜恐ろしい。
(ハチが体を震わす音)音はどんどん大きくなっていきます。
(ハチが体を震わす音)それでも逃げずに撮影を続けていると…。
おっと!ハチが向かってきましたぞ。
はい。
一斉攻撃が始まったんです。
1匹が危険を知らせる化学物質を出すとそれに反応したほかのハチが次々と襲いかかります。
うわ〜!カメラがカメラがハチだらけになった!はい。
いったん離れることにしました。
そうしましょう。
早く逃げなくっちゃ。
しかしですね離れても攻撃が収まる気配がないんです。
取材班は逃げ続けました。
ところが100メートル離れても15分もの間攻撃が続きました。
時には2キロ以上にわたって執ように追い続けるといいます。
えっ!2キロですか。
うわ〜執念深いですなぁ。
はい。
これほどしつこく攻撃するハチはほかにいません。
毒針も特大なのでさすがのハチクマもうかつに手を出せないんです。
なるほど。
でもどうしてオオミツバチはこんなにしつこいんですかね?はい。
それはこのハチの独特な巣と関係があります。
はあ?どどういうこと?こちらはニホンミツバチの巣。
ニホンミツバチは木のウロの中に巣を作りそこで幼虫を育てたりハチミツを蓄えたりします。
ここならクマなどの天敵に襲われにくいんです。
ああなるほどね。
一方オオミツバチは木の幹などにむき出しの巣を作ります。
ウロを探す必要もなく巣を大きくしやすいというメリットがある反面目立ってしまうため天敵に襲われやすいという問題を抱えているんです。
あそうなんだ。
そこでオオミツバチは働きバチ自らが城壁となり巣を守る作戦を編み出したんです。
ハチの仲間で最強とも言われるしつこさや凶暴性はむき出しの巣を守るため長い時間の中で身に付いた性質だと考えられます。
なるほど。
こちらは別の場所で撮影された映像です。
見て下さい。
ハチクマがオオミツバチの大群に追われています。
いや〜オオミツバチ恐るべし!ハチクマにとってまさに最強の相手なんですな。
タイの危険なハチをどう攻略するのか早く見タイ!知りタイ!ご期タイ下さい。
だはっ。
第2章では巣が謎の巨大化。
オオミツバチの秘策です。
ハチクマ対オオミツバチ。
勝負の行方は?世界で最も高いヒマラヤ山脈。
このふもとにもオオミツバチの仲間がいるんですよ。
巣があるのはこ〜んな断崖絶壁。
ヒマラヤオオミツバチです。
この崖の巣からハチミツをとる人たちがいます。
その名も「ハニーハンター」。
一体どうやってとるんでしょう。
葉っぱを集めて燃やし始めました。
するとたくさんの煙。
この煙が大事なんです。
ほら白っぽい巣が見えています。
煙で混乱したオオミツバチが巣を離れ始めたんです。
さらに煙にはハチの動きを鈍らせる働きもあります。
縄ばしごを使って巣に近づくハニーハンター。
ハチの攻撃が緩んでいる隙に巣を切り取ります。
あっハチミツがたれています!ハチが攻撃力を取り戻したら大変。
作業を急ぎます。
しかし巣を全部とるわけではありません。
必ず半分残します。
こうするとまたハチが戻ってくるんです。
カゴが下りてきました。
とるのは危険ですがその味は絶品!う〜ん!生きものの性質をよく知り恵みを分けてもらう。
これぞ大自然のごちそうです。
タイの南部でハチクマとオオミツバチの戦いに密着して1か月。
願ってもない情報が飛び込んできました。
山あいの村に数多くのハチクマが来ているというんです。
現場に向かい観察すると2時間で20羽を超えるハチクマを目撃。
ここなら決定的瞬間を撮影できる可能性が高そうです。
早速オオミツバチの巣を探していると…。
村人が有望な巣を教えてくれました。
なんと先ほどまで近くにハチクマがいたというんです。
これまでにない絶好の条件。
私たちは撮影の準備を整えハチクマを待つことにしました。
ある朝。
ハチクマが現れました。
しかも2羽です。
さらにもう一羽。
するとオオミツバチは音を出して威嚇を始めました。
ハチクマの気配に気付いたようです。
(ハチが体を震わす音)その時です。
巣に異変が起きました。
時間を速めてみると巣が大きくなっていくのがわかります。
どんどん巨大化していく巣。
一体何が起こっているんでしょうか。
下のほうを見るとオオミツバチの向こう側が透けています。
オオミツバチたちが密集していた状態を緩め広がっていたんです。
よ〜く見るとオオミツバチが下へ下へと移動しているのがわかります。
まるでカーテンのように広がっています。
元の大きさの3倍にもなりました。
オオミツバチはこうして巣を大きく見せることでハチクマを威嚇しているんです。
対するハチクマ。
巣の横にやってきました。
巣をじ〜っと見つめています。
ついに攻撃!と思いきや逃げ出しました。
するとオオミツバチ一気に反撃に転じます。
ハチクマは遠くへ退散するしかありません。
そしてこの日巣には戻ってきませんでした。
翌日。
再びハチクマがやってきました。
オオミツバチはまたしても巨大化作戦で対抗。
ハチクマは攻めあぐねています。
よっぽど怖いんでしょうか。
ようやく50センチほどの所まで近づきますがあと1歩が踏み出せません。
う〜んどうしたハチクマ。
ファイト!この緊迫したにらみ合いは2週間以上も続きました。
そしてハチクマは結局この巣を襲うことができなかったんです。
いや〜まさかハチクマが負けるとはオオミツバチ本当に恐ろしいですな。
でもこんなていたらくでハチクマは食べていけるんですかね?ヒゲじいご安心下さい。
オオミツバチを確かに食べているという証拠を見つけたんです。
ホントに?はい。
こちらの巣よ〜くご覧下さい。
はいどれどれ?巣の表面がところどころへこんでいますよね。
あ〜はいはいはいはい。
これはハチクマがクチバシでつついた跡だと考えられます。
へえ〜そうなんだ。
そしてほらハチクマが来ました。
状況から襲ったのはつい最近だったようです。
もう少しのところで撮影はできませんでした。
あそりゃ残念。
でもねヒゲじいほかの場所で撮影されたオオミツバチを襲う映像があるんです。
ほうどれどれ?こちらハチクマがハチミツたっぷりの巣を食べ始めました。
お〜!確かに確かに。
でもちょっと待った。
凶暴なオオミツバチが全然攻撃していないじゃないですか。
ヒゲじい鋭い!これにはどうやら以前の取材にヒントがあるようなんです。
どういうこと?こちら台湾のハチクマです。
相手は巨大な巣を作るツマアカスズメバチ。
ハチクマはハチの反撃を受けながらも何度も攻撃を繰り返しました。
するとやがてハチが反撃しなくなったんです。
あ〜はいはいはい。
思い出しましたぞ。
不思議でしたもんね。
ええ。
この時スズメバチはまるで魔法にかかったかのように動かなくなりました。
先ほどのオオミツバチもこれに似てると思いませんか?そう言われてみれば確かに。
詳しい事はわかっていませんがハチクマがハチの反撃を抑える何らかの物質を体から出しハチがそれに触れると次第におとなしくなるのではないか。
さらにはハチも攻撃を受け続けると巣を諦め抵抗しなくなるとも考えられるんです。
ほうほう。
長い間手ごわいハチたちと攻防を繰り広げてきたハチクマ。
まだまだ私たちが知らない不思議な能力があるのかもしれませんね。
う〜んなるほどねぇ。
ハチクマってなんとも奥が深いですなぁ。
今後もハチクマから目が離せませんぞ。
4月下旬。
タイ南部の森でたっぷり栄養を蓄えたハチクマが旅立っていきます。
そして5月半ば。
再び日本に戻ってきます。
この時期オスは独特な飛び方を見せます。
こうしてメスを誘うんです。
間もなく子育ての準備が始まります。
危険なハチに挑み特別な能力を磨いてきたハチクマ。
巣を守るため集団で驚きの作戦を繰り出すオオミツバチ。
攻める側も守る側も長い時間の中で互いの力を高め合ってきました。
息詰まる攻防はいつまでも続いていくことでしょう。
2015/10/03(土) 16:20〜16:50
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「タカVS最強ミツバチ 史上最大の決戦!」[字][再]
危険なハチを狩る命知らずのタカ、ハチクマ。狙いは世界最大級を誇るオオミツバチ。凶暴で執念深い5万匹の大群をどう攻略するのか?タイを舞台に、史上最大の決戦に迫る。
詳細情報
番組内容
危険なハチを襲って食べる命知らずのタカ、ハチクマ。これまで番組ではスズメバチとの壮絶な戦いを2度に渡って紹介してきた。今回の狙いは世界最大級のミツバチ、オオミツバチだ。巣には凶暴性と執念深さを持つ5万匹もの大群が待ち構え、天敵を2キロ以上に渡って追跡する。さらにハチクマが近づくと、巣が突然、謎の巨大化を始めた!ハチクマはオオミツバチを攻略できるのか?タイを舞台に、史上最大の決戦に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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