(亀)行儀作法からですね。
(辰路)秀次郎は久坂さんの子。
(秀次郎)お母ちゃんに捨てられたん?あの子を育ててみようと思います。
旅の宿に温泉があったらうれしいですよねぇ。
ご満悦の加藤夏希さん。
でもお目当ては温泉ではありません。
(加藤)やばいこれ。
とっても落ち着きます。
すわり心地が抜群で和の空間にも合うデザインのイス。
これらは全て山形県天童市で作られたものなんです。
この座面を広く取ったイスは…。
女性は脚崩して横に座られる方もいらっしゃいますし。
確かに。
男性の方…ちょっと失礼します。
あぐらこのように。
なるほど。
魅力的な天童のイス。
実は半世紀以上前につくられたロングセラー。
中でも代表作がこちら。
スツールなんですけど。
はいイスなんです。
羽ばたく蝶のようなその名も…木とは思えぬ柔らかな曲線のイスがきょうのイッピンです。
このイスの人気は衰えることがありません。
こちらは東京新宿の家具屋さん。
全国からえりすぐった品々の中に…あのイスがあります。
毎月必ず売れていく人気商品なんだそう。
部屋に置くと空間が一変すると評判です。
さらに2年前に建てられた東京三鷹の図書館。
ここにも天童のイスが。
「優れたデザインのイスで快適な読書体験を」との願いからしつらえられました。
人々を魅了し続ける美しいカーブを持つ木のイス。
きょうは天童が生んだ木製品の魅力に迫ります。
山形県東部奥羽山脈のすそ野に広がる天童市。
江戸時代から続く将棋の駒づくりなど木工の町として知られています。
加藤さんが訪れたのは70年イスを作り続ける家具メーカー。
こんにちは。
ようこそいらっしゃいました。
はじめまして。
まずはショールームを案内してもらいました。
これもイスですか?
(西塚)これは折り鶴というイスなんですけどもあれっ?大丈夫ですご安心下さい。
個性豊かなイスは400種類以上。
どれも木を自在に曲げて作られているんです。
加藤さんあのイスを見つけました。
こちらのほうはバタフライスツールというスツールで。
すごいですねこのイス。
あ!安定感ありますね。
薄いですね。
大変丈夫にできております。
不思議です。
板の厚さ7ミリ。
こんなに薄いのにどうして座っても折れないんでしょう?秘密はこちらなんですけれどもこの7ミリの板なんですけども。
あ…線が入ってますね。
へぇ〜。
「成形合板」という薄い木の板を重ね合わせて曲げる特殊な技法によって作られていました。
木を自在に曲げる成形合板。
その技を見せてもらいに工場へと移動します。
まずは材料を拝見。
こちらがバタフライスツールにしている材料になります。
へぇ〜。
成形合板に使われるのはブナをおよそ1ミリの厚さに削った薄い板。
「単板」といいます。
やわらかい。
すごいですね。
ペラペラな感じフフフ。
(西塚)そうですね。
バタフライスツールは単板を7枚重ねて作られます。
でもただ重ねるわけではありません。
成形合板のスペシャリスト。
この道23年のベテランです。
薄い単板はそのままだと…。
(伊藤)1枚だと折れます簡単に。
2枚にしても割れますし。
あぁ。
木には木目に沿って亀裂が入るという性質があります。
そこで成形合板では木目の方向が縦横交互になるよう重ねていきます。
こうすることで丈夫になるというんですが本当なんでしょうか?そこで実験!成形合板と同じ木材で同じ厚さに切り出して曲げたむく材。
それぞれどのくらいの加重に耐えられるか比較します。
むく材は243キログラムで折れてしまいましたが成形合板は393キログラム。
つまり1.6倍の重さに耐えられることが分かりました。
薄い板を木目の方向が交互になるよう重ね合わせることで格段に丈夫になっていたのです。
優美な姿のこのイスは実はたった2枚の成形合板が作り出しています。
この美しい曲線がどうやって作られるのか次に見ていきましょう。
曲げる前にまず単板に接着剤を塗っていきます。
ローラーを通すと板の両面に特殊な接着剤が付く仕組みです。
まだこの段階では板同士を密着させません。
板を型に入れて機械でプレスしながら接着するんです。
上下に分かれた2つの型はイスの形状に合わせた3次元構造をしています。
型を熱しながらプレスして接着剤を固めつつ木を曲げていくのです。
さぁいよいよ開始。
単板がずれないように調整してまずおおまかに形を作ります。
(機械の音)お〜。
この辺で止めてブリ防止という…。
でもここからが難関。
力を加えすぎると折れてしまうんです。
下ろすときも…
(単板のきしむ音)単板がきしむ音に耳を澄ましながらプレスは完了。
そのまま10分熱し接着剤が固まったら取り出します。
お…。
あ…出来てる!こんな感じで。
あすごい。
木目もピッタリですね。
きれいに。
完璧に接着できるようになるには10年はかかるんだそうですが…。
なんかボタンを押しながらちょっと簡単そうには見えたんですが。
ちょっとゲームっぽいですよね。
そうですね似てるかもしれない。
1回やってみます?はい。
特別にやらせてもらえることに。
そこまでいってみますか。
はい。
ではいきます。
はい。
わ〜スピードが速い!あ…おじょうずですね。
いい筋してますね。
大丈夫ですかここで。
でも難関はここからです。
いきます。
こわい。
(小刻みな機械の音)
(単板のきしむ音)おっ。
おっ?あこれですねバキッっていったの。
駄目ですか?残念でしたね。
なぜ板が割れたんでしょう。
きっと接着剤が途中で乾いちゃって引っ張られる感じになったんじゃないかなぁと思いますね。
だからこういうふうになっちゃうんですね。
難所にさしかかっても伊藤さんは接着剤が乾かないうちに慎重かつ手際よく押していますがおっかなびっくりの加藤さんは手間取ってしまいました。
この間に接着剤が乾いて板が動かなくなりそこに力を加えたため裂けてしまったんです。
伊藤さんは木の状態を見極めながら的確にプレスすることで美しい曲線を生み出していました。
さらに入念な仕上げが施されていきます。
ヤスリで端を整え滑らかに。
そして次は塗装。
カーブに沿って丁寧に塗りツヤを出します。
そして組み立て。
ねじを閉めたら完成です。
はい。
これで完成ですね。
強さと美しさを兼ね備えた成形合板のイス。
木の性質や状態を見極める職人技から生み出されたイッピンです。
木を自在に曲げる天童の木製品。
その誕生のきっかけとなったのは戦争でした。
1940年軍事用の物資を作るため大工や指し物師建具師ら地元の職人が集まって組合を結成したのです。
成形合板の技術は木製の模造戦闘機などを作る中で必要とされました。
天童で長年家具の設計に携わった菅澤光政さんは当時の様子を伝え聞いています。
軍全体の方向としてやってたわけですね。
戦後は家具づくりに転換。
しかし困難に直面します。
接着剤の質が悪く1日に1枚の板しかできませんでした。
そこで1947年高周波発振装置を導入。
電気の力で型を熱し接着剤を固める最新鋭の機械でした。
民間企業では初めての試みでしたが成形合板に未来を託したのです。
高い志が多くの先鋭的なデザイナーをひきつけました。
柳宗理もそのひとり。
バタフライスツールは柳のデザインを3年かけて実現。
1956年に完成したものでした。
その後も数々のデザイナーと組み今も高く評価されるロングセラーを次々と生み出していったのです。
このロッキングチェアも画期的なイスのひとつ。
おっ。
いいですね。
ええ。
脚の部分にご注目。
通常のロッキングチェアは4本足ですがこれは2本だけ。
前後に揺れるイスを2本の足だけで支えるのは難しいとされていましたがより美しい形を求めて1966年に開発しました。
ポイントは「コマ入れ成形」という技法。
「コマ」と呼ばれるパーツを中心に入れ周囲に板をめぐらせます。
複雑な形ができるばかりかコマが芯となって強度も増す画期的な技術でした。
コマ入れ成形はどのように行われるんでしょうか?使う単板は44枚。
伊藤さんにとっても最も難しい作業です。
これがロッキングチェアの型。
上下が逆さまになっているんです。
まずはコマを囲む部分をセットします。
他のイスより単板が格段に多くズレやすいため…。
足まで使いながら型に単板をセットしていきます。
おおまかに入れたら…。
コマの登場。
中心にはめ込みます。
ここからが最も難しい作業です。
それぞれの型を縦横斜めに動かしピッタリ合わせなくてはなりません。
いよいよプレス開始。
(単板のきしむ音)いくつものレバーを巧みに操ります。
コマは中心から僅かにでもズレると折れてしまいかねません。
少しずつ隙間を埋め均等にプレスしていきます。
始めてから15分緊張の時は過ぎ無事コマ入れ成形は成功に終わりました。
斬新なデザインを実現するために開発し続ける技術。
ものづくりへの熱い思いが生み出したイッピンです。
木への情熱が枯れることはありません。
こちらが丸太置き場です。
はい。
イスにするには強度が足りないとされてきた杉。
その杉を曲げる技術を去年開発したんです。
3年間の研究の末にたどりついたのは「圧密」という方法。
薄くした杉を圧縮しながら加熱します。
すると繊維が密となり強度が上がるんです。
こうして成形合板に適した単板ができました。
すごい。
こちらのほうの木はまだ圧縮してない木です。
なんかしっとりしてますね。
そうですね。
それで傷つけるとこういうふうに手の跡が…。
本当だ!爪の跡が付いちゃうんですね。
やわらかいんですね。
はい。
圧縮するとこういうふうにして傷つけてもそう全然…。
傷つかないほど堅いんです。
はい。
美しい木目を持ちながら家具に使うことが少なかった杉。
天童生まれの新しいイスが今全国の注目を集めています。
天童は言わずと知れた将棋の駒の一大産地。
日本一の生産量を誇ります。
その始まりは江戸時代末期。
貧しかった天童藩の武士たちが内職として駒づくりを行ったことがきっかけです。
天童の自慢の駒があると聞き訪ねました。
(女将)どうぞ。
はい。
わすご〜い!ここは「竜王の間」。
ここで竜王戦が行われてるわけですね。
(女将)さようでございます。
へぇ〜。
プロ将棋タイトル戦の最高峰竜王戦が行われるのです。
そこで使われるのが特別な駒。
漆で文字をぷっくりと盛り上げた「盛り上げ駒」です。
その技を見せていただきます。
盛り上げ駒の職人。
よろしくお願いいたします。
あれ?桜井さん盛り上げるかと思ったら文字を彫り始めました。
駒の材料はツゲ。
堅い材質の木ですがうまく扱えば鋭い輪郭を持つ文字を彫る事ができるんだそうです。
刃先を巧みに操って筆で書いたかのような生き生きとした線を生み出します。
美しい文字が現れました。
次に登場するのは「漆」。
石の粉に漆を混ぜたものです。
これを塗込むことでこの上に盛り上げていく漆の文字をしっかりと定着させるのです。
固まったら表面を研磨しいよいよ盛り上げ。
用いるのは粘りけの多い漆。
筆を丁寧に重ねて均等な高さにしていきます。
一文字だけで15分。
最高級の駒には惜しみない手間がかけられていました。
小さな駒には伝統の重みと職人の誇りが詰まっています。
最後に見つけたのは不思議な木製品。
わぁすごい!みな独特の黒い模様がありますがある珍しい木で作られたものなんです。
将棋の駒を収める駒箱。
天童ではその最高級品がこの木で作られてきました。
木目に浮かぶ黒はまるで墨絵のような美しさ。
その木は「黒柿」。
樹齢150年以上の柿の木が突然変異したものと言います。
近年はさまざまな製品が作られています。
このスプーンははぎれを有効利用したもの。
希少な黒柿を少しでも身近に感じてほしいとの願いからです。
始めたのは工房の3代目。
半世紀以上黒柿を扱ってきました。
うんうんうん。
息子の宏信さんも新しい製品に取り組んでいます。
箱に次々に溝を彫っていきます。
黒い部分は組織がかたく変化していて彫りにくいんだそう。
他の部分とのかたさの違いを見極めながら均等に削っていきます。
完成品がこちら。
表面にあえて削りを入れたのは光の当たり方によって異なる黒柿の表情を引き出すためでした。
新たな美しさを求めてやまない天童ならではの木製品です。
加藤さん今回いかがでしたか?この天童という町の職人さんたちは昔からの歴史のある技術を大切にしながらも新しい発想を実現していくのがすごいなと思いましたね。
すごくすてきな職人さんたちに会えたなぁと思いました。
2015/10/04(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「木に柔らかく美しい曲線を〜山形 天童の木製品〜」[字]
山形県天童市で作られる木の椅子は、美しいデザインで世界的に評価されるイッピンだ。木に柔らかな曲線をもたらす高度な技とは?日本一の生産量を誇る将棋の駒も紹介。
詳細情報
番組内容
山形県天童市で作られる木の椅子は、美しいデザインで世界的に評価されるイッピンだ。薄い板を何枚も重ねて曲げる「成形合板」という独特の技法によるものだ。柳宗理らトップデザイナーと開発してきたロングセラー・名品の数々をたっぷりと紹介!また、日本一の生産量を誇る「将棋の駒」。その中でも最高級品はどのように作られるのか?そして、幻の木「黒柿」を使う工芸品とは?天童の木製品の魅力を加藤夏希がリサーチする。
出演者
【リポーター】加藤夏希,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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