(テーマ音楽)徳島県日和佐川。
四国山地に源を発し太平洋へと注ぐ清流です。
自然の姿を色濃く残した流れは浅瀬や淀みなど複雑な環境をつくりさまざまな生き物を育みます。
中でも多く見られるのがテナガエビ。
この川の上流と河口とを往復する事で命をつないでいます。
清流日和佐川。
その豊かな自然を見つめます。
日和佐川は徳島県南部を流れる長さ僅か16.3キロの川です。
上流から河口までダムはなく自然な流れが残されています。
そのため浅瀬や淀みが繰り返し現れる複雑な川の表情が見られます。
川の中流に広がる浅瀬。
列になって泳いでいる魚がいます。
数十匹は群れているでしょうか。
アユは普通縄張りをつくり単独で暮らします。
しかし清流日和佐川では住んでいるアユの数が多いため群れで暮らすという珍しい生態が見られるのです。
岸辺近くにはところどころに流れの弱い淀みが出来ています。
泳いでいるのはカワムツです。
水質の変化に敏感で淀んでいてもきれいな水でなければ住めません。
大きさは10センチほど。
水草が茂る岸辺を好み水生昆虫などを食べています。
こちらは…甲羅の幅7センチほどでこの川に多い小さな魚などを狙っています。
日和佐川は短くてもさまざまな環境があるため多くの生き物を育んでいるのです。
日和佐川の源流は四国山地の標高900メートルほどの所にあります。
山肌から水が湧き出しやがて小さな流れを結びます。
源流から3キロほど下った上流部。
ここに日和佐川を代表する生き物が暮らしています。
川底に転がる大きな岩。
その隙間に何か動いています。
体の長さは9センチほどでそれと同じくらい長いハサミが特徴です。
日和佐川には他の川と比べて数多くのテナガエビが暮らしています。
小さな川なのになぜテナガエビが多く見られるのか。
それには理由があります。
流れが短い日和佐川では水は勢いよく海へと下ります。
川底の泥や砂はとどまる事なく流されていきます。
そのため川底と岩の間に数多くの隙間がつくられます。
そこはテナガエビたちにとって格好の住みかになっています。
隙間から出てきたテナガエビ。
何かを狙っています。
魚の死骸です。
小さな足を使って器用に口に運びます。
住みかと食べ物がたくさんあるため日和佐川には数多くのテナガエビが住めるのです。
日和佐川は夏の盛りを迎えました。
そのころ水の中ではある出来事が起こります。
繁殖期を迎えたテナガエビたちが住みかを離れ移動を始めるのです。
向かう先は川の下流。
一匹のヒラテテナガエビのオスがやって来ました。
到着するとすぐに岩の下の小石をどけ始めました。
隙間を広げてメスを迎える準備をしているのです。
こちらにやって来たのはメス。
オスに比べてハサミが小さく体つきもきゃしゃです。
オスのもとにメスが来るとオスはハサミでメスを囲んで守り始めました。
メスは卵を産む前に脱皮します。
体がやわらかく外敵に襲われやすくなるのでオスが守っているのです。
そこに甲羅の幅2センチほどのモクズガニがやって来ました。
テナガエビを襲う事もあります。
小さいからといって油断はできません。
オスはモクズガニを威嚇し追い払います。
この時テナガエビの大きなハサミが役に立つのです。
オスはメスに密着。
足を小刻みに震わせます。
脱皮を促しているのです。
ついにメスが脱皮しました。
僅か10秒ほどの出来事でした。
このあとペアは交尾をしメスは産卵の時を迎えます。
次の日。
メスのおなかの下に卵が見えます。
無事に産卵できたようです。
メスはオスのもとを去り歩きだしました。
更に河口近くまで下り2週間ほどで卵を放ちます。
夜ふ化した子供を発見しました。
1ミリ足らずの大きさです。
テナガエビの子供は海水が混じった水の中でしか生きられません。
そのため親は海の近くまで下って卵を放つのです。
産卵を終えた親がいました。
下流から再び上流へ向かい始めています。
テナガエビの寿命は5年ほど。
その間ずっと上流と下流とを行き来する暮らしを続けていきます。
強い流れに押し戻されてしまいました。
今度は水から少し離れて上り始めました。
しかしその先には大きなモクズガニが待ち構えています。
カニはテナガエビにじりじりと近づきます。
テナガエビがカニに捕まってしまいました。
産卵とその後の上流への移動はテナガエビにとって大きな試練なのです。
こちらでは別のエビがカニのいない浅瀬を上っています。
大きなハサミで足場を確保しながら上っていきます。
そして厳しい流れを上りきりました。
こちらはテナガエビが目指していた川の上流です。
大きなハサミを持ったオスがいました。
川を遡り続けようやく元の住みかへ戻ってきたのです。
四国の清流日和佐川。
山と海を結ぶ小さな流れが命の輝きを支えています。
2015/10/04(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「徳島 日和佐川」[字]
徳島南部の日和佐川。ダムはなく魚の放流が行われないため、アユをはじめ全てが天然魚だ。源流から河口までせきが分断しない川で、稚エビが岸を行列になって遡上する。
詳細情報
番組内容
徳島県の南部を流れる日和佐川。ダムはなく、自然な蛇行が残る。魚の放流が行われないため、アユをはじめ全てが天然魚だ。川を代表する生きものが、エビなどの甲殻類。源流から河口までせきで分断されていない日和佐川は、格好の環境だ。代表的な種類のヒラテテナガエビは、初夏、上流でメスが卵を産み、ふ化するまで足で抱えて下流へ。1か月ほど育つと5ミリほどの稚エビとなり、川岸を行列になって遡上する。
出演者
【語り】中村慶子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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