7明日へ−支えあおう−▽ふくしま 鎮魂の祀(まつ)り〜詩人 和合亮一の言葉神楽 2015.10.04


東日本大震災から5年目の夏を迎えた福島の海です。
福島の高校教師で日本を代表する詩人の一人和合亮一さんは今も震災と向き合い続けています。
福島の死者・行方不明者は合わせて1,800人余り。
200人は今も見つかっていません。
その中に和合さんの知人や教え子もいます。
なぜ突然命は奪われこんなにもふるさとが傷つけられなければならないのか。
なぜ放射能汚染によって住む家や仕事田畑山や海など全てを奪われなければならないのか。
和合さんはやり場のない怒りを言葉で発信し続けてきました。
そしてこの夏和合さんは新たな表現に挑みました。
東北に古くから伝わる芸能の数々。
その精神を受け継ぎながら福島の人たちと新しい神楽をつくる事にしたのです。
名付けて「言葉神楽」。
「生きることそれそのもの鬼喜べ怒れ哀しめ楽しめ起承転転起承転転」。
やり場のない怒りと苦しみ。
命を失った人々への鎮魂。
100年後にまで届けと願う福島の祈りです。
大河阿武隈川が町を南北に貫く福島市。
町は一見元の日常を取り戻したかに見えます。
福島の高校で教師をしている和合さんは出勤前の朝4時に起きて震災を書き続けています。
震災を風化させてはならないと思い続けてきました。
すいません失礼します。
和合さんを支えるのは地元・福島市のNPOの仲間たちです。
自分たちの手で福島の町を盛り上げたいと11年前に結成されました。
著名な歌人や詩人アーティストを招き言葉や音楽の力を使ってイベントを開いてきました。
震災後は追悼のイベントなどを開き福島の抱える苦悩を分かち合ってきました。
福島のそういう今の苦しみとかそういうものをつづった詩も吉永さんが朗読して下さって和合さんは震災後ずっと作られてたそれを朗読してっていうふうな形でした。
「震災を風化させない」。
その思いでつながる仲間たちです。
なぜ突然命やふるさとを奪われなければならなかったのか。
和合さんは震災への怒りを鬼に託し一編の詩を作りました。
震災を伝えていくために自分にできる事は何か。
模索の中で和合さんは東北に伝わる「鬼剣舞」という伝統芸能に出会いました。
度々襲われた災害や飢饉による突然の死。
その怒りや悲しみを先祖は鬼に託したのではないか。
和合さんは専門家を招いて勉強会を開きました。
民俗学者の懸田弘訓さんが語ったのは福島に数多く伝わる「神楽」の存在でした。
人々は神楽の舞で神を招き怒りや悲しみを乗り越える力をもらったといいます。
これ例えいい例えじゃないんですけど…福島の詩人として言葉で神楽をつくる事はできないか。
その神楽で福島の人たちの心を支える事はできないか。
言霊による救い。
福島のための新しい神楽の創作。
100年先に残す言葉神楽を和合さんはつくり始めました。
失われた命家仕事家族のつながり傷ついた田畑山海。
怒りに満ちた鬼たちが物語の主人公です。
鬼が舞う舞台は心に決めていました。
放射能への不安から人が近づく事が少なくなった福島の象徴阿武隈川です。
父ともよくここで魚釣りをしたのでまあずっとそんなふうにこの阿武隈川一帯がですね私のみならず福島で暮らす方々の思い出の場所だと思います。
寂しいですね。
これが現実なんですよ。
ほんとに人が近づかないというのが人が近づいていないというのがはっきりと分かる。
実際震災から現在に至っても放射線量のさまざまな水を川が引き受けてそれで流れているわけですよね。
一つの象徴的な存在だと思うんですね。
山から町から流れてくる水を全部川が引き受けていて…。
執筆は2か月に及びました。
風になびく川岸の笹の音から物語は始まります。
本番まであと1か月の今年7月。
練習が始まりました。
和合さんの詩に合わせて曲を書いたのは福島に暮らす作曲家。
踊りは音をあまりとらないで踊るようにしましたので。
怒りと悲しみを忘れない。
震災を風化させない。
仲間の思いは一つです。
「ハヤブル」。
(及川)「ハヤブル」。
「アブクマ」。
(及川)「アブクマ」。
「ハヤブル」。
(及川)「ハヤブル」。
「笹の神」。
(及川)「笹の神」。
「天地を結び」。
(及川)「天地を結び」。
「ササササ」。
(及川)「ササササ」。
100年先に届ける言葉神楽。
最も大切な事は震災で無念の死を遂げた人たちへの鎮魂。
そしてフクシマ再生への祈り。
1回だけすいません。
じゃあ1回だけ一気にいこう。
踊り手は地元で公募して集めました。
8歳から65歳の男女です。
放射能汚染にもがき苦しみ巨大な龍に姿を変える阿武隈川を表現していきます。
神楽づくりの協力者は県外にも広がりました。
東京で活動する福島出身の人形アニメーション作家。
和合さんの教え子です。
ワタナベサオリさんは震災後福島のためにできる事を探していたといいます。
今回神楽で重要な役割を担う鬼の面のデザインを担当しました。
(ワタナベ)これが最終形のデッサンなんですけど細かく書き入れていったものがこれで。
もともとはこのぐらいいわゆる鬼という顔をしてたんですね。
怒りを前面に出した顔じゃなくてこっちですねぐっと歯を食いしばって目ですね目に力を込めさせたものにしました。
震災後福島にいる家族と連絡が取れず不安な日々を過ごしたワタナベさん。
家族は無事だったものの犠牲者が増える度にまた不安な気持ちに駆られていったといいます。
私もそうなんですけどやっぱり震災で福島の人で生き残ってしまったっていう何でしょうね生き残った事はとても大事じゃないですか。
なんだけども生きれなかった人がいたという…。
…ところで。
やっぱり生きたは生きたで間違いではないから。
神様になってしまった亡くなった人たちのためであり生き残った自分たちのために祀りをしたいのかなって神楽をつくりたいのかなって思いました。
すいません…。
死者の鎮魂と生き残った命の再生。
鬼の目は涙をたたえつつしっかりと前を向いています。
鬼の面はワタナベさんのデザインをもとに郡山市の伝統の技で作られる事になりました。
「デコ屋敷」と呼ばれる張り子人形の里。
ここは江戸時代以来300年の歴史があります。
木型に和紙をはって作る張り子。
飢饉や災害に遭った時村人はこの張り子を作り近くの三春の城下で支援を募ったといいます。
張り子で苦難を乗り越えたと言われる先人たちの歴史。
その不屈の精神と今立ち上がろうとする福島の人たちの思いが鬼の面に重ねられていきます。
悲しみや怒りをたたえながら前を向く鬼の張り子。
伝統の技を受け継ぎ新しいものをつくり出す。
福島の力が結集していきます。
代々神楽をやってきた方々やあるいは能や歌舞伎や古典芸能をやってきた方々がいっぱいいる中で「創作神楽」と銘打ってやるという事。
果たしてよいのだろうかというそういう気持ちもやっぱりあるんですね。
そのためにはまず誠実にクオリティーをとにかくこう追いかけていく。
いろんな事をやっている方々に声をかけてとにかく真剣にやっていくという事をまず第一に誠実にやっていくという事を第一に考えてやっています。
神楽の衣装は踊り手が自分の手で作る事になりました。
真っ白な衣装に描くのは龍のうろこです。
自分が経験した震災の悲しみや苦しみ。
思いを込めて模様を描いていきます。
きれい!きれいだね。
かわいいねえ。
龍は鬼の怒りや悲しみを受け止め天へと昇りやがて美しい阿武隈川となってよみがえります。
龍の姿が浮かび上がりました。
いいですね。
また全部違う柄が出来た。
これですね。
まさしく文字しか見えてこないような。
和合さんの衣装は「鬼」という文字を大胆にプリントしています。
襟を立てて着てもらってもいいしっていう。
言葉神楽にふさわしく和合さんの詩の言葉を分解して配置しました。
本番まで1週間。
和合さんは雨の中山里にやって来ました。
今は使われなくなった幼稚園。
ここは…放射線量が高いため住む事はできません。
よろしくお願いします。
続々と神楽の演奏者が集まりました。
ここならば大きな音を出しても迷惑になる事はありません。
「笹の葉…」。
和合さんがこれまでとは全く違う声を出し始めました。
怒りに満ちた鬼の声を探しています。
(口笛)「どうたどうたどどどうた」。
「どうたどうたどどどうた」。
怒り悲しみ無念。
鬼たちのやり場のない叫びです。
(太鼓)太鼓を担当するのは和合さんの教え子遠藤元気さんです。
遠藤さんの自宅はこの山木屋地区にあります。
今は生まれ育ったふるさとを離れ母親との避難生活を続けています。
もうちょっと下汚いんでそのままで大丈夫です。
自宅は土台が腐ってしまい取り壊す事になりました。
地域伝来の太鼓をもとにしている山木屋太鼓。
遠藤さんは小学生の時に太鼓を始めました。
ふるさとへの思いを伝えていきたいとプロの太鼓奏者として活動しています。
これからの山木屋の風景というのを太鼓の音を通して考えていけるきっかけになればこれからの子供たちにとっても「山木屋」という名前を忘れずにそこがふるさとであるっていう思いを持ってこれからも生活していけるかなというふうに思ってます。
迎えた本番当日。
会場の福島稲荷神社には県内外から500人を超す人たちが集まりました。
福島の人たちがなかなか言葉にする事ができない心の中の怒りや悲しみ。
言葉にならない思いを言葉で表現しようとする「言葉神楽」。
あの日を忘れない。
(祝詞)
(和合)「二時四十六分ハヤブルアブクマ飲み込み苦しむ黒い笹の葉飲み込む苦しむ黒い笹の葉」。
「どうたどうたどどどうたどうたどうたどどどうた」。
「どうたどうたどどどうたどうたどうたどどどうた手をたたけ足踏み鳴らせ腕ぶんぶん振り回せどうたどうたどどどうたどうたどうたどどどうた」。
「どうたどうたどどどうたどうたどうたどどどうた」。
「どうたどうたどどどうた」。
「植えよ植えよ大地に種子を植えよ植えよ地面に影を植えよ植えよ天地に足を植えよ植えよ雲のゆくえよ植えよ植えよ花の名前を」。
「ササササササササササササカワハラに大輪の向日葵なり」。
本日はありがとうございました。
(拍手)
(和合)たくさんの方にお越し頂きましてありがとうございました。
これから未来の祀りをずっと続けていきます。
皆さんに育てていってもらいたいと思います。
これからも未来の祀り福島の祀りになるように一緒に風を吹かせていきましょう。
本日はありがとうございました。
(拍手)震災を風化させない。
そういう思いで福島の人たちが力を合わせて取り組む姿印象的でした。
この新たに生まれた祀りが福島の人たちの心を支えるものになってほしいなというふうに思いました。
さて東日本大震災から4年半が過ぎました。
「明日へー支えあおうー」のホームページにある…被災した地域に暮らすおよそ30人の方々の復興に向けた日常がつづられています。
そのブログを書いている高校生を仙台市出身のAKB48の岩田華怜さんが訪ねました。
岩手県の宮古商業高校写真部。
一歩一歩復興が進む町の様子を写真と共にブログで伝えてくれます。
その部室に向かう華怜さん。
(岩田)こんにちは。
うわ〜ビックリした!3年生たちが高校生活最後のコンクールに向けての準備中です。
コンクールで地元の復興を伝えたいと写真を撮り続けてきた部員がいます。
地元の観光地で撮った写真。
村上さんは1年生の時この写真で県の最優秀賞に輝きました。
がれきで埋め尽くされた海が復活した事を伝えたかったそうです。
自分は…今回出品する写真に協力してくれた人がいます。
(村上)おばあちゃん!祖母の野崎トメさんです。
あの日トメさんは押し寄せる津波を間近に見ながら間一髪で逃れ助かりました。
今でも波にのみ込まれる夢を見るといいます。
それでも海への思いは変わりません。
宮古で海と寄り添っていきたい。
村上さんはコンクールの写真に祖母の前向きな気持ちを入れたかったのです。
タイトルは「希望」と名付けました。
「どんな事があってもめげないで…」。
「現地発明日へブログ」には被災した地域が復興に向かっている生の声がつづられています。
是非ご覧になって下さい。
では被災した地域で暮らす方々の今の思い。
福島県川内村の皆さんです。
川内村でバイク雑誌の編集・出版をやっています。
震災の前から川内の村内でトライアルというオートバイのイベントをやっています。
原発事故後も川内村で楽しんでもらおうと思ってイベントを継続してやってきました。
これからは…川内村上川内に暮らしています。
この村を元気づけたい人が来るような村になってほしいという思いから自宅の周りに野草園をつくっています。
(重行)この花は川内村にほとんどが自生しているものです。
完成はまだ先ですが…川内村でシイタケ栽培をしています。
でも原発事故でちょっと仕事ができなくなりました。
2年間くらいは除染をしたり大変だったけど出荷の方もようやくできるようになり元どおりに近づいてきました。
2015/10/04(日) 10:05〜10:53
NHK総合1・神戸
明日へ−支えあおう−▽ふくしま 鎮魂の祀(まつ)り〜詩人 和合亮一の言葉神楽[字]

この夏、福島に新たな神楽が生まれた。名付けて「言葉神楽」。福島出身の詩人和合亮一さんが書き下ろした。番組では、神楽の創作にかかわった福島の人々の思いを描く。

詳細情報
番組内容
この夏、福島に新たな祭りが生まれた。呼びかけたのは、福島出身の詩人で高校教師の和合亮一さん。地震、津波、そして原発事故。今も4万人以上が県外避難し、苦悩が続く福島で、亡くなった人々の鎮魂とふくしまの再生を祈ろうとしている。新たに創作されたのは“言葉神楽”と呼ばれる新しい神楽。民俗学者の協力を得て、伝統を基に和合さんが言葉にこだわり書き下ろした。番組では、神楽の創作にかかわった福島の人々の思いを描く
出演者
【出演】詩人・高校教師…和合亮一,【語り】山根基世

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
情報/ワイドショー – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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