(陣川美奈子)どう?熱下がった?
(陣川公平)うん…。
(美奈子)うんだいぶ下がったね。
よかった。
すまんな美奈子。
何水くさい事言わないで。
今お粥作るからね。
(においを嗅ぐ音)んん…なんかにおう。
(美奈子)ああっいけない!イタッ!おいおいおいおい…イテッ!何やってんだよ!火事になったらどうするんだ!?アチッ!何よ!大体風邪ぐらいで妹呼びつけないでよね。
彼女でも呼べばいいじゃない。
あれ?いないんだっけ?あのな俺は病人…。
(携帯電話)はい陣川です。
え?本当ですか?わかりました。
すぐに伺います。
何突っ立てんの?寝てないと風邪治らないわよ。
じゃあね〜。
(陣川)お前…。
(ドアの閉まる音)もう…あれでも妹かよ。
(ため息)うう…ああ…。
(アナウンス)「この電話は電波の届かないところにあるか電源が入っていないためかかりません」
(陣川)ったくもう…。
(甲斐享)あっおはようございます。
ああ君か…。
(せき)風邪ですか?いや風邪はもう治った。
あっそれよりちょっと聞いてくれないか?えっ?どうせ暇だろ?あ…はい。
へえ〜陣川さんに妹がいたなんて知らなかったな。
はいどうぞ。
あっありがとう。
(角田六郎)似てるのか?お前に。
いや似てませんね。
顔も性格も全く違うタイプです。
(角田)ああそりゃ何よりだな。
女版陣川なんて周りは暑苦しくてたまらんからね。
どういう意味ですか!?それ。
そういう意味だよ。
(杉下右京)ちなみに妹さんはご職業は何を?企業から依頼されて人材を探す会社でまあいわゆるヘッドハンターを。
ヘッドハンター?すごいじゃないですか。
いや…あいつに務まってるかどうか…。
大体ケンカして飛び出していったと思ったら留守電に変なメッセージ残したっきり携帯の電源切ってるなんていい大人のやる事とは思えない。
電源を切っていた…。
その電話は妹さんが仕事で使っているものですか?ええそのはずですが。
ヘッドハンターの仕事は主に人脈を作る事ですねぇ。
電源を切っていては仕事にならないと思うのですが以前にもこのような事が?いえ。
連絡がとれなくなったのは初めてです。
差し支えなければ妹さんが残したメッセージお聞かせ願えますか?はい。
(アナウンス)「2月25日21時12分のメッセージです」
(美奈子)「もしもし?お兄ちゃん…」これだけです。
なんかちょっと切迫した感じじゃないですか?確かに。
いや…ただのいたずらだよ。
子供の頃からこんないたずらばっかりする…。
もう一度…音を大きくしてもう一度お願い出来ますか?あっはい…。
(美奈子)「もしもし?お兄ちゃん…」
(男性)「早く乗せろ」「早く乗せろ」って言ってましたよね?ええ聞こえました。
聞こえたね。
ちょっとどういう事ですか?これだけではなんとも言えませんが妹さんは事件に巻き込まれた可能性がありますね。
そんな!ちょ…ちょっと杉下さん!うう…うう〜っ!
(美奈子)お兄ちゃん助けて…!助けて!うう…。
昨日の夕刊と今朝の朝刊がそのままになってますね。
昨日も部屋には戻っていないようですねぇ。
お願いします。
はい。
あっ…これが妹です。
なるほど。
鍵がかかっているようですね。
ああ…。
ううっ…!あ…。
イテッ…開きました。
いけませんねぇ兄弟とはいえこんな事しては。
構いませんよ。
見ちゃいましょう。
そうですか?ではお言葉に甘えて…。
企業も職種もバラバラ…。
どうやら妹さんがスカウトした人材のようですねぇ。
杉下さんこのメール…。
差出人は工藤勇一。
ええ。
「例の件手を引いていただけないなら私どもとしてもそれ相応の措置をとらせていただくことになります」米沢さんにこのメール調べてもらいましょう。
お願いします。
わたくし陣川と申しますがゴールド・サーチ社の高柳沙織さんはいらっしゃいますでしょうか?
(女性)少々お待ちください。
(高柳沙織)ええっ!?美奈子さんがいなくなった?まだ決まったわけではありませんが昨日も部屋に帰っていないようですし電話も繋がらないので念のために。
確かに今朝姿が見えなかったのでどうしたのかなとは思っていましたがうちは外回りも多いので…。
一応彼女の部屋にも行ってみたんですがパソコンに工藤勇一という人物から脅迫ともとれるメールが届いていました。
脅迫!?例の件から手を引けというような内容だったんですが心当たりありませんか?いいえ。
あの…彼女からも何も聞いていません。
あっでしたら美奈子の仕事の資料など見せてもらえませんか?すみません。
それは出来ないんです。
えっ…?
(沙織)私たちの扱う情報には企業の機密に関わるものもありますし人材の個人情報も含まれます。
ですから情報管理は徹底しているんです。
ですが…。
致し方ありません。
まだはっきりと事件と決まったわけではありませんからね。
もちろん私も出来る限り心当たりを当たってみます。
お兄さんもご心配ですよね。
あ…ありがとうございます。
沙織さん。
え…?お二人は元々面識が?
(沙織)ええ。
美奈子さんが入社する時にお兄さんがついて来られて。
それ以来何度かごあいさつに来てくださっているんです。
それってちょっと過保護すぎません?いや兄として会社に迷惑をかけていないか確かめに来ているだけだ。
そうしているうちに何度かお食事にも誘って頂いて…。
ああ〜…なるほどそういう事か。
えっ?か…甲斐くん!余計なおしゃべりをするのが君の悪い癖だともう…前から注意してただろう!何度言ってもわからんな…。
じゃあ沙織さん我々は妹を探さなければいけないので。
(沙織)あっはい。
ありがとうございました。
(沙織)失礼致します。
ああ!もう一つだけ。
美奈子さんは昨日一度退社したあとここに戻ってきたりはしていませんか?さあ…。
でも記録を見ればわかると思います。
お願いします。
(沙織)このビルはセキュリティー上身分証を使ってドアキーを開けるシステムなので全ての入退室が記録されるんです。
(沙織)彼女は昨日は4時くらいには会社を出ていますね。
それが最後です。
そうですか。
ありがとうございました。
「Jinkawa」…ここですねぇ。
ええ。
あっ!杉下さん何やってるんですか?なるほど。
やはりセキュリティーはしっかりとなされているようですねぇ。
あ…。
メモはありませんねぇ。
不要になったものは全てシュレッダーにかけているのでしょうねぇ。
美奈子さんが最近どんな仕事をしていたのかそれがわかれば糸口になると思ったのですがね。
僕他の社員たちに聞いてみます。
ほれ君も来たまえ。
いってきます。
すみません。
(牧田冬美)あっはい。
つかぬ事をお尋ねしますがお隣の陣川美奈子さんご存じですか?はい。
まあ毎日ごみ集めていますからね。
その子がどうかしたんですか?例えばごみを集めに来た時に彼女が電話をしていた内容をたまたま耳に挟んでしまったというような事はありませんでしたか?はあ〜…そんな事いちいち聞いちゃいませんよ。
フフフフ…。
ああそうですね。
お忙しいところ失礼。
ええ。
フフフ…。
あ…。
はい?2週間ぐらい前だったかしらね。
絶対に許さない!
(冬美の声)あれは絶対何かあったわね。
そのようですねぇ。
(谷口雅治)陣川さんがいなくなった?でもどうして僕に?
(陣川)とぼけないでもらいたいな。
「絶対に許さない」君は妹にそう言われてたそうじゃないか。
一体妹と何があったんだ?何って…別に何も。
そんなはずはないだろう!ええっ!?ああ…陣川さん。
たまたま帰りが一緒になったので2度ぐらい食事に行っただけです。
そうしたら…。
私お付き合いしてもいいと思ってるの。
(谷口)え?私の運命の人…そう思ったから。
谷口くんも同じでしょ?わかるんだ私そういうの。
だから…。
ごめん。
言ってなかったっけ?え?
(谷口)僕来月結婚するんだ。
え…?そんな…。
絶対に許さない!だけど1度か2度食事したぐらいでそんなふうになりますかね?
(谷口)いやそう言われても…。
いや…美奈子ならあり得る。
え?申し訳ありません。
あいつは小さい頃からやけに思い込みが激しくておまけにあきれるほど惚れっぽいんです。
それで何度も失恋を繰り返している。
(陣川のため息)一体誰に似たのか…。
誰って陣川さんそのものじゃないですか。
君の言ってる事はよくわからんな!黙っててくれないか?すみません…。
あの…彼女がいなくなったのって僕のせいなんでしょうか?それはわかりませんが一つ伺ってもよろしいでしょうか?美奈子さんが最近どのような仕事をしていたのかご存じですか?いえあくまで彼女の行方を探すためです。
他には決して漏らしません。
ええ。
確か食事に行った時に…。
今?外資系の電機メーカーの依頼でね技術者と交渉中。
うまくいきそう?うーん…いいところまではきてるんだけどまだ本人が踏ん切りがつかなくて…。
(谷口の声)そんな事を言ってました。
そうですか。
お忙しいところありがとうございました。
電機メーカーですか…。
一歩近づきました。
(2人)えっ?
(竹田)人事部長の竹田です。
警視庁の杉下です。
同じく甲斐です。
陣川です。
(竹田)どうぞお掛けください。
我々は山本さんにお会いしたいと申し上げたのですが…。
(竹田)わかっています。
その前に警察が山本にどのようなご用件かお伺いしたいと思いまして。
山本に関しては今うちとしてもデリケートな時期ですので。
という事はご存じなんですね?引き抜きの事をおっしゃっているなら知っています。
実は山本さんと接触していたヘッドハンターの陣川美奈子さんの行方を探しています。
山本さんならご存じかもしれないと思いまして。
(陣川)それだけじゃありません。
工藤勇一という男から脅迫のようなメールが届いていたんです。
わたくしどもが交渉を依頼した調査会社の人間です。
調査会社?
(竹田)山本は我が社の重要なプロジェクトに関わっている人間です。
その山本に外資系企業が触手を伸ばしている事がわかった。
明らかに技術を盗む事が目的です。
(竹田)そこで山本に接触しているヘッドハンターを特定し法的措置をも辞さないという我々の主張を伝えるように依頼した…というわけです。
じゃあその工藤という人間が美奈子を連れ去ったかもしれないじゃないですか!
(竹田)まさか!そんな事まではしませんよ。
あくまで交渉を依頼しただけですから。
いやしかし…。
陣川くん。
彼女は昨日誰かに電話で呼び出されています。
それが山本さんであった可能性もあります。
山本さんにお話を伺ってもよろしいですね?
(携帯電話の振動音)僕です。
米沢さんです。
杉下です。
(米沢守)ご依頼の件ですがアドレスから工藤勇一なる人物の身元がわかりました。
アール総合調査事務所という調査会社の調査員のようです。
あの…また何か事件をお調べなのでしょうか?事件かどうかまだ調べている段階です。
米沢さんどうもありがとう。
米沢守都合のいい男…。
いやいや気にしないようにしよう。
僕はその会社に行って工藤勇一という男に当たってみます。
あんなメールを送ってきたんです。
何をするかわかったもんじゃない。
では。
大丈夫かな?二手に分かれたほうが効率的です。
我々は受付で山本さんを呼び出してもらいましょう。
そうっすね。
(山本繁)大体の話は上司から聞きました。
陣川さんがいなくなったそうですね。
昨夜彼女は電話で誰かに呼び出され出かけていきました。
その相手はあなたではありませんか?
(山本)ええ会いました。
どんなご用件だったのでしょう?転職の話を受けたい…そう話したんです。
それで昨日…。
(美奈子)転職前向きに考えたいって本当ですか?
(山本)はいよろしくお願いします。
しかしどうして急に?転職の話が来ている事が会社にバレていたようなんです。
(山本)このままだと見せしめとしてろくな仕事が与えられず飼い殺しになるのが落ちです。
ですからその前に…。
山本さん。
大変申し訳ないんですがこの話しばらくお待ち頂けますか?
(山本)えっ?信じられませんでしたよ。
このまま転職出来なくなってしまったら僕は終わりです!ここまできたらなんとしても転職するしかないんです!そのあとですが彼女は?
(山本)さあわかりません。
彼女がいなくなった事と私は関係ありませんよ。
(山本)被害者はこっちです!まったく冗談じゃない!工藤勇一だな?あんたの会社に問い合わせたらここを教えてくれた。
(工藤勇一)ちょっとなんだよ?あんた。
(せき払い)こういうもんだ。
えっ!陣川美奈子の件で話がある。
ちょっとあとにしてくれませんか?今仕事中なんですよ。
はあ?おい!お前ら何やってんだそこで!
(工藤)とりあえず逃げましょう。
コラッ!おい!
(工藤)イタタタタ…。
(工藤)イタタタ…。
お前…なんじゃお前…コラ!
(陣川)これが目に入らないか?警察官だぞ俺は!
(陣川)大変な事…!
(工藤)イタタタ…。
それでこれですか。
(陣川)名誉の負傷さ。
ヘイ!もっと丁寧にやってくれたまえ。
で陣川くん。
はい。
結局工藤勇一という男は?アリバイがありました。
昨夜から今日にかけてずっとその浮気妻の尾行と張り込みをしていたようです。
証拠に写真を何枚も見せられたので間違いないかと。
そうですか。
そもそも工藤勇一はどうやって美奈子さんの事を突き止めたのでしょうねぇ?山本さんを監視していてわかったそうです。
美奈子は山本さんの家まで訪ねていたそうで…。
家にまでですか…。
そっちは何かわかったかい?ああ…山本さんは昨夜美奈子さんに会った事は認めたんですがそのあとの事は何も知らないそうです。
そうか。
美奈子の奴一体どこに…。
本当あいつには子供の頃から心配ばかりかけられてきたんです。
女の子のくせにやんちゃですぐにどこかにいなくなる。
心配して探すうちにこっちが山の中で迷子になって警察に一斉捜索されて保護された事もありました。
あいつの高校受験の時もそうだ。
雪の中合格祈願のお参りに付き合ってやってそれがもとで僕は肺炎になって死にかけた事もあるんです。
それって…迷惑かけてるのって陣川さんのほうじゃないっすか?僕もう一度心当たり探してみます。
その前に…。
美奈子さんは陣川くんの部屋でお粥を焦がしたと言ってましたね?ええ。
それがどうかしました?
(陣川)これがお粥を作った鍋です。
かなり焦がしてますねぇ。
なぜこんなになるまで気がつかなかったのでしょう?なぜって…そういう奴なんですあいつは。
しかし陣川さんちすごいっすね。
陣川くん。
はい。
あれはなんでしょう?ああ…。
僕が作った事件ファイルです。
警視庁管内で起こった凶悪事件は全てまとめてあります。
これ拝見してもよろしいですか?ああどうぞ。
あ…。
ひょっとしたら美奈子さんはこのファイルを見ていて鍋を焦がしたんじゃないですか?え?カイトくん。
はい。
この5日前の強盗傷害事件の被害者…。
被害者がどうかしたんですか?美奈子さんの名刺にあった人物です。
え?
(うめき声)
(伊丹憲一)その事件が何か?一課が捜査中だそうですねぇ。
詳細をと思いまして。
どうして特命係がその事件の詳細を知りたがるんでしょうか?そんな事どうだっていいじゃないですか。
妹の命が懸かってるんです。
お願いします!出た陣川警部補。
あ?妹さんがどうしましたって?今は一刻を争います。
お願いします。
おい。
(芹沢慶二)俺が?もう…。
(芹沢)え〜っと被害者の香坂達郎さんですがその日たまたま体調を崩して会社を早退して家に帰ったら…。
(香坂達郎)はっ!
(殴る音)
(芹沢)幸い香坂さんは命に別状はありませんが1000万円相当の絵画を盗まれいまだ犯人特定には至っていないと。
他のものには目もくれず絵だけを盗んでいった。
まプロの仕事でしょうね。
(解錠音)
(施錠音)
(香坂)盗まれたのは祖父が残してくれたオーバンギャレルの絵です。
1000万ぐらいの価値があると聞いています。
高価な絵が自宅にある事を誰かに知られてましたか?いや特に人に言いふらしたりもしていませんが…。
陣川美奈子さんはどうでしょう?え?あなたは最近ヘッドハンターの陣川さんの仲介で転職されていますねぇ。
彼女はスカウトした人材の自宅を訪問する事もあったようですがお宅には?ええ来ました。
その時に絵のお話をなさったのでは?あ…。
そうですか。
今回のお話に奥様も賛成されているようで安心しました。
ご本人はその気でもご家族が反対しているというケースがよくあるんです。
ですから私は必ずこうしてお宅に伺うようにしています。
(香坂の妻)熱心なんですのね陣川さんは。
いえ。
ところでこの絵画素敵ですね。
おいくらぐらいするものなんですか?え?ぶしつけな事を聞いてすみません。
ただ転職には必ずリスクが伴います。
場合によっては無給の時期が生じる事もありますからどの程度の資産をお持ちかも思い切った転職が出来るかどうかの判断基準になるんです。
(香坂)なるほど。
もちろんお聞きした内容は決して他には漏らしません。
その辺はご安心を。
そう言われたので話しました。
まさか彼女この事件に何か関係しているんですか?いえそういうわけではありませんが。
大変なところどうもありがとうございました。
行きましょう。
どうも。
ここ最近に起きた窃盗事件のリストを借りてきました。
どうもありがとう。
ありました。
え?被害者の名前と美奈子さんが持っていた名刺の名前が一致します。
美術品が盗まれていますねぇ。
ありました。
こちらは宝飾品が盗まれています。
ここまでくるとただの偶然とは思えませんね。
美奈子さんは人材の資産状況まで詳しく調べていました。
その情報を使えば効率のいい窃盗が出来ますよね。
美奈子の奴…。
ちょっと見ないでよ。
これは極秘なんだから。
すごいなあ。
一人一人についてそんなに調べてるのか。
転職はその人の人生を左右する一大事。
企業にとっても業績を左右する事になる重要事項。
だから絶対にいい加減な仕事は出来ないの。
そんな事言ってたのに実際は人様のものを…。
金に困ってるならなんでひと言言ってくれなかったんだよ。
いえ美奈子さんは窃盗に関わってなどいないと思いますよ。
はい?美奈子さんは山本さんと会い転職の話が会社に漏れている事を聞いてその話にストップをかけています。
もし美奈子さんが窃盗犯ならば説明のつかない行動ですよ。
じゃあ…。
恐らく美奈子さんは陣川くんの事件ファイルを見て自分の情報が漏れている事に気づいたのでしょう。
自分の情報が犯罪に使われているとわかった時点で進めている仕事をストップせざるを得なかったって事か。
そうだったのか…。
まあそんな事だとは思ったけど。
完全に疑ってたじゃないですか。
いやいやそんな事はないさ。
だとするならば一昨日の夜美奈子さんは山本さんと別れたあと自分の情報を悪用している人物を突き止めようとしたはずですねぇ。
という事はその人物が美奈子を?誰なんだ?一体。
でも美奈子さんの会社は内部情報は完全にプロテクトされてますよね?ええ。
アクセス出来る人物は限られています。
美奈子さんはその人物に会いに行ったのでしょう。
という事は…。
情報にアクセス出来る人…。
え?まさか…。
ええ。
そのまさかかもしれません。
(沙織)あっ美奈子さん見つかったんですか?いえまだ。
(沙織)そうですか…。
私も心当たりを探してみてはいるんですが…。
でも重要な事がわかったんです。
彼女の情報が漏洩してどうやら犯罪に使われていたようなんです。
え?美奈子さんは一昨日の夜アコウ電器の山本さんに会い彼の秘密もバレている事に気づき転職話にストップをかけています。
つまり彼女はこの情報漏洩に気づいていた可能性が高いんです。
となるとあの夜彼女はここに来たんじゃないかと思うんですが。
社長のあなたは彼女の情報を自由に見る事が出来ますよね?彼女が私を疑ってここに来たというんですか?それでなくても山本さんと会って情報漏洩を確信した彼女は何をおいてもここに来たはずです。
このような重要な事を社長であるあなたに報告しないはずがありませんからね。
しかしあなたは来ていないと言いました。
待ってください!私たちがスカウトする人材は高収入の方がほとんどです。
その方々の家が窃盗犯に狙われてもおかしくないし山本さんがヘッドハントされている事も彼が口を滑らせたのかもしれない。
彼女の情報が漏れたとは限らないんじゃないでしょうか?そうだと思いたいんですが…。
それに以前もお話ししたとおりうちは情報管理は徹底しています。
パソコンのデータは完全にプロテクトしていますし紙資料も全てシュレッダーにかけています。
漏れるはずがありません。
でも実際に美奈子さんがいなくなっているんです。
沙織さん僕はあなたを信じています。
ですからそれを証明するためにも美奈子がいなくなった夜のあいつの入退室記録を見せて頂けませんか?お願いします。
どうぞ。
やはり美奈子さんはあの夜9時過ぎにここに戻ってきていますね。
ええ。
あの夜確かに彼女はここに来ました。
ではなぜ来てないと嘘を言ったんですか?沙織さん。
情報漏洩について調べられたくなかったんです。
(美奈子)社長申し訳ありません。
私の情報が漏れて犯罪に使われてるみたいなんです。
え?
(美奈子)この事を警察に話す前に社長に報告しなければならないと思って…。
今の段階で警察に話すのは駄目。
そんな事したらうちのダメージが大きすぎる。
でもこのままにしておくわけには…。
とにかく時間をちょうだい。
対策は考えるから。
わかりました。
ヘッドハンティング会社は情報が命です。
それが漏洩し犯罪に使われていたなどとなったらこの会社は終わりですから。
でも最後に美奈子さんに会ったのはあなたですよね?しかもあなたには彼女を口止めしなければならないという動機もある。
待ちたまえ。
沙織さんが美奈子に何したっていうんだ?沙織さんはそんな人ではない。
そのとおりです。
美奈子さんを連れ去ったのは沙織さんではありません。
え?じゃあ一体…。
(扉が開く音)
(扉が開く音)山本の家には俺たちで行く。
ここは引き払う。
あの女はどうする?顔は見られてない。
お前が捨てとけ。
わかった。
立て。
(山本の妻)遅れるわよ。
待ってよ。
うっ!
(殴る音)うわっ!
(ガラスが割れる音)キャッ!
(男)この女一体どうやって?
(女)とにかく早く終わらせるよ。
(男)ああ。
(ドアの開く音)
(伊丹)警察だ!陣川くん美奈子さんを。
はい。
美奈子!おい!サングラスとマスクを取って頂けますか?やはりあなたでしたか。
美奈子さんの情報を盗み出していたのは。
お前に目星つけて携帯の電波追跡してたんだよ。
目星?一体どうやって?あなた方が犯罪に利用した情報は外部に漏れるはずのないものでした。
しかしそこには1つ抜け穴がありました。
これです。
美奈子さんはこの用紙に重要事項をメモしていました。
そして破棄する際には…。
シュレッダーにかけ処理していた。
それが抜け穴です。
2011年アメリカ国防総省は1万ピースにシュレッダーされた資料を復元し解読出来るかというコンテストを行いました。
参加したのは9000チーム。
優勝したチームは人力とコンピューターソフトを駆使し見事復元に成功しました。
そのソフトはチップ一つ一つをスキャナーで読み取り紙質やフォントの違いなどから一枚一枚を選別し元の資料に復元するというものです。
その類いのソフトを使えばこの犯行は可能だと思いました。
だとすれば犯人はシュレッダーされたごみを疑われずに持ち去る事の出来る人物。
そう思い美奈子さんがいなくなった夜のゴールド・サーチ社の入退室記録を確認したところ美奈子さんが会社に戻った午後9時前後に牧田冬美さんあなたが出入りしていた事がわかりました。
あなたはあの夜美奈子さんと会ったのですね?ああ…はあ…。
そうだよ。
(呼び出し音)もしもし?お兄ちゃん…。
(殴る音)早く乗せろ。
そろそろ潮時なのはわかってた。
だから最後の仕事をしておさらばするつもりだったんだけどね。
それにしてもヘッドハンターの情報を盗むなどどのようにして思いついたのでしょう?最初はあのビルに入っているクレジットカード会社の情報を盗むつもりだった。
金持ちどもの個人情報をね。
だけど思いがけないところでもっと使える情報があったってわけさ。
ご苦労さまです。
これもシュレッダーしちゃいますね。
そこまでやってたのはあの子だけだった。
せいぜい利用させてもらったよ。
でもまさかバレちまうとはね。
あなたは最初から僕が警察の人間だと知って様子を探りに来たんですよね?ごみを集めるふりをして。
え?あの時美奈子さんの部屋も隣の部屋もごみ箱は空だったんですよ。
悪い事は出来ませんねぇ。
つい気になって様子を見に行っちまったんだ。
あ−!まったく余計な事やっちまったもんだよ!やめとけよ!やめとけ!おい芹沢連れてけほら!連れてけ!まったくお前って奴は…。
なんで助かった時にすぐにお兄ちゃんに連絡しなかったんだ?携帯取り上げられてたし…。
それにこれは私のまいた種だから自分でなんとかしようと思ったの。
バカ野郎!バカ野郎め!ありがとう。
お兄ちゃんが来てくれなかったら私殺されてたかも。
お兄ちゃんやっぱり警視庁一の刑事だね。
今頃わかったか。
(美奈子)杉下さんと甲斐さんですか?兄から聞いてます。
いつも兄のお手伝いをしてくださってるんですよね?陣川くんにはいつもよくして頂いています。
いやいやいやいや…。
今回もこの2人は本当によくやってくれたよ。
本当ありがとうございました。
(伊丹)お話し中失礼。
陣川美奈子さん体が大丈夫なら少し話を聞かせて頂きたいんですが。
はい大丈夫です。
じゃあ車のほうで。
どうも。
どうも。
申し訳ございません。
なぜか妹は僕が警視庁一の敏腕刑事だと思い込んでるみたいでその夢を壊したくなかったんです。
なんでそんなふうに思い込んでるんですか?何はともあれ今回は妹を助けてくださって本当にありがとうございました。
ごめんください。
いいんですか?言わせておいて。
まあ今回は陣川くんの思いが事件を解決したという事で。
まあそれもそうですね。
それはともかくカイトくん。
はい。
もう一つ疑問が残っています。
はい。
(ピアノ)失礼します。
どうぞ。
あっお兄さん。
妹がいろいろ心配おかけしたんでそのごあいさつにと。
ああそれはわざわざ。
大変だったわね。
体のほうは大丈夫?はい。
もうすっかり。
そう。
どうぞ。
こいつは昔から丈夫なだけが取りえなんで。
それで今夜なんですがお礼とおわびをかねてぜひお食事でもいかがかと。
(美奈子)1つわからない事があるんです。
え?山本さんの転職がなぜ会社にバレたのか。
今回の窃盗グループの仕業とは思えないし山本さんも誰にも話していないと言っています。
それに山本さんだけじゃありません。
香坂さんも派閥に二股かけていた件が漏れて会社にいられなくなり転職を決意しています。
そう考えたら他にも思い当たる事がいくつもあるんです。
ちょっと待って。
何が言いたいの?誰かがスカウトした人材を転職させるためにわざと情報を流した。
そう思えてきたんです。
え…。
(陣川)美奈子何言い出すんだよ。
そんな事が出来るのって社長であるあなただけですよね?
(陣川)杉下さん。
失礼。
やはり美奈子さんも我々と同じ事を疑問に思っていたようですね。
なんなんです?昨日僕は山本さんの秘密が会社に漏れていたとだけ話しました。
でもあなたはこう言った。
山本さんがヘッドハントされている事も彼が口を滑らせたのかもしれない。
なぜあなたは山本さんの秘密が転職話だとわかったんですか?美奈子さんの情報にアクセスし故意に情報を流したのがあなただった。
そう考えれば全ての辻褄が合うのですがねぇ。
社長。
ちょっと待ってくださいよ。
みんなしてなんなんですか?沙織さんがそんな事するはず…。
ええそうです。
私がやりました。
でもそれは悪い事でしょうか?私はむしろいい事をしているつもりです。
美奈子さんあなただって身に染みてるでしょ?日本のビジネスマンが転職についていかに保守的か。
転職すればもっと自分の価値を認めてもらえて収入も増えるというのに自分の価値に無関心あるいは勇気がなくてその一歩が踏み出せないでいる。
そんな人たちの背中を押してあげるのはヘッドハンターとしては当然の事じゃないかしら。
ええ。
建前としては素晴らしいお考えですねぇ。
しかし本当のところはどうでしょう?ヘッドハンター会社の収入は転職を成功させる事によって生じる。
つまり成功報酬。
結局のところあなたは会社を維持するために情報を流したにすぎないのではありませんか?そしてそのためにあなたはヘッドハンターとして最も守らなければならない秘密保持の原則を破った。
明らかに顧客に対する裏切りです。
沙織さんあなたを見損ないました。
人の秘密を勝手に流すなんて人として間違ってる。
僕はあなたを見損ないました。
ふ〜ん。
結局会社辞めたんだ。
はい。
ですから今は失業中です。
ああそっか…。
(月本幸子)それは大変ですね。
どっかあてでもあるんですか?別のヘッドハンティング会社を当たっているところです。
出来ればそこで今回迷惑かけてしまった山本さんの転職先探したいと思ってます。
それはいいですねぇ。
それはそうと杉下さん甲斐さん。
この間は失礼しました。
お二人の事兄のお手伝いだなんて。
ん?ああ…もしかして…。
兄は私が兄の事警視庁一の刑事だと信じてるって思い込んでるんです。
だからその夢を壊したくなくて。
でもこの事兄には…。
わかりました。
そういう事にしておきましょう。
陣川くんは優しい妹さんをお持ちですねぇ。
いえ。
それほどでも。
という事は立ち直っていないのはこの方だけのようですね。
沙織さん…。
運命の人やと思ったんや〜。
なんでや〜。
沙織さ〜ん!2015/10/04(日) 13:55〜14:55
ABCテレビ1
相棒season13[再][字]
第17話「妹よ」
元特命係・陣川(原田龍二)の妹、美奈子が謎の失踪をした…。転職をめぐる情報社会の闇とは…!?
“第三の男”陣川が、妹のために命懸けの捜査に挑む!
詳細情報
◇番組内容
捜査一課で経理係をしている陣川の妹・美奈子(水崎綾女)が失踪した。美奈子からの留守電の中に「早く乗せろ」という不穏な男の声が入っていたことから、陣川と旧知の仲である右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は捜査に乗り出す。企業から依頼を受けて人材を探すヘッドハンターをしているという美奈子。手掛かりを求めて部屋を調べると、謎の男から「例の件から手を引け」という脅迫めいたメールが届いていて…!?
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇
【ゲスト】原田龍二、水崎綾女
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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