情熱大陸【丸山宗利/タイ奥地の危険な森で新種続出!今最も注目の昆虫学者!】 2015.10.04


(丸山宗利)ホント!?
研究するならかっこいいテーマを選びたい
昆虫学者・丸山宗利は学生時代にそう考えた
虫たちの驚きに満ちた習性や暮らしぶりを書いた新書があっという間に13万部
丸山が綴る昆虫社会の多様性には目を見張るばかりだ
地球はまさしく虫の惑星といっていい
音聞こえます?これオオキノコシロアリってやつが怒ってるんですよ
(カリカリカリカリという音)
外敵を威嚇して葉っぱを叩く…
何とも奇妙な形の虫もいればどこか優美な姿の虫もいる
目を凝らせば足元に底知れない未知の世界が広がっていた
丸山の言い方を借りるなら「昆虫はすごい」
あっホントだこれはゴキブリに麻酔してゴキブリをゾンビのようにしてそこに卵を産み付ける寄生性のハチです
エメラルドセナガアナバチはゴキブリに毒を注入し前脚を麻痺させたうえで反射神経をブロック
自分より大きいゴキブリを操ってその体に産卵するらしい
あらゆる昆虫に好奇心を抱く丸山が最もかっこいいと考えた相手は主にアリの巣の中にいる
いた!かっこいいハネカクシいたこれですこの…かっこいいですね何か頭とか胸に独特の凹凸があるんですよ
アリと不思議な共生関係を結ぶハネカクシ
その謎にほとんど取りつかれていた
人って何事も単純化しようとするじゃないですか簡単に見たほうが真理を突いてるように思っちゃう人がいるわけですよ僕は全然思わないですけどね世の中っていうのは本当はもっと複雑で単純に言い切るほど危ないことはないと思うんですね
分からないことをひとまず受け入れるには勇気が必要だ
けれどヒトよりもずっと長く地球上に生きてきた虫たちと向き合えばその勇気は謙虚さと等しい
丸山は今九州大学総合研究博物館で助教の職にある
教壇に立つことは少なく専ら研究に没頭する毎日だ
なぜか土足厳禁の研究室で今日はハネカクシの解剖に取り組むという
これなんですけど…これです
(スタッフ)ん?これですここに12匹並んでますね
(スタッフ)糸で縫ってるのかと…
大分で採集したハネカクシの一種は体長2mmほど
ハネカクシは世界中に生息しているが未発見の種は数知れない
見た目は似ていても体の構造が微妙に違うことがある
頭の部分はわずか0.3mm
特殊な液体の中で顎や触角など各パーツをバラバラにして細部を見極めていった
解剖の腕にはかなりの自信があるようだ
もっとちっちゃいのもありますからね
触角のつくりからこのハネカクシも新種だという
これが今まで北海道から知られてたやつなんですよこれが今回の新種で…例えば分かりやすいのはこの辺が…こっちは丸っこいですよね
専門は分類学
パーツのかすかな差異を見つけ出し数えきれない発見をものにしてきた
これの面白いところは全く役に立たないところですねこんな一生懸命こうやってもこんな違うんだというところって科学への貢献っていうと本当に大したことないだろうなっていう気がするんですよね僕は面白くてやってるんですけどね
8月
丸山は調査のためにタイへ向かった
アジアに分布するグンタイアリの一種ヒメサスライアリは特定の巣を持たず引っ越しを繰り返しながら狩りを続ける
調査の目的は彼らと共に暮らすハネカクシの新種を探すことだった
ヒメサスライアリは空になった動物の巣穴などを転々とする
その巣穴で彼らのおこぼれにあずかっているのがハネカクシ
外に姿を見せるのはアリの引っ越しについていく時だけだ
カオヤイ国立公園はゾウやトラも息を潜める野生動物の楽園
それだけに森に踏み込めば命の危険が付きまとう
今年は観光客がゾウに襲われる事件も頻発しているため公園のスタッフが調査に同行した
大きな石を見るとひっくり返さずにはいられない
相棒の小松貴さんもアリと共生する虫の研究者
あっサソリん?
(小松さん)青いあっホントだ
(スタッフ)これ何ですか?サソリです
(スタッフ)青いですねええ
(小松さん)あ〜っ!えっ!?
(小松さん)あぁ〜
いきなり小松さんが何かを見つけた
これこれこれ…あ〜っ!これの巣にいたんだおお!これがダエンゴミムシといってアジアにいることは分かってたけども長らくどのアリの巣にいるかが分かんなかったんですず〜っと我々はこれがアリの巣にいるのを見つけたかったんですようん
フィールドでは思いがけない発見も珍しくなかった
(小松さん)基本的にアリは好意的に思ってない思ってないね
秘密兵器の吸虫管は丸山の自作
虫を吸い取ってそのまま捕獲できる
う〜んかわいいのがいっぱい
肝心のハネカクシを捕らえるためにはヒメサスライアリに出会わなければならない
首の手拭いはヘビ対策
脚は長靴で守っていた
ヒメサスライアリは凶暴だ
うかつに肌を露出していると毒針に刺されショック状態に陥ることもあるという
これまでの経験からたやすくは出くわせない相手だと分かっていた
地面を凝視してひたすら歩く
それにしてもなぜアリと共生する虫に引かれるのだろう
地球人と宇宙人が…知らぬ間に地球人の中に宇宙人が紛れ込んでいて…うん…普通に生活しているような感じですよね他の生き物の関係がなかなか見られないですよね他の生き物は大体直接食べる…食うか食われるかとかあっホントだそうかもね!ほら木の幹に…
オオズアリの群れ
あっちっちゃいやつだホント?
(小松さん)これですこれです
案の定ヒメサスライアリが攻撃を仕掛けていた
(小松さん)ちっちゃいやつ
(スタッフ)巣はどこですか?
(小松さん)巣はここにあるんです今もう大焦りでわ〜っと出てきます
(小松さん)こうやって自分よりも何倍も大きいアリを捕まえてるこのアリたちは知ってるんですよヒメサスライアリがどんなに恐ろしいやつかってだから戦わずしてわ〜っとみんな今自分たちの幼虫とかさなぎを運んで逃げてるんですよね
(小松さん)もうパニックになってますねどっち行ったらいいか分かんなくなってる
行列をたどれば拠点が分かるはずだ
そこにはハネカクシがいるに違いない
けれど積み重なる枯れ葉に阻まれてしまった
ここから…それでも手も足も出ないっていうのがこの調査の難しさであり面白さであるのかもしれないです
小松さんはかつての教え子の一人
丸山の勧めもあって10年余り共に各地を巡ってきた
黙々とランチタイム
どうやら2人には言葉などいらないらしい
目的の虫が見つからない時にイライラしたりとかですねハハハ…それはお互いさまでしょ根本っていうか根底にあるもの目指してるものっていうのが多分同じだからなんじゃないですかね
(スタッフ)どっちがジャイアンで…フフフ…今鼻水出ちゃった
1974年静岡に生まれ東京で育った
3歳の時初めてカマキリを見てその不思議さに恍惚とした
大きくなったら虫になりたい
その夢は研究の虫としてかなっている
運動とか全くできなかったので勉強もできなかったんですよ小学校の時その時「ドラえもん」をやってたんですよのび太が自分に見えてきて「ドラえもん」見てるとすごい悲しくなってたんですよねちょうど「キャプテン翼」とかやっててみんなサッカーやってたんですよ休み時間に僕全然サッカーできなかったんでず〜っと校庭のみかんの木にいるアゲハチョウの幼虫を観察してました
北大の大学院を出て海外の博物館でも研究員のキャリアを積んだ
41歳バツイチで目下独身
好きこそものの上手なれというけれど虫を探し種類を特定するプロセスにはとてつもない手間暇がかかる
(スタッフ)これ何のためにやってるんですか?
(スタッフ)仕事でいっぱい見てるからいいやってなりません?
タイの森でハネカクシを探し求める旅は続く
世の中から顧みられることもない小さな虫
だが存在には必ず意味があり役割がある
さまざまに想像を巡らせること自体が喜びだ
そしてその喜びが丸山を駆り立てている
あっ!
木の根元にヒメサスライアリの行列
これは狩りだよね
(小松さん)ええ
せっせと獲物を運んでいる
これがヒメサスライアリです一番今回の目的だったやつですこのアリを運んでます
行列を追ってついに彼らの拠点を突き止めることができた
あぁホントだ
(スタッフ)どれですか?これですこれがビバークっていって一時的な巣穴なんですよね基本的に毎日こういう巣穴から別の巣穴へって移動していくんですよただ女王がおなかが大きい時期っていうのがあってその時は何日間も引っ越さないんですよその時は諦めるしかないんですけどねでねこの感じだといかにも一時的って感じがするので今晩引っ越すんじゃないかなと思うんですよね
地表に群がっているのは引っ越しが近い証拠
もし引っ越しとなればハネカクシもきっと姿を現すだろう
あっそこで引っ越しそうなんですよそこ通って…ちょっと…
ここからは持久戦だった
だが公園の規則で夜9時以降の立ち入りは禁じられている
うん…イエスイエスこれは千載一遇の機会ですからねこれを逃さないように絶対
(スタッフ)めったにないですか?これだけ雨も降ってないしもうすぐ引っ越しそうだし…
動きがあったのは翌日の夜
ちょっとこの辺踏まないように気を付けてください
その瞬間からのどかだった丸山がただならぬ気配を放ち始めた
なぜ引っ越しと分かったのか
答えはアリたちが運んでいるものにあった
腹の下に抱える米粒のような幼虫
生き物の最大の使命は子孫を絶やすまいとすることだ
身動き一つせずハネカクシの出現を待つ
あっいたいた…ここだこれですこれいたいた
わさわさとうごめく中に…
これです…これこれこれこれ!
いた!
丸山にとって最もかっこいい虫
これ…これこれ
出てきたのは1種類だけではなかった
移動する群れから素早く虫を見分け吸い取る集中力は尋常ではない
うん捕れた
だが…
はい
(通訳)ちょっとごめんなさいはい
(通訳)すみませんう〜ん…これで戻るって…残酷ですね
(通訳)先生は〜い
一瞬泣きそうな表情をのぞかせた
まだまだ新種が出てくるかもしれないのに
残念です
(通訳のタイ語)この時間をこの瞬間を3年以上待ってたんですよ
(通訳と公園スタッフのタイ語)まぁしょうがないっすかねごめんね…今はもう時間も遅いし危ないからはいごめんなさい残念残念
しょんぼりと肩を落とす様子がまるで少年のようだった
心残りはあったが収穫はまずまずだった
地球上には知られていない虫のほうが多い
だから丸山の旅も果てしなく続く
かわいいなぁ終わりが見えないですからね何かを成し遂げるってことはないですよねきっとねうん本当の意味でだからやれるだけのことはやるしかないって感じですかねいくらやってもまだ発見の余地が残ってるっていうのはすごい面白いことじゃないですか
崖から転落し木の枝に引っ掛かって命拾いしたことがあった
マムシにかまれたこともあった
でもやめられない
丸山にとってこれは人生を懸けるに足る仕事なのだ
書くために飲む
…っていうのがすごく面白くなるの2015/10/04(日) 23:00〜23:30
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【丸山宗利/タイ奥地の危険な森で新種続出!今最も注目の昆虫学者!】

昆虫学者/丸山宗利▽虫のユニークな生態行動を狩猟採集・農業・牧畜・建築・恋のかけひき・戦争・奴隷制など独自の視点で描くベストセラー本「昆虫はすごい」の著者に密着

詳細情報
番組内容
丸山の専門はアリと共生する昆虫の解明をすること。アリの巣に同居するアリ以外の昆虫たちは、誰も見向きもしないごく小さな生物だが、実はあなどれない。アリと一緒に生きるための生存戦略をもった賢い虫たちなのだ。精力的に世界各地でこの昆虫を調査してきた丸山は、アジアでの第一人者だ。一筋縄ではいかない、複雑で小さな昆虫たちの広く大きな世界の魅力にとりつかれた気鋭の研究者・丸山の果てしない探求への一歩を追った。
プロフィール
丸山宗利
昆虫学者。1974年生まれ。
大学院卒業後、博物館研究員を経て、2008年九州大学総合研究博物館助教に。日本ではあまり知られていない「アリの巣に共生する昆虫」の研究者。アジア・アフリカ・南米などで調査を行い、数々の新種を発見している。著書に「ツノゼミ ありえない虫」「森と水辺の甲虫誌」「アリの巣をめぐる冒険」「アリの巣の生きもの図鑑」「アリのくらしに大接近」「アリの巣のお客さん」など。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】ドキュメンタリージャパン
関連公式URL
【ツイッター】@jounetsu
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おことわり
番組の内容と放送時間は、変更になる場合があります。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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