タクシードライバーの推理日誌スペシャル 2015.10.05


(無線)「新宿周辺トランクが空いている空車願います」
(夜明日出夫)1646可能です。
「それでは1646お願いします」1646了解!よし!トランクが空いてるかって訊いてくるって事はお客様の荷物が多いって事。
多いって事は行き先は成田。
ロングで決まり!朝からついてるなぁ。
ははは…。
・ここよ!ここここ!ここここ!あのねこれトランクに…。
はい。
それからねこっちの荷物は全部車の中に積んじゃって。
荷物…。
いやこれ引っ越しですか?ピンポーン!これ全部車の中に積んじゃってね。
いやぁ…引っ越しはね引っ越し屋さんに頼んでくださいよ。
いや…私はタクシーで引っ越したいの。
タクシーだったらさワンメーターじゃないの。
ねえ。
行き先はすぐだから。
隣町。
あら?それとも何!?乗車拒否?乗車拒否するの!?いやいや…。
旅客自動車運送事業運輸規則
車内への物品持ち込みはペット危険物でない限り運転に必要な視野を確保できれば拒否する事はできない
ああもしもし。
あゆみいる?えっ…?あゆみが家出て自活したいって言ってるから反対しろっての?いやいや…俺だってあゆみの事心配してるよ。
大学出ていつまでもフリーターじゃないだろ?えっ…!?俺が甘やかすからそういう事になる…。
そういう言い方ないだろう!いや何でもかんでもさ俺のせいにするなよ。
切るよもう…。
別れた女房に何でこうギャンギャン言われなきゃならないの。
(裁判長)「被告人高根沢道子に対する殺人被疑事件について当裁判所は次のとおり判決する」「主文被告人は無罪」「理由本件平成18年3月26日世田谷で発生した土屋彰一殺害事件において…」
(歓声)
(安東真紀)ホント?あゆみ。
道子先生無罪なのね?
(小杉文彦)よかったぁもう…。
俺は最初から無罪だと思ってたんだって!
(リポーター)東都大学助教授土屋彰一さん殺害容疑で起訴されていた高根沢道子被告に無罪判決が下されました。
(一ノ瀬圭子)ちょっと待ってて。
(鈴の音)
(高根沢道子)圭子のお陰だわ。
ありがとう。
お礼なんかいいわよ。
無罪は当然の結果だもの。
許せないのは警察よ。
判決が確定次第賠償請求を行うから。
お金はいいわ。
何言ってるの!やってもいない事件で不当に逮捕勾留されたのよ。
賠償請求するのは当然じゃない!事件の事はもう忘れたいの。
(渡辺研一)どうして記者会見をしないんですか?あなた方にお話しする事はありません!ちょっとコメントくださいよ!ねえ高根沢さん!コメントお願いします。
お姉ちゃん…。
車を出して早く!
(土屋美鈴)本当はあんたが殺ったんでしょ?あんたが主人殺したんでしょ!?何とか言いなさいよ!やめてください。
ちょっとちょっとやめてやめて!私あなた許さないから。
絶対に許さないから!大丈夫ですか?すいません。
あっ持ちます。
ありがとうございます。
ちょっとすいません。
あっどうもすいません。

(鈴の音)・高根沢さん!・ひと言お願いしますよ!無罪だったんだから話してくれてもいいでしょう。
ちょっと…!どいて!どいてどいてどいて…!どいて!どいて!どいて!すいません。
・高根沢さんひと言!・ちょっとあんた誰なんだ!?えっ?福島…。
会津若松まで行っていただけますか?はい。
これがこの日無罪判決を受けた高根沢道子との出会いだった
失礼ですけど…。
すみません。
運転手さんにはご迷惑をおかけして…。
いえ…。
運転手さんも私の事ご存じなんでしょ?ええ以前ニュースやら週刊誌でお顔を拝見したものですからそうじゃないかなぁって…。
(神谷警部)そうですか。
わかりました。
検察は控訴を断念するらしい。
(東山秀作)ほらな。
だから自分は最初から高根沢道子の逮捕には反対だったんです。
警部だって同じ…。
物証は何もなかったからな。
(国代義明)でもあの事件は状況的に道子が犯人としか思えません!何より道子はあの事件は自分がやったと自供したんです。
(ため息)あの事件なぁ…。
事件は半年前高根沢道子の自宅マンションで起きた
被害者の土屋彰一は東都大学法学部の助教授であり道子は同じ大学に勤務する心理学の講師だった
4時半頃土屋さんと一緒に帰宅しました。
その後私は駅前のスーパーに買い物に出かけました。
5時半頃戻ってみると…。
ではつまりあなたが買い物に出かけた約1時間の間に何者かがこの部屋を訪れそれで土屋彰一さんを殺害した。
そういう事ですか?土屋彰一さんには美鈴さんという奥さんがいるんですよ。
という事はあなたと土屋さんは…不倫関係。
しかも最近土屋さんとは別れ話で揉めてたそうですよね。
あなたじゃないんですか?事件当日一緒に帰宅したあなたは土屋氏と口論になった。
そして殺害した後買い物に出かけ発見者を装った!高根沢さんそろそろ本当の事を話していただけませんか?申し訳ありません。
私が土屋さんを殺しました…。
道子の自供を得て上の指示で逮捕となった
(横峰聡史)被告人の話では土屋氏から妻と別れるから結婚してほしいと言われ戸惑っていたというんですが…。
バカな事言わないでください。
結婚を望んでたのはこの女のほうでしょ?主人の浮気を真に受けて。
だから離婚しない主人を恨んで…。
異議あり!証人の意見は主観にすぎません。
私はやってません。
ではどうして罪を認めるような供述をしたんです?取り調べを受けるうちに頭が混乱して…。
員面調書によるとあなたは凶器の包丁をどこに捨てたかと訊かれ覚えてないと答えてますね。
そして凶器は見つかっていない。
裁判長…。
被告人の自白に任意性がなかった事は明白であり…。
異議あり!供述に任意性があった事は明白であります。
だったらどうして凶器が出てこないんです!現場マンションからスーパーまで徹底的に捜索をしたにもかかわらず凶器は見つからなかった。
物証で裏付けできない自供は意味をなさない。
それはそうですけど…。
逮捕も起訴も強引だった。
その事は認めるしかない。
検察が控訴しなければ2週間後無罪は確定する。
疑わしきは罰せず。
あっでもだったらなぜ道子は自供なんかしたのか…。
無罪判決が出てよかったですね。
あの…興味本位で言ってるんじゃありません。
実は私娘がいまして…。
その娘が半年前に…。
(西村あゆみ)道子先生が人殺しなんかするはずない!冤罪に決まってる!
(道子)運転手さん西村あゆみさんのお父さん?ええ。
あゆみもほっとしてると思います。
でも名字が…。
ああ離婚しました。
あゆみさんからお父さんは以前刑事さんだったと聞いた事が…。
刑事辞めました。
ある捜査に協力してもらった女性との事を誤解されて週刊誌にまで書かれて…。
週刊誌に…そうでしたか。
会津にはどなたかお知り合いが?以前私が住んでた家があって。
会津は私の故郷なんです。

(バイオリン演奏)この後ホテルに行きますので少し待ってていただけますか?はい。
(戸村栄介)道子…。
(戸村佐知江)道子さん。
ご無沙汰してます。
よくもまあのこのこと顔が出せたもんだわ。
あなたのせいで私達がこの半年間どれだけ迷惑したと思ってるの?申し訳ありません。
何しに来たのさっさと帰ってくんなしょ!
(戸村香織)ママ!香織!元気にしてた?ママね香織に会いに来たの。
香織と話がしたいの。
少しの間私が泊まるホテルに香織を連れてってもいいでしょ?ダメだ勝手に来て…!ああ。
タクシーで行くから。
すいません。
道子。
会津にはいつまでいんだ?例の審判家庭裁判所に問い合わせたら3日後にどうかっつうんだ。
わかりました。
私ママと一緒に暮らせるの?そうよ。
失礼ですけど先ほどの方は?ああ…主人です。
2年前に離婚して。
実は香織の親権を巡って争ってきたんです。
その審判がようやく出る事になって。
そうなんですか。
(道子)すいません。
ありがとうございました。
失礼します。
親権か…大変だなぁ。
高根沢道子さんいますか?あの失礼ですが…。
栄介どなたなの?あの女に殺された土屋彰一の妻です。
道子は今ここにはいねぇがらし。
じゃあどこにいるんです?高根沢道子はどこにいるんです?って訊いてるんです。
道子はホテルに…。
どういう事って訊いてるの!
(殴る音)
(パトカーのサイレン)あらららら…。
土屋美鈴…。
先輩検視官の話だと死体の硬直から見て殺害されたのは昨夜遅くじゃないかと。
(ため息)あっこの車は土屋美鈴の車で間違いないそうです。
ああほらこれこれ…。
車の中で殺されてそれから外へ…。
(リポーター)「こちらは女性の他殺死体が発見された稲城市内の林道です」「被害者は土屋美鈴さん33歳」「夫だった土屋彰一さんも半年前に殺害されており捜査本部は2つの事件の関連を含め捜査を開始しました」「以上稲城市の現場からお伝えしました」あんたが主人を殺したんでしょ?私あなた許さないから。
わざわざ来てくれなくてよかったのに。
心配するわよ。
何なら審判にもついていくけど。
いいわよ大丈夫。
・高見沢さん!ひと言お願いします。
(渡辺)高根沢さん今回の事件どう思われますか?あなたと土屋美鈴さん揉めてたそうじゃないですか。
何かひと言。
ひと言!いい加減にしてください!高根沢さん高根沢さん!高根沢さんお願いしますよ!それでは審判の結果を言い渡します。
長女戸村香織の親権を巡る乙類審判事件について当裁判所は次のとおり審判を言い渡します。
親権者は戸村栄介。
以上です。
待ってください。
なぜです?香織はまだ8歳です。
母親と一緒に住むのが当然じゃないですか。
香織も私と暮らす事を望んでるんです。
香織に会わせてください。
私の口から審判の結果を…。
香織には私から言っとく。
あなたに会えば香織もつらくなっぺがし。
香織は僕が責任を持って立派に…。
離婚の原因を作ったのはあなたじゃない。
よしてくなんしょ!そりゃあ浮気をした栄介はよくなかった。
だどもあなたに責任がなかったと言えるの?あなたは香織が生まれてからも仕事を辞めなかった。
女はね家を守るもんなの。
戸村家の女は代々そうやって生きてきたんだ。
あなたは母親として失格なんだよ。
母さん。
裁判所もあなたのそういうところを…。
違います!土屋さんの事件で私が逮捕されて…。
その事が審判を左右した。
私は無実なのに。
この間あなたを訪ねて土屋美鈴さんという人が来なさったなし。
お義母さん私を疑ってるんですか?道子戻ってきてくれねぇか?香織のためにも。
それはできないわ。
私はお義母さんの奴隷じゃない。
結婚してた頃私がどれだけつらい思いをしてたか…。
それよりあなたに訊きたい事があるの。
これは私のマンションの合鍵です。
これあなたと離婚した後私が香織にあげたものなの。

(バイオリン演奏)高根沢さん土屋美鈴の件でお訊きしたい事があります。
会津に行って道子さんに話を聞いてきたの?はい。
道子さんを疑ってるの?同じ過ち繰り返してどうするの。
神谷の指示?学習能力ないねホント。
半年前の土屋さんの件見込み捜査が誤認逮捕につながったわけだろ?裁判所が無罪だっていう人を疑ってるわけ?でも今回の事件が半年前の事件とつながってるとしたら犯人は土屋氏と美鈴さん2人に恨みを持った…。
道子さんだっていうの?はい。
美鈴が殺害された8日の夜高根沢道子はこの先輩のタクシーを使って…。
そうだよ。
俺が会津まで送ったよ。
ホテルに着いたのが夕方の6時。
会津にいた人間に東京で事件なんか起こせるか?それとも何か?道子さんに不審な点でもあるのか?実はですね…。
はいはいどうどうどう…。
ああいえいえホントに今回は先輩のこのタクシーで道子が会津に行った。
それだけわかればいいんです。
いや先輩といえども民間人に毎回毎回捜査の状況をベラベラしゃべるわけには…。
それこそ同じ過ちを繰り返してしまいます。
少なくとも自分には学習能力があります。
ホントかよ…。
あれ?先輩それなんですか?貯金箱?チップ箱。
もらったチップ入れとくの。
へえ今時チップをくれるお客さんがいるんですか?こないださタクシーで引っ越したおばさん40円くれた。
(2人)40円!?あっ…40円うれしいですよね。
健気な貯金だよな…。
だけどその40円ですらあゆみちゃんの生活費に消えちゃうんだぜ。
放っといてくれる?あっあゆみちゃん!引っ越し…。
あゆみちゃんの引っ越し自分達が手伝う事になりました。
はい。
嘘!?お父さん。
お父さん!ちょっ…。
神谷!?夜明さんお久しぶりですね。
ごめんなさい。
お父さんにね家を出る事を黙ってる気はなかったの。
でも言ったら絶対反対するでしょう。
いやいやいや…。
だから引っ越してからねお父さんには話そうと思って…。
俺が言ってんのはそういう事じゃなくて身内の俺じゃなくて何で赤の他人が引っ越しそば食ってんの?おかしいだろ。
まあまあ…。
来るそうそうどなる事はないじゃないですか…。
ああ…!国代夜明さんの分。
いやっ…。
あっ私のさ箸つけてないから食べててよ。
お茶なくなっちゃったから買ってきますね。
ああいいよ。
あゆみちゃん気を使わなくていいから。
すいません夜明さんこれお茶とお汁です。
大人げないなぁ。
あゆみちゃんの引っ越しを祝って一緒に食べましょうよ。
なかなかいい部屋じゃないですか。
うん。
これ私のおごりですから。
まずい!まずい!まずい。
うん。
味オンチ。
はい。
東山。
はい。
お前引っ越しの手伝いなんかしてる時じゃないだろう。
他にやる事あるだろう。
あっいやぁあゆみから道子さんの情報聞き出そうと思ってる?当たり!さすがだなぁ。
何でそういう事がわかんのかな?国代。
違いますよ。
私達はあゆみちゃんがこんな小さい頃から知ってるんです。
引っ越しを手伝うのは当然じゃないですか。
まあついでだから高根沢道子の事も少しは訊きましたが…。
神谷。
お前さホントに道子さんを疑ってんの?そうだ。
夜明さんにももう一度話をお訊きしたいと思ってたんです。
話訊きたいのなら自分からしゃべれよ。
道子さんを疑ってる根拠を。
これです。
そば?あの司法解剖の結果美鈴の胃の中からそばが出てきたんです。
恐らく食後1時間ぐらいの間に殺害されたんだと思われます。
死体が見つかった場所は東京なんですが殺害が行われたのは車の中です。
気になったのはフロントガラスの血痕が拭われていた事です。
犯人はまたどうしてそんな事をしたんでしょうか?運転の邪魔になった。
そうです。
そうなんです。
そうすると犯人は美鈴を殺害した後遺体を車で運び発見現場に遺棄した事になります。
という事は犯行は東京で行われたとは限らない。
それとこのそばとどんな関係があるの?そばと一緒ににしんが…。
にしんそばといえば京都か会津ですから。
8日の日の夕方土屋美鈴さんが訪ねてきたんですね?道子の泊まっているホテルを教えました。
ホテルに当たったところ美鈴がホテルに来た形跡はありません。
道子も美鈴とは会ってないと言ってますし…。
道子の嘘に決まってますよ。
美鈴は会津で殺されたんです。
もちろん推測です。
それだけで道子が犯人だと決めつける事はできません。
でも…。
事情が変わりましたから半年前の事件も洗い直しです。
動機何よ?土屋さんはともかく道子さんが美鈴さんを殺さなきゃならない動機は何なの?問題は8日の日道子が会津に行った事を美鈴がなぜ知っていたのか?それで夜明さんにお訊きしたいんです。
タクシーに乗っていた時道子の携帯に美鈴から電話がかかってきませんでしたか?1回もかけなかった。
かかってもこなかったしそれに会津までトイレ休憩なしのノンストップ。
(リポーター)「先週の8日東京都稲城市で惨殺死体となって発見された土屋美鈴さんのものと思われる品川ナンバーの白い乗用車がこの会津で目撃されている事がわかりました」「美鈴さんはなぜ会津へ来ていたのか?」「誰かに会いに来たのか?」「今月の8日に美鈴さんの夫の土屋彰一さん殺害事件で…」戸村香織ちゃんだよね?お母さんの事でちょっとお話聞かせてくれるかな?何してんだし!子供は関係ないべしさ!いい加減にしてくなんしょ。
私学校に行きたくない。
バイオリンもしたくない。
香織…。
何か気になるんだよなぁ。
(チャイム)弁当!あっ!お客さん送って近くまで来たからあゆみと一緒に食べようと思ってさ。
来てくれるのはいいんだけど心配しないでよ。

(物音)おかしいと思ったんだ。
おかしいって何が?家を出るとか自活するとか…。
できたんだろう?恋人が。
何言ってんの?シャワーなんか使って何を…。
あっちょっと…。
おい。
(ノック)ちょっとちょっと!あっ!?夜明さん!?えっ…!?えへへ…。
すいません。
表で100数えてきて。
はい。

(カップを置く音)熱っ!あのマンションに住むわけにはいかなくて部屋を探す事にしたんですけど…。
すぐには見つからないだろうしだったらそれまでの間私の部屋にいてくださいって私が先生に言ったの。
あゆみちゃんの好意に甘えてしまって。
そうなんですか…。
ごめん。
あっ例の審判は?じゃあお嬢さん…。
すいません。
警察が誤認逮捕したばっかりに…。
元警察官として謝ります。
このとおりです。
夜明さん…いえ…。
警察もだけど許せないのはマスコミ。
見てこれ!こんな書き方ってある?私何のために大学で勉強したのよ。
マスコミ社会学科卒業していずれはマスコミに就職する。
それが私の夢だったのに。
私こんな世界に入りたくない。
あゆみちゃん。
あゆみが変えればいいじゃない。
あゆみがマスコミに入って…。
諦めちゃダメだよ。
逃げたらダメだって。
おかしいと思ったら自分が変えなきゃ。
私逃げません。
このままじゃ私は犯人に見られ続ける。
香織を苦しめる事になる。
私自分で調べます。
事件の真相を…。
私も手伝います。
あゆみ。
よし。
すいません…。
はい。
何これ?抗議しにいらしたんですか。
文句がおありなら訴訟を起こすなり何なりご自由に。
直接ここに来られても困りますよ。
そういう言い方ないでしょう。
何でこんな記事書くの?だから文句があるんだったら…。
今日伺ったのは抗議しに来たのではありません。
美鈴さんの事件の事を詳しく教えていただけませんか?ここが土屋美鈴さんの死体が発見された現場です。
(渡辺)死体は車から放り出されるようにこのあたりに転がってたそうです。
半年前殺された土屋彰一さん。
そして今回殺された美鈴さん。
もちろん2人の周辺は取材しました。
でもねあなた以外に2人に恨みを持つ人物は浮かんでこない!もう結構です。
どうもありがとうございました。
今日の事記事にしますからね。
あなた本当は事件にかかわってるんじゃないんですか?私だってね記者として心苦しさはありますよ。
読者の興味をあおるような書き方をしてると言われればそのとおりです。
でもね報道の世界は競争なんですよ。
節度ってもんあんでしょ。
ないですね。
他社を出し抜くには人権配慮してる暇なんかないんですよ。
あんた達マスコミが冤罪作る事だってある。
犯人はどうして美鈴さんを車の外に出したんでしょう?そうですねぇ。
どっかで殺害して車でここに運んで来たとしてどうして外に放置したのか。
そういえば私土屋さんの事件の時も妙なものを感じました。
はっ…!土屋さん…土屋さん!
(道子)発見した時土屋さんの体勢が妙だったんです。
刺されて倒れたのなら体勢は乱れてるはずです。
なのに…。
ホントですか?たぶん犯人が死体の体勢を変えたんでしょう。
犯人が?例えば死体の顔にタオルやハンカチがかけられてた場合犯人は被害者と面識ある人物とみなされます。
心理学的には犯行の打ち消しと呼ばれる行為です。
あそっか。
あなた心理学の先生ですもんね。
はい…。
被害者と親しい関係にある犯人が後悔の念から犯行を取り消してしまいたいと思う。
被害者に対する愛情が死体を丁寧に扱わせる。
それに比べて犯人の美鈴さんに対する行為は残酷だわ。
こんな場所でしかも車の外に…。
という事は同一犯の犯行として土屋さんには愛情を美鈴さんには激しい恨みを抱いてたっていう事ですか?香織ちゃんの親権の不服申し立てってしないんですか?もちろんしたいです。
でも香織にはホントにつらい思いばかりさせて…。
はあ…離婚した事も…。
いやあの…離婚ってマイナス面ばかりじゃないと思うんですよ。
えっ…?あの…親が不仲でギスギスしてるよりかえってすっきりするかもしれない。
いやいや別に自分の事を正当化してるわけじゃないですよ。
ふふっ…。
それとどうしてもお訊きしたい事があって…。
えっ…?土屋さんの事件の時どうして自供したんですか?取り調べを受けるうちに混乱してどうでもいいように思えて…。
妙な事がわかりました。
美鈴の周辺を聞き込んだところ…。
はい。
2か月前なんですが美鈴は所轄の世田谷南署にストーカーの被害届を出してます。
ストーカー?はい。
まあ所轄の署長が警告を出したんですがその後は被害の事実がなかったので立ち消えにはなったというんですが…。
誰だ?美鈴の家の近くに住む長尾哲夫34歳です。
何?あっ!
(長尾哲夫)あんたが美鈴さん殺したんだろ?何ですか?一体。
そうなんだろ!ああー!危ない危ない!ああーイタッ…!やめてー!助けてー!・どうしました!?覚えてろ!ぶっ殺してやる!おい待て!あゆみちゃん!あゆみちゃん…!あゆみちゃんは?左腕複雑骨折。
明日手術。
あっあのちょっとよろしいですか?襲ってきたのこの男じゃないですか?そうです!美鈴にストーカー行為を行っていた長尾という男です。
たぶん事件の事で道子さんを疑って襲ってきたんじゃないかと…。
わかってんなら捕まえろよ!
(2人)はい!すいません。
私のせいであゆみちゃんにまで…。
痛む?少し…。
でも大丈夫です。

(ドアの開く音)誰?真紀?はっ!やあー!
(道子・あゆみ)きゃー!
(2人)きゃー!うっ!うっ…!お父さんもうやめてー!どうしたの?あゆみ…。
あの女は俺の恋人を奪ったんだ!美鈴さんご主人を亡くしてかわいそうな人だった。
俺がずっとそばについてたら美鈴さん殺される事はなかったんだ!美鈴さんを殺したあの女許せなかった!!はあっ!何か?
(橋本係長)娘さん大変でしたね。
これ気持ちです。
えっ?もらっていいんですか?もちろんですよ!いや何か気持ち悪いなぁ。
ここんとこ売り上げ落ちてるし?何を言ってるんですか。
えっ?それをびっくりロングで取り返すのが夜明さんじゃないですか。
夜明さんのすごさは私も会社もよく知ってますから。
先輩!会津までお願いできますか?会津?ほらね。
会津に行って…。
まだ道子さん疑ってんの?いや疑うんだったらさあの長尾ってストーカー疑えよ。
あいつだったら美鈴さん殺害したかもしんないし半年前の土屋の事件だって…。
いや可能性がないわけじゃないんですが自分でやっておいてそれで道子を襲うというのがどうも…。
そっか…。
神谷警部が改めて会津で道子の事を調べてこいと。
神谷いつも俺のタクシー使うのぐちゃぐちゃ…言うじゃない!今回はあゆみちゃんまで事件に巻き込んでしまいました。
夜明さんも引くに引けないだろうと。
神谷そんな事言ったの?
(山下和代)その事でしたらあれから何度も従業員に確かめました。
8日の日夕方6時頃高根沢道子さんはこちらのホテルに宿泊してその日の夜道子さんが外出するところを見た人は誰もいない?はい。
翌日9日の日は女将さんが?そうです。
私がお見かけしたのはお昼過ぎでしたなし。
その時何か変わった様子はなかったですか?はあ…。
どんな事でもいいんです。
まあそうおっしゃられましてもな…。
美鈴さんが会津で殺されたとは限んないだろ。
美鈴が殺されたのが8日の夜9時から11時の間です。
美鈴が戸村家を訪れたのが7時前。
その足で東京に引き返せば会津東京は車で3時間ですから東京で殺害された可能性も出てきます。
ただわざわざ戸村家を訪れて道子の居場所を聞いておいてそれで東京に戻るというのがどうも…。
道子が会津で美鈴を殺し美鈴の車で東京へ行って死体を遺棄した。
そう考えるのが自然です。
そりゃ推測だろう。
先輩は道子を信じるんですか?当たり前だろ。
道子さんは香織ちゃんと一緒に暮らしたかった。
だけど誤認逮捕の影響で親権が認められなかった。
親権争ってる最中に香織ちゃんと会えなくなるような事するか?俺母親を信じるよ。
道子さんが宿泊してるホテルを教えた後美鈴さんがどこへ行ったかわかりませんか?さあ…。
美鈴さんは車で来ていたはずなんですが誰かが乗っていたという事は?知りません。
道子さんとはどうして離婚されたんですか?失礼ですけど。
あの人は戸村家の嫁にふさわしくなかったんです。
あっ違います。
私がよくなかったんです。
お知り合いになられたのは?あっ大学が同じだったもんで。
もっとも道子は秀才で大学院をトップで卒業して心理学の講師に。
あっもういいですか?あっあの今日お嬢さんは?香織は今学校へ行ってます。
ホントによかったわ。
道子さんのせいで学校へ行きたくないって言い出した時はもうどうなる事かと…。
へえ優勝だすごいですねぇ。
場所はどこですか?東京です。
いずれは香織をヨーロッパに行かせたいと思ってるんです。
本場で勉強させて世界的な音楽家に…。
東山日付…。
東山日付…。
えー平成18年3月26日…。
表彰状にあった日付3月26日は土屋彰一の事件が起こった日です。
事件のあったあの日香織ちゃんは東京に来てたんだ…。
香織ちゃんだけじゃない。
戸村も付き添いで一緒に来てたはずだ。
えっだからどうだと言うんです?どうもこうも…お前バカだね。
これが単なる偶然だと思うか?先輩ひょっとして…。
うん。
戸村さんは道子さんと香織ちゃんの親権を争ってた。
しかも道子には土屋彰一という愛人がいた。
戸村は香織ちゃんの事を手放したくない。
まして他の男が香織ちゃんの父親になるなんて我慢ならなかった。
えっじゃあ娘を渡したくないばかりに戸村が土屋彰一を殺しその罪を道子に着せたというんですか?あっ…美鈴殺しも…?突然現れた美鈴の後をもし戸村が追ったとしたら?
(殴る音)いやいくら何でもそれは…。
あら?起き上がり小法師だ。
先輩これどっかで見た事…。
会津の名産だよ。
ほら道子の鍵にも付いてただろ。
ああ…。
えっ?あっ道子さんの鍵にこれ付いてたの?はい。
半年前道子を逮捕した時所持品の中にこれがありました。
これは?マンションの鍵です。
(鈴の音)それは合鍵です。
(鈴の音)先輩どうかされましたか?いや…。
自分達これから念のため戸村を調べてみます。
タクシーの運転手さん!はい。
ママ来てるの?いや今日はそうじゃなくてちょっと訊きたい事あるんだ。
この前ホテルでママに会った時ママこれの付いた鍵見せて何か言ってたよね?あの鍵は?私がママにもらったものなの。
でもなくしちゃってそれをママが持っていて…。
ママ何て言ったの?東京でバイオリンのコンクールがあった日ママのマンションに来たの?って。
夜明さん!?どうして会津に?あっあの私の幼なじみで弁護士の一ノ瀬圭子さんです。
夜明です。
あっお話は伺ってます。
私先に言って戸村さんに話を通しておくわ。
香織ちゃんに何か伝えておく?じゃあ4時にいつものところで待ってるって。
うんわかったわ。
じゃあ今日はその事で?香織の事をもう一度戸村と話し合おうと思って。
夜明さんは?ああすいません。
あなたがいらっしゃるの香織ちゃんから聞きました。
どうしてもお訊きしたい事があって。
鍵?ええ。
あなたマンションの合鍵を見せながら香織ちゃんに半年前3月26日。
つまりバイオリンのコンクールのあった日。
事件のあった日ですけど…。
あの日マンションに来なかったか尋ねましたよね?夜明さんどうしてそんな事を?私あなたを信じてます。
だから知りたいんです。
何で自供したんですか?これは戸村と離婚した後私が香織にあげたものです。
いつか東京に来る事があったらマンションに寄ってほしいと。
その香織ちゃんにあげた鍵をどうしてあなたが持ってるのか。
あなたがいつどこでこれを手に入れたか…。
そうです。
あの日です。
土屋さん!
(鈴の音)
(道子)あの時部屋にあったんです。
取り調べを受けながら私は気になって仕方ありませんでした。
香織にあげた合鍵がどうして部屋の中にあったのか。
私が買い物に出かけてる間に香織が来た?ひょっとして香織が事件にかかわってるのではないかと。
香織ちゃんを守るつもりで自供したんですか?どうかしてたんです。
香織が事件にかかわってるはずないのに…。
でもあの時は追い詰められたような気持ちになってただあの子を…香織を守りたいと…。
それで無罪判決を受けたあの日その足で香織ちゃんに確かめたくて会津に来たんですか?そうせずにはいられませんでした。
(道子)なくした?いつ?半年前。
ママからもらった大事な鍵だから私いつもランドセルに入れてたの。
でもなくしちゃって…。
じゃあママのマンションに来た事はないのね?うん…。
(道子)考えられるのは1つだけでした。
ああ僕だよ。
あの日僕が君のマンションへ行ったんだ。
コンクールの事君には黙ってたけど香織が優勝した事を知らせたかったし何より僕に内証で香織に合鍵を渡すような真似だけはしてほしくなかったんだ。
だから鍵を返しに行ったんだ。
(ため息)驚いた。
行ってみたら男の人が死んでた。
ああ…。
(戸村)僕はすぐに部屋を出たもんだから鍵を置き忘れたんだ。
戸村の話を聞いて私は一瞬戸村を疑いました。
でも信じます。
戸村は人殺しをするような人間ではありません。
この鍵の事はどうしても警察に言う事ができませんでした。
そうですか…。
じゃあいってらっしゃい。
いってきます!
(ため息)今度は弁護士を立ててまだ裁判で争うっていうんですか?
(ため息)香織を道子さんに渡す気は根からなし。
親権の話はうんざりだ。
私が今日伺ったのは親権の事ではありません。
野口英世は会津の出身か。
ここに来ると私懐かしい気持ちになるんです。
あっさっきの弁護士さん…一ノ瀬圭子さん?幼なじみなんですか?お姉ちゃん…。
車を出して早く!私と圭子は姉妹のような関係なんです。
圭子は私より3つ年下で私の事を姉のように慕ってくれて。
私は6歳の時に両親が亡くなって同じ村に住む圭子の家に引き取られたんです。
圭子!行こう!圭子。
(道子)でも私の家同様圭子の家も貧しくて…。
お姉ちゃんとずっと一緒だべな?んだ。
(道子)そのうち私を養子にほしいという夫婦が現れて。
姉ちゃん!圭子!姉ちゃん!圭子!
(号泣)姉ちゃーん!
(道子)もっとも引き取られた先は近くでしたし圭子との関係はずっと続いて…。
2年前私が離婚して東京に出た時東都大学を紹介してくれたのも彼女だったんです。
それであの養子先のご両親は?もういません。
2人には感謝してます。
私に過ぎるほどの教育を与えてくれましたから。
そうなんだ。
はい。
あっ…。
「志を得ざれば再び此地を踏まず」…。
野口英世が19歳で単身上京した時決意するようにこの床柱に刻んだんだそうです。
実の母が亡くなる時に私も同じような事を母から言われました。
(高根沢秀子)道子どんなにつれぇ事があっても負けんじゃねぇよ。
何度でも起き上がんだ。
この起き上がり小法師を見てみさ。
どんなにつれぇ事があっても笑ってっぺ?笑って起き上がんだ。
道子はいつかこの村を出ていかっせ。
道子にはもっと広いところで偉い人間になってほしいからな。
母ちゃん…。
志を得ざれば再び此地を踏まずか…。
あれ?仕事どうしました?大学から復職していいと連絡が来ました。
ああよかった。
とりあえず新しい部屋を探して大学に戻って。
ただ…。
ただ?実は以前からアメリカの大学から講師にこないかと誘いがあって。
すごいじゃない。
でも香織の事を思うと…。
親権が回復したら香織ちゃんアメリカに呼べばいいじゃない。
夜明さん…。

(香織)ママ!香織!8日の日は戸村さんと一緒に酒を飲んでた?んだ。
戸村さんとは昔からなじみなんだ。
じゃあ8日の夜9時から11時の間は戸村さんとずっと一緒にいたわけですか?そうです。
それが何か?あっいえ。
《美鈴さんが殺された夜戸村にはアリバイがあったという…》《だったら土屋と美鈴を殺したのは誰なのか》
(道子)カール・グスタフ・ユングは最初はフロイトの事を父親のように慕っていた。
互いに認め合い仲がよかったの。
ところがやがて2人は絶交する事になる。
これは両者の理論的な違いが関係してるの。
《そうだった。
犯行の打ち消し…》《死体の扱いに犯人の被害者に対する心理が表れる》《犯人は土屋彰一に愛情を持ち美鈴に恨みを持っていた人物》運転手さんまだかしら?赤坂不動尊ですねもうすぐです。
あっはい。
ありがとうございます。
はい。
はいありがとうございます。
はい。
東京の真ん中にこんな静かなとこあるんですね。
ここは水子供養で有名なんですよ。
ああそうなんですか。
ありがとうございます。
はい。
弁護士の一ノ瀬圭子を調べろ?何です?いきなり。
道子さんは俺にこういうふうに言ってた。
東都大学を紹介してくれたのも彼女だったんです。
圭子さんどうして道子さんを大学に紹介する事ができたのか。
東都大学にコネクションがあるのは圭子さんじゃなくて土屋さんだからね。
という事は土屋さんと圭子さんの間に何か接点があったんだって。
あゆみちゃん明日退院できるんですって。
ああよかった。
あっダメだ。
明日仕事だ。
うん。
大丈夫です。
私が付き添いますから。
確かに土屋さんを紹介してくれたのは圭子です。
その土屋さんの口添えで私は東都大学に就職する事ができました。
でもだからって…。
水子供養のお寺にいたというだけでなぜ圭子を疑うんです?半年前の土屋彰一さんの事件と今回の美鈴さんの事件とよく似てると思いませんか?土屋彰一さんはあなたのマンションで殺害され美鈴さんはあなたの生まれ故郷の会津で殺害された。
両方ともあなたに容疑が向くように仕組まれてる。
犯人はあなたの周辺にいる可能性があります。
夜明さん…!それに犯行の打ち消しでしたっけ?犯人が土屋彰一さんに愛情を持ってる人間だとすると…。
守秘義務はわかります。
しかし捜査の関係上どうしても教えていただきたいんです。
はあ…。
一ノ瀬圭子さんは当院で流産されました。
流産!?いつですか?1年前です。
妊娠3か月でした。
父親は誰ですか?さあそれは…。
(森岡葉子)高根沢さん先生は今外出されてますけど。
待たせてもらっていいかしら?あっでしたら私ちょっと買い物に出かけたいんですけどお留守番お願いしてもいいですか?ええ…。
すぐ戻りますので。
すみません。
(夜明の声)犯人はあなたの周辺にいる可能性があります。
(夜明の声)犯人が土屋彰一さんに愛情を持ってる人間だとすると…。
お姉ちゃん何してるの?
(道子)これどういう事?圭子あなたが土屋さんを?嘘でしょ圭子。
圭子ちゃん!そうよ。
私が殺したわ。
美鈴さんを殺したのも私なの。
どうして?お姉ちゃんそれでどうする気?自首して圭子ちゃん。
嫌よ!それ返して。
この包丁さえなければ誰もお姉ちゃんの言う事なんか信じないわ。
土屋さんと美鈴さんを殺したのが私だなんて何の証拠もない。
圭子ちゃん。
それで圭子は?私から包丁を奪うとそのままどこかに…。
すいません。
勝手な事して…。
すいません。
ただいまより捜索を行います。
一ノ瀬圭子さんのデスクは?ああこのデスク。
お願いします。
お願いします。
そこ見て。
そっちも。
はい。
(噴霧する音)神谷まだ圭子さん見つかんない?はい。
美鈴の車の中から複数の指紋が検出されていたんですがそのうちの1つと圭子の指紋が合致しました。
ホシは圭子で決まりです。
先ほど指名手配をかけましたので逮捕されるのは時間の問題かと。
よおーし一件落着!あのよろしいですか?はい。
ありがとうございます。
はい。
これ。
はい。
それとこれ心付け。
えっありがとうございます。
ラッキー!
(パトカーのサイレン)
(渡辺)一ノ瀬圭子が自殺したんですか?じゃあ2件の殺しは高根沢道子じゃなかったんですね。
圭子が自殺!?逮捕できなかったのは残念ですが…。
これはこの間の会津までのタクシー代です。
いつもすまないね。
それからこれ。
何?事件を解決できたのは夜明さんのお陰ですから。
珍しい事言っちゃって。
まあ正直圭子は盲点でした。
聞き込みの結果1年前まで圭子が土屋と交際していた事実がわかりました。
動機はたぶん痴情のもつれによる怨恨。
まあわからないのはなぜ罪を道子に着せようとしたのか?神谷故郷山口だよね?はい。
あの兄弟みたいにさ仲よくしてた友達っている?普通の友達ならいますよ。
今でもつきあってる?いえ仕事柄なかなか…。
友達づきあいって難しいよね。
まあ大人になるとどうしても比べ合いますからねぇ。
どっちが出世したとか…。
ねたみひがみ…。
女のほうが友情って難しいのかもしれないね。
うむ…。
ともあれ被疑者死亡で送検。
うん。
事件は解決です。
よおーしよかった。
じゃあ寝酒にいただくよ。
神谷。
はい?お前もつきあえよ。
いえいえ自分は勤務中ですから。
いやぁ〜今日さ非番だろお前。
えっええ…。
そいじゃ1杯だけ。
オーケーオーケー。
ほい。
ああどうもどうも。
ああもうもう…。
いやまいったな。
よいしょっとまあまあ…。
はい。
はいどうぞ。
乾杯。
ああ〜うまい!まずい!はい?うめぇ?うまいけどな。
嘘…。
1年前のもらいものにしちゃ…。
えっ?えっ。
一ノ瀬圭子の解剖の結果が出ました。
死因は水死なんですがひとつ妙な事が…。
うん何?妙な事って。
いやそのプランクトンが…。
プランクトン…。
プランクトン!?すいません。
1つだけお訊きしたい事があります。
昨日どちらにいらっしゃいました?会津に…。
娘がケガをしたもので。
夜の7時から9時の間も?その時間なら東京に戻ってました。
娘のケガは大した事なかったので…。
東京に戻って部屋を探そうと品川に…。
その事を証明してくれる人はいますか?いえ…。
ああ私夜明さんを見ました。
はあ?何?神谷。
帰ったんじゃないの?こんにちは。
こんにちは。
先輩起きてください。
お前達何?昨日の夜8時頃道子が夜明さんが品川駅前で老婦人の客を降ろすのを見たと言うんです。
昨日の夜8時?品川?うん行ったよ。
ああ道子さん何?それ見てたんだ。
道子さんのアリバイ洗ってんの?はい。
実は妙な事がわかったんです。
解剖の結果圭子の死は水死には違いないんですが…。
はいプランクトン。
これが合致しないんです。
江戸川のあの現場は海水と淡水が交じり合う汽水域です。
という事はプランクトンも海水性のものと淡水性のものこの両方が出てくるはずなんですが…。
圭子の体内から出てきたプランクトンはすべて淡水性なんです。
しかもその量が驚くほど少ないんですよ。
もし江戸川で水死したらプランクトンはもっと体内に入るはずなんです。
言ってる意味がわかんないよ。
つまり圭子さんの体内から発見されたプランクトンの密度と一致するような川は東京近郊にはないんです。
圭子が殺された場所江戸川じゃありません。
圭子の死は自殺ではなく他殺だったんです。
いい加減にしろよ。
さっき事件解決ってさ乾杯したばっかりじゃない。
はあそうなんですが…。
圭子も道子にカミングアウトして凶器の包丁持ってきたわけだろ。
まあ確かに…。
指紋は拭われてましたけれども付着していた血液は殺害された土屋彰一のものでした。
圭子自殺で決まりだよ。
ばかばかしい。
もうちょっと寝る。
夜明さん!何?土屋彰一の裁判控訴できるのは明日が期限です。
もちろん土屋を殺したのは圭子でしょう。
控訴せずに被疑者死亡でいい。
美鈴殺しもです。
でも圭子の死が殺しとわかった以上…。
私は事件の全容を解明したいんです。
圭子の死亡推定時刻は7時から9時の間だよね。
8時に品川にいた道子さんがどうやって殺せるの?そうなんです!そこなんですよ先輩。
だから品川で夜明さんを見かけたというのできすぎじゃないですか!?道子は先輩をアリバイ作りに利用した。
それを崩せるのは夜明さんしかいないんです。
ふう…。
あっ!ああああ…。
見っけ!見っけ!見つけた!釣り?あっあっ。
まああのバス釣りは私の唯一の趣味ですからね。
でもね最近ねどこ行っても人が多くて…。
あっ!猪苗代なんていいんじゃない?この間行ったけど人が少なくてきれいだったよ。
いやでもあそこはねぇ。
猪苗代湖は日本一水が澄んでるでしょ。
なぜかというとね火山性の酸性の強い川が流れ込んでて藻が少ないからなんですよ。
プランクトンも少ない。
でそうすると魚も少ない。
ねえ。
この間行った時なんかさもう坊主でさ。
もう怒りで叫んだよ俺は。
《あの日道子さんは会津に帰ってた》《圭子は猪苗代湖で殺されたとしたら…》《でもじゃあどうして道子さんは俺が品川にいた事を…?》これ心付け。
《あの時の客…》《あの客が道子さんの協力者だったとしたら…》《まさか…》《仮にそうだとしてそれをどうやって証明するんだ?》警部。
福島県警から指紋が届きました。
鑑識で照合してます。
夜明さん…。
こちらにいらっしゃるってあゆみに聞きました。
私アメリカに行く事にしたんです。
それで荷物を整理に…。
そうですかアメリカに。
夜明さんのお陰です。
夜明さんに励ましていただいて。
だったらこれから会津に行きませんか?香織ちゃんにお別れを言いに…。
単刀直入に伺います。
土屋さんと美鈴さん殺害したのは圭子さんで間違いないとして問題は圭子さんの事件です。
一昨日の夜8時あなたは品川にいなかった。
あなたがいたのはここです。
このプランクトンの少ない湖であなた圭子さんを殺害した。
夜明さん言ってらっしゃる意味が…?私はあの夜品川にいました。
私が品川にいなかったって何か証拠でもあるんですか?野口英世です。
この千円札は一昨日の夜品川に送ったお客さんからチップでもらったものです。
福島県警に依頼して協力者指紋を採ってもらいました。
その指紋とこの千円札に付いてた指紋が合致したんです。
この協力者指紋の持ち主はあなたのお姑さんだった佐知江さんです。
説明していただけますか?あなたを嫌っていた佐知江さんがなぜあなたに協力したのか?それは圭子があなた方を脅していたからです。
香織ちゃんがケガしたのもたぶん…。
夜明さんもういいです。
どうして?冤罪が晴れたのにあなたどうして?どうしようもなかったんです。
この包丁さえなければ誰もお姉ちゃんの言う事なんか信じないわ。
土屋さんと美鈴さんを殺したのが私だなんて何の証拠もない。
圭子ちゃん。
どうして?私土屋さんの事愛してたのよ。
(圭子)土屋さんとは5年前に知り合ったの。
土屋さんが交通事故に巻き込まれて私の事務所に相談に来て私一目で好きになったわ。
つきあうようになって1年前私は妊娠した。
なのに赤ちゃんを堕ろせだなんて…。
これから奥さんとドライブ?
(美鈴)最低なのはあなたよ。
たかが妊娠したぐらいで男を横取りしようなんて哀れな女。
主人はね私の父から援助を受けてるの。
職場も地位もね。
だから私と別れる気はないの。
あなたとは所詮浮気なのよ。
ああっ!
(急ブレーキの音)何するの!降ろしてよ。
お父さんに言うわよ。
早く降ろしてよ!
(土屋彰一)美鈴…。
悪いけど…。
土屋さん…。
残念ですが流産です。
(嗚咽)
(圭子)赤ちゃんの命が消えた時私の心は決まったの。
(刺す音)
(電話)
(圭子)お姉ちゃんが釈放された日あの女から電話があったの。
道子なら会津に行くって言ってたわ。
これから行くっていうなら私も一緒に行きたいんだけど。
事件の事本当の事話してもいいわよ。
(圭子)戸村さんの家を訪ねた後…。
ホテルはこの道を真っ直ぐ行ったところよ。
あんな女を弁護して私に復讐したつもりなの?本当の事って何よ?どういう事って訊いてるの!
(殴る音)復讐ってのはこういう事をいうのよ。
圭子さんがあなたに罪を着せようとしてたのは土屋さんより美鈴さんよりあなたが一番憎かった。
どうして?どうして私に?お姉ちゃんが土屋さんを奪ったからよ。
知らなかったのよ。
話してくれてたら…。
お姉ちゃんは昔からそうだった!
(拍手)道子ちゃんおめでとう。
おめでとう。
おめでとう。
(圭子)いつも一緒だって言ったのにいつもお姉ちゃんだけがいい思いをしてる。
いい思いなんか…。
立派な家があっても私には実の親がいない。
私は圭子の事が羨ましかった。
私が弁護士になるって言ったらお姉ちゃん私に援助してくれたわよね。
それがどれだけ私には苦痛だったか…。
いつまでお姉ちゃん面するんだって。
じゃあどうして私に大学を紹介してくれたのよ?そばで見たかったのよ。
離婚してつらい思いをしてるお姉ちゃんを。
なのに私は事務所を持ってもうまくいかない。
比べてお姉ちゃんは…。
(圭子)私から土屋さんを奪っただけじゃない。
私が流産して会津に帰った時…。
香織…。
いないよ。
えっあそこにいたもん。
どこ?いた。
いたいた…。
ああホント!お姉ちゃんを弁護したのは美鈴さんを殺すまでお姉ちゃんを有罪にするわけにはいかないもの。
そして美鈴さんの事件が起きれば必ずお姉ちゃんが捕まると思った。
なのに…。
圭子ちゃん。
私はもう死ぬしかない。
でも一人じゃ死なないわよ。
私がどうしてこの包丁を取ってたかわかる?この包丁にはある人の指紋が付いてるの。
潰してやる香織ちゃんを。
お姉ちゃんのすべてを潰してやるわ!圭子ちゃん!圭子…。
包丁…まさか?翌日戸村から電話があって香織がケガをした事を知りました。
きゃあー。
痛い。
香織!香織!ママー!幸いケガは捻挫で済んだんだ。
あの女弁護士に襲われたって言うのよ。
圭子が…!?警察には言ったの?包丁の事であの弁護士に脅されたんだ。
脅された?あああの日…。
私が今日伺ったのは親権の事ではありません。
これを買っていただきたいんです。
どうしてこの包丁を?あの時私部屋の中にいたんですよ。
道子いないのか?どうして戸村さんは包丁を持ち去ったんです?あの包丁は結婚した時戸村と一緒に買ったものなんです。
それで戸村さんあなたが殺ったと思って物証を隠そうとした。
ええ…。
(道子)そして圭子から電話がかかってきました。
今どこにいるの?わかった…。
お義母さんにお願いがあります。
今日これから東京に行ってください。
そして私の言うとおりにしてください。
えっ何なの?一体。
私香織を守りたいんです。
戸村の家を守るためにも…。
道子…何考えてんだ?何も訊かないで。
私の言うとおりにしてください。
あの…よろしいですか?
(道子)お義母さんにお願いして私は圭子に会いました。
この包丁警察に送るわ。
そうすれば戸村さんが土屋さんを殺した事になる。
最初は母親が…今度は真犯人として父親が逮捕される。
マスコミはまた面白おかしく書き立てるわよ。
学校もバイオリン教室も大騒ぎになる。
ふふふっ…香織ちゃん耐えられるかしら?圭子…どうしてそこまで?私生きてる限りお姉ちゃんのすべてを潰してやる!そんな事はさせない。
香織には手を出させない!お姉ちゃん…。
圭子がいたから私はこれまで生きて来れたの。
圭子の事が好きだったのに!圭子だけは信じてたのに!どうして…どうして?
(嗚咽)お姉ちゃんは私と同じでないといけないのよ。
お姉ちゃんとずっと一緒だべな?んだ。
(道子の嗚咽)お姉ちゃん私と一緒に死んで…。
(幼い道子の声)圭子圭子!圭子圭子!
(嗚咽)香織を…何としても香織を…。
戸村家を守りたかったんです。
私がなぜ圭子を…?それは私と圭子にしかわかりません。
(圭子の声)お姉ちゃんは私と同じでないといけないのよ。
圭子は私に殺される事を望んでたんです。
刑事さんお義母さんに責任はありません!お義母さん何も知らなかったんです!道子さん…。
道子…僕がいけなかったんだ。
僕が包丁を持ち出したばっかりに…。
でもあん時僕は君を救いたかったんだ。

(香織)ママ!香織!ママアメリカに行くの?ずっと帰って来ないの?そうよ。
家の合鍵。
私どこにも行かない。
ママを待ってる!香織よく聞いて。
人間はね独りなの。
ママと会えなくても香織は強く生きていってほしいの。
道子戻って来てくれ。
道子さん…。
道子さんお母さんに起き上がり小法師もらった時の事思い出してください。
どんなにつらくても負けちゃダメです。
何度でも起き上がってください。
どんなにつらくても笑って起き上がってください。
あなた今笑えないかもしれない。
けど起き上がってください。
香織ちゃんのためにも。
夜明さん…。
私マスコミに就職する。
私が変えてみせる。
ずうーっとそんな事言って結局フリーターじゃない。
一人暮らしまで始めちゃって。
何よ?まあ頑張んな。
病院で助けてくれた時うれしかったなぁ。
当たり前じゃない。
親が子供助けんのさ。
もうちょっと助けてくんない?もうちょっとって何?就職するか永久就職するまで…。
そんな永久就職ダメだよ。
あっ!もう帰んなきゃ。
彼が待ってるんだ。
嘘!?うっそー!お父さんにはまだまだ精一杯甘えますから!就職はいいけど永久就職ダメだからね!永久就職ダメだぞ!
数々の舞台やドラマで2015/10/05(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
タクシードライバーの推理日誌スペシャル[再][字]

会津若松〜殺人無罪の乗客!チップでもらった野口英世の謎!?女三人の愛憎が仕組む二つのえん罪!!

詳細情報
◇番組内容
人気シリーズ通算22作目。今回は賀来千香子をゲストに迎え、会津で大ロケーションを敢行!
◇出演者
渡瀬恒彦、賀来千香子、大寶智子、平田満、風見しんご、林美穂、小林健、梨本謙次郎、赤座美代子、メイサツキ ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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