【WE ARE Perfume】

 仲間内でよく使う言葉に「おたく三日目が一番楽しい」というものがある。その言葉通り何事もはまりはじめが一番楽しい。見るもの聞くもの全てが新鮮で、もっと知りたいもっとステージを見たいもっと沢山の歌を聞きたい。そんな貪欲な情熱に溢れている時が一番楽しいものだ。そこからどんどん「好き」が加速していき、知識も深まり成熟してからの楽しさというものも勿論あるが、どこかでその風景が当たり前になったり足を運ぶことが義務のようになったりしている自分に気づいたりする。そこできもちが落ち着いてしまうのも、そのまま見守り続けるのもその人の自由だ。ただ私はこの二日間を通して心から思えたことがある。それは、
 
ファンになった8年前よりPerfumeが好き。
 

 この9月の末に4日間日本武道館で行われたPerfumeメジャーデビュー10周年、結成15周年を記念したワンマンライブの内、最初の二日間(26・27日)へ行った。26日は自分自身も今回は初日であるし、ワンマンでPerfumeを初めて見るという友人と連れ立っていったのでやはり席がどこか気になった。少しでも楽しんでもらいたいというきもちが通じたのか、1階北2列目という席を引き当てた(転売防止のため席は当日入場時に引き換えでわかる仕組みだった)。入場してまず驚いたのはアリーナに円形のステージが設えており、そのステージがなかなかな高さを持っていたこと。普通にステージを見るにはアリーナよりも1階席の高さで丁度いいような気さえした。そしてそのステージの設えがごくごくシンプルなのも驚いた。これは節目のワンマンだからセットはあえてすっきりとさせて、主役の彼女たちをしっかり見せる狙いなのかなと思う。

 その真意はすぐにわかるのだが。

 照明が落ち「FAKE IT」のイントロが流れいきなり最高潮の盛り上がりからライブはスタート。まさに「Pick Me Up」《気持ちいいリズムが誘ってるダンスフロアの上に降り立つ君を見る》そんな歌詞通りに、あっという間にPerfumeの世界に誘われて4曲過ぎてしまう。
 いつものように軽くお直しがてらのMCを挟みつつ、さてここから怒涛の何を見せてくれるんだろう・・・?と期待していると、MCを挟んであ~ちゃんがおもむろに「コーナーにいこうかね」と宣言をした。
 
 コーナー?
 
 えっ、もうPTAのコーナー??早すぎじゃない?
(※Perfumeのライブにはいつも【PTAのコーナー】というあ~ちゃんが先導して声を出したり手を振ったり振り付けの練習をするお楽しみコーナーがある。別名「西脇幼稚園」)
多少ざわざわする観客を尻目にステージに大きな10面体サイコロが登場。まさか?そのまさかであった。
 
あ~ちゃん「セットリストをサイコロできめまーす!」そう、ライブのタイトル『3569』とは、すごろくの意味だったのだ!
 
 これには度肝を抜かれた。確かGAMEツアーの時も一曲だけ日替わりのルーレットでランダムに一曲やってはいたが、それをまさか武道館で?しかも一曲じゃない!さらにさらに円形ステージなので、曲ごとに正面を向く方角まで決めるって・・・あなた方正気かねっ!そう、この企画大変なのはPerfumeだけではない。マイクの出し入れ(ハンドマイクとヘッドセットの切り替え、さらにはスタンドマイクの出し入れもあった)からはじまり、照明もレーザーもその場ですこんと決めて裏方も対応していかねばならない。そんな本番一発勝負を13000人が見守る武道館でやっちゃおうって、やっちゃおうって、ちょっとチームPerfume誰も反対しなかったの??
 土日通して見てこのすごろくは本気だったということがよーくわかった。すごろくで出た目でセトリを決めるというのはアリとしても、それを円形ステージでやるからには流石に曲ごとに正面を向く方向は決めていると思ったがそれは違っていた。土日で同じ曲が出たとき向く方向も変わっていたのだ。恐ろしいまでに実直にこのすごろくコーナーはガチンコだった。
 そして今までステージは基本三人以外出ないという取り決めをしていたPerfumeだが、この日はお客さんをステージにあげてさいころを振ってもらうというサービスも行われた。
 かしゆか・のっちそれぞれ一曲ずつ、そしてお客さん二人とあ~ちゃんによる三曲メドレーという構成のすごろくセットリストは「ぜーーったいこんな順番にはならんから!」という流れで毎回貴重なものだったし、さいころの目で何が出るのかわくわくさせてくれた。武道館でこんなに近しい気持ちにしてくれる三人のもてなしのきもちが本当に嬉しい。
 いつまでも続くかのような錯覚する楽しいコーナーであったが、初日は「Twinkle Snow Powdery Snow」終わりから次の瞬間、コツコツという靴音が響いてきて、ま・まさか?と身を固くした瞬間モニターに「GAME」の文字が出たときは声にならない声が出た。いや、声なんて出なかったのかもしれない。崩れそうになる膝に力を入れて立っているのに精一杯だった。まさかここでこれを持ってくるなんてしびれた。まいった。茫漠としてしまっている私をよそに、更にステージは変化が起こる。ここまで外周がすごろくのマスになったり、中央が奈落になっていたりというくらいの変化しか見せなかったステージに、紗幕の張られた枠が上下から出現し八角形柱を形作る。ステージがあっという間に違う顔になり、そこで披露されたのはアメリカの「SXSW 2015」で発表し絶賛された「STORY」。もちろん完璧な再現ではないが、あの幻想的なパフォーマンスの一端を感じることが出来たのは想像もしておらず狂喜した。半透明の幕に映し出される映像と共鳴していくダンス。仕掛けている内側からはどんな景色が見えているのだろうか想像も出来ない。しかしそんな最先端の技術にも負けず、周りの期待に応える力が三人には備わっている。すごろくコーナーに引き続きここでも、ステージを支えるスタッフから彼女たちへの厚い信頼を感じた。
 それにしても「STORY」からの「Party Maker」への登場には言葉を失った。今までもPerfumeのステージは衣装の早替えや意表をついた移動からの登場もあった。しかし今回の「STORY」終盤から急に何メートルも先の幕の外へさらりと登場してくる、言葉で説明するとこれだけなのだが1階で見ていると本当に見失った次の瞬間に思いもよらぬ場所から姿を現したように見えた。ちなみに翌日は2階の2列目だったのでよくよく目を凝らしてその移動時間を数えていたのだが、のっちが中央の穴におさまり奈落が下がりきり、動き出した瞬間からステージの外周へ姿を現すまで約18秒ほど。この間に10メートルくらい移動して更に衣装の早替えまでしているのだから恐れ入る。
 
 個人的にはこのタイミングで「Dream Fighter」をまた武道館で見られたことが非常に嬉しかった。この曲が最初にお披露目されたのが、Perfume最初の武道館公演だったからだ。そして二回目の武道館ではやらなかったこの曲を、結成15年目というこの節目にセットリストに入れて来てくれた事が嬉しくてつい号泣してしまった。今やすっかりスターとなり日本だけでなく世界へも羽ばたいている3人が、今も尚「最高を求めて終わりのない旅をする」とあの頃と同じように唄ってくれているのかと思うと、湧き出る涙を堪えることなんてできなかった。
 
 「生きている間にあと何回Perfumeのライブを見れるんだろう」そう思っているうちに本編は終了した。
 
 アンコールは一曲のみ。新曲の「STAR TRAIN」だった。この歌も歌詞は「Dream Fighter」と地続きのように、ここを【スタートライン】=STAR TRAINとしてまた新たな世界へ進んでいこうというような内容だった。と思う。正直に白状すると、ここを2回見たのに私は演出に心奪われてしまい記憶が曖昧なのだ。
 曲中に三人を乗せてステージ中央の部分がドンドンせり上がっていく。その円柱状の部分に、先日発表されたPerfumeメジャーデビュー10周年を記念して一度だけ放送された記念CMが映し出されていた。それだけでも充分に心に響く演出で観客は息をのんだが、3人は3つマイクが刺さるようになったひとつのマイクスタンドに向き合って唄い、頂上でサビを唄う時にはそのマイクスタンドに設置されたカメラがくるくると三人を、そしてその後ろに居る観客も含めて映し出した。




はじめはただただ楽しかった。
お母さんたちが、最初のファンになってくれて。
夢中だった。がむしゃらだった。
どんな時も、三人一緒だった。
泣きたいことも、たくさんあった。
そのたびに、みんなの声に力をもらった。
あきらめたくなかった。
チームのみんなが、いつもそばにいてくれたから。
あなたがいたから、私はここに立っている。
ありがとう以上の言葉があればいいのに。
わたしたちだけが、Perfumeなんじゃない。
一緒に歩いてきたみんなが、Perfumeなんだ。 
WE ARE Perfume
想いが、ひとを強くする。
届けたい想いのそばに。

 
 そう、このCMにも出ていたこのメッセージはここでも生きていたのだ。
Perfumeを大好きでいる私たちも、応援しか出来ない私たちも、みんなみんなPerfumeなのだと。
支えてくれてありがとう。
応援してくれてありがとう。
そういう言葉を、今まで三人の口から何度聞いたことだろう。
私はそのたびに思っていた。あなたたちを支えているなんて私は一度も思ったことはないと。
でもPerfumeはそんな私のことも、あなたもPerfumeだよといってくれるのだ。
その懐の深さを、そして決して追いつくことなど出来ない三人の背中をこれからも追いかけていきたいと願わずにはいられなかった。
 

Perfumeありがとう。
いつも新しい感動をありがとう。
また明日からも頑張ろうと前を向かせてくれてありがとう。 
自分たちにはあなたが必要だと言ってくれてありがとう。
初めて立った武道館のステージであ~ちゃんは涙を拭きながら言った言葉。
あれから6年、私はその言葉をずっと胸に抱いて生きている。

「ありがとう以上の言葉があればいいのに」 
 

 
9/26(土) セットリスト

FAKE IT
NIGHT FLIGHT
コンピューターシティ
Pick Me Up

(すごろく)
未来のミュージアム
1mm
シークレットシークレット
エレクトロ・ワールド
Twinkle Snow Powdery Snow

GAME
STORY
Party Maker

Dream Fighter
ワンルーム・ディスコ
チョコレイト・ディスコ
Puppy Love

en.
STAR TRAIN(新曲)

(文:ユリ)