多くの女性が憧れるスリムなボディー。
でもちょっと待って。
やせすぎには思わぬ落とし穴があるんです。
ダイエット大国、日本。
女性の半数以上が減量を目指しています。
ことし、やせた女性の割合が過去最高を記録。
今や女性の8人に1人がやせすぎだというのです。
実態を調べていくと多くの女性の食事が極めて低いカロリーであることが分かりました。
今、やせすぎがもたらすさまざまな健康への悪影響。
それによる社会的負担の増加などが指摘され始めています。
増え続けるやせすぎの女性たち。
美しさと健康って両立できると思いますか?
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
体型を気にして、食べたいものを控えているという方、特に女性に多いと思いますけれども標準的な20代女性が1日に必要とするカロリーは1950キロカロリーです。
こちらにある料理。
1950キロカロリーの食事です。
ご覧のように主食、お野菜やお肉などバランスよく3食食べることが健康、そして美にも大切だとされているんですけれども実際、20代女性たちが摂取していると見られるカロリーは、厚生労働省の調べで1日1628キロカロリーにとどまっています。
これは食糧難だった、戦後直後を下回る数字なんです。
今や20代女性の5人に1人女性全体で8人に1人がやせすぎ。
やせすぎかどうか、国際的に判断する基準が体格指数・BMIです。
体重を身長で2度割ると出てくるこの数字が18.5未満ですとやせと分類されます。
ご覧のように、やせている女性が年々増える傾向にあります。
これまで男女とも肥満が問題視されることが多かったのですが、むしろやせた体型は比較的健康と見られる傾向もありました。
しかし今、やせた女性から生まれる子どもが低体重になる傾向があり、次世代にまで及ぼす影響があることが次第に分かってきました。
また若いころ、やせている女性はそうでない人に比べると高齢者になってから要介護になる割合が高いことも分かってきました。
なぜ、やせすぎの女性たちが増えているのか。
そしてどんな健康被害があるのかご覧いただきましょう。
やせすぎの割合が過去最高になった現代女性。
今、東京の非営利団体が中心となって全国1000人を超える女性に健康調査を行っています。
健康の目安としているのが体格を示すBMIの測定です。
やせすぎの女性たちは極端に低いカロリーの食生活を送っていました。
この団体では食事調査や聞き取りから摂取エネルギーは平均で1日1500キロカロリー未満と推定。
中には1000キロカロリー程度と見られる食事の女性が数多くいることが分かりました。
都内に暮らす、会社員の吉田美幸さんもそうした一人です。
BMIは、17.1のやせ形です。
典型的な一日の食事を見せてもらいました。
朝食はヨーグルト。
ココナッツオイルを入れたアーモンドミルク。
イチジク2つ。
合わせて278キロカロリーです。
お昼はサラダとキッシュで推定506キロカロリー。
間食はチョコレート3分の1で80キロカロリーほど。
そして夕食は。
帰り道につまむナッツ。
これだけなんだそうです。
3食の合計は1000キロカロリーほど。
国が定める必要摂取カロリーのおよそ半分でした。
吉田さんは、この15年こうした低カロリーの食事を続けてきたといいます。
きっかけは、19歳のころ。
海外に短期留学したところ体重が7キロ増えました。
それでも、当時のBMIは標準の範囲内でしたが友人たちの反応は厳しいものでした。
女性をやせすぎに向かわせる周囲からの圧力。
それはファッションの世界からもうかがえます。
こちらは15年前のマネキンです。
今流行している細身のジーンズをはかせてみると。
どんどん細身に向かう女性のファッション。
それに合わせて、マネキンも細身のものに作り変えています。
さらにやせすぎを生む土壌が女性の働く環境にあることも新たに分かってきました。
就業時間によって3つのグループに分け朝食をほぼ毎日食べる人の割合を調べました。
すると、長時間働く人ほどその割合が低いことが分かったのです。
推定摂取カロリーも同じような傾向にあることが分かりました。
しかし、当の女性たちはやせすぎをあまり問題視していません。
番組は、やせすぎの女性に対し今よりもっとやせたいと願う理由を尋ねたところ3人に1人が、健康によいからと答えたのです。
ところが今、やせすぎに強い危機感を抱く研究者が出てきています。
その一人、代謝を専門に研究する田中茂穂さんです。
田中さんは、極端な低カロリーが人体に与える影響を懸念しています。
人間の体は、極端な低カロリー状態に置かれるとカロリーの消費を抑えようと筋肉を減らします。
さらに代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌が減り全身の代謝が落ちます。
すると、食欲が湧かなくなり活動量も下がりさらに筋肉量が低下。
負のスパイラルに陥るのです。
健康によいと思われていますがやせすぎると、冷え性や疲れやすくなるなど体に悪い影響を及ぼすとしています。
加えて、体への影響は女性本人にとどまらず次の世代にまで及ぶことも明らかになっています。
やせて、栄養状態が悪い母親から生まれる子どもは出生時の体重が低くなる傾向があります。
日本では現在2500グラム未満の低体重児の割合が先進国の中で最も高い10%近くに達しています。
問題は、低体重児は生まれながらに生活習慣病のリスクを背負う可能性があることです。
アメリカで行われた調査では出生時の体重の低い子どもほど将来、糖尿病を患うリスクが高く特に2500グラム未満で生まれた子どもは極めて高いことが分かりました。
その理由は、最新の研究によると母親の体内にいるとき脂肪などの栄養分をより多く蓄えようとする体質がプログラムされやすいからだと考えられています。
こうした体質は生まれたあとも引き継がれほかにも心筋梗塞など生活習慣病のリスクが高まるというのです。
今夜のゲストは、女性の食生活や、健康への影響について大変お詳しい、日本栄養士会の専務理事、迫和子さん、そして2010年のミス・ユニバース・ジャパンで、モデルの板井麻衣子さんです。
板井さん、今のリポートで、本当に栄養状態の悪いお母さんからは、低体重の子どもが生まれやすいですとか、あるいは生活習慣病になる、そのリスクもあるということ、ご存じでした?
そこまで強くは意識してなかったかもしれないですね。
やはり女性の意識の中で、やせてきれいになりたい、ファッションを楽しみたいという思い自体は消すことは、やはり難しいと思うので、ただ、やはり体への影響、特にそういった妊娠・出産、次世代への影響っていうのが、そうやって続いていくというのは、やっぱり改めて知らなければいけないことだなと感じました。
迫さん、どうしてそういうことになるんですか?
若い女性が、やっぱりなんて言うんですかね、今、おっしゃったようにファッションとか、そういうふうなものに視点が行きがちである。
健康を中心に考えなければいけない、そういう妊娠期、そういう時期に、適正な食事がきちんととれるかどうか。
それの結果がやせるというふうな問題になっていくわけなんですね。
そのやせてる状態が、妊娠前、それから妊娠中、その間に、継続してしまったときに、やっぱり妊娠したからといって、そこで食事を一生懸命食べようとしても、もう実は間に合わない。
例えば、貧血の問題なんかそうなんですけど、食べ始めたから、すぐに改善するものではない。
妊娠する前から、きちんとした体を作っておく、それが次世代に適正な栄養補給をしていくために、大事になっていくと思うんですね。
小さく産んで大きく育てるとは、よくいいますけれども、そういうことでは済まされない事態なんですか?
そうですね、昔は小さく産んで大きく育てる。
これは、今のような飽食の時代になる前のお話。
食べ物が貧しい時代は、小さく産んで大きく育つ、それがよかったかもしれない。
今は食べ物があふれてる時代ですので、小さく産んで大きく育てるとなると、そうはいかない。
逆に小さく産んだことによって、省エネモードで生まれた子どもが、飢餓状態ですから、今度はどんどんどんどん出産後に、体重が増えていくときに、生活習慣病のリスクをしょい込んでしまうと、そういうことにつながっていってしまうんですね。
そして次世代だけではなくて、やせた、やせすぎの体で若いとき過ごした場合、高齢者になったあとに、介護保険の利用料が増える傾向が見られるという結果が出てるんですけれども、これは、驚きでもあるんですけれども、やっぱり、どういうことで、その介護保険を受けるリスクが高まるんですか?
やせてる状態のままで高齢期を迎えていってしまう。
そうすると、少なくとも、若いときに、本来蓄えておくべき骨の量、丈夫な骨を作っておく、これは中学生ぐらいの時期が一番大事だし、20歳までが、やっぱり大事なんですね。
その時期に栄養状態があまりよくない状態、やせてる状態でいってしまう。
そうすると、体重の負荷もかからないから、骨も丈夫に、そのあともなっていかない。
さらに高齢になると、やっぱり骨粗しょう症の問題が出てきたり、もう一つは、省エネモードで先ほども出てましたけど、本当に少ない食事で、ぎりぎり生きてる状態が続いていく。
筋肉量がどんどん。
筋肉量が。
少ない?
筋肉が減っていってしまう。
筋肉が減ると、抵抗力も免疫力も落ちていく。
負のスパイラルといいましょうか、どんどんどんどん悪いほうに落ちていってしまう、そういうふうな状態が続いちゃうわけなんですね。
体温が下がったり、あるいは妊娠しにくくなるっていうことも耳にするんですけれども。
やっぱり人が生きてくために、食事というのは、すごい生きるためのエネルギー源になるわけですね。
そうすると、生きるためのエネルギー源が足りない、本当にぎりぎりの状態。
そうすると、生存にとって必要なものだけを、なんとか維持しようとする。
そういう人間の働きがありますから、生存していくための優先順位が少し下がる。
子どもを産むとか、そういうところの部分には、なかなか栄養が回っていかないと。
ですから、妊娠しにくいという問題もあるし、それから、たんぱく質がやっぱり体の中にしっかり入ってこないと、体温の維持もなかなか難しい。
筋肉がないと、そこはなかなか難しいことになると思うんですね。
でも、やせて、自分の着たい服、着たいですよね。
これだけね、多くの人たちがやせすぎになっているというのは、ファッションの影響って、どう見ますか?
そうですね、やはり雑誌に出ているモデルの方々の細さということも少なからずは影響があると思うんですけれども、やはり第一線で活動をされているモデルの方々は、そういった葛藤の中で、やはり、いかにきちっと食べて、運動をして、ポジティブな意味でスリムな体を目指しているという方々が、やはり多いと思うので、やはり食事を制限することによって、やせようとする、それに注目するっていうのは、やはり危険なんだなということを、すごく感じますね。
モデルもされていて、モデルのお洋服っていうのから、何か、小さくなってきてるようなこと、感じられますか?
何度かですけれども、サンプルの、そもそものサイズが、サイズダウンしたというようなことは、耳にしたことがありますね。
なるほど。
さまざまな背景で、やせる女性たちの割合が増えているということなんですけれども、ヨーロッパでは、社会的な規制によって、やせすぎを防ごうという取り組みが始まっています。
行政のリーダーシップでやせすぎ対策を行っているスペインです。
首都マドリードで行われるファッションショーには9年前、世界で初めてモデルの体型に関する基準が導入されました。
ショーの前、すべてのモデルは身長と体重の測定を受ける決まりです。
そこから算出されるBMIが18未満のモデルは出場が認められません。
通常、モデルはデザイナーが自由に決めるのに対し、ここでは州や市が組織した主催団体が採用権を握り、選んでいます。
ヨーロッパではやせすぎに対する批判が強まっています。
モデルの中には、拒食症で死亡するケースもあったためです。
イギリスでは、ことし7月細すぎるマネキンに対し市民から抗議の声が上がり撤去されました。
フランスでは、やせすぎモデルの起用を禁じる法律が下院を通過。
その成立を目指しています。
スペインでは、国が情報を提供する試みも行われています。
1万人以上の女性の体を測り平均的な体型を割り出しそのデータをファッション業界に提供。
現実の体型に即したモデルや服のデザインにするよう促しています。
一方、日本ではやせすぎ対策に乗り出した企業も出始めています。
東京・丸の内を開発する大手不動産会社です。
丸の内で働く女性の健康に配慮することでエリアのブランド力アップにつなげようとしています。
そこで飲食店を回り必要なカロリーをとれるメニューの開発を依頼しています。
店にとって、女性には低カロリーをアピールするのが常識だったため、担当者は粘り強く説得しています。
一方、メニューの改善に取り組んだお店では、期間限定で和食の朝食を1日10食提供することにしました。
さらに東京・豊島区では次の世代を見据えた対策も始まっています。
対象は、容姿が気になる年頃の女子中学生たち。
この日大学の研究者が伝えたのは体温の低下はやせすぎの可能性があるという知識でした。
自分の健康を守ることはひいては、やがて生まれる子どもたちの健康につながることを伝えています。
板井さん、スペインの規制、どう見られました?
私自身は、肯定的に捉えています。
やせたい理由の一つに、周りからの目が気になる。
そうなってくると、もはや本人だけの話じゃないですし、やはりファッション業界が一つ、BMI18という数字を打ち出すことによって、当の本人だけではなくて、やはり社会に広がっていく、やはりそこに有効だと思うので、意味があることだと感じています。
迫さん、メタボに気を取られていたら、やせすぎの女性たちの割合がどんどん増えていた。
今、何を一番、訴えたいですか?
そうですね、肥満の問題は、もうすでに解消されてきている。
やっぱり、ここでやせに着目をしていかなくちゃいけないと、これは重要なことだと思います。
そして、いろんな社会的な規制、社会環境が、それを助長してますし、それと同時に、子どもたちに見せる食卓のあるべき姿、これはすごく大事なことだと思います。
子どもたちの一生を支えていく食卓の、いいものを見せてほしい。
親がそれを考えなきゃいけないそんなふうに思います。
しかし、その美とは何か。
若い女性たちに本当に、問いかけられているような、これ、課題ですよね。
食事、どうしても何を食べちゃよくないのかなと、考えてしまいがちだと思うんですけどやはり今、何を食べるべきかって少しポジティブな方向に、食べるということを持っていく、それがやはり重要なことなんじゃないかなと感じますね。
実際、ミス・ユニバースに参加されるときには、ご自身でそのことを考えさせられたということですよね。
私自身は、体重を増やすということをしたので、やはり世界の、いわゆるミスコンテストの中では、健康美が以前から重要視されているという側面はあったと思います。
本当に健康と美と、この両立を目指していこうということですね。
どうもありがとうございました。
2015/10/06(火) 01:45〜02:11
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代▽ニッポン女性は“やせすぎ”!?“健康で美しい”そのコツは[字][再]
今、日本人女性の8人に1人は“やせすぎ”。やせすぎは不妊や要介護リスクの増加など深刻な影響をもたらす。飽食の時代になぜやせすぎ女性が増えるのか、その実態を追う。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本栄養士会専務理事…迫和子,モデル…板井麻衣子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本栄養士会専務理事…迫和子,モデル…板井麻衣子,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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