こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
連日、日本人のノーベル賞受賞に日本が沸いています。
地道な研究を続けたことが世界的な発見につながりました。
そして今、身近なところにあるあるものを突き詰めた日本の研究にまた世界の注目が集まっています。
仕事帰りにビールで一杯。
ビールといえば泡。
グラスの中を立ち上り表面で消えていきます。
でも、きょうご紹介するのは消えない泡。
ウルトラファインバブル。
僅か1000分の1ミリの小さな泡です。
ここまで小さくなると水の中で浮かなくなります。
そして不思議な力を持つようになるのです。
ウルトラファインバブルを使って魚を育てると…なんと重さが通常の1.5倍になりました。
さらに医療の現場では細菌やウイルスを殺す新たな治療の切り札として注目されています。
小さな泡が世界に先駆け新たな市場を生み出すことができるか。
国や地方自治体大企業に至るまで熱い視線を注いでいます。
大きな可能性を秘めた小さな泡。
今夜はその秘密に迫ります。
私が手に持っていますこのコップ。
一見、ただの水が入っているようにしか見えませんがこの中にきょうの主役が入っています。
ウルトラファインバブルです。
日本語で極めて細かい泡という意味で、泡1つの大きさは1000分の1ミリ。
あまりに細かく肉眼で確認することはできません。
この微小な泡を入れたバブル水にさまざまな驚きの効果があることが分かってきました。
農作物や水産物では成長を促す効果。
製造分野では洗浄や殺菌効果。
さらに医療への応用までバブル水の用途は多岐に渡り多様な分野でまだまだ可能性を秘めていると見られています。
業界団体は2030年までに全世界で市場規模は13兆円に達すると推計しています。
微小な泡の研究・開発は日本が独走している分野。
特に地方自治体が力を入れていまして新しい産業の育成に地域活性化への強い期待も寄せられています。
日本発の革新的技術をどうすれば世界的な産業へと育成していくことができるのか。
その戦略が問われています。
初めにバブル水の驚きの効果からご覧ください。
広島県尾道市にある養魚場です。
2年前からウルトラファインバブルを使ったバブル水で魚を育てています。
すると驚くべき効果が表れたのです。
トラフグの場合通常の半分の14か月で出荷できるサイズに成長しました。
ウマヅラハギでは普通の海水で育てたものに比べて1.5倍の重さになりました。
この養魚場で使うバブル水を作る仕組みです。
装置を循環する水に酸素を注入します。
ポイントはこのパーツ。
中に複雑な凹凸のある金属製のプレート20枚が入っています。
ここを通った泡は流速の変化によってどんどんちぎれて細かくなっていきます。
循環を繰り返すうちに1000分の1ミリの微小な泡が出来ていくのです。
このバブル水には普通の海水に溶け込むことのできる酸素のおよそ5倍の量が含まれています。
このため魚の成長が促進されたと考えられています。
なぜバブル水では大幅に酸素量が増えるのか。
バブル水をレーザー顕微鏡で観察すると。
泡が水中にとどまっていることが分かります。
普通の泡の場合浮力によって上昇し空気中に抜け出してしまいます。
一方、大きさが1000分の1ミリほどの泡では浮力がぐっと減少。
こうなると周りの水から受ける力によって、浮かなくなります。
このため、水に溶け込む量をはるかに超える酸素をためることができるのです。
気体の種類を変えることでバブル水の活用は広がっています。
市場で水揚げした魚を浸しているこの水。
酸素ではなく窒素を使ったバブル水です。
この水には魚の鮮度を長く保つ効果があるといいます。
バブル水に浸したサバとそうでないサバ。
4日間、冷蔵保存した後に比べてみました。
浸していないサバは指で少し触れただけで身が崩れてしまいます。
一方、バブル水に浸したサバは強く押しても崩れません。
弾力があるのは新鮮な証拠です。
窒素で作ったバブル水。
酸素の量を量ると普通の水に比べ極端に少なくなっています。
この水に浸すことで、魚の表面は酸素が少ない状態になり酸化や菌の繁殖を防ぐことができると考えられているのです。
バブル水の用途は水産業だけではありません。
西日本の高速道路のサービスエリアでは空気を使ったバブル水でトイレの洗浄を行っています。
泡特有のはじけるという性質を利用しているのです。
微小な泡が汚れの付着面の隙間に入り込み、はじけることで汚れが剥がれやすくなると考えられています。
さらに、医療の現場で注目を集めているのは殺菌力を持つオゾンを使ったバブル水です。
九州大学で感染症の研究に取り組む、大平猛さん。
足を入れてください。
大平さんは糖尿病患者に見られる足の傷の治療に使っています。
糖尿病が悪化すると足先の血流が低下ししばしば傷がひどくなる場合があります。
その傷に繁殖した細菌には塗り薬が細部にまで届きにくいことが治療の壁になっていました。
そこでオゾンを微小な泡にして傷の隅々にまで送り込みます。
細菌に接触してはじけると殺菌できるのです。
また大腸菌やサルモネラ菌A型インフルエンザなどさまざまな細菌やウイルスにも効果を示すことが分かりました。
さらに大平さんは海外の研究機関と協力して世界的な脅威となっているエボラウイルスに対する効果も検証しています。
今夜のゲストは、慶應義塾大学教授、寺坂宏一さんです。
ウルトラファインバブル、きわめて細かい泡で洗浄する研究を続けてらっしゃいますけれども、今の例で見ますと、細かい空気の泡が入った水で、高速道路のトイレを洗浄していましたけど、どれほどきれいになるものなんですか?
最終的な美しさというのは、トイレの洗浄ですから、皆様が満足できる美しさということを目指しているわけでございますけれども、実際に、例えばトイレの洗浄にしましても、大量の、例えば洗剤をもし使いますと、そのあとにすすぎもいりますし、大量の水を排水に流していくということになります。
そういったことになりますと、もちろん水という資源の問題で、あまり環境によろしくないということもありますし、特にサービスエリア、あるいは高速道路といったように、自然の中に設置されているものを洗おうと思いますと、その排水が自然界に、もし出ていってしまうというようなことまで考えますと、できれば洗剤といった化学的なものは、できるだけ使わず、非常に安全な水と、それから空気、これをもって、もしトイレとか、洗うことができたら、これは非常に節約、資源を節約できますし、環境にも大変有意義であるということが言えるわけですね。
泡の威力は大変なものだという印象なんですけれども、日本はこの泡の技術で世界最先端にあると。
どういったところが強みなんですか?
もちろん日本は、古くからこういう泡の研究が、非常に得意な国ではあるんですけれども、特に泡を、こういった微細な泡を作る技術、そして測る技術、そして使う技術、どれをとっても、日本は現在、最先端にあると言えると思います。
今、VTRにありましたけれども、極めて細かい泡を使って、魚の養殖や鮮度保持や、こういったもの、できるようになったわけですけれども、どれほど細かな泡を今、使っているんですか?
現在、日本の技術をもってすれば、1万分の1ミリの、小さなウルトラファインバブルを作ることができますし、その数も、たった1ccの中に10億個を超える数の泡を入れることに、もう成功をしています。
しかし、どうしてこうした技術が発展したんですか?どこがきっかけになってたんでしょうか?
日本は、もともとこういう小さい泡を作るのが、非常に有意義であるということを、最初に考えた国です。
特にこのように、例えばカキの養殖といった水産業、こういったところに挑戦をしてみようというふうに考えた方がいるわけですね。
これによって、実際、たくさんの失敗もあったかと思いますが、カキの養殖に、しかもその養殖の速度が早まるといった画期的な効果を得ることに成功しました。
このようなことから、日本では、気泡を小さくしていくことで、もっといろいろな産業分野、あるいはもっと優れた分野ができるのではないかということで、このようないろいろな分野を考えたわけです。
もちろん、こういった医療分野、そして食品分野、お風呂のような民生の分野、そして微生物の活用といったところもありますし、もちろん、こういった水産業に対して農業と、こういったところでも非常に大きな成果が出てきています。
例えば高知県では、ショウガの栽培に、この微細な気泡の入った水を使うことで、ショウガの根が、普通の水で栽培した場合には、今ご覧になっていただいているとおりなんですが、これがバブルが入ってくると、非常に太く、大きく育つということが分かりました。
丈夫そうですね。
これによって、得られた農産物の付加価値というのも、大変に上がってきたということが実現できたわけですね。
これ、どういった方々が開発してるんですか?
これは主に日本の各地方の方々が、特にその中でも、中小企業の方々、そういった方々が、一生懸命、いくつかのリスクを越えながらも、努力をされて、有意義な結果を出されています。
西日本にかなり集中してますね。
中小企業ですか?
そうですね。
例えば農業従事者の方、あるいは漁業従事者の方も、決して大きな大企業ではありませんけれども、ご覧いただいていますように、いくつかの地方では、すでにこういった取り組みが進んでいるところでございます。
そしてさらに日本は、その測定、そして使いみちで、世界をリードしているとおっしゃいましたけれども、それ、具体的にどういうことですか?
このように、小さな泡の技術がだんだん日本では、実現できるようになってきますと、ついには人間の目では見えないサイズにまで到達してしまったわけですね。
そうなると、直接見ることができませんから、測定器、これの開発が大変重要になってきます。
ところが、泡の、しかも、そういう小さな泡というのは、これまでなかったわけですから、当然、測定器もなかったわけですね。
そこで日本の技術者は、もともと例えば固体の粒といった別の用途に使われていた測定器を、泡でも測定できるように、一生懸命チューニングをして、開発を進めてきたわけです。
この成果によって、今では目に見えない非常に小さなサイズの泡でさえ、測定できる技術、装置、こういったものが世に出てくるようになったわけです。
じゃあ、その泡のサイズ、そして泡の密度なども分かるようになって、さらに例えばショウガには、どれぐらいの泡が最も適しているのか、洗浄には何がいいのか、そういったことも相当積み重ねられてきているのでしょうか?
そうですね。
日本ではこのように、たくさんの実用例、あるいは経験が積み重ねられてきましたので、例えばいくつかの用途によっては、このサイズの、あるいはこの程度の数密度、1cc当たり何億個ぐらいの泡がいると、最大の効果が出るのか、こういったところの経験がたくさん積み重なってきているわけです。
さあ、新たな産業として期待されています、このウルトラファインバブル、バブル水なんですけれども。
成長産業にしていくためには、品質、そして効果の信頼性を構築していくことが必要です。
今ウルトラファインバブルの研究者たちが頭を悩ませている問題があります。
主にインターネットを通じて販売されているこれらの商品。
ウルトラファインバブルに匹敵する細かな泡が含まれていると表示されています。
多くは美容や健康への効果を期待させるキャッチコピーが書かれていますがバブル水の美容や健康への効果はまだ分かっていません。
実際に商品を分析機器にかけて調べたところ。
まあ、こうありますけれどもほとんど出てないですし。
微小な泡はほとんど検出されませんでした。
本来のバブル水であれば1000分の1ミリほどの大きさの泡が、グラフに山となって現れるはずなのです。
効果や品質を担保する規格がまだ存在しないバブル水。
今、この分野に携わる人たちの間では、世界市場が広がる前にバブル水自体の信用が失われてしまうとの懸念が広がっています。
こうした中、企業や大学研究機関などで作るファインバブル産業界は国際規格を作ろうと動き始めています。
2年前、詳細な案をまとめ工業製品の国際規格を取り決めるISOに提案しました。
その内容です。
まず泡を大きさに応じて3つのランクに分けます。
そして泡の密度によってそれをさらに3つに分割。
より細かく密度の高い泡を頂点に品質によって泡を差別化することを目的としています。
さらに、大きさや密度の基準を満たしたものには認証マークを与え、品質を保証することも目指しています。
ところが、日本の提案する国際規格に対し難色を示す国があります。
この市場の将来性に注目している韓国もその一つ。
高い技術力を持つ日本の独走を許すことになると懸念しているのです。
その国際規格に向けて、日本の戦略の中心はなんですか?
日本では日本独自の優れた技術、これを手厚く維持するために、日本に独自の得意な分野をアピールできるような規格っていうのを、常に提案をし続けているところでございます。
なるほど。
日本が本当に細かい泡が作れる技術があるならば、その細かい細かい技術が高く評価されるような規格というふうに思っていいわけですね。
一方で、日本国内ですけれども、世界に先駆けて技術が生まれた。
それを世界的に通用する産業に育成していくうえで、国内で今、やらないといけないことはなんですか?
国内では、先ほど、お話しましたように、例えば農業、その他食品とか、いろいろな分野で成果が出つつあります。
その中には、たくさんの失敗も、いろんな情報もあったかと思います。
それを今、一堂に結集をして、情報共有をして、その開発をスピードアップする。
これが大変重要な日本での必要なことになっていると思います。
今、横のつながり、情報共有はどんな状況ですか?
現在は、各方がいろいろな成功例をお持ちだと思いますが、それがまだ十分になされていない状況だと思います。
これを一堂に結集させて、日本のオールジャパンで、この情報を共有して進んでいくことが、大変重要な日本の課題になってるかと思います。
取り組もうとしていることが、すでに失敗した例を、また行わなくてもいいように、情報共有していくということですね。
それが非常に開発を加速させる大変重要な技術になるわけですね。
本当に2030年、13兆円の市場が出来ますかね?
いろいろな新しい分野が、これから必ず開拓されると思います。
2015/10/06(火) 19:32〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「小さな泡が世界を変える!?日本発・技術革命は成功するか」[字]
千分の1ミリほどの目に見えない小さな泡がさまざまな産業で革新を起こしつつある。養殖魚や農産物の成長促進、食品保存や細菌予防、洗浄力アップ。驚きの可能性を紹介する
詳細情報
番組内容
【ゲスト】慶應義塾大学教授…寺坂宏一,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】慶應義塾大学教授…寺坂宏一,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:8680(0x21E8)