任せるのかという点も検討課題になってくると思います。
今井純子解説委員でした。
ドラマチックな人生を歩み歴史に名を連ねる偉人たち。
その生きざまや人柄感情のひだまでを今に伝えるのが彼らの直筆の「書」です。
「臨書」とは書を通して歴史上の人物に触れる事。
一点一画の強さかすれまでも再現しその人生を追体験します。
石川さんは長年書とは何か独自の視点で探究。
臨書を通して多くの人物と向き合ってきました。
今回は女優の羽田美智子さんが石川さんと共に書をめぐる旅に出かけます。
書からその人物がどういう人だったのかどんな生き方だったのか人生だったのかというところにアプローチする方法があるんだというのを聞いてどういうものが発見できるのかとっても楽しみです。
ちゃんと筆を持つのは小学生以来。
石川九楊先生に教わりながら歴史上の人物に近づきたいと思います
石川さんが今臨書をしています。
書いているのは奈良時代の光明皇后の書。
1,300年前に書かれたもので女性の書としては日本最古と言われています。
もともとは古代中国の武将楽毅について書かれた書物で大陸伝来の漢字を学ぶために皇后が書き写したと伝えられます。
この書を残した光明皇后とはどんな人物だったのでしょうか。
光明皇后は奈良時代に国造りを進めた聖武天皇のきさきです。
疫病や争乱が続く中皇后自ら貧困にあえぐ人々を救うための医療施設などを造りました。
また国家事業である東大寺の大仏をはじめ興福寺法華寺などの建立にも力を尽くしました。
聖武天皇を支え自身も積極的に政治に関わった女性です。
石川さんはその光明皇后の素顔に臨書で迫ろうとしています。
あぁ…なんか息が止まるような集中で見せて頂きましたけど…。
先生?あっはい。
はい。
これが臨書ですよね。
そうですね。
言葉がどういうふうに書かれているかっていう事を実際に書いてみてそしてそれを読み取ると。
筆の強さとか運び方とかを想像する…。
光明皇后がどんなふうに書いてたかっていう事をもう一回追体験してみると。
石川さんは光明皇后をどんな人物だと感じたのでしょうか。
拳立つ…。
ちょっと力があるって事ですか?そう。
その一点一画が相当強い。
それでグッと沈み込む度合いも強いですしね。
男勝りというか男のようなとかそういうところはよく分かりますね。
文字の傾き震えかすれなどをありのままに写し取る事でその書きぶりから人物像の一端が分かるのです。
ありのままに写し取るには注意すべきポイントがあります。
1つ目は筆が紙に当たる「角度」。
2つ目は筆が進む「速度」。
3つ目は筆の穂先がどれくらい沈むかの「深度」。
この3つの点に気を付けて書を写していくと書いた人の心情や性格まで感じ取る事ができます。
書を通じ過去の人物に触れる臨書の世界。
いよいよ歴史に出会う旅の始まりです。
今日から8回にわたり細川ガラシャ与謝野晶子宮沢賢治岡本太郎らの直筆に出会い臨書に挑戦。
女と男の素顔に迫ります。
今回はおよそ400年以上前の戦国時代天下統一を果たしたご存じ太閤・豊臣秀吉です。
まずは秀吉の直筆を求めて私たちは大阪城を訪ねました。
大阪城天守閣には秀吉ゆかりの品が数多く所蔵されています
これから本当に秀吉が書いた…楽しみ!こんにちは。
(跡部)こんにちは。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ふだん非公開の秀吉の直筆。
一体どんな「香り」がするのでしょうか
へえ〜!うわ〜…。
これ直筆の…へえ〜。
でも歴史上の人物の方の直筆を拝見できるってすごいですね。
九楊先生も初めての対面です
なかなかきつい字ですよ。
「きつい」「強い字」という秀吉の書き殴るような直筆。
「まんどころ」つまり正室・おねに思いをぶつけています。
何て書いてあるんでしょうか?全然読めませんが…。
(跡部)始まるのはここから。
えっそこから始まるんですか?この5行は何ですか?これは「追って書き」といって追伸に当たる所なんですけれども。
え〜!?実は当時これがごく一般的な手紙の書き方でした。
まず本文を書きそして余白に追伸を書き更に書き足りなければ本文の間に書きます。
本文はここから。
「このあいだは文…」。
「文」ですね漢字の。
「文にても」…。
もうひたすら「どうしてるんだ」「手紙を欲しい」と言ってる文面ですね。
へえ〜!秀吉は天正18年天下統一の総仕上げに小田原城を攻めた時戦況を伝える手紙をおねにしたためました。
豊臣方は大軍で城を包囲するも敵もなかなか降伏せず長丁場になりそうだと踏んだ秀吉。
そんな状況で秀吉は正室のおねに一体どんな内容の手紙を書いたのかというと…。
まずおねからしばらく手紙が来ない事を案じ「返事を待っている」と書き母の「大まんどころ」そして子供たちの様子を気遣い更に「城を百も落とした」と得意げな戦況報告もしています。
秀吉の直筆にはもう一つ特徴が。
ひらがなが目立ちます。
これは明智光秀の直筆。
ご覧のとおり当時の武将は漢字を使う事の方が一般的でした。
武家の出身ではない秀吉は漢字よりもひらがなでより親しみやすく相手に気持ちを伝えようと懸命に手紙を書いていた事がうかがえます。
ほんとにお書きになったんですよね。
はい。
筆まめですので。
筆まめだったんですか?はい。
しょっちゅう書いてます。
自筆で書いてるものも信長家康と比べても秀吉が圧倒的に多いんですね。
そうなんですか。
秀吉は代筆も含めると生涯でおよそ1万通に及ぶ手紙を出したと言われるほどの筆まめでした。
これは秀吉が晩年にもうけた息子に宛てたもの。
そこには…。
「大坂で会った時にはくちすい申さず」。
つまり「キスができなかった」。
「今度会った時はキスがしたい」。
まだ字も読めない息子に宛て手紙を書く秀吉。
57歳にして跡継ぎを授かった喜びが伝わります。
そして「茶々」の名で知られる側室の淀に宛てた手紙でも子供の様子を案じつつこんな事まで。
「留守中は火の用心をしなさい」。
太閤・秀吉の世話焼きぶりが垣間見られます。
数々の文面からうかがえる秀吉の家族への気遣い。
その書きぶりを詳しく見てみると更に秀吉の新たな一面を読み取る事もできました。
気遣って美しく書こうとか整えようとかいう事ではなくてともかく思いつく事を次から次にどんどん。
だから墨をつけて書き始めてそれでかすれたところでも平気で書きますよね。
要するに細かい事に何も気を遣わないでまさに堂々と思いついた事を次々…。
だから墨をつけてかれるところまで書いていってそれをまた墨をつけてそしてまたかれるとこまで書いていってっていうですね。
本日の臨書は豊臣秀吉のおね宛ての書状。
秀吉の更なる素顔へと迫る。
九楊先生お願いします。
秀吉の書ですよね。
この中のどの字を臨書するんでしょうか?一番最初の冒頭部分っていうのはかなり意識して書く所で秀吉の書の特徴が隠れてると思いますのでこの第1行目を書いてみます。
これ。
臨書を行うのは手紙の1行目。
「このあひ多ハ文」の7文字。
「た」は「多」という漢字。
「は」はカタカナ。
そして最後は漢字の「文」。
あぁ〜…フフッ。
ハハハハ!一度は手本の方だけ見て手元見ないで。
手元を見なくてこれがどんなふうな過程で書かれてるかっていう事をたどってみる。
羽田さん九楊先生のアドバイスどおりまずは手本だけを見ながら書いてみます。
フフッちょっと…。
ちょっと大きかった。
洋服に書いちゃうとこでした今。
羽田さんの初めての臨書は半紙からはみ出してしまいました。
あんまり力を入れようと思わないで…。
力を入れようと思わないで。
筆先が紙に当たるその具合だけで。
羽田さん気を取り直して再び臨書です。
ん?ハートになっちゃった。
フフフッ!ハハハハハ!ハートになっちゃいましたちょっと。
フフッこれ秀吉が書いたと思ったらちょっとおかしいですよね。
ここで九楊先生が注目したのは書き出しの「こ」という文字。
「こ」っていうのは「己」という字からきましたからだから普通こう書くんですよ。
大体これが「こ」なんですけどいきなり逆に入ってくるでしょこう。
う〜んそうですね。
それを2回繰り返す。
これは何でなんですか?なぜか分からないですけどむぎゅむぎゅっとこうね。
だから抜けるんじゃなくてすごいぎゅっとこう。
とまってるんですね。
ねじ伏せていったんです。
ねじ伏せですよ。
僕は「ねじ伏せ」と見ますね。
ねじ伏せていく。
あときつい書き出しですね。
いきなり。
「ねじ伏せ」の書きぶり九楊先生の臨書です。
あぁ〜なんか…。
え?更に気になる点が見つかりました。
この「ひ」の最終筆とまあこれは「多」の第1筆でもありますけどこれもむぎゅむぎゅっとしてる。
このぎゅっぎゅっていうのこれはちょっと…。
普通はきれいにこういうふうにとめるんですけどね。
くの字形に折るようなね。
への字形っていうかきゅっと折り込むような。
それと「ハ」がこんなくるわけないやん。
「ハ」はこうでしょう美しくね。
なんか有無を言わさんっていうか…。
う〜ん…なんかそういう感じがしますね。
臨書してると。
ふんぞり返って書くといいんでしょうか。
その方がいいかも。
なりきって。
羽田さん九楊先生の指導を受けて再び筆を執りました。
あっ…。
足りなくなっちゃいました。
いいじゃないですか。
いいね。
いいいい…。
ここもちょっと違うけど。
一筋縄ではいかない秀吉。
素顔に迫る事ができたのか。
僕が駄目やな。
九楊先生どうも秀吉の書きぶりがつかみきれない様子です。
そっかここまで動くんだ。
ふ〜ん。
これはまだこっち開くね。
これなんかここまで来るでしょ。
こんな所が書ききれないよね。
どうも納得がいかないようで…。
あっ気に入らない…。
う〜ん…。
どういう所がですか?やっぱこれが書けないのね。
「ハ」の2画目がこんな形では書けないっていうところがまだ…秀吉のところまでは届かない。
基本を踏まえた人はできないような事をこの人やるよね。
基本を踏まえた人ができない事をやる。
うん。
書の基本から外れた秀吉の書きぶりをなかなかとらえる事ができません。
難しいね。
たくさん臨書されていても秀吉の字っていうのは難しいですか?難しいね。
つかみきれんものがありますね。
それはだからもうちょっと…基本的なリズムが相当違うのかも分からんね。
まだ秀吉には届きません。
秀吉の肉筆が語るその素顔に九楊先生は臨書でどこまで迫る事ができたのでしょうか。
「捕まえた」ってどういう事ですか?秀吉を捕まえたって事ですか?捕まえた召し捕ったって。
「秀吉を捕まえた」。
目で追っていくと大体力の具合分かるんですよね。
「こんなんだろう」と。
それを筆で書いてみるとそうすると自分が思ってたのとはちょっとずれてるんですね。
それが形の違いになって現れてくるわけ。
やっぱ最初になぞった時のように「むぎゅむぎゅ」ですね。
「むぎゅむぎゅ」。
少なくとも「このあひ多ハ文」の所はやっぱりねじ伏せるっていうね。
最初っからねじ伏せる。
もう我々の想像が届かないような世界を生きてるって事は間違いないですね。
対人関係人間に対する見方なんかでもね。
ねじ伏せるように思いを伝える手紙。
僅か数文字からも秀吉の人物像が浮かび上がりました。
私は初めて臨書をして指先から秀吉という人を感じる不思議な感覚を味わいました。
それは今までドラマや本の中で知っている秀吉とは違うものでした。
もっと知りたい。
もっともっと書きたくなりました
また次回からは歴史上の女性の方の書も出てくるのでまたその人たちの人生に触れる事が面白いな…これは女優としてもほんとに興味深いものだなと思いました。
(テーマ音楽)2015/10/08(木) 10:15〜10:40
NHK総合1・神戸
趣味どきっ! 石川九楊の臨書入門[新]全8回 第1回 臨書とは人と時代に出会う旅[解][字]
「臨書」とは、歴史上の人物の「書」を鑑賞し、書いてみることでその生き様や感情のひだをも読み解くこと。秀吉、与謝野晶子、岡本太郎らの直筆の書が放つメッセージとは?
詳細情報
番組内容
「書」ほど、その人物や生きた時代を写すものはない!と語る書家の石川九楊さん。長年、偉人たちの書と向き合い、一点一画の強さ、かすれまでも再現、つまり「臨書」を通して幾多の人と時代に出会ってきた。第1回は、奈良時代に書かれた現存する日本最古の女性の書や秀吉が妻おねに宛てた直筆の手紙を鑑賞。一筋縄ではいかない秀吉の書と格闘する九楊先生、臨書初体験の羽田美智子。2人は秀吉にどう立ち向かったのか、必見!
出演者
【出演】書家・京都精華大学客員教授…石川九楊,【生徒】羽田美智子,【出演】大阪城天守閣主任学芸員…跡部信,【語り】内藤啓史
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
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