(橘菓乃子)
古来菓子といえば木の実や果物のことでした
江戸時代に入り砂糖が手に入りやすくなったことで今日のような和菓子が誕生し京では御所を中心に花鳥風月を模した雅な菓子が
江戸では幕府を中心に白砂糖をふんだんに使った高級な菓子が作られました
これら御所や幕府への出入りを許された菓子屋は特別に御用菓子屋と呼ばれていまして…
私の家もそんな御用菓子屋の一つ
赤坂に店を構える橘屋です
そして今日は橘屋17代目私橘菓乃子の結婚式なんです
わあ菓乃子きれい!おめでとう!
(千葉公平)おめでとう。
おめでとう…。
くそっめでたくない。
やっぱり言いたくないな…。
あっ小百合おばさん。
(橘小百合)何をうろうろしてんのよ公平ちゃん。
でもまあ立派になって!今は佐賀大学で犯罪学の教授ですってね。
はい。
まあ。
今日は遠いところ本当にありがとう。
あっいえ。
私もこれでひと安心。
息子夫婦が亡くなって27年。
5つだった菓乃子が花嫁さん。
幼なじみとしてあなたもうれしいでしょ。
さあお祝い言ってやってちょうだい。
さあさあさあ…。
いいですよ。
そんな改まって…。
はいはい。
さあさあ。
礼二さん。
まだ着替えてなかったの?早く早く!式始まっちゃうよ。
(岩崎礼二)長い間お世話になりました。
えっ?今はまだダメなんです。
まだダメって?お嬢さんとは一緒に暮らせません。
どうかお元気で。
えっ…?ちょっと…!待って!礼二さん!ちょっと!待ってよ!礼二さん!礼二さん!礼二さん…。
(エンジン音)いってらっしゃいませ。
(谷口昌雄)ショッピングセンターがオープンできるかどうかはお2人の出資いかんにかかっておりますのでひとつよろしくお願いいたします。
(谷口)おお〜。
(堀内真吾)堀内隆右衛門作寿賀台でございます。
はあ〜見事なもんだ隆右衛門さん。
すいません!あの…礼二さんに会わせてください。
ここで働いてるって聞いてきたんです。
菓子職人の岩崎礼二さんです。
(堀内鞠子)あのすみませんけど。
あっ私ですか?私は赤坂の和菓子屋橘屋の橘菓乃子です。
あの…ずっと捜してきたんです。
ここで働いてるって聞いてきて。
お願いします。
早く会わせてください。
わかりました。
じゃあ中へどうぞ。
はい。
(堀内隆右衛門)ああー!
(山形常夫)明かりを!早くしろ!明かりだ!どうした?何があった?親父!《落とし文だわ》
(柳沢正吾)茶会開始後30分で油が切れたんですね。
灯火器にはどなたが火をつけられたんですか?父です。
夜噺の茶事では明かりも重要な道具になりますので。
じゃあ油を入れたのも隆右衛門さん?はい。
菓子は私が。
花は家内が準備いたしましたがあとの設えは亭主である父が。
犯人は外から入ってきたんだ。
言っておくが俺達じゃないぞ。
(山形)ええ。
暗くて何が起こってるのかわかりませんでしたが確かに人が入ってきた気配はありましたよ。
(柳沢)水屋におられたのは?
(真吾)私と菓子職人の岩崎礼二です。
作業中でしたので出たり入ったりですが…。
礼二さんはどこに?
(咳払い)その…誰だっけ?岩崎礼二さん。
岩崎礼二って人は?おい。
呼んでまいります。
(堀内匠)真吾どうした?この騒ぎは?
(柳沢)あなたは?この家の長男です。
ああご長男ですか。
この時間までどこにいらしたんですか?何があったんだ!親父が殺された…。
えっ?
(久保田光)警部!
(柳沢)うん?凶器が発見されました。
よし。
(カメラのシャッター音)待て。
(柳沢)「礼二」…?
(柳沢)久保田!緊急配備!
(警官)警部。
(柳沢)おう。
何!?久保田!はい。
(柳沢)岩崎礼二だな?はい。
(柳沢)お前が堀内隆右衛門殺ったのか?久保田署に連行しろ。
(久保田)はい!礼二さん…。
礼二さん!ねえ何があったの?どういうことなの!?困るよ。
困るよあんた。
離してください!礼二さん!ねえちょっと…礼二さん!礼二さん!ちょっと!あんた岩崎礼二の何なんですか?婚約者です。
先生犯罪学の特別講義今度はいつですか?先生結婚してるんですか?してないわよ。
指輪してないもん。
(メールの着信音)はははは…。
あれ?えっ?誰?彼女から?ああちょっとちょっと…。
誰?誰?ちょっとごめん。
「助けて!」?あっごめん。
ちょっと急用。
(一同)先生〜!公平!礼二さんが逮捕されたんだって?そうなのよ。
もう違うって言ってるのにさ警察ってどうしてああもわかってくれないのかな?とにかく落ち着いて。
一刻も早く礼二さんを助けたいの。
お願い。
力貸して。
犯罪学者なんでしょ?わかった。
わかったって。
千葉先生!いやぁ去年の猟奇殺人の件では本当にお世話になりました。
あれは先生のお力がなければお宮入りでした。
ああどうも。
今回はまた先生のほうからご連絡いただきまして。
どうも…。
あれ?あんたまだいたの?だから礼二さんはどうなったんですか?しつこいなぁ。
民間人に捜査の状況を教えるわけにはいかないって言ってるでしょう。
いや私はですねただの民間人じゃないんです。
あの私は…この千葉先生の助手です。
えっ?はっ!?イテテ…!ははは…優秀な学者で。
学者…?はい。
ガイシャは伊万里の和菓子店清甘堂の主人堀内隆右衛門。
同席者は丸菱デパートの社長の山形常夫とホテルチェーンのオーナー谷口昌雄の2名です。
3名ともみかし祭の世話役をやってましてね。
まあ時々茶会だ歌会だのと集まっていたようです。
みかし祭…?ええ。
中嶋神社のお祭りでねお菓子の神様に寿賀台っていう祝い菓子を奉納するの。
その寿賀台を作る職人のことを菓子守っていうんだけど堀内隆右衛門さんはその菓子守だったのよ。
へえ〜。
寿賀台に菓子守か。
警部さん隆右衛門さんが殺された時寿賀台が割れてましたよね?ああ…。
あれは暗がりの騒動で誰かがひっくり返したんでしょう。
砂糖菓子ですからね簡単に割れますよ。
そりゃそうですけど…。
暗がりでの犯行。
犯人は同席者か?侵入者だとしても茶会の席順がわかる人間の仕業ですね。
ねえ犯人はどうしてわざわざ茶会の日を選んだのかしら?人が多く集まるってことはそれだけリスクも高くなるわけでしょ?うん…。
見せしめかもしくは隆右衛門さんを殺すことで何かを訴えようとしたかだな。
何かのメッセージってこと?ああ。
まあ岩崎礼二が自白すれば全てははっきりしますよ。
彼は何と言ってるんですか?
(柳沢)それがひと言も口を利かんのですよ。
礼二さん犯人をかばってるんだわ。
あのね…いいですか?茶室の明かりは主催者の知らない間に油を抜き取られて途中で真っ暗になった。
岩崎礼二は茶会の前にたった1人でその茶室にこもってた。
その時に油を抜き取ったに決まってるでしょう。
茶室にこもってたのはわけがあるんです!ろうそくの明かり月の輝きお日様の光…。
お菓子の見た目は光の具合で変化するんです。
職人は食べる瞬間の空気まで想像して色を決め香りを決め味を決めるんです!茶会の菓子を作ったのはガイシャの息子の堀内真吾氏です!あの落とし文礼二さんが作ったんじゃないの?ありがとうございました。
(梅村鉄造)もうお仕事ですか?
(ため息)身内の不幸ぐらいで仕事を休むな。
親父ならきっとそう言うさ。
奥様がお亡くなりになった時も旦那様は菓子を作ってらした。
寿賀台ですか?
(真吾)なかなかうまくいかなくてね。
何とかみかし祭までには自分の手で寿賀台を作りたいんだ。
ほう…。
皆さんぼちぼちお集まりのようですが。
すぐに行く。
(水島翔子)「14代目清甘堂当主として長男堀内匠を任命する」。
「遺言者の所有する同社の資産を全て長男堀内匠に定める」。
「遺言者堀内隆右衛門」。
ご確認ください。
あなた!やめてよ!親父は俺を見捨てたんだよ!なのに…こんなもの!こんなもの…!何で…何で兄貴なんだよ!ホントはお前も腹ん中じゃ笑ってんだろ!あなた!
(鞠子)あなた!ねえちょっと待ってあなた!
(真吾)うるさいな!大丈夫ですか?あっすみません。
みっともないところお見せして。
あっいいえ。
お店開けてらっしゃるんですね。
決まった日以外は休むなという義父の言いつけでしたから。
あの…今日は何か?お茶会の時に出されてた落とし文をいただきに来たんですけど…。
わざわざ落とし文を。
ありがとうございます。
さあどうぞ。
(鞠子)水島先生お疲れさまでした。
真吾さんショックだったんじゃないですか?ええ…。
私も驚きました。
まさか隆右衛門さんが長男の匠さんを跡取りに指名されるとは…。
えっ?あっこちら礼二さんの婚約者の橘菓乃子さんです。
礼二さんの!?ええ。
婚約者とはいっても礼二さんには逃げられましたけど…。
(鞠子)それでここまで追いかけてこられて…。
ええ…。
でも礼二さんは師匠に当たるご主人を殺めるような人間じゃありません。
ご心配ですね。
私清甘堂さんの顧問弁護士をしております水島翔子です。
私でお役に立てることがあればおっしゃってください。
ああ…弁護士さんですか。
心強いです。
では私はこれで。
「振り留みかねいかばかり」…。
えっ?あっいえ。
さあお店のほうどうぞ。
「振り留みかねいかばかり」…。
悲しい響きだね。
堀内真吾作落とし文でございます。
お茶会の時もこれと同じものを?はい。
奥様!またこの花が…。
ああすみません。
水仙の花束が今月に入って4つ目ですね。
4つ?どうぞごゆっくり。
あの…今月だけで4つも花束が届いたんですか?はい。
失礼ですが同じ人が送ってくるんですか?わかりません。
匿名で送ってくださるので…。
匿名で水仙…。
あっ!茶会のお菓子は礼二さんが作ったものよ。
間違いない。
どうして?落とし文っていうのはね丸まって落ちてくる葉っぱのことをいうんだけど枝から離れる前に丸まるのよ。
だから葉っぱの先からこう巻き込まれるわけでしょ。
だから軸を外にして作るんだって礼二さん言ってた。
茶会の落とし文はその言葉どおりに軸が外になってたの。
だけどさっきお店で食べた落とし文は葉先が外で軸が中になってた。
あの2つは作り手が違うわ。
茶会の落とし文は礼二さんが作ったもの。
それを真吾さんが作ったことにしてお客に出したのよ。
何のためにそんなことしたんだろう?う〜んそれなのよねぇ。
菓乃子さん!ああ!昨日は大変でしたね。
ずっと警察に?うん…。
ごめんね。
忙しいのに呼び出して。
いえいえ。
あっほら昔橘屋にいた鉄じい。
子供の頃よく遊んでもらったでしょ?ああ…懐かしいな。
隣の公平です。
あっ泣き虫の公平ぼっちゃん。
いやぁ立派になられて。
まいったな…。
ははは…。
ねえ鉄じい。
私どうしても礼二さんが犯人だって思えない。
無論私もです。
だから協力して。
礼二さんきっと誰かをかばってる。
そのために黙秘してるのよ。
(ため息)みんな真吾さんは名人だって言ってるけど本当?はい?さっきね真吾さんが作った落とし文食べたんだけど…。
あれ名人の味じゃないわ。
いや真吾さんは時間はかかるかもしれませんが必ず名人になられるお方です。
ずばり訊いていい?はい。
まだ未熟な真吾さんの代わりに礼二さん影武者やってたでしょ?そんなことは…。
清甘堂の名前を汚したいわけじゃないの。
ただ礼二さんが何を隠そうとしているのかそれが知りたいの。
鉄じいの口から言えるわけないか…。
いや確かに今の真吾さんには名人といわれるだけの腕はないかもしれません。
しかしそれが外に漏れますと菓子守の後継者は他の菓子屋に譲らなきゃならない。
旦那様はそれを心配なすって…。
そういうことか…。
(匠)今の清甘堂に寿賀台を作れる職人はおりません。
清甘堂当主として申し上げます。
寿賀台の奉納は隆右衛門の代で終わりにいたします。
みかし祭は年に一度菓子職人が中嶋神社に集うお祭りなのよ。
ほら伊万里はお菓子発祥の地でしょ。
これが大陸から伝わってきたお菓子の木。
橘じゃないの?そう。
この橘がお菓子のルーツ。
昔はね木の実や果物をお菓子として食べてたのよ。
へえ〜。
みかし祭ではね菓子守がこの橘の実を食べて全国の菓子職人の息災を祈るの。
菓子守は寿賀台を作る職人のことだって言ってたよね。
そう。
菓子職人にとって最高に名誉なお役目。
ここ何代かは清甘堂が菓子守を務めてる。
じゃあ次は真吾さんが菓子守に。
う〜ん本当ならね。
でも14代清甘堂当主は菓子職人じゃない匠さん。
ねえ!さっきの弁護士さんのところに行ってみない?ええと…隆右衛門さんの遺言がいつ書かれたかでしたね。
はい。
私が清甘堂の顧問弁護士になってすぐでしたから…。
あっここに記録があります。
2年前ですね。
2年前か…。
還暦の記念に書かれたようですよ。
2年前にはすでに匠さんを跡取りにすることを決めていたってことですね。
そうなりますね。
隆右衛門さんはどうして菓子職人でもない匠さんを跡取りにしたんですかね?もともと店の経理なんかは匠さんが見てらっしゃいました。
匠さんの本職は経営コンサルタントですから。
隆右衛門さんも経営の面で匠さんを頼りにしてらしたんじゃないでしょうか。
真吾さんのことは信頼してなかったってことか…。
ええ。
礼二さんまだ警察に?はい。
黙秘を続けてるんです。
きっと犯人をかばってるんだと思います。
そうですか。
私達で真犯人を見つけるしか礼二さんは助けられないと思うんです。
水島先生どうか協力してください。
ええもちろんです。
失礼。
大丈夫ですか?ごめんなさい。
私はこれから打ち合わせがありますので失礼します。
じゃああとよろしくね。
はい。
立派なひな人形ですね。
翔子先生のです。
ご両親の形見だとかで1年中飾ってるんです。
菱餅だ。
京都の梅寿堂さんの菱餅です。
出張のお土産です。
ちょっと…何なんですか!すいません。
ほらもう帰るよ。
はい…。
あっ!あっ!ふふ…。
すいません。
あの…ついいつもの癖で。
こっちまで恥かくんだからね。
ごめんなさい。
ははは…もういいよ。
それよりさ俺ずっと気になってたんだよな。
鞠子さんに届けられた花束のこと。
今月に入って4つって言ってただろ。
全部水仙だって言ってたね。
同じものを同じ人に送り続ける場合送り主はその品物に託して何かを訴えようとしていることが多いんだ。
水仙に託されたメッセージか…。
隆右衛門さんを殺した犯人も恐らく何か訴えたいことがある。
でないと茶会の日を選んだりしないからね。
じゃあ水仙の送り主が隆右衛門さんを殺した犯人だ!それはわからない。
けど無関係ではないと思うんだ。
う〜ん…。
鞠子さんと山形さんだ…。
あの男鞠子さんを見張ってたな。
うん…。
寿賀台はもう終わりだ。
真吾さんそれでよろしいんですか?兄貴が当主として決めたんだよ。
俺に何が言えるんだよ!寿賀台だけはご自分でお作りになるんじゃなかったんですか?うまい!さすが佐賀牛味が違う。
いやぁそうですか。
鞠子さんと山形さんが…。
でも真吾さんには内緒よ。
はっきりわかったわけじゃないから。
いや山形さんは以前から鞠子さんにご執心でね。
鞠子さんのほうはお困りだったようですが…。
でも今日は鞠子さんのほうが積極的だったような気がするな。
う〜ん…そうですか。
いや真吾さんのお耳に入る前に別れていただくよう私からお願いしてみます。
だからまだそうって決まったわけじゃ…。
う〜ん…。
ねえ。
隆右衛門さんが先に知ったとしたらやっぱり鉄じいと同じことしたんじゃない?真吾さんにバレる前に2人を別れさせるってこと?そう。
それに抵抗した山形さんが隆右衛門さんを…。
いや。
それは考えづらい。
どうして?あの茶会には谷口さんという人もいたんだよ。
いくら暗がりだからってそれは無理だよ。
じゃあ誰よ。
公平さ犯罪学者なんだから犯人ぐらいすぐわかるでしょ?いくら犯罪学者だからって…。
また食ってるし。
(小百合)ごめんください。
はい。
おお…。
ああどうぞ。
小百合おばあちゃん!どうしてこんなとこに?中嶋神社のみかし祭に招待されてるのよ。
みかし祭ってまだ4日も先じゃない。
いろいろ用があるのよ。
それよりあんた!仕事もほっぽり出していいと思ってるの!?資料室は空っぽ。
職人さん達だって味見係がいないって困ってるのよ。
だってね礼二さんが大変な時に帰れるわけないでしょ!あんたって子は…。
突っ走ると周りの迷惑お構いなしなんだから。
公平ちゃんにも鉄造さんにも迷惑かけて。
そんなだから礼二にも嫌われたのよ。
嫌われたなんて…。
わあきれい!
(小百合)昔佐用姫という女性が朝鮮に出兵する恋人大伴狭手彦をこの鏡山から見送ったの。
佐用姫は狭手彦が戻ってくるのをこの場所でずーっと待ってとうとう石になってしまったのよ。
石になるくらいだったら追いかければよかったのに。
行けなかったんだよ彼女は。
好きだったんでしょ。
だったらそばにいなきゃ。
離れちゃダメだよ。
離れたくなかったさ。
けどどんなにつらくても彼を信じて待とうって。
悲しいけどそれが恋だろ。
恋?なっ…何だよ。
俺だってなぁ…。
えっ?いや…何でもない。
(小百合)「行く船を振り留みかねいかばかり恋しくありけむ松浦佐用姫」…。
それ…。
鞠子さんが口ずさんでた。
万葉集ですよ。
山上憶良が佐用姫のことを思って詠んだ歌なの。
遠ざかっていく船をひれを振っても止められずどんなに悲しかったことだろう佐用姫は…ってね。
へえ…そういう意味だったんだ。
あの頃はたくさんの男達がここから朝鮮に出兵したくさんの女達が佐用姫と同じ悲しみに泣いたのよ。
佐用姫の伝説にはいろいろな結末があってね。
悲しみのあまりこの池に身を投げたって説もあるの。
恋人に捨てられた娘さんがホントにこの池に身投げしたこともあるのよ。
確か8年前だったかしらね。
その娘さんどうなったの?さあどうかしらね…。
かわいそうすぎるよ。
あんたまた泣いてるの?ホントにだらしないんだから…。
ちょっと…かっ…菓乃子!あれ見て!あそこ。
ほら。
あっ!
(パトカーのサイレン)
(カメラのシャッター音)
(久保田)警部!山形さん泳げなかったそうですよ。
何?先生…やっぱり殺しですかね?だとしたら犯人は山形さんがカナヅチだと知ってる人間ですね。
顔見知りの犯行か…。
動機は恐らく嫉妬か復讐。
まあ怖い。
でもどうしてそんなことがわかるの?ひと息に殺さないでわざわざ苦痛が長引く殺害方法を取っています。
これは被害者を相当憎んでる証拠だ。
犯人は山形さんがもがき苦しんで溺れるのを冷たく見てたんですよ。
何て恐ろしいこと…。
あっ!昨日の夕方…。
何ですか?あの…昨日の夕方私達山形さんと鞠子さんが一緒にいるところを見たんです。
山形さん鞠子さんと親しげに何か約束してたみたい。
昨日の夜あなた山形さんと約束してたんじゃないですか?失礼ですが昨日の夜どこにおられました?
(真吾)家におりました。
もういいでしょう。
家内は私と一緒に部屋で休んでおりました。
あの男事件に関係あるんじゃないか?ほら鞠子さんを見張ってた男。
う〜ん…。
ええっ?男の方が鞠子さんを見張ってたんですか?うん昨日の夕方ね。
ええっ?何か心当たりでもあるの?いやいや…。
その方かどうかはわかりませんがねちょうどひと月ほど前鞠子さんの昔の恋人を見かけたんです。
昔の恋人?葛原孝夫さんとおっしゃるポルトガルの貿易商の方です。
どうもありがとうございました。
葛原さん…?
(鉄造の声)すぐに行ってしまわれましたが葛原さんに間違いありません。
日本へ帰ってらしたんですね。
鞠子さんの昔の恋人か…。
う〜ん…。
(小百合)ただいま。
あっこれは…。
今日は早かったんですね鉄造さん。
一緒に帰ろうと思って清甘堂に寄ったんですよ。
これはどうも申し訳ありません。
いいのいいの。
お陰でこれいただいちゃったし。
水仙?おお〜。
捨てられそうになってたのよ。
あっちょっと花瓶出して。
あっどうぞ…。
また水仙の花束が清甘堂に届いたんだ。
やっぱり何か特別な意味があるんじゃないか?う〜ん…。
かのちゃん。
水仙と言われて何が浮かぶ?水仙?う〜ん…。
水仙まんじゅう。
他には?水仙ちまき。
もっと他には?水仙羹!もういいよ…全部和菓子じゃない。
ねえ水仙の意味なら花言葉じゃないのかしら。
花言葉か…。
水仙の花言葉は確か「自己愛」でしたよね。
「愛に応えて」「愛をもう一度」っていうのもあったわよ。
「愛に応えて」…私も花言葉に託して愛を語られてみたい。
菓乃子には水仙まんじゅうのほうが似合うわね。
(一同笑い)放っといてよ。
あっ!水仙まんじゅうも水仙ちまきも葛でできてる。
水仙羹は葛切り…。
葛よ!そうか水仙の意味は葛だったのよ!葛?そう。
葛原の「葛」。
この水仙鞠子さんの昔の恋人の葛原さんからじゃない?「愛に応えて」「愛をもう一度」って花言葉に託して鞠子さんへの思いを伝えてたのよ!
(鉄造)8年前の記事ですが…。
この人が葛原さん?はい。
まあいい男ね。
ねえ鉄じい。
葛原さんと鞠子さんのこともっと詳しく教えて。
はい。
いや葛原さんは8年前わずか10日ばかり伊万里に滞在したことがございまして。
その間に鞠子さんと恋仲になられて…。
たった10日の恋…。
鞠子さんはその短い恋に命を懸けられたのでしょう。
葛原さんがポルトガルへ旅立たれた後…。
8年前っていえば鏡山の池で身投げした娘さん…。
もしかしてその娘さん…。
はい。
鞠子さんです。
その時真吾さんが池に入って鞠子さんを助けられたんです。
真剣に愛してたんだね。
みんなそれぞれ…。
「菓子一つ」…。
「菓子一つ」?変なお願い。
お願いではありません。
覚悟です。
(礼二の声)覚悟です。
覚悟…。
葛原孝夫?はい。
確かに山形を殺す動機はありますね。
嫉妬に狂って池に突き落としたか…。
いやそこまではまだ…。
ただ今回の事件と葛原さんは何らかのかかわりがあるかもしれません。
どこに泊まっているのか至急調べていただきたいんです。
わかりました。
葛原孝夫についてできるだけ情報を集めてみましょう。
(久保田)困るんですよ。
差し入れはできません。
食べるもの以外だったらいいって言ったじゃないですか!岩崎が拒否してるんです。
これも持って帰って。
本当に迷惑なんじゃないんですか?もうね放っといてあげてください。
あとは警察に任せて。
ねっ。
さっさとこの荷物を持ってお引き取りください。
じゃあ帰った帰った。
鞠子さん。
時々海を見に来るんです。
佐用姫もこうして海の向こうを見てたんですかね。
そうかもしれませんね。
佐用姫はどうして追いかけなかったんでしょう?ついていけばよかったのに。
邪魔になると思ったんでしょう。
だからって待ち続けて石になってそれでいいんですか?本気で好きならじっとなんてしてられません。
嫌がられたって何かしたいって思うはずでしょ。
待ち続けて石になるなんて私は絶対嫌です。
心から愛していたら自分の気持ちよりも相手の気持ちのほうがずっと大切に思えてくるものです。
相手の気持ち…。
今はまだダメなんです。
今はまだダメ…。
隆右衛門さんが殺された時に寿賀台が割れてたって言ってただろ?うん。
寿賀台のカケラから血液反応が出たらしい。
隆右衛門さんのものだそうだ。
じゃあ隆右衛門さんを殺した後に犯人は寿賀台に触ったってこと?ああ。
逃げる時にひっくり返したのかな。
いやあの寿賀台の壊され方は意図的にやったものだよ。
えっ?犯人には寿賀台を壊す必要があったんだ。
だから寿賀台が披露される茶会の日を選んで隆右衛門さんを殺したんだよ。
隆右衛門さんに寿賀台を作らせたくなかったってこと?そう。
恐らくそれが犯人からのメッセージだ。
それと山形さん殺しが同一犯だとしたら寿賀台を壊すことで山形さんにも何らかのメッセージを送ったんだよ。
何よ?その山形さんへのメッセージって。
それがわかれば犯人像に近づけるんだけど…。
あんたってさホント肝心なとこで役に立たないね。
そんなこと言われたってさ…。
あーあ。
あれっ?お出かけですか?あっわかった帰るんだ!そのほうがいいよ。
橘屋のねお得意さんもおばあちゃんがいなーいって寂しがってるよ。
おあいにくさま。
みかし祭までには戻りますよ。
ふっふっふっ…。
ふっふっふってどこ行くのよ。
言ったでしょ?いろいろあるのよ。
ねえこの着物おかしくない?地味じゃないかしら。
もっと華やかなの持ってくればよかったのかしらね。
十分派手です。
そう?じゃあいってきます!いってらっしゃい…。
あっ私さもうちょっと寿賀台のこと調べてみるわ。
ああそうしてくれ。
絶対何か犯人につながるものがあると思う。
俺は葛原さんのことを調べてみるよ。
練り時間が足りないなぁ…。
それに心なしか蜜が多い気がする。
旦那様は小さな砂糖細工をいくつも作られてその中から気に入ったものだけを寿賀台にお使いになった。
これが旦那様のものです。
うん。
さすが品格のある味!でも何かが違うなぁ…。
えっ?小さい時に食べた寿賀台は甘いなって感じた瞬間にスーッとその甘みが消えていくはかなさがあった。
菓乃子さんもそうお思いですか?いや私も10年前から旦那様の作られた寿賀台の味が少し変わったように思うんです。
そうだよね!絶対変わってるよね。
隆右衛門さんは何て言ってたの?いやそれが何も変わっていないと…。
変わってない…?いない?葛原さん出て行ったんですか?はい。
10日ほど前に突然。
てっきり逃げられたのかと思いましたよ。
精算も済んでませんでしたから。
無銭宿泊ってことですか?それが警察に連絡しようと思っていた矢先に宿泊費を送ってこられまして。
あっ…。
これと。
「急用でポルトガルへ帰国することになりましたので宿泊費を送らさせていただきます」。
「葛原孝夫」。
パソコンの文字か…。
確か花屋への注文もパソコンの文字だって言ってたな。
何してるんだ。
お前葛原と会うつもりだな。
許さん!!許さん…。
絶対許さん!!許さん…絶対に許さん!ああーっ!じゃあ葛原さんは今どこにいるかわからないんだ。
そういうこと。
(鉄造)あっ菓乃子さん。
よろしいですか?うん。
ある旦那様の帳面を調べてましたらね唐三盆といわれる砂糖のことが記録されておりました。
恐らくこれが10年前までの寿賀台に使われていたんじゃないかと…。
唐三盆って昔中国から入ってきたあの唐三盆のこと?ええ。
確か和三盆の元になったお砂糖よね。
はい。
伊万里の大川内山でも作られていたようです。
そうか。
このあたりにはシュガーロードが通ってたんだもんね。
ええ。
昔ながらの唐三盆を作る職人がいても不思議はないか。
シュガーロード?うん。
江戸時代にね伊万里や有田の焼き物を輸出するために出航した船が帰りには砂糖を積んで戻ってきたの。
その砂糖と一緒に外国のお菓子の製法が持ち込まれてシュガーロードを通って日本中に広がったのよ。
ふ〜ん。
さすがによくご存じだ。
まあね…。
(鉄造)ここは昔鍋島藩が職人達を住まわせまして藩御用の焼き物を作っていたところです。
これからお訪ねする青山さんは旦那様の古くからのお友達で唐三盆のこと何かわかるかもしれません。
あっここです。
どうぞ足元に気をつけて。
ごめんください。
(小百合)はーいただ今!うん?お待たせをいた…かっ…菓乃子!どうしてここがわかったの?小百合おばあちゃんこそ何やってるのよ!何ってあの…おほほほ…。
えっおほほ…?どうぞ。
びっくりさせないでよ。
歌会で知り合ったの。
お互いやもめ同士なんだから文句ないでしょ?ないけどさぁ…。
(青山圭介)ははは…。
私は子供がないもので気楽なもんです。
それに比べて隆右衛門はさぞ心残りだったでしょう。
真吾君が菓子守になるのをあんなに楽しみにしとったのに…。
ええっ?旦那様が?ええ。
菓子守の心を引き継ぐのは真吾しかおらんとしょっちゅう言うとりました。
ええっ?だからこそ経営は他の人間にやらせて真吾君は菓子作りだけに専念させたいと。
いやぁ旦那様がそんなふうにおっしゃってたとは…。
真吾さん夢にも思っておられない。
親心とはそんなものですよ。
あの今日お伺いしたのは唐三盆という砂糖のことなんですけど…。
ああ唐三盆ね。
あれはほんなこてすばらしか砂糖でした。
ご存じなんですね。
子安俵太さんという名人が作っとった極上の砂糖です。
もう今では手に入りませんが…。
えっ?俵太さんは今どちらに?亡くなりました。
ちょうど10年前に奥さんと心中したとです。
心中?隆右衛門さんと俵太さんはお知り合いだったんですか?隆右衛門は年に一度俵太さんから唐三盆ば買うとったです。
あの唐三盆はいくら手間かけてもほんの少ししかできんらしくて俵太さんはその宝物のような唐三盆ばごくわずかな信頼できる人だけに譲っとったです。
固く口止めしてね。
口止め?以前唐三盆の取り合いで揉めごとがあったらしくて…。
それからだと聞いとります。
取り合うほどの砂糖が作れるのに何だって心中なんかしたのかしら。
山形のせいです。
山形って…あの鏡山で殺された?自業自得ですわい。
あいつは商売のためなら人をひねり潰しても何とも思わん人間です。
俵太さんの墓参りにも来やせん。
俵太さんと山形さんの間に何があったんですか?山形は全ての唐三盆ば自分のデパートに卸すようにと言うてきたとです。
しかし俵太さんは断りました。
そうしたら山形は腹いせに俵太さんの砂糖はどれも質が悪いと。
その砂糖で作った菓子は一切自分のところには卸させんと菓子屋に御触れを出したとですよ。
ひどい…。
信頼しとった菓子屋も次々に俵太さんば見放しました。
だって山形ににらまれたら仕事ができんようになりますけんね。
それからしばらくして俵太さん夫妻は自宅で首ば吊ったとです。
清甘堂も俵太さんを自殺に追い込んだ菓子屋の一つなんでしょうか。
私にはわかりません。
隆右衛門はこの大川内山へ来る度にここで手ば合わせておりました。
俵太さんに悪いことばしたと…。
彼は山形と一緒に砂糖の輸入ルートば開発してましたから。
それが俵太さんば追い込むことになったのかもしれません。
確かに10年前安くて質のいい砂糖が中国から手に入ることになりました。
しかしまさかそんなことがあったとは…。
申し訳ないことです。
柳沢さん。
ああ先生。
教えていただいた唐津のホテルに行ってみました。
葛原さんは10日前に姿を消してましたよ。
あれから私もいろいろ調べてみました。
葛原孝夫が入国したのはちょうどひと月前。
まだ出国してないので日本にいるはずなんです。
帰国してなかったんだ!その後葛原さんを見かけたという証言は?ええと…10日ほど前に唐津城近くで目撃されたのが最後ですね。
10日前に唐津城…。
それ以降の目撃証言はありません。
それまではいろんなところに顔を出してたみたいなんですが。
変だと思いませんか?えっ?葛原孝夫は10日前に突如消息を絶ってる。
ええまあ…。
それに葛原さんは野心のために単身外国に乗り込むような豪快な男性です。
その彼が別れた恋人への未練を断ち切れずに花束を送り続けるとは思えない。
確かに葛原を知る人はみんな男らしくてさっぱりした人物だって言ってますからね。
(パトカーのサイレン)唐三盆はなかとですがこれならば少しだけ。
あられです。
あられ…?唐三盆をふるいにかけた時にできる塊だそうです。
へえ〜初めて見ました。
外に出回るものでもありませんから。
唐三盆のあられを持ってるのは俵太さんのご家族ぐらいでしょ。
じゃあこのあられは?隆右衛門が私の香炉を俵太さんに贈ったことがあったとです。
俵太さん気に入ってくださって一度他の作品も見たかと訪ねてこられたとです。
その時にこのあらればいただきました。
そうですか。
よかったらどがんですか?ええっ…いただいてよろしいんですか?どうぞどうぞ。
少ししかなかですが…。
いやこれは貴重なものを。
じゃあいただきます。
これ子供の頃に食べた寿賀台の味と同じ…。
甘いって感じた瞬間にはらはらと甘みが消えていく。
はい。
10年前までの寿賀台は確かにこの甘みでした。
唐三盆はのどの痛みに効くって聞いたことがあるわ。
心の痛みにも効きますよ。
心の痛み…?はい。
心の中が波立っておさまらん時はあられをひと粒口の中に入れるとですよ。
すると不思議なことにシーンと心が静まるとです。
俵太さんっていう方はそこまで見通して唐三盆を作ってらしたのねぇ。
誇り高き職人です。
山形さんはその尊い誇りを踏みにじったのよ。
青山さん。
俵太さんには他に身内の方はいらっしゃらなかったんですか?ご家族とかお弟子さんとか。
いや…。
私にはご家族のことまでは…。
真吾さん!何ですか!昼間から酒なんぞ飲んで。
いいじゃないか別に。
定休日なんだから。
寿賀台のことでお話があります!そんなもん私に何の関係もありませんよ。
関係ない!?菓子守はあなたに継がせたいって隆右衛門さんそうおっしゃってたんですよ!ふふっ。
そんなでっちあげで私に何をさせるつもりですか?いつまですねてるんですか!そうですよ真吾さん!店は目端の利く人間に継がせればいい。
けれども魂を引き継ぐ菓子守のお役目はどうしても真吾さんに継がせたいって旦那様はそうおっしゃってたんだ。
親父は俺を見捨てたんだよ!隆右衛門さんはあなたは菓子守にふさわしい職人だって見込んでたのよ!真吾さんが菓子守になる日を楽しみにしてたんだから!もう俺のことは放っといてくれよ!!隆右衛門さんからよ!
(久保田)警部!水死体の身元がわかりました!今年のみかし祭は中止にするしかないかぁ。
失礼します。
皆さんみかし祭は予定通り行います。
何だって?真吾さんが寿賀台を作ってくれるって。
それじゃあ…!菓子守のお役目は真吾さんにお任せください。
じゃあすぐに橘の実を用意させなくちゃ。
(扉の開く音)葛原さん?かのちゃん!大変なことになった。
葛原さんが死んでたんだよ。
ええっ!?今日水死体で打ち上げられた。
検視の結果では恐らく死後10日は経っていると。
じゃあ鞠子さんをつけてた男は誰?水仙を送ってきたのは?鞠子が危ない。
葛原からメールが来てそれで鞠子は今日家を出たんです。
犯人が鞠子さんを呼び出したんだ。
じゃあ次の標的は鞠子さんってこと!?とにかく鞠子さんを捜そう。
柳沢さん達にも協力してもらって。
うん!私の車を使ってください。
真吾さん行かないんですか?私は鞠子を自由にしてやるって決めたんです。
でも…。
鞠子は私といると幸せになれません。
鞠子を頼みます。
はい。
あそこ!鞠子さん!よかった無事で。
菓乃子さん。
驚かないで聞いてください。
葛原さんが亡くなりました。
えっ!?恐らく10日前には亡くなっていたんです。
そんなはずありません。
だって昨日も葛原さんからメールもらいましたし…。
誰かが葛原さんの名前で送ってたんですよ。
まさか…どうしてそんな…。
鞠子さん話してもらえませんか?メールでは何て言ってきたんですか?その送り主が犯人かもしれないんです。
これが一番最初に送られてきたメッセージです。
私が主人から暴力をふるわれていることを知り迎えに行く決心がついたと…。
しばらくして茶会の途中で明かりが消えるよう細工してほしいと指示がありました。
それでお客様をお迎えする直前に油を…。
でもまさかあんなことになるなんて…。
その後葛原さんからは?翌朝一緒に逃げようってメールをもらいました。
でもそれを山形さんに見られてしまって…。
へえ〜。
葛原とまだ続いてたんですか。
真吾君ショックだろうなぁ。
やめてください!お願いですから主人には…。
内緒話なら人の来ない場所でやりましょうよ。
そうだなぁ…今夜鏡山の池で待ってますよ。
私恐ろしくなって葛原さんにメールで相談しました。
そうしたら僕に任せてくれって。
その夜山形さんが…。
申し訳ありません。
悪いのは8年も苦しみ続けた鞠子さんの恋心を利用した犯人です!それに礼二さんまで巻き込んで…。
許せない…絶対許せない!
(柳沢)先生!柳沢さん。
葛原さんが亡くなったことしばらく伏せていただけますか?
(柳沢)えっ?お願いします。
わかりました。
千葉先生がそうおっしゃるなら。
鞠子さん。
協力していただけますか?えっ?メールで返信してください。
(携帯電話の操作音)あとは犯人が何て言ってくるかね。
ああ。
鞠子さんは家のほうで待っててください。
私…清甘堂には戻れません。
鞠子さん。
真吾さんの元に帰ってあげてください。
さっき私と公平に頭を下げて真吾さんおっしゃったんです。
鞠子を頼みますって。
あなたのことを一番心配してるのに捜しには行かない。
そのほうが鞠子のためだって…。
真吾さんは心からあなたの幸せを願ってますよ。
わかってます。
だから帰れないんです。
鞠子さん…。
じゃあとりあえず署のほうに。
お話も伺いたいですし。
さあ。
警察の調べが終わったら鉄造さんのところに鞠子さんを保護してもらうこと頼んできたよ。
うん。
鞠子さん真吾さんのところには帰らないのかなぁ。
帰れないだろう。
一度捨てた人のところへは。
そうなの?あっ…。
ねえ公平。
私どうしても真犯人見つけなきゃいけないのかなぁ?えっ?何かさ…怖いよ。
礼二さんを助けたいんだろ?真犯人見つけたら礼二さん喜ぶと思う?濡れ衣着せられても黙秘してその人のことを守ろうとしてるんだよ?かのちゃん…。
昨日ね鞠子さんが言ってた。
誰かを本気で愛したら自分の心より相手の心のほうが大事になるんだって。
礼二さんにとって犯人はものすごく大事な人なんだと思う。
(メールの着信音)
(鞠子)待って!!
(真吾)鞠子!待ってください!この橘の実には毒が入ってます。
何?どういうことなんだ!お前毒が入ってるなんて言ってこれ以上俺に恥をかかせるつもりか!!違います。
確かに毒が仕掛けられてました。
昨夜犯人から鞠子さんにメールが来たんです。
橘の実に毒を入れると。
お前…俺を助けるために?でも安心してください。
鞠子さんお味はいかがですか?その橘の実には毒は入っていません。
鞠子さんには知らせずに鉄じいにダミーを作ってもらって入れ替えたのは小百合おばあちゃん。
びっくりしましたよ。
でも間に合ってよかったわ。
ねえ鉄造さん。
はい。
鞠子本当に大丈夫なのか?ごめんなさい。
私…ごめんなさい。
もういい!もういい!ありがとう!それにしても橘の実に毒を仕込むなんて。
誰がそんな恐ろしいことを。
葛原さんになりすまして鞠子さんにメールや水仙を送り鞠子さんを操り隆右衛門さんと山形さんを殺した人間です!あなたですね。
子安翔子さん。
何のことです?あなたは山形さんのせいで心中した唐三盆作りの名人子安俵太さんご夫妻の一人娘子安翔子さんですよね。
調べさせていただきました。
あなたはご両親の心中を機に勤めていた会社を辞め恋人とも別れ猛勉強して司法試験に合格なさった。
身元を隠すために知人の養女となって水島の姓を名乗り清甘堂の顧問弁護士になった。
そして隆右衛門さんと山形さんを殺す機会をうかがっていたんですね。
いい加減にしてください。
隆右衛門さんが亡くなった日は出張中でした。
京都に行かれてたんですよね。
ええそうです。
それを証明できますか?内密の調査でしたのでずっと1人で行動してました。
ああでも京都の梅寿堂さんで買った菱餅あなた方もご覧になったでしょう?はい。
味見もさせていただきました。
でもおかしいんですよね。
あの菱餅ヨモギの味がしなかったんです。
梅寿堂さんの菱餅には必ずヨモギが入ってるはずなんですけど。
えっ?隆右衛門さんが殺された茶会の日あなたは京都に行っていませんね。
あんたが堀内隆右衛門山形そして葛原を殺したんだな?葛原は殺されたんですか?ええ。
10日ほど前に。
10日ほど前に死んでいる…そうだったのか。
私は葛原とは友人でした。
彼が日本に戻ってきた時…。
よっ。
(葛原孝夫)おう。
こっちでも事業始めようと思ってな。
顧問弁護士探してるんだ。
だったら水島先生がいいだろう。
電話しておくから訪ねてみろよ。
ところで鞠子さん元気か?実はな…。
(匠の声)私はうっかり真吾の暴力ことを漏らしてしまった。
それっきり葛原とは連絡が取れなくなったんです。
鞠子さんに水仙が送られてきた時これは葛原が鞠子さんのことを思い連れて行くんじゃないかとずっと見張っていたんです。
(匠の声)父が殺された夜も私は鞠子さんを見張り続けました。
(匠の声)しかし葛原は姿を見せませんでした。
私がつい弟夫婦のことを話してしまったために鞠子さんをここまで苦しめてしまった。
真吾。
申し訳ない。
兄さん…。
しかし水島先生。
あなたは弁護士として立派な仕事をなさっていたのになぜこんなことを?私だって人を殺すなんてことしたくなかった。
礼二さんと幸せな家庭を築きたかった。
礼二さんとは恋人同士だったんですね。
ええ。
でも両親が自殺して…。
ごめんなさい。
待てよ!待てって!どうして別れなくちゃいけないんだよ!私あなたに迷惑かけられない!翔子!私はあの時両親を自殺に追い込んだ山形とそれに同調した隆右衛門に復讐すると心に誓っていた。
だから礼二さんと別れたの。
でも…まさか今になって…。
水島先生紹介しておきます。
寿賀台の技を習得するために新しく入った職人を。
おい。
(岩崎)はい。
ご紹介します。
こちらは顧問弁護士の水島先生だ。
(翔子の声)残酷な偶然よね。
私はこの10年間何もかもあきらめて生きてきたのよ。
父と母の無念をあいつらに思い知らせるために!
(隆右衛門)ああー!
(翔子の声)あんな男に寿賀台を作る資格なんかないわ。
私は返り血を浴び夢中で逃げた。
まさか礼二さんに見られてたなんて…。
(岩崎)行け!行け!私は隆右衛門を殺し寿賀台を壊すことで山形にメッセージを送ったつもりだった。
もし山形が気づいたら不安にかられ苦しむだろうと。
両親の苦しみの何十倍もの苦しみを味わわせたかった。
でも山形は何も気づかずのほほんと生きている。
だからあの夜泳げない山形を…。
うわーっ!
(山形)あっあっ…。
どうして鞠子さんと真吾さんを引き裂くようなことを?清甘堂の人間をむちゃくちゃに踏みにじりたかった。
嫁の手引きで隆右衛門が殺されたと世間に知れ渡ったら清甘堂は終わりになる。
みかし祭の菓子守ができなくなる。
礼二さんはどうなるんですか?あなたのことを守ろうとして何も言わずに苦しんでるんですよ?私は山形と隆右衛門を殺した後自首するつもりでした。
でも清甘堂の菓子守は続くことを知って許せなかった。
みかし祭は予定通り行います。
真吾さんが寿賀台を作ってくれるって。
どうして葛原を殺したんだ?匠さんに紹介されたと葛原さんが事務所に訪ねて来た時知られてしまったんです。
私が子安俵太の娘だと。
それで…。
でも鞠子さんは葛原さんが死んでることを知らないので鞠子さんに最後のメールを送ったんです。
橘の実に毒を入れて真吾さんを殺すと。
なぜ殺害方法をわざわざ知らせたんですか?苦しめたかった。
2人を。
鞠子さんが葛原さんのことを思い真吾さんに毒のことを知らせず真吾さんが死ねば一生そのことで苦しむはず。
もし知らせて真吾さんが橘の実を食べなかったとしてもみかし祭はめちゃめちゃになり清甘堂は菓子守の地位から落ちる。
そう思ったんです。
どうして私が子安俵太の娘だと気づいたの?これです。
あられ…。
あなたが立ち聞きしていた廊下で拾ったんです。
唐三盆のあられを持っているのは子安俵太さんのご家族だけ。
あなたが事務所でなめてたのもこれですよね。
礼二さんが犯人をかばって黙秘してるって聞いて心が痛かったんですよね。
どうぞ。
唐三盆は両親の誇りだった。
儲けなんかなくても極上の唐三盆を作り続けたいっていつも言ってた。
それなのに山形常夫は父の命ともいえる唐三盆をこき下ろしたのよ!信頼していた清甘堂まで父を裏切ったわ。
翔子さんこういう形でしか悲しみを乗り越えられなかったんですか?ええっ?私5歳の時に両親を亡くしてるんです。
まだ幼かったからただただ心細くて毎日毎日泣いてばかりいました。
だけど和菓子を食べている間はなぜか涙が引っ込むんです。
大福お団子羊羹きんとん。
たくさんの和菓子達が私を慰めてくれました。
そうしたら少しずつですけど笑えるようになったんです。
礼二さんもいつも言ってました。
菓子職人は自分の全てを懸けて一つ一つ和菓子を作っていくんだって。
だから技だけじゃなくて心も鍛錬しなきゃいけないって。
どうしてかわかります?和菓子は人の心に入っていくからです。
和菓子は食べた人をほんの少しだけ幸せにする力を持ってると思うんです。
だからどんなにつらいことがあったっておいしい和菓子があれば何とか生きていけるんじゃないんですか?ご両親は復讐なんて望んでないと思いますよ。
そんなことがないように心を癒やす唐三盆を作ってこられたんですから。
ご両親が残してくれた心を大切にしてください。
(泣き声)私は菓子職人になった時からみかし祭の寿賀台を作れる菓子職人になりたかった。
寿賀台に魅入られたんです。
ですからそれまで結婚は…。
礼二さん私のこと好きだって言ってくれたよね?あれ嘘だったの?嘘じゃありません。
だったら私待つ。
申し訳ありません。
「菓子一つ」…橘菓乃子は和菓子一つに負けました。
お嬢さん…。
礼二さん私を捨てるんだから日本一の菓子職人になってよ。
ほら!おいしい。
ふふっ。
ふふふ…。
でもちょっと砂糖が多いかな。
はははっ出た出た。
あははっ。
ふふふ…。
うんうん。
ははは…。
はい。
ほらっ。
はははっ。
意地悪。
はい。
ふふっいただきます。
北海道で人気の釜飯店が50周年を迎えた
2015/10/08(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
和菓子連続殺人事件[再][字]
和菓子連続殺人事件佐賀〜唐津〜伊万里、花婿に逃げられた花嫁幻の砂糖“唐三盆”は殺意の隠し味!
詳細情報
◇番組内容
和菓子連続殺人事件佐賀〜唐津〜伊万里、花婿に逃げられた花嫁幻の砂糖“唐三盆”は殺意の隠し味!高橋由美子、葛山信吾の凸凹コンビの笑いを交えた推理にご期待下さい。“砂糖菓子・寿賀台”や“落とし文”など美しい和菓子をご覧下さい。
◇出演者
高橋由美子、葛山信吾、秋本奈緒美、西川弘志、前田耕陽、山崎銀之丞、内藤武敏、布川敏和、杉山彩子、加茂さくら
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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