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 神戸地検が2008年に独自捜査で摘発した風俗店経営会社の資産隠し事件で、指南役で共犯とされて有罪が確定した当時現職の上脇義生(うえわきよしお)・元神戸市議(66)が裁判のやり直しを求めた再審請求審があり、大阪高裁(的場純男裁判長)は7日付で再審開始を決定した。主犯とされた店の元実質経営者(75)=有罪確定=が元市議の関与を否定した新証言を評価し、「共謀の認定には合理的な疑いが残る」と判断した。

 検察の独自事件で再審が認められるのは極めて異例。検察側は特別抗告を検討するとみられる。

 確定判決によると、国税徴収法違反罪に問われた上脇元市議は、神戸市の風俗店経営会社が法人税の滞納で財産を差し押さえられるのを免れるため、元実質経営者ら2人と共謀。05~07年、店の営業権が譲渡されたように装って2千万円余りを隠したとされた。

 上脇元市議は捜査段階で容疑を認め、公判で否認に転じた。だが、神戸地裁と大阪高裁の一、二審判決はいずれも懲役1年6カ月執行猶予3年とし、10年に最高裁で有罪が確定。昨年8月に再審請求し、神戸地裁は今年2月に棄却。元市議側が高裁に即時抗告した。

 高裁は抗告審で、元経営者が元市議の仲介で営業権譲渡を装ったとする従来の供述を翻し、「元市議の関与はなかった」とした新証言の信用性を検討。偽証罪に問われるリスクを冒してまで覆した点を重視し、元経営者の「元市議を主犯とすれば自らの罪が軽くなり、実刑が避けられると考えた」とする説明は不自然ではないと判断した。

 さらに、元市議は事件に絡んで経済的利益を得ていない▽検察の取り調べに「(所属していた公明党の)党勢拡大を図りたかった」と述べた動機が漠然としている――などの点も考慮し、元市議の関与には合理的な疑いが生じたと結論づけた。(佐藤啓介)