瀧澤美奈子の言の葉・パレット

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奥さん、生まれたばかりの赤ん坊が何かの役に立つとお思いですか?

2009年11月25日 | ひとりごと
 今から180年ほど前、マイケル・ファラデーが電磁誘導を発見しました。
電磁誘導によって発電が可能になったわけですから、私たちは計り知れない恩恵を受けているわけです。しかしそのことは当時、かならずしも自明なことではありませんでした。
 ファラデーは、定期的に一般向けの講演を行っていて、一般大衆の前でその物理現象をデモンストレーションしてみせました。
 すると、その日の講義の最後に、ひとりの女性が質問しました。
「ですが、ファラデーさん。磁石をつかって、ほんの一瞬、電気を起こしてみても、何の役に立つのでしょうか?」
 ファラデーは、礼儀正しく言いました。

「奥さん、生まれたばかりの赤ん坊が、何かの役に立つと思われますか」


 ファラデーの慧眼をよくあらわしている逸話ですが、180年たった今も、このような基礎科学の性格は変わりません。だからこそ個々の科学の重要性を判断することはとても難しいのです。
 そして将来を見通すことが難しいからこそ、基礎的な科学技術への投資は国にしかできないのです。また、世界一へのチャレンジの過程でさまざまな技術が磨かれ、人材が育つことも重要なことです。

 もちろん、無駄や、仕組み上の不備は正していかなければなりませんが、
政治主導、国民目線、という耳ざわりのいい言葉を都合よく使って、
拙速な判断を下すことは許されないことです。

「なぜ世界一でなければいけないのか?」と言って切り捨てた政治家は、
明らかに科学のそのような基本的性質を理解していないということでしょう。
そのこと自体も、多くの研究者を失望させているのではないでしょうか。

 スーパーコンピューターについては各界からの強い反対のために縮減見直しの方向に議論が進みそうですが、ほかの事業についてはどうでしょうか。
 少なくとも科学技術分野において「仕分け」作業があまり有効ではなかったことを今のうちに素直に認めてもいいのではないでしょうか。

 
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