ノーベル賞受賞の梶田さん、両親の結婚記念日には毎年贈り物
ノーベル物理学賞の受賞が決まった東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章さん(56)の父・正男さん(78)と母・朋子さん(81)が7日、埼玉県東松山市の自宅でスポーツ報知の取材に応じ、隆章さんを育てた教育方法を明かした。吉報から一夜明けた梶田さんは「私は非常にあり得ないぐらい恵まれていた」と感謝。恩師や同僚、そして両親へのメッセージだった。(北野 新太)
梶田家の教育方針は「ノーベル賞」の響きから想像されるものとはほど遠いものだった。「いまだに信じられません。『あの子がノーベル賞?』って…」。声をそろえた両親は、穏やかな笑顔のまま3人きょうだいの長男・隆章さんの子育て時代を振り返る。浮かび上がったのは3つの特色だった。
〈1〉放任主義
梶田家では、勉強や成績にノルマやハードルを課さない。
父・正男さん(以下、父)「子どもが今、何を考え、感じているのかだけ分かろうと思っていました」
母・朋子さん(以下、母)「何時間も勉強している姿を見たことがないです。テストの前日は『頭が働かなくなるから早く寝る』って…。大丈夫かな…なんて思ったりもしましたけど。なぜか毎朝『学校に行ってまいります』って言う子でした」
父「塾に行かせたこともなかったですけど、英語だけ小学校低学年から習っていました。あと本は好きで、親が心配になるくらいよく読んでいました。テレビは『鉄腕アトム』だけ好きで。なぜかアトムじゃなくて『お茶の水博士になります』って」
勉強をしろ、と言わなくても通知表はオール5だった。
〈2〉褒めて伸ばす
小中学生の梶田さんは走ることが得意ではなく、運動会の徒競走でビリになることもあった。しかし、決して「速く走れるようになりなさい」などとは言わずに笑顔で受け入れた。
母「ハグするようなことはないですけど、頑張ったねって褒めてあげることを心掛けました。褒められると大人もうれしいですけど、子どもは特にうれしいものですから」
父「だからなのか、あの子はマイペースなんです。いつも幼稚園バスが来るギリギリまで支度していましたけど、不思議と遅刻しない。世話を焼かせることはなく、反抗期もなかったです」
埼玉大を卒業し大学院への進学時、梶田さんは当初、大阪大を志望したが、朋子さんは息子と会う機会が減るのが嫌で「関東圏にして」とお願い。すると返事は「いいよ。東大にする」。結果、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大特別栄誉教授(89)と出会い、「ニュートリノ」を研究しノーベル賞につながった。
〈3〉両親仲良く
結婚57年になる両親は今までケンカをしたことがない。
母「子どもが安心して過ごせるのは、両親の仲がいい家だと思うんです。仲が悪かったら学校で落ち着いて勉強なんてできない。よく『子どもの前でケンカしちゃダメ。するならいないところで』って言いますけど、子どもは察するんだと思うんです」
今でも毎晩の夕食で自家製梅酒を飲む時にお互いに「今日は○○に乾杯」と言いながら、グラスを合わせる時間を大切にしている。
母「いつも『おいしい食事に乾杯』とか身近なものにするんですけど、さすがに昨夜は『隆章のノーベル賞に乾杯』でした」
毎年の結婚記念日には、長男からの贈り物が必ず届くという。