竹石涼子、神田明美
2015年10月8日00時28分
スウェーデンの王立科学アカデミーは7日、今年のノーベル化学賞を、英フランシス・クリック研究所のトマス・リンダール名誉グループリーダー(77)、米デューク大のポール・モドリッチ教授(69)、米ノースカロライナ大のアジズ・サンジャル教授(69)の3氏に贈ると発表した。「DNA修復のメカニズム研究」の業績を評価した。
生物の基本的な遺伝情報であるDNAは、紫外線やたばこに含まれる化学物質などさまざまな刺激で絶えず傷ついている。傷が放置されたままだと、DNAをもとにたんぱく質を正常に作れなくなり、異常な細胞やたんぱく質が体内に増えて病気になってしまう。
ただ実際には、生物は多様な遺伝子を修復するしくみを持っている。DNAの修復のしくみは、3人がさきがけとなって解明が進んだ。酵素が傷の場所を見つけて別の酵素が新たな「部品」を挿入したり、部分的に作り直したりすることが明らかになってきた。
今後は、こうしたメカニズムの解明を受けて、がんの原因解明や治療薬の開発につながることが期待されている。
DNA修復について青山学院大の福岡伸一教授(分子生物学)は「傷をスキャンし、分解してから正しく直す生物の精妙なしくみで、がんにならず恒常性を保てる。一方で、修復が完全だったら突然変異は起こらないし、生命は進化できない。そうしたことにも示唆を与える研究だ」と評価する。
授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の800万スウェーデンクローナ(約1億1200万円)は受賞者3人で分ける。(竹石涼子、神田明美)
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《トマス・リンダール氏》 1938年スウェーデン生まれ。67年カロリンスカ研究所で博士号。イエーテボリ大教授、英フランシス・クリック研究所名誉グループリーダー。
《ポール・モドリッチ氏》 1946年米国生まれ。73年米スタンフォード大で博士号。米デューク大教授。米がん学会名誉メダル受賞。
《アジズ・サンジャル氏》 1946年トルコ生まれ。77年米テキサス大で博士号。88年から米ノースカロライナ大医学部教授。トルコ、米両国籍。
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