ソニーの平井一夫社長は7日、日本経済新聞などの取材に応じ、「コンシューマーエレクトロニクスはまだまだ新しい体験を提供できる可能性が十分にある」と述べた。2017年度までの中期経営計画でテレビやオーディオ、スマートフォン(スマホ)などのエレキ商品の多くは成長分野に位置づけられていないが、事業のてこ入れに強い意志を示した。「好奇心を刺激する挑戦を続ける」とも語った。主なやりとりは以下の通り。
――足元の事業環境は。
「スマホ以外は利益が出ている。エレキ事業のターンアラウンド(再生)はかなり進捗した。15年3月期までの3年間のリストラクチャリングの効果も出て、強い商品群もそろい、手応えはある。ただ、スマホのリストラを完遂しなければならず、完全復活したとは思っていない。道半ばだ」
――スマホの構造改革の進捗は。
「構造改革は計画通りに進んでいる。現行シリーズの商品の評価は高く、ソニーらしいスマホに仕上がっている。まずはビジネスをターンアラウンドする。これが最も重要なミッションだ。着実に強い商品を出し、結果が出る限りはソニーグループでスマホを続ける」
「商品力の強化ではウエアラブルのようなスマホの世界をさらに広げるアクセサリーを積極展開するように言っている。さらにIoT(モノのインターネット化)を活用するプラットフォームも考えないといけない。携帯電話からスマホにパラダイムが変わった際、リーダーのメーカーが入れ替わった。コミュニケーションの技術進化が進む過程で、スマホの次に何が来るかを議論し、そこでリーダーシップをとる勢いでやらないといけない」
――公募増資などで約4200億円を資金調達した。画像センサーの強化に向け、さらなる投資や買収の考えは。
「市場から調達した資金の使途は半導体への投資だ。大半は生産能力の増強に充てる。競合に対し技術的に2~3年の優位性があるという認識だが、この差を維持するための研究開発(R&D)にも振り向ける。新しいファブ(工場)を買うことは今のところ考えていない」
――来年に仮想現実(VR)を楽しめる「プレイステーション(PS) VR」が発売される。VRビジネスをどう育てていくか。
「これまでのPSの据え置き型ゲーム機事業のような垂直立ち上げとは異なり、こつこつと長く、大事に育てていきたい。コンテンツへの依存が大きいためだ。VRはこれまでのゲーム体験とは全く異なる。ソフトも作り込みの要素が大きい。かなりダイナミックにゲームが変わる。発売に向け、どのようなソフトをそろえるか。どのようにゲーム開発会社から支持されるか。スタートが大事だと思っている」
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