藤森かもめ
2015年10月8日03時23分
シカなどの野生動物が列車にぶつかり、運行に支障をきたすケースが増えている。全国の鉄道事業者の間で、運休や30分以上遅れた件数は昨年度、過去最多に。各社は様々な対策を試みてきたが、いずれも決め手に欠ける。行楽期とシカの繁殖期が重なる秋は、頭の痛い季節でもある。
北陸から九州まで列車を運行し、1日約500万人を運ぶJR西日本の担当者は「シカを完封できない」と肩を落とす。列車と接触する動物は、シカが全体の7割、イノシシが2割を占める。「9~11月はシカの繁殖期。活動が活発になり、ほぼ毎日、どこかで事故が起きる」という。
動物と衝突すれば、車両の点検や処理で列車が遅れるばかりか、乗客がけがをする可能性がある。走行区間の長いJR西の場合、影響は都市部まで及ぶこともある。
JR西は、1997年ごろから対策に取り組んだ。当時は、シカの嫌がる超音波を出す「シカよけの笛」を車両に取り付けたが、あまり効果はなく、外した。2002年度以降は、線路脇にシカが嫌うというライオンの糞(ふん)やオオカミの尿をまいてみた。しかし、臭いが続かず、動物は3カ月程度で慣れた。一方で、近隣住民から「くさい」と苦情が寄せられ、本格的な導入には至らなかった。
「シカは人間の臭いを嫌う」と聞き、美容院から毛髪をもらってきて、洗濯用のネットに入れ、線路脇につるしたこともある。しかし、逆に好奇心を呼び起こしたのか、初日にシカが集まってしまった。
「せっけんの香りも嫌い」という情報に飛びつき、洗濯用ネットの中にせっけんを入れてみたが、雨ですぐに溶けてしまった。溶けにくくしようと、竹筒の中に入れたが、香りが届く範囲は3~5メートル。大量には設置できず、シカの侵入を阻止できなかった。
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