TPPで歴史的合意、批准に向け米議会承認というハードルも
2015/10/06 10:48 JST
(ブルームバーグ):環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加する12カ国は5日、大筋合意に達した。自動車やコメなど多岐にわたる分野で貿易障壁が撤廃される歴史的合意となったが、TPPに懐疑的な米議会の承認というハードルも待ち構えている。
米ジョージア州アトランタで1週間に及んだ交渉が決着。世界の国内総生産(GDP)の40%を占める12カ国が貿易促進に向け5年余りにわたり交渉を続けてきた。
オバマ米大統領はこの日の声明で、「TPPにより、世界各国が米国の輸出品に課している1万8000を超える関税が撤廃され、国内の農家や牧場の経営者、製造業者は公平な立場で競争できるようになる」と説明。「この合意は米国の労働者を第一に考えており、中間層の向上を後押しするだろう」と述べた。
TPPは関税の撤廃・引き下げのほか、最後の懸案となったバイオ医薬品の独占販売期間など規制ルールも整備する。
中国抜きで進められたTPP交渉には、影響力を拡大しつつある中国への対抗措置という意味合いもある。オバマ大統領は声明で、「米国の潜在顧客の95%強が海外となる中で、中国のような国に世界経済のルールを作らせるわけにはいかない」と指摘した。
TPPが発効すれば、米国にとって1994年発効の北米自由貿易協定(NAFTA)以来の規模の貿易協定となる。
米議員反発影響力の強い米議員数人はTPPの大筋合意に反発、一部は判断を保留した。こうした中で、米国有数の自動車メーカーであるフォード・モーターは議会にTPPを承認しないよう呼び掛けた。
フォードの政府・地域社会向け広報担当グループ・バイスプレジデント、ジアド・オジャクリ氏は発表資料でオバマ政権に対し、「TPP交渉をやり直し、強制力のある厳しい為替ルールを盛り込む」よう訴えた。
デビー・ディンゲル米下院議員(民主、ミシガン州)はTPP合意が為替操作の問題を考慮していないと批判。「米自動車業界の労働者にとって不利な合意だ」と指摘した。下院歳入委員会のポール・ライアン委員長(共和、ウィスコンシン州)は協定の内容を精査するまで判断を控えると述べた。
TPP参加12カ国は共同声明で、「この歴史的合意が各国の経済成長促進やより高賃金を生む職業の支援、イノベーション・生産性・競争力の強化、生活水準向上、貧困削減につながるとともに、透明性や優れたガバナンス、強力な労働・環境保護を一段と高めると期待する」と述べた。
オバマ大統領はファストトラックとも呼ばれる大統領貿易促進権限(TPA)を今年既に獲得しているため、議会は交渉内容について承認もしくは不承認のいずれかを選ぶ投票を行うが、交渉内容を修正することはできない。大統領はTPP署名の90日前に議会に署名の意向を通知し、60日前に合意内容を公表しなければならない。
原題:Pacific-Rim Nations Led by U.S. Agree to Historic Trade Deal (2)(抜粋)
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更新日時: 2015/10/06 10:48 JST