【VWの排ガス不正問題】批判の矛先、独政府にも 輸出産業の中核保護か
自動車はドイツの輸出産業の中核を占める。2014年の輸出の17・9%は自動車・関連製品。政府が厳しい姿勢を打ち出せなければ、VWをはじめとした国内メーカーを「保護しているのではないか」との声は一層強まりそうだ。
「VWの不正行為をかばってきた疑いがある」。野党「90年連合・緑の党」は、環境団体などから試験時と路上走行時で排ガスのデータが異なることを指摘されても実態を確認しようとしなかったとして、ドイツの運輸省や自動車業界を激しく批判した。
試験時だけ浄化システムが働く違法ソフトウエアによる規制逃れに対し、現状の試験方法が「弱点を抱えていることをドブリント運輸相は認識していたはずだ」と主張。政府を追及する構えを見せている。
欧州連合(EU)は17年から、路上走行時の有害物質の排出量を測ることで、排ガス試験の厳格化を計画。これについても、環境団体「ドイツ環境支援」は「政府は計画を妨害してきた」と非難した。
ドイツ紙ウェルト日曜版(電子版)は27日、政府内部文書の内容として、ドイツがEUの試験厳格化の開始を21年に遅らせることを画策していると報じた。運輸省報道官は28日、「導入を遅らせようとしている事実はない」と述べ、打ち消しに躍起になっている。
VWはグループ会社ポルシェのミュラー会長の下で体制の立て直しを図る。ドイツのメディアによると、これまでの調査で、ソフトを「テスト用」として納入した取引先の自動車部品大手「ボッシュ」が07年に、ソフトを実際に車両で使用すると法に触れると指摘した文書が見つかった。11年にはVWの技術者も違法性を警告していたことが明らかになった。
こうした指摘があった後も問題は改善されておらず、VWが情報を受けてどう対応したのかを徹底解明することが信頼回復の第一歩となりそうだ。(ベルリン共同=桜山崇)