ニュートリノ研究はさらなる飛躍を目指し次のステージへ
スーパーカミオカンデ装置による素粒子ニュートリノの変身(ニュートリノ振動)の1998年の発見を突破口に、素粒子理論の見直しをせまるニュートリノの性質が次々に明らかにされてきました。2011年には大強度加速器J-PARCで作られたニュートリノビームとスーパーカミオカンデを用いたT2K実験により、3つ目のニュートリノ振動モードも確認されました。全ての振動モードが確認された今、ニュートリノ研究はさらなる発見を目指し次のステージへ進みます。
ハイパーカミオカンデ実験では、これまで培ってきた高いニュートリノ実験技術をもとにさらに実験感度を向上させます。検出器は、深さ48m、長さ250mの円筒形のタンクが2個設置されます。タンクの体積は100万トン、これはスーパーカミオカンデの20倍になり、東京ドーム1個分に相当します。タンクの壁には大型の超高感度光センサーが99,000本取り付けられ、水中で発生するチェレンコフ光をとらえます。
ハイパーカミオカンデ実験の実現により、今後も世界のニュートリノ研究をリードしていきます。
100万トンの超大型タンク
スーパーカミオカンデの100年分のデータがハイパーカミオカンデでは5年で得られることになります。そのため、これまで見えなかった素粒子のまれな現象や、対称性のわずかな破れの測定が可能になります。
J-PARC加速器施設との連携
大気や太陽から飛んでくる自然ニュートリノに加え、茨城県東海村のJ-PARC加速器による大強度・高品質ニュートリノビームを用いて、ニュートリノのCP対称性の破れの発見を始めとするニュートリノの精密研究を行います。
ビームパワーの増強も合わせて、現行T2K実験の50倍の数のニュートリノの観測を見込んでいます。
実験原理
ハイパーカミオカンデでは、検出器に入ってきたニュートリノと水が衝突したときにはじき出される荷電粒子が放つチェレンコフ光を、水タンクの壁面に設置された光センサーでとらえます。
チェレンコフ光は荷電粒子の進行方向に対して円錐型に放出されるので、光センサーから得られる光の量やリングの形から、ニュートリノのエネルギー、方向、種類などを決定しています。
国際協力体制
世界トップクラスの研究者が集まる国際研究拠点として、ハイパーカミオカンデ実験は、世界の様々な国の研究者が力を合わせてその実現を目指しています。2015年1月現在で、ブラジル、カナダ、フランス、イタリア、日本、韓国、ポーランド、ポルトガル(オブザーバー)、ロシア、スペイン、スイス、イギリス、アメリカの13ヶ国の研究者が参加しています。