今年のノーベル物理学賞は、宇宙にたくさん存在するが謎に包まれているため「幽霊粒子」と呼ばれるニュートリノ(中性微子)の実体を明らかにした東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授(56)とカナダ・クイーンズ大学のアーサー・マクドナルド名誉教授(72)に贈られた。梶田氏の受賞で、日本は今年の医学生理学賞に続き、科学分野において二日連続でノーベル賞受賞者を出した。その国の基礎科学のレベルが反映されると言われる物理学賞の受賞も2年連続だ。また、梶田氏が師事した東京大学の小柴昌俊名誉教授も2002年にノーベル物理学賞を受賞している。
スウェーデン王立科学アカデミーは7日、「今年のノーベル物理学賞受賞者は、ニュートリノが質量を持っていることを実験的に証明し、宇宙誕生と進化に対する人類の理解を高めるのに貢献した」と受賞理由を明らかにした。ニュートリノとは宇宙の物質を構成する素粒子の一つだ。宇宙が誕生した直後に作られ、太陽の核融合反応や原子力発電所の核分裂反応でも生じる。ニュートリノは親指の爪ほどの面積を毎秒1000億個も通過するほど多く存在する。だが、ほかの物質に全く反応しないのが特徴だ。
梶田氏は1998年、廃鉱になった神岡鉱山(岐阜県飛騨市)のニュートリノ検出装置「スーパーカミオカンデ」でニュートリノの実体を確認した。遠い宇宙から来たニュートリノが地球に到達する過程で、別の種類に変わったり、戻ったりを繰り返しながら振動が発生することを突き止めたのだ。振動があるということは、電子・タウ・ミューという3つのニュートリノに質量があり、この質量がそれぞれ違うことを意味する。マクドナルド氏は3年後の2001年にカナダの地下実験施設で太陽から来たニュートリノでこうした現象が生じることをあらためて確認した。
1998年のスーパーカミオカンデ実験に参加したソウル大学物理天文学部のキム・スボン教授は「ニュートリノの実体を明らかにすることは、宇宙の基本原理を解明するのに非常に重要だ。この分野で何度もノーベル賞受賞者が出ているのも、そうした理由があるからだ」と語った。
両氏はノーベル賞の賞金800万クローナ(約1億1700万円)を分け合うことになる。