TPP大筋合意:自民議員、参院選波及を懸念

毎日新聞 2015年10月06日 11時08分(最終更新 10月06日 12時16分)

 農産物や食品など幅広い品目で関税が撤廃・削減される環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の大筋合意から一夜明けた6日、当初TPP交渉参加に反対した自民党の国会議員の口は重く、来夏の参院選への影響を懸念する声が漏れた。

 野党時代に「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対」を公約にしていた自民党。ところが、2012年12月の政権復帰後に参加にかじを切り、今回の大筋合意へ突き進んだ。自民の若手衆院議員は「農業を守るということをきちんと説明し、有権者の理解を求めていくしかない」と言葉少な。来夏の参院選への影響を心配する議員も多い。

 10年、当時の民主党政権は交渉参加に向けて関係国と協議を始める意向を表明。これに対し、自民党の議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」には入会が相次ぎ、自民は12年末の衆院選で「交渉参加反対」を公約とした。しかし、13年3月に安倍晋三首相が交渉参加を表明したことで「求める会」などの慎重論は勢いを失った。この方針転換に、同会メンバーの近畿地方の議員は「有権者には『何とか党内で頑張ります』と言うしかなかった」と振り返る。

 慎重派は「コメなど重要5項目の死守」を求める条件闘争に路線変更し、名称も「TPP交渉における国益を守り抜く会」に変えた。現在、会員は衆参計約260人。合意の可能性が高まった7月下旬、自民党本部であった同会の会合には約110人が出席し「酪農の離農者が続くのは、TPPに対する将来の不安が大きい」「各農家を回ったが党への不信感が大きい」などと訴えた。

 会は今回も9月25日に同様の会合を開催。約100人の議員を前に、江藤拓会長は「日本には1ミリも下がる余地は残されていない」と発言し、政府の交渉をけん制した。出席したメンバーからは「国益上TPPはマイナスでしかない。いっそまとまらなければ……」と交渉決裂を期待する本音も漏れた。

 安全保障関連法の審議を通じて安倍政権の強引さが指摘され、更に交渉参加に反対してきたTPPの大筋合意という事態が加わり、来夏の選挙を控えた参院議員に不安が広がる。農村部を地盤とする議員の一人は「TPPの結果を有権者に納得してもらえなかったら、自民は厳しい戦いを強いられる」とつぶやいた。【樋岡徹也】

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