18歳選挙権:高校生のデモ参加容認…文科省通知案

毎日新聞 2015年10月05日 21時49分(最終更新 10月06日 00時10分)

高校生の政治活動をどこまで認めるかのポイント
高校生の政治活動をどこまで認めるかのポイント

 来年の参院選から選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられることを受け、文部科学省は5日、デモや集会への参加など高校生の政治活動に関する通知案を、高校校長会などの教育関係団体に示した。学校の内外を問わず高校生の政治活動を「望ましくない」としていた1969年の通知を見直し、校外での政治活動は一定条件下で容認する。ただ、校内では引き続き高校側に抑制的な対応を求める内容だ。関係団体の意見を踏まえて最後の検討を加え、今月中に各都道府県教委などに通知する予定。【三木陽介】

 ◇校内は制限や禁止

 通知案は、高校での主権者教育や高校生が行う政治活動に関する注意点を示した。69年通知は当時、激しい学生運動が高校に波及したことを受け、高校生の政治活動を「教育的な観点から望ましくない」としていた。その理由に選挙権がないことを挙げていたが、今回は高校生の一部が有権者になることから見直した。

 授業中や生徒会活動の時間の政治活動は、69年通知同様に禁止する。放課後や休日の「校外」での活動は「家庭の理解の下、生徒が判断し行う」と解禁した。しかし「校外」であっても「違法や暴力的な恐れが高いと認められる場合は、高校が制限または禁止する必要がある」と明記。「校内」では、他の生徒への支障が生じないよう、制限または禁止を求める。文科省の担当者は「この通知を基に各教委や学校が生徒にルールを示すことが必要だ」と話している。

 また、主権者教育に関しては、▽教員が個人的な主義・主張を述べることを避ける▽公正中立な立場で指導する▽政治的テーマを扱う場合は一つの結論を出すよりも結論に至る過程が重要であることを理解させる−−など、文科省が作成した副教材と同様の留意点が盛り込まれた。

 ◇「禁止範囲あいまい」…教育関係者

 高校生の政治活動を国がどこまで認めるのかを示す通知だけに、校長会などの関係団体や有識者からあいまいな点への不安の声が相次いだ。通知の見直しは46年ぶり。「校外」での解禁には賛同する意見が目立ったが、禁止事項には「具体的な範囲が分からない」という指摘が聞かれた。

 全国都道府県教育長協議会の中井敬三会長は「現在の社会情勢を考えれば妥当」と評価。ただ、「制限または禁止」と条件をつけた放課後や休日の校内活動には「どこまで禁止なのか判断がつきにくい」と指摘。全国高等学校長協会の宮本久也会長は、校外で禁止される「違法な政治活動」に関し「実際に校外の生徒の動きを把握するのは現場としては難しいし、イメージがつきにくい」と述べた。

 これに対し、小松親次郎・文部科学省初等中等教育局長は「留意事項を細かく示してほしいという不安の声もあるので、調整しながら対応していきたい」と理解を求めた。

 有識者からは「今回の通知は学校に生徒の政治活動について取り締まりを求めるものではない」「一定の段階で文科省は学校向けに『Q&A』を示すべきだ」との意見が出た。日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長は「主権者教育を学校だけでするのは難しい。家庭、地域とも連携していくことが必要だ」と強調した。

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