2015年10月6日16時04分
■絵本作家・本間ちひろさん(37)
穏やかな日曜の午後だった。
沖縄音楽が流れる食堂を改装した住宅街のギャラリー。訪れた人たちは麦茶やコーヒーを飲みながら、展示された作品を思い思いに眺めていた。
大阪市内で「戦争法案反対!」を訴える大規模なデモがあった先月13日、大正区のアート&アンティーク櫻屋(さくらや)では「平和っておいしいね!展」が開かれていた。トークイベントで豊中市在住の絵本作家、本間ちひろさん(37)は語りかけた。「作品を作っている過程の気持ちを大事にすると楽しいですよ。『平和がいいな』と思ったら素直に表現してみましょう」
展示されたのは、沖縄にある魔よけの獅子「シーサー」をモチーフにした置物や、手話をする猫を描いた絵など150点余り。本間さんが出展した猫の絵は、それぞれが気に入った手話の表現を生活に取り入れることを勧める。「困った時に助けてくれる社会は安心で平和な社会につながる」という願いを込めた。
□ ■ □
一風変わったこの平和展。大阪では初開催だった。きっかけは、本間さんが東京に住んでいた2年前の夏。その頃、尖閣諸島や竹島の領有権を巡り、近隣諸国との関係が殺気立っていた。「国同士でもめて、嫌よね」と留学生の友人らと嘆き合ったが、外交や安全保障の専門家でないと、物を言いにくい空気を感じた。「平和」というと何か活動家のような色眼鏡で見られてしまう。「もっと穏やかな言葉なのに」
そんな息苦しい空気を入れかえようと始めたのが、「おいしいね展」だ。1年目は本間さんの個展だったが、3年目の今年は大阪と東京の8カ所まで輪が広がった。カフェやギャラリーで絵描きや詩人、工芸家らがそれぞれのやり方で探した「平和」を表現する…
残り:1540文字/全文:2282文字