“自転車革命都市”ロンドン便り<29>ラウンドアバウト攻略で海外ライドをもっと楽しく ロンドン都心部を例に徹底チェック
日本からロンドンを訪れ「自転車に乗ってみたい」という方をご案内することがときどきあります。イギリスは日本と同じ左側通行で、交通標識なども共通か近い意匠のものが多く、着いてすぐに自転車に乗り始めてもそれほど当惑しないですむ国といえると思います。
ただひとつだけ予習をしておいたほうがいいのが「ラウンドアバウト」。ロータリー式の信号を使わない交差点です(信号と組み合わされているものもあります)。世界各地にありますが、イギリスとアイルランドはラウンドアバウトが特に多く、住宅街のごく小さな交差点から周回路が5車線くらいの巨大なものまで、いろいろな規模・スタイルのものが無数に存在します。
ラウンドアバウトの3つの基本
ラウンドアバウト式の交差点は、ある量までは信号式の交差点よりもさばける交通量が多く効率がいいのだそうです。それで日本でも長野県で試験的導入が始まったそうですね。信号機も不要でかなり税金の節約にもなるし、自転車やクルマを運転する者としてもストレスが小さいし、混雑する大都市以外ではメリットが大きいだろうと思います。
さて。走っていてラウンドアバウトが近づいてきたらどうするか、まず基本的な理解から。ちなみに自転車もクルマも同じ動きになります。
(1)ラウンドアバウトの中は時計回りで流れています(※以降すべて左側通行の国の場合です。右側通行の場合は反時計回りなどすべて逆になります)
(2)ラウンドアバウトの中を走っている車両が常に優先です。時計回りなのでラウンドアバウトの中を右から回ってくる車両がないときに、左折しながらラウンドアバウトの中に入ります
(3)回りつつ、目的の道が来たら左折してラウンドアバウトから出ます
簡単ですね! どの方角に進むにしても左折しか必要なく右折がないので、慣れれば安全かつ効率的であることがわかります。道路がすいていてラウンドアバウトの中がからっぽであれば、一部の例外をのぞいて一時停止も必要ありません。快適、快適。
手信号を出すタイミング
ただちょっと覚えておきたいのは、方向指示…自転車なら手信号、クルマならウィンカーを出すタイミングです。ここでの決まり事は、「左折ウィンカー(左折信号)は、自分の出口の1つ手前で出す」ということ。
2本の道路がシンプルに交差している4つ角に相当する4本接続路(4本足)ラウンドアバウトなら、いわば左折をするならラウンドアバウトに入る時から最初の接続路で出るまでずっと左折ウィンカーを出しっぱなし。自転車はずっと手信号を続ける必要はまったくないですが、要所要所で出して、後続車や次の接続路からラウンドアバウトに入ってこようとしている車両に意思を伝えることが大切です。
いわば直進をするなら2つめの接続路で出るので、ラウンドアバウトに入って最初の接続路をすぎる頃に「次で出ますよ」という意思表示の左折ウィンカーを出して2つめの接続路で左折して出る。
あとはこの延長で、いわば右折をするなら3つめの接続路を使うので2つめをすぎる頃に左折ウィンカーを出す。これが方向指示の原則です。ウィンカーをどこでどう出しているかがよくわかるgifアニメを参考にしてみてください(クリック拡大にて再生)。
混乱しそうなところ申し訳ないのですが、もうひとつだけ付け足しルールがあります。いわば右折をする場合は、ラウンドアバウトにアプローチした時点で「たくさん回るよ!」という意思表示の右折ウィンカーを出すのです。これはとくに周回路の中が複数車線の大きなラウンドアバウトで大切です。
複数車線時の英国式走行法
そもそも自転車では周回路が複数車線(レーン)になっているような大型のラウンドアバウトはできるだけ避けたほうがいいのですが、ときには通らざるをえないこともあるので説明しておきます。
周回路が複数のラウンドアバウトも上記の原則はまったく同じです。ただ、ラウンドアバウトへのアプローチ時点ですでに自分のいる道が2~3車線になっています。路上にペイントされている左折専用レーン・直進専用レーン・右折レーンなどの矢印を参考にレーンを選んでラウンドアバウトに入るタイミングを待ちます。
次の動画は、ロンドン都心にある最大5車線のラウンドアバウトで撮影しました。フレーム向かって左手側がラウンドアバウトの円の中心。自転車も内側レーンを走っていることに注目です。
たとえばアプローチも3車線、周回路内も3車線の場合なら、左折するならアプローチでいちばん左のレーンに陣取り左折ウィンカーを出し、周回路でもいちばん左のレーンを守って最初の接続路で出ます。直進するなら中央のレーンから周回路の中央レーンに「一瞬」入り、左隣にいた左折車が最初の接続路で出て行った頃に左ウィンカーを出して周回路の左レーンを経て2つめの接続路でラウンドアバウトから退出します。右折なら右のウィンカーを出しながらいちばん右のレーンに陣取り、ラウンドアバウトに入ったらそのまま一番右のレーンを半周ほど走り、2つめの接続路がすぎる頃に左ウィンカーを出して周回路の中央レーン→左レーンと周回路内でレーン変更をして3つめの接続路で退出します。
…文字で書くと大変だ(汗)。複数車線のラウンドアバウトは、アプローチの車線数と周回路の車線数が大抵一緒になっているので(違うこともあるけど)、自分が選んだレーンがそのままラウンドアバウトの中まで続いていると考えるとわかりやすいかもしれません。そして自分の出口の手前では周回路内の左折レーンに移って準備し、左折するだけのこと、とも言えます。
自転車で注意すべきなのは、イギリスではいまのところクルマも自転車も動線はまったく一緒なので、このような大きなラウンドアバウトで直進や右折をするときは「自転車でも周回路で内側のレーンに入らなければならない」ことです。接続路出口も2レーン程度の複数車線になっていて周回路のうちの左から2つ目のレーンも左折して出ることができるラウンドアバウトも少なくありません。日本の感覚で自転車は常に左のレーンと思っていると、右側にいる車両が当然のように左折してくる可能性があるので巻き込まれてしまいます。次の接続路で出ないなら、勇気を出して中央寄りのレーンを走らなければなりません。これは大切です。
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ラウンドアバウトに限らずどんな道を走る時も同じですが、クルマと混ざって走る時には、手信号、振り返って後方確認、進路が交錯しそうなクルマのドライバーとはできるだけアイコンタクトをとる、必要なときは車線の中央に陣取って後続車に追い抜かせない(英では合法)、譲ってもらったらジェスチャーかうなずいたり笑顔で感謝の意を示す…など、あらゆるコミュニケーション手段を動員して、路上でまわりに気づかれる・意識される存在になって走ることを心がけてください。これは日本でも同じだと思いますが。
ラウンドアバウトが苦にならなくなれば、海外ライドがぐっと楽に安全になります。ぜひ攻略してください!
ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。