“海老名ツタヤ図書館”の内幕 新たな疑惑に市民が激怒

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(更新 2015/10/ 7 07:00)

独自分類で配架され、本が探しにくいという声も… (c)朝日新聞社 

独自分類で配架され、本が探しにくいという声も… (c)朝日新聞社 

 武雄市(佐賀県)に続いて国内2例目となる“TSUTAYA図書館”が10月1日、神奈川県海老名市に改装オープンした。疑惑の選書で注目を集めたためか、市民から賛否の声が上がる。

 駅近の一等地にある海老名市立中央図書館は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)の共同事業体に運営を委託し、総事業費10億7900万円。

 銀色に輝く図書館の中に入ってみると、1階の大半は蔦屋書店とスターバックスコーヒーが占めている。地下1階、地上2、3階が主に図書館エリアで、4階はプラネタリウムを改修した子供専用のフロア。本を読みながらくつろげる空間が広がっている。

「子供と一緒だと肩身が狭かったけど、ここなら周囲を気にせず、本を楽しめてうれしい」(30代の女性)

 本誌(10月9日号)で報じたように、海老名市ではオープン直前になって“お粗末な選書”が発覚。CCCが提出した約8300冊の追加購入予定リストの中に、メガネクロスや調理器具付きのムック本など、図書館として不適切とされるモノが含まれていた。

 市がリストを精査して約7100冊を購入したが、一部は発注が直前となって間に合わなかった。この日、記者が確認したところ、疑惑の本は無事、精査されていたようだが、油断は禁物。

「選書トラブルのせいか、新しい図書館なのに、部分的に書架がスカスカで驚いた。武雄みたいに郷土資料など重要なものが廃棄されていないか不安がよぎります」(50代の男性)

 図書館問題に詳しく、内覧会に参加した慶応義塾大学の糸賀雅児(まさる)教授は言う。

「約20万冊を開架書庫に並べ、本との出合いが広がりました。CCCなど民間への委託で、自治体直営の図書館に刺激を与えていますが、どちらかというと、本屋とカフェがメインで図書館は添え物のようにも見えます。ただし、説明がつかない選書ではいけないので、利用者の意見を聴く場を設けて、透明性の高い図書館運営を心がけるべきです」

 9月29日の海老名市議会の委員会では、委託先に支払ったお金の流れが不透明になっていることが判明。傍聴した市民から「市はCCCと住民のどっちの味方なんだ」と、怒号が飛んだ。

「2014年度に図書購入費を含む指定管理費として、委託先に約3億694万円が支払われているが、そのうち9052万円は未執行。単年度予算なので、未執行のお金は市に戻し、他の事業に使うべきだ。いまだに委託先は市に返却せず、市教育長らも『財務部署と相談して対応する』と悠長なことを答弁している。不透明な税金の使い方は許されないので、一刻も早く正さなければならない」(海老名市の飯田英榮[ひでしげ]市議)

 ドタバタ劇はなお続く。

(本誌・鳴澤 大、永野原梨香、牧野めぐみ、西岡千史、林 壮一、松岡かすみ、秦 正理/今西憲之)

週刊朝日 2015年10月16日号

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