戦乱がやまないアフガニスタンでまた、悲劇が起きた。北部の都市クンドゥズで、地域の医療拠点だった病院が爆撃され、多数が死傷した。

 現地では、反政府勢力タリバーンと政府側が交戦している。爆撃は、政府を支援する米軍主導の国際部隊による可能性が高い。ゆゆしい事態である。

 この病院は、国際医療NGO「国境なき医師団」が運営する施設だった。荒廃した地域で戦火で傷つき、病に苦しむ人たちを分け隔てなく手当てしてくれる命綱のような存在だった。

 医療施設への攻撃は、国際人道法に反する行為であり、決して許されない。米政府は事件を重く受け止め、公平な立場から徹底調査を急ぐべきだ。

 国境なき医師団によると、空爆は3日未明に起き、主要病棟などが爆撃された。ここが病院であることは米軍や政府に事前に知らせていたうえ、攻撃開始後も緊急連絡したのに、爆撃は1時間あまり続いたという。

 米軍側は、アフガン政府軍の要請を受けて爆撃したとしているが、これまでの説明では釈然としない。病院は巻き込まれたのか、なぜ途中で爆撃を止められなかったのか。

 綿密な調査のうえ、情報を開示し、公正に責任を問う姿勢が必須である。その作業なくしては、民主主義と安定を掲げて現地で活動する国際部隊の存在意義が問われることになる。

 米国主導の空爆作戦は、シリアやイラクでも行われている。どんな場合であれ、市民や民生施設の被害を避ける綿密な対応が不可欠だ。アフガンでもイラクでも、市民被害が米軍や政府から民心を離反させ、統治の安定化を遠ざける一因になったことを忘れてはならない。

 半面、米軍が一方的に手を引くことも賢明とは言えない。アフガンの政府軍には全土を管理する能力はないからだ。米軍は来年末までに駐留部隊を完全撤退させる計画でいるが、それは米国の都合ではなく、アフガンの情勢を冷静に見極めてから決めるべきだ。

 1年前にガニ大統領が就任した後も、戦闘やテロが続いている。クンドゥズも、先月末にタリバーンが制圧し、3日後に政府側が奪還したばかりだ。かつての内戦が再び激化しているのが、実態ではないのか。

 米軍主導のアフガン戦争開始から14年たってなお、平和への道は険しい。軍事力だけでは実現できない各派の和解の調整こそがかぎを握る。そのための国際支援のあり方を不断に考え、実行する必要があるだろう。