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 欧州連合(EU)司法裁判所は6日、米国の企業が、EU域内から米国に個人情報を移動することを認める米EU間の協定を無効とする決定を下した。2013年に発覚した米国家安全保障局(NSA)による極秘のインターネット上の記録の大量収集で、個人情報の保護が保障されなくなったと主張するオーストリア人男性の訴えを認めた。

 現行のEU指令は、EUと同等の個人情報の保護が確保されない第三国への情報の移動を禁じている。ただ、米国に対しては、企業が十分に個人情報を保護する制度が整備されたとして、00年に情報を移動することを認める協定を特別に結んだ。日本は原則として、認められていない。

 英紙フィナンシャル・タイムズによると、ネット通販大手アマゾン、米検索大手グーグルなど4千以上の米企業がこの協定を利用し、欧州から米国に顧客の支払い情報など膨大な個人情報を移動している。今後、企業活動に影響を与える可能性がある。

 訴えによると、米SNS大手フェイスブックを利用するオーストリア人の男子学生が、フェイスブックの欧州本社があるアイルランドから米国への情報の移動を中止するよう求めていた。裁判所は、協定に関するEUの決定を無効としたうえで、アイルランド当局には、実際に情報の移動を中止させるかどうかについては、米国の個人情報の保護が適切かどうかを判断して決めるように求めた。(ブリュッセル=吉田美智子)