フォルクスワーゲンが不正ソフトウェアを駆使してディーゼル車の排ガス規制をくぐり抜けていた事件で、ドイツの自動車メーカーの信用は地に堕ちました。
でも今回の事件を最も残念に思い、フォルクスワーゲンに腹を立てているのは、カリフォルニアの消費者などではなく、ドイツの自動車産業に携わるひとたちだと思います。なぜならドイツの自動車産業に携わる人々の体内には血液ではなく、ガソリンが流れているからです。
下はたまたまネットで拾ってきたクラフトワークの3Dコンサートの動画です。6分頃から始まる『アウトバーン』という曲を視てください。
このコンサートでもドイツ車が誇りをもって大々的にフィーチャー(笑)されておるわけです。
二回の世界大戦を自らおっぱじめて、しかもそれに負け、全てを失い、しかも世界からその人間性の欠如をコケミソにされたドイツは、第二次世界大戦後、内省と恥辱の時期を迎えました。
ヒトラーやナチズムやユダヤ人への迫害に関する話題はタブーとなり、ドイツ人はひたすら過去を忘れ去ろうとしていました。
それはドイツの文化にも深遠な影響を与えました。
ドイツ的なものは若者から疎まれました。それでいて英国風やアメリカ風の文化にもドイツは馴染めなかったのです。そこで過去と決別した、何か全く新しい、オリジナルな音楽が必要だったのです。
1960年代後半から出てきたドイツの音楽は、したがって自ずと宇宙を題材としたコズミック・ミュージックにならざるを得なかったのです。そのようなグループのはしりがアモンデュールでした。
イギリスやアメリカではギターがロック音楽の中心となっていたのに対し、ドイツではエレクトロニック・ミュージックが開花しました。アーチストたちのたまり場になったのは西ベルリンのゾディアック・フリー・アーツ・ラボです。
その中から、最初のアンビエント・ミュージックのグループ、クラスターや、シンセサイザーだけで音楽を作るグループ、タンジェリン・ドリームなどが登場したのです。
デュッセルドルフでは1970年にフローリアン・シュナイダーとラルフ・フッターというクラッシック音楽を学んでいる音大生がシンセサイザーを使った新しいグループをはじめます。それがクラフトワークです。
クラフトワークは自動車や急行列車やロボットなどのテクノロジーにロマンチシズムを見出します。それはこれらの非イデオロギー的なものにドイツが自らの生きる道、未来を見出したからに他なりません。
イデオロギーを後回しにし、ひたすらモノ作りに専念するというドイツの考え方は、結果的にとてもドイツを利することになりました。(最近、イデオロギーの床屋談義ばかりに花を咲かせ、モノ作りをすっかり忘れた、どこかの国とは対照的ですね)

ドイツ経済は今のところ日本より小さいですが、いずれ日本を追い越すでしょう。
なぜなら日本もドイツも、国内経済は少子高齢化などの関係で成長スピードが遅いけれど、世界はもっと高い成長率だからです。すると自国経済が世界へ向けて解放されている度合が高い国ほど、自ずと成長率は高くなるのです。
下は主要国の輸出額です。日本は「輸出立国」とかなんとか偉そうなことを言っている割には、輸出はショボイです。

一方、輸入額で見てもドイツは日本より多いです。

これはシンガポールなどにも当てはまることだけど、豊かになろうと思えば、経済の開放度を高め、貿易に自分の未来を託すのが、いちばんの近道です。

ドイツは、製造業を守るため、いま思いっきり雇用を世界に対して解放しています。そうしなければ、モノ作りでの競争力を維持できないからです。その辺の事情については別のところで記事にしたので、そっちを読んでください:
「ドイツ経済の近況」
今回のフォルクスワーゲンの件は、ドイツ経済にとって明らかに一歩後退でした。でもこれで「ドイツが死んだ」と考えるのは早計だと思います。
ドイツの自動車産業が、その数少ない弱点のひとつである企業統治(ガバナンス)の問題を克服すれば、将来はもっと手強いライバルになることは目に見えています。
ついでに言えば、DAX指数は今年の上昇分を全部吐き出してしまいましたが、ドイツの経済は、それほどひどくないです。iSharesドイツETF(ティッカーシンボル:EWG)は、一考に値します。

でも今回の事件を最も残念に思い、フォルクスワーゲンに腹を立てているのは、カリフォルニアの消費者などではなく、ドイツの自動車産業に携わるひとたちだと思います。なぜならドイツの自動車産業に携わる人々の体内には血液ではなく、ガソリンが流れているからです。
下はたまたまネットで拾ってきたクラフトワークの3Dコンサートの動画です。6分頃から始まる『アウトバーン』という曲を視てください。
このコンサートでもドイツ車が誇りをもって大々的にフィーチャー(笑)されておるわけです。
二回の世界大戦を自らおっぱじめて、しかもそれに負け、全てを失い、しかも世界からその人間性の欠如をコケミソにされたドイツは、第二次世界大戦後、内省と恥辱の時期を迎えました。
ヒトラーやナチズムやユダヤ人への迫害に関する話題はタブーとなり、ドイツ人はひたすら過去を忘れ去ろうとしていました。
それはドイツの文化にも深遠な影響を与えました。
ドイツ的なものは若者から疎まれました。それでいて英国風やアメリカ風の文化にもドイツは馴染めなかったのです。そこで過去と決別した、何か全く新しい、オリジナルな音楽が必要だったのです。
1960年代後半から出てきたドイツの音楽は、したがって自ずと宇宙を題材としたコズミック・ミュージックにならざるを得なかったのです。そのようなグループのはしりがアモンデュールでした。
イギリスやアメリカではギターがロック音楽の中心となっていたのに対し、ドイツではエレクトロニック・ミュージックが開花しました。アーチストたちのたまり場になったのは西ベルリンのゾディアック・フリー・アーツ・ラボです。
その中から、最初のアンビエント・ミュージックのグループ、クラスターや、シンセサイザーだけで音楽を作るグループ、タンジェリン・ドリームなどが登場したのです。
デュッセルドルフでは1970年にフローリアン・シュナイダーとラルフ・フッターというクラッシック音楽を学んでいる音大生がシンセサイザーを使った新しいグループをはじめます。それがクラフトワークです。
クラフトワークは自動車や急行列車やロボットなどのテクノロジーにロマンチシズムを見出します。それはこれらの非イデオロギー的なものにドイツが自らの生きる道、未来を見出したからに他なりません。
イデオロギーを後回しにし、ひたすらモノ作りに専念するというドイツの考え方は、結果的にとてもドイツを利することになりました。(最近、イデオロギーの床屋談義ばかりに花を咲かせ、モノ作りをすっかり忘れた、どこかの国とは対照的ですね)
ドイツ経済は今のところ日本より小さいですが、いずれ日本を追い越すでしょう。
なぜなら日本もドイツも、国内経済は少子高齢化などの関係で成長スピードが遅いけれど、世界はもっと高い成長率だからです。すると自国経済が世界へ向けて解放されている度合が高い国ほど、自ずと成長率は高くなるのです。
下は主要国の輸出額です。日本は「輸出立国」とかなんとか偉そうなことを言っている割には、輸出はショボイです。
一方、輸入額で見てもドイツは日本より多いです。
これはシンガポールなどにも当てはまることだけど、豊かになろうと思えば、経済の開放度を高め、貿易に自分の未来を託すのが、いちばんの近道です。
ドイツは、製造業を守るため、いま思いっきり雇用を世界に対して解放しています。そうしなければ、モノ作りでの競争力を維持できないからです。その辺の事情については別のところで記事にしたので、そっちを読んでください:
「ドイツ経済の近況」
今回のフォルクスワーゲンの件は、ドイツ経済にとって明らかに一歩後退でした。でもこれで「ドイツが死んだ」と考えるのは早計だと思います。
ドイツの自動車産業が、その数少ない弱点のひとつである企業統治(ガバナンス)の問題を克服すれば、将来はもっと手強いライバルになることは目に見えています。
ついでに言えば、DAX指数は今年の上昇分を全部吐き出してしまいましたが、ドイツの経済は、それほどひどくないです。iSharesドイツETF(ティッカーシンボル:EWG)は、一考に値します。