近所の人は不審がるし、変な顔で皆ジロジロ見てくる。
三日も経った頃、あそこにさわさわした感覚が走ってついに俺は勃起してしまった。
ついでにどこからとも無く声が聞こえてくる。
「私の聞こえますか? 今私は賢者様にお願いしてあなたに声が聞こえる様にしていただいたのです」
なんだ、ツイッターのネタみたいなこの声は、と思っていると、向うの麗人っぽい人は更に続けた。
「勇者様、あなたの精液を1ナメロンすくい取ることにより、魔王を倒す秘薬が誕生するのです。
しかもその精液はただ絞りとるわけにも行きません。乙女の愛液と混ぜなければなりません。
そう言うと駐車場の向こう側でなにやらゴソゴソと音がし、華奢な指が先端を優しく撫でる感覚が走った。
驚く俺の感情は全く伝わらないらしく、拙い様子でカリと先っぽを交互に撫で回しながら、これでいいかしら、と困惑したふうにつぶやいている。
目を閉じて集中していた俺はそれどころじゃなくなり思わず目を開いたものの、そこにあるのは打ちっぱなしの壁。
見えない! 手でしてくれてるのに見えない!
だけどちんちんが壁から抜けないため脱力も出来ず、ただ立ち尽くすのだった。
肝心の愛液は乙女の純血を守りつつ自分たちで混ぜるそうです……。
翌日も似たようなもん。
次の人はなんかエルフの人らしい。
長年魔王の放つ魔物に手を焼いてるらしく、どうにかそれを退ける結界を張りたいらしい。
なんでも聖水代わりに使うのだとか。
立ち尽くしたままで”立たされる”俺の男根に両端から柔らかい感触が伝わる。
見えない! 胸で挟まれてるのに見えない!
見えないまま胸と思わしき感触は男根を刺激し続けていたが、やがて先端をすっぽりと何かに包まれているような感覚に襲われた。
もうこれはあれですよね。挟まれた上であれを何されてるしか考えようが……おうっふ。
ことを終えた彼女たちは嬉しそうに去ってゆく。例によって愛液混ぜは自分たちでやるそう。
え、あそう。うーんああ。……まあそうですよね。やんごとないエルフですもんね。
……やんごとないのか?
警察に事情を話していると近所のタレコミを受けたマスコミまでやってくる。
最初は小さな話題だったらしいが、スマホをみせられて炎上が発覚。
壁ちん男として画像まで出回ってるらしい。
そのうち記者たちが次々駐車場に訪れて警備員と押し合いを始めた。
炊かれるフラッシュの雨。
「一体どういう経緯でこうなったんですか?」
俺が聞きたいよ。
「今のお気持ちは?」
時々気持ちいいです。
そうやって頭のなかで答えられないジョークを飛ばしていると、あの時の麗人とエルフの声が交互に聞こえてくる。
麗人「こんにちわ勇者様。今日はこの間和解したオークの国のものを連れて来ました」
俺は嫌な予感がした。
麗人「どうかこのオークの娘に勇者様のお力を与えて頂きたいのです」
麗人がそう言うやいなや、たぶん前戯もなしに何かを割って入ってくる音がした。
脳内に響く豚のような声。
マスコミがその顔を連写する。
これはそう、ラフレシアにちんちんを突っ込んでいる程度の……いや余計に悪いか。
いやいやそう思うと勃起も収まって――。
そこにエルフと麗人の声が聞こえる。
と言う麗人の口から何やら呪文。すると俺の男根は再び盛り上がり始める。
エルフも玉袋を撫ぜたり根っこを指で摘んだりし始める。俺はもう(オークの膣で)たまらなくなって情けない声を上げつつ涙を流してしまった。
垂れ落ちる鼻水と涎。取材陣のフラッシュと医者の真剣な眼差し、見えない美人と豚の声、警官の怒号。
とたん、周囲に光が満ちた。
「大丈夫ですか」
美人ナースの声で目が覚める。どうやら俺は駐車場で倒れていたらしい。
何事もなかったよに振る舞う人々に違和感を最初は感じていたけど、きっとあれは夢だったのだろうと思いこむことにした。
「なんだ、これ……」