- 作者: 尾田栄一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/10/03
- メディア: コミック
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尾田栄一郎 『ONE PIECE』の79巻のレビューというか簡単な感想です。
78巻より面白かったかな。
なんかドフラミンゴが簡単に倒せてしまったという感じだった。ぼくは78巻からしか読んでないから余計そう思うんだろうけど、結局ギア4で叩いて終わりという。
まあバトルはそんなもんですが、この漫画がすごいのはやっぱりキャラクターの多彩さかな。どんどん規模が大きくなっていってる。過去に出てきたキャラもうまく使われていて、世界に立体感がある。ぼくは前巻のレビューでバルザック的とか言ったと思うけど、それはやっぱりそう思う。まあぼくはバルザックの熱心な読者ではないけど。この想像力のバカでかさは素直に称賛できる。
ただし、やっぱり演出面はうまくない。漫画だからデフォルメが基本となるのはいいのだけど、それにしてもやっぱり泣きすぎなんじゃないか。真面目に涙を流すくらいならいいけど、なんかめちゃくちゃ泣き顔が誇張されていて、ちょっとやりすぎじゃないかと思う。そこまでわかりやすい絵に頼らなくてもいいのでは。もっと読者の読解力を信じてほしい。
子供向けだからこそもっと鋭利な描写にしてほしいなという願望はある。あまりに誇張され単純化されたものばかりに触れているとひとは想像力を失っていくんじゃないかな。背後にある無限性や矛盾に思い至らず、表面上の美しい標語によって簡単に扇動あるいは洗脳されてしまうようになる。1か0かみたいな思考から脱するにはまず現実の複雑性と格闘する必要があると思う。それは差異を認識するということ。ある種のおぞましさを感じ、孤独に打ち震えるということだ。それはべつにある種の相対主義のことを言っているのではなく、言語の原理的な不完全性に自覚的であれということだ。何かを語るということは、同時に何かを語っていないということ、何かが語り得ないということを意味する。もっとも美しい言葉というものはもっとも堕落したものなのかもしれないし、もっともけがらわしい言葉はもっとも光り輝いているのかもしれない。この「かもしれない」が重要で、要するに、そこで最終的な断定をして判断をやめてしまわないということだ。物事はいつも周囲の環境から影響を受け、あるいは環境に影響を与え返し、動いていくのだからね。
関係ないけど、『ONE PIECE』読者がマーリオ・リゴーニ・ステルンの本読んでどういう感想を持つかは興味があります。もし時間があったら読んでみてください。
- 作者: マーリオ・リゴーニステルン,Mario Rigoni Stern,志村啓子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2004/07/20
- メディア: 単行本
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79巻もいいところで終わったので、買わないつもりだったけど80巻も買っちゃうかも(´・ω・`) ていうか、ぼくが生きてる間に完結するんだろうか……
☆☆