無事に箕有電車を開業した一三だったが、客足は伸びない。家族で出かけられる場所をつくるため、一三は女子だけのオペラを上演することを思いつき、宝塚少女歌劇団を設立する。そんな時、箕有電鉄の大株主である北浜銀行の頭取・岩下が疑獄事件に巻き込まれ失脚。北浜銀行は事実上の倒産に追い込まれてしまう。一三は借金をして北浜銀行所有の箕有電車株を全て買い取り、名実ともに自分の会社にする。さらに苦しい状況を承知の上で路線を伸ばし、大阪から神戸までの大動脈・阪神急行電鉄を創業。駅に隣接する百貨店を創業するなど画期的なアイディアで事業を拡大していくが、日本は戦争の時代を迎えようとしていた…。
明治27(1894)年。甲州の裕福な家の生まれである小林一三(阿部サダヲ)は、三井銀行・大阪支店で趣味の小説を書きながらのんびり働いていた。ところが、新しい支配人として岩下清周(奥田瑛二)が着任してから生活が一変。独断で融資を決めるなど破天荒な岩下に振り回され仕事漬けの日々に陥るも、同時に銀行の仕事の面白さを知る。ところがその矢先、独断専行が目立つ岩下は辞任に追い込まれ、一三も転勤に…。その後北浜銀行を設立した岩下に「新会社の社長にならないか」と誘われ三井銀行を辞め大阪に飛び戻るが、翌日から株式市場が暴落。一三は岩下から北浜銀行が関わっていた行楽電車「箕有電車」事業の清算業務を任されることに。景気のあおりを受けた箕有電車を哀れに思った一三は、妻・コウ(瀧本美織)のひとことで画期的なアイディアを思いつき、弱小電鉄の再生に向け動き出す…。
明治6年(1873)1月3日山梨県韮崎市生まれ。慶應義塾卒業後、三井銀行に勤務。
銀行の元上司で北浜銀行を設立した岩下清周に誘われ、新設する証券会社の支配人になるために明治40年(1907)大阪へ赴任するが、恐慌に見舞われ証券会社の話はなくなり、妻子を抱えて無職となってしまう。
その頃、同じく景気悪化で頓挫しかかっていた箕面有馬電気軌道を、沿線の住宅開発とセットで行うという独創的なアイデアで見事実現に導く。その後も鉄道事業を、大阪~神戸間を結ぶ大動脈として発展させ、世界初のターミナルデパートを開業し、少女のみの「宝塚少女歌劇」や演劇・映画の「東宝」を設立するなど、大衆のニーズをいち早くつかんで次々と事業を成功させていく。
その手腕が買われ、東京電燈に招かれ経営を立て直し、昭和15年(1940)には第二次近衛内閣の商工大臣に任命される。多方面にわたる活躍で近代日本の実業界に大きな影響を与えた。享年84。
阪急電車を作り、阪急デパートを作り、宝塚を作り、東宝を作り、果ては大臣にまでなっちゃって。小林一三翁の業績はまさにキラ星のごとくですが、私が度肝を抜かれたのは「家賃並みで家が買える!」という発想で住宅ローンという仕組みを作ったということでした。なぜならば、バブル崩壊後の日本で私は「今なら家賃並みでマイホーム!」という謳い文句で住宅情報誌の記事を作り続けていたからです。もちろん、それが100年以上も前に一三翁の創り出したものだとは露知らず……。まさに100年経って色あせないビジネスモデル。その奇跡のような力強さを持つ仕事の原点は一体どこにあったのか。そんなことを考えながら書きました。お楽しみいただければ幸いです。
小林一三氏の活躍した頃は、アメリカでジャズが生まれ、形を成した頃です。そして今でもジャズミュージシャンたちがこぞって演奏する「スタンダードジャズ」の原曲である「映画音楽」の名曲達が生まれた時代でもあります。宝塚歌劇団に通じるレヴュー、ミュージカル映画等も然りです。
小林一三という経世済民の人物の人生のキーワードを追って見れば、「音楽」に満ちていたと言えるでしょう。
「夢」「金」「列車」「歌劇団」「1900年代初頭」「家族」
これ、全て音楽の題材に頻繁に使われるものばかりですね。そして名曲を思い浮かべる事が出来ると思います。
私個人の人生の“夢”は「スタンダードジャズになりうるような曲を現代で作る」という事です。1900年代初頭の「超巨匠作曲家達に挑む」という恐れ多くも壮大な事。それを今回トライさせていただきました。
5歳ごろに家族と夏休みに見に行った宝塚歌劇団の舞台が、私の演劇経験の原点です。華やかで楽しくて心揺さぶられるもの!
宝塚歌劇団の創設者である小林一三さんの生涯を描くにあたって、改めてその業績の多様さに圧倒されました。しかし共通するのは「ちょっと暮らしを豊かにするもの」ということ。一三さんは事業のために粉骨砕身されましたし、人にもそれを求めました。そのようにすれば社会全体が少しずつ底上げされていく、と信じてらっしゃったのではないでしょうか。
この作品も「華やかで楽しく心揺さぶる」もの、一三さんの信念を共有するものでありたいと念じながら制作しました。阿部サダヲさんはじめ皆さんの、熱のこもったドラマをお楽しみ下さい!
「人間の本質とは欲。我欲だよ。」
後編で森下さんが一三さんに言わせた台詞です。私、この台詞に惚れております。
この言葉は、実際に一三さんが言ったり書いたりした言葉では無く、作家の森下さんが一三さんと向き合った結果、生まれた台詞です。しかし、見事に一三さんの経営哲学、人間観を表現していると感じるのです。
一三さんは人間の欲を肯定しまくります。美味しいものを食べたい、楽しいものを観たい、良い家に住みたい、とにかく楽しく生きたい。こんな願いを次々と形にして、人々の暮らしを少しでも希望の持てるものに変えていく。「我欲」を争いの元として捉えるのではなく、人が明日を暮らす希望の元と捉える。素敵だなあ、と思ってしまうのです。
そんな一三さんの良いところも悪いところも全て肯定し、見てくださる方が一三さんに惚れてしまうようなドラマを、阿部サダヲさんと共に作り上げたつもりです。瀧本さんは心身共に美しく、奥田さんは格好良いです!是非楽しんでください!
銀行勤めをしながら小説家への夢を断ち切れずにいたところに、型破りな銀行家・岩下清周と出会い、事業の面白さに目覚める。箕面有馬電気軌道という小さな電車を、沿線の住宅地とセットで開発するという独創的な方法で開発。その後も様々なアイデアで大企業へと成長させる。
銀行員時代の一三の上司。将来性のある事業に大胆な投資をして、日本の近代化をけん引。一三を「事業」の面白さに目覚めさせる。その後独立し、一三が銀行を辞めるきっかけをつくるが、疑獄事件に巻き込まれ失脚。一三の運命も大きく変わっていく。
芸妓見習いをしていたところを一三が見初め恋仲に。子どもの頃に行者に言われた「あんたと結婚する人は出世する」とういう言葉を信じて一三との結婚を望む。早くに親を亡くした一三に、「家庭」や「暮らし」を教えた女性。
三井銀行の名古屋支店および大阪支店で支店長を務めた一三の上司。一三より一足早く独立・起業し、銀行を辞めたものの大恐慌に翻弄される一三を何くれとなく助けた。一三が実業家として独り立ちするのを傍らで支えた人物。
一三の長男。がむしゃらに働く父の背中を見つめて育つ。今作は、新時代に夢とそろばんを両立させようとした経済人の生き方を、息子の目線から語る。
一三が三井銀行・大阪支店に最初に勤務した時の支店長。慶應義塾の先輩で、一三に三井銀行への就職を世話した人物でもある。
関西財閥の重鎮で藤田組の創設者。軍需品の取り扱いで若くして莫大な富を得た。岩下清周の北浜銀行も支援した。
電力事業に欠かせない技術の開発で、岩下から資金援助を受けた技術者。
戦時下で統制経済を推し進めた企画院は、商工大臣時代の小林一三と激しく対立した。
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総合テレビにて、2015年11月3日(火・祝)の13時5分から前編を、14時5分から後編を再放送いたします。そのほかは現在のところ、再放送の予定はございません。なお、本放送終了から一定期間は NHKオンデマンド で番組を視聴することができます。
番組の音楽は金子隆博さんの作品です。サウンドトラック盤はゴールデン・キッズから、9月12日に以下の通り発売予定です。詳しくは、お近くのレコード店などでお問い合わせください。
NHK放送90年ドラマ 経世済民の男 小林一三 サウンドトラックス
CD番号:GOLD2003
現在のところ、検討中となっております。
このドラマは森下佳子さんのオリジナル脚本で、ノベライズなどの予定は現在のところございません。
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