渡辺嘉三、谷口哲雄、黒石直樹
2015年10月6日15時34分
ノーベル医学生理学賞の受賞決定から一夜明けた6日、大村智・北里大特別栄誉教授(80)が設立した「韮崎大村美術館」(山梨県韮崎市)には多くの人が足を運んだ。自ら絵画を収集する美術愛好家でもある大村さん。精力的な活動を支えるのは、祖母や両親の「人のためになることをしなさい」という教えだ。
韮崎市内にある実家の隣には、美術館を中心に温泉施設「白山(はくさん)温泉」とそば屋「上小路(かみこうじ)」が並ぶ。入り口には、ノーベル賞の決定を祝う紙が貼られた。
美術館は13日まで無料開放され、受賞を知った人たちが、午前10時の開館前から訪れた。韮崎市の東内純一さん(70)は「いつか来ようと思っていたので、この機会に来た。これから美術館は混雑しそう」。甲府市から夫婦で訪れた小清水純一さん(62)は「ノーベル賞もすごいが、大村さんは困っている人のために貢献し、地元の活性化まで考えている。県民として誇らしい」と笑顔だった。普段の来館者は1カ月に約300人だが、この日は開館1時間半で約140人が訪れた。
美術館の駐車場には県外ナンバーの車もあり、記念撮影をする人々の姿も見られた。ボランティアスタッフの秋山良江さんは「こんなに多くの人が来ているのは初めて」と話した。
大村さんは絵画への造詣(ぞうけい)が深いことでも知られる。1993年に女子美術大(東京都杉並区)の理事に迎えられ、今年5月までの計14年間理事長を務めた。当時の講演録によると、絵画好きになったのは教師だった母親の影響が大きい。絵はがきやカレンダーの作品を切り抜いて額縁に入れて飾る母親を見て、大村さんも切り抜きを何百枚も集めた。祖母からは「人間一番大切なことは人のためになることだよ」と言い聞かされていたという。
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朝日新聞社会部
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