大村智氏
ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった大村智・北里大学特別栄誉教授の理念は「研究を経営する」。「資金がないから研究ができないというのは言い訳」「研究で世の中に貢献すれば、必ずまた研究費は入ってくる」と話し、社会に役立つ研究をいかに持続するかに心を砕いた。
こうして見いだした多くの化合物が医薬や農薬などとして実用化された。なかでも、静岡県川奈のゴルフ場近くで採取した土から見つけた菌をもとにつくった「イベルメクチン」は寄生虫駆除に高い効果を発揮。米製薬大手メルクとの共同研究で実用化され、アフリカでの熱帯病の撲滅計画にも採用され、何億人もの人を病気から守ったとされる。
学生時代はスキーに打ち込み、父の「勉強する気があるなら大学に行かせてやる」との言葉をきっかけに学究生活に入った。研究成果で得られた特許収入で病院を建てたほか、絵画収集が高じて美術館をつくるなど、その活動は型破り。大村氏の業績や人柄がわかる2010年7月日本経済新聞夕刊掲載の「人間発見」を再掲する。