flic.kr photo by Sebastiaan ter Burg
今年の7月に会社を立ち上げて以来、色々なハッカソンにお邪魔している。
以前は、ハッカソンなんて、自分には縁遠いものだと思っていた。筆者にとって、「ソーシャル・ネットワーク」で、ショットを飲みながらひたすらコーディングするハッカソンのシーンが強烈で、なんかもうプログラマーの世界はすげぇな、と思っていた。
でも、自分が実際にハッカソンに出場してみると、様子はちょっと違った。技術力があり、短時間でハックできるすげぇ人がたくさん出場しているのだが、ビジネスモデルとかUXデザインとか、そっちよりの人がハッカソンで果たすウェイトも少なくないのでは、と思ったのだ。
【目次】
ソフトウェアのネットワーク
プログラムに縁が無い人にとって、コーディング作業というのは、テキストファイルを開いて、一から理解不能なコードをバチバチ打っていく、というイメージではないだろうか。(筆者はそう思っていた…)
実際にはそんなことは無くて、専用のエディタや統合開発環境(IDE)と呼ばれる色々なコーディング補助機能が搭載されたソフトウェアを用いて、効率よくコーディングしていく。
フレームワークと呼ばれる、一連の機能が単純なコードで呼び出されるソフトウェアを用いれば、自分でコーディングするには難解なアルゴリズムを簡単に実装できる。
フレームワークのようにソフトウェアをインストールしなくても、Web経由でアプリケーションプログラミングインタフェース(API)に連携させても良い。例えば、地図を使ったアプリケーションを開発したい、という時には、自分で地図を開発しなくてもいい。Googleマップと"マッシュアップ"(Webで公開されている複数の情報・アプリケーション等を組み合わせること)すればよいのだ。
TechCrunchが、インテルCEOのBrian KrzanichがデベロッパーフォーラムでAPIファースト設計を宣言したことを記事にしている。
ソフトウェアの未来は、ソフトウェア同士のコミュニケーションが重要になる。UIを必要としない、無機質で、高速で、膨大なコミュニケーションが、新たな付加価値を生む。多くのソフトウェアがAPIをポートとしたネットワークを形成することで、より複雑な処理を実現できる。
人が繋がるインターネットの先には、人では無いモノが繋がるインターネットがある。あらゆるモノがインターネットを介してXMLやJSONで会話する、そんな世界が待っている。
イノベーションの大衆化
ハッカソンでも、フレームワークやAPIを使うことで、より複雑なアプリケーションを短時間で開発できるようになった。開発を効率化するあらゆる技術が、開発の間口を広げ、より多くの人がハッカソンに、延いてはイノベーティブ(革新的)な活動に参加できるようになった。ショットを飲みながら、10分間でファイアーウォールエミュレーターをかいくぐり、Webサーバーのトラフィックをハックする、みたいな芸当ができなくても良いのだ。
イノベーション理論の開祖シュンペーターは、イノベーションを起こすために最も重要なのは起業家だ、と言った。新しいことにチャレンジし、荒野を開拓するのは、アニマルスピリットを持った起業家だと。
しかし、彼の晩年の著書では、大企業こそがイノベーションの担い手だ、と論調を変化させた。
前者の起業家重視のイノベーションモデルを"シュンペーター・マークI"・後者の大企業重視のモデルを"シュンペーター・マークII"という、モビルスーツみたいな名前で呼ぶ。
なぜシュンペーターが大企業重視に論調を変えたかと言えば、リスクの大きい未開拓の領域で膨大な資金を投資できるのは、起業家には難しいとみたからだ。全ての起業家が、コロンブスのように、王家に謁見して「ちょっくら新大陸に冒険に行くんで、金、よろしく」といって、資金調達するわけにはいかない。やはり、資金があって、リスクをとれるのは大企業だ。
19世紀から20世紀中期というシュンペーターが生きた時代には、ソフトウェアで起業するという発想はなかった。新しい製品、サービスを作るにはまとまった資金が必要だった。
半世紀以上経った今、イノベーションのハードルはぐっと下がった。イノベーションを起こすにはPC一つあればいい。フレームワークを使えば、処理は自分で書かなくてもよいし、もっと便利な機能は、ネットを介したAPIが提供してくれる。
ハードウェアだって、Arduinoやラズパイ、やっすい回路を買ってきて、3Dプリンタで成型したパーツを組み合わせて、モックアップを作るもこともできる。旋盤加工、射出成型したかったら、オープンラボに行ってもいい。
イノベーションは大衆化してきた。ソフトウェアのネットワークを使い、ある程度技術を外注してしまうことで、複雑で高度なものを安く短時間で作れるようになってきた。
アイデアと少しの技術
ハッカソンにはプランナーやデザイナーにも居場所がある。技術だけがモノを言うのではなく、ソフトウェアのネットワークを理解し、技術を外注できる範囲を特定し、それらをマッシュアップする知識、そしてわずかな技術があれば、イノベーションを起こすことができる。面白い製品やモノを世に出すことができる。
イノベーションのハードルは下がっている。シュンペーターが生きた時代のように、大企業だけが資金とリスクを許容できる時代では、最早ない。イノベーションは、もっと身近で、もっと"日常的"になっている。
日常的に新しいモノを作ったり、始めたりするいっちょかみから途方もないイノベーションが生まれるかもしれない。
そして、いっちょかみに必要な技術や材料は、そこらじゅうに転がっているのである。
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