なぜ「国際バカロレア」なのか | 第2回 日本のIB実施校の取り組み編
2015.09.25
世界共通の学びの土台として今、国際バカロレア(International Baccalaureate、以下IB)が146ヵ国で導入されています。ここシンガポールのインター校でも導入が進み、日本でも文部科学省が、2018年までに大学入学前のディプロマプログラム(IBDP)を導入する学校を200校まで増やすという数値目標を掲げています。 7月号では入門編として、国際バカロレア機構と文部科学省を取材し、概要をお伝えしました。今回は日本のIB認定校2校を取材し、日本での現状をお届けします。
東京都立国際高等学校
都立高校初の全日制国際学科の高校として平成元年に開校。国際化時代を切り開く豊かな国際感覚と優れた外国語能力を身に付けた有為な人材の育成を目指しています。約200校ある都立高校のうち、唯一「国際学科」のみを設置し、2015年全国の公立高等学校で初めてIBDPを導入し注目を集めています。
本校のIBコースの募集定員は1学年、25名。IBコースが期待する生徒の姿は、将来、世界や日本に貢献することを念頭に、海外大学に挑戦する強い意志をもった生徒です。入学者選抜では、IBDPの学びに必要な能力をさまざまな観点から見ていきます。英語力は本校入学時に英検2級~準1級程度の実力が必要です。小論文、個人面接や集団討論も実施します。合格者の中には、海外での滞在経験がない生徒もいます。 (副校長 市村 裕子先生)
開校以来27年間、「調和のとれた国際感覚を身に付け、世界の人々から信頼され、尊敬される人材の育成を目指す」ことを教育理念とし、歩み続けてきました。高度な外国語能力を育成し、グローバルな視点に立った多様な専門科目で比較文化や国際関係などを深く学びます。さまざまな国籍をもった生徒たちが互いに切瑳琢磨できる本校だからこそ、生きた国際感覚を身に付け豊かな人間性を育くみ、国際社会で貢献できる人材を輩出することができるでしょう。
(東京都立国際高等学校 校長 荻野 勉先生)
Q. 日本の高校卒業資格とDPの両方を取得することは可能ですか?
可能です。日本の学習指導要領の必履修科目は可能な限り高校1、2年生で終え、2、3年生はDPを中心に進めます。1学期終了後も7月いっぱいは授業を行い、夏季休業中の8月は最後の1週間を授業とするなどの工夫をしながら日本の高校卒業資格とIBのディプロマ取得のために学習時間を確保し、両方の資格が取得できるようにしています。
「進路はこれから」と語る生徒がいる一方、イギリス・アメリカ・カナダ・オーストラリア・ドイツなど、具体的な国名を挙げる生徒も多い。
Q. 教員の確保は?
IBコースの指導者には、東京都の専任教員(日本人)と、ネイティブを含む教育スタッフである講師がいます。専任教員は、海外滞在経験があるなどのバックグラウンドをもち、数学や物理、世界史等、自分の専門教科を英語で指導することができる教員を配置しています。IBDPでは大学1年生レベルの学習に取り組むため、指導者は非常に重要であり、全力で人材確保に取り組んでいます。
Q. 進路は?
本校のIBコースは、海外大学進学を目指すコースです。そのために日本語DPではなく、英語によるDPを実施しています。英語力が十分でない生徒には個別対応をするなど、個々の生徒の情報を収集、整理しながら進路目標が達成できるよう、ネイティブを含めた講師とも情報を共有して話し合い、学校を挙げて全力でサポートします。
東京都立国際高等学校で、国際バカロレアコースの1期生(高1)の生徒に聞きました
クラス19名中:男子7名、女子12名
(日本人生徒募集により入学した生徒:14名 外国人生徒募集により入学した生徒:5名)
【回答者12名からのアンケート結果より抜粋】
◆今までの英語学習経験
独学・家庭学習から海外生活10年以上と生徒のバックグランドはさまざま。
- 海外滞在経験あり:6名
- 海外滞在経験なし:6名英語検定
- 一級 ………………………….. 1名
- 準一級 ………………………. 3名
- 二級 …………………………. 6名
- 回答なし …………………. 2名 (長期の海外滞在者など)
◆学校以外の普段の一日の学習時間
IBでは授業への準備が鍵。課題をこなすには週末にチームで学習することも。
- 4〜5時間 ……………………… 2名
- 3〜4時間 ……………………… 3名
- 2〜3時間 ……………………… 4名
- 平日1時間週末4時間 …. 1名
- その他 ………………………….. 2名 (学習時間明記せず)
Q. この学校を選んだ理由は?
将来は海外でも日本でも、日本の役に立つ仕事、「世界と日本をつなぐ」ことがしたい。
熊岡 笑子さん
【その他の生徒の声】
- 海外大学の進学への近道だと思ったから
- 課題探究型の勉強が役立つと考えたから
- IBで培ってきたスキルは将来的にも大きな自信となるから
- 英語で授業を受けられる点にひかれたから
- 自分と違う背景をもった人たちと共に勉強できるから
参考データ
海外帰国生徒・ 在京外国人生徒の割合
海外帰国生徒の最終滞在国は 世界30カ国以上、 在京外国人生徒の出身国は15カ国。