セグメント最適化から個別最適化へ:効果絶大! 継続利用が10倍に
もう1つですね、最後。これまだね、ふやふやしてんだよね。うちの会社のクリエイターのトップは坪田(朋氏)っていうんだけど、坪田と私でこの世界が来るか来ないかを侃々諤々議論しているところなのですが……私の仮説ね、ちょっと聞いてもらおうかなと思います。
「マーケティング」って何っていうと、「関心を持ってもらう」「利用を始めてもらう」「楽しみ続けてもらう」をちゃーんとやっていくってこと。これ3つをしっかりやっていうっていうのがマーケティングですね。関心を持ってもらうために広告を打ったり、利用を初めてもらうために何か「初回無料キャンペーン」なんてことをやってみたり、楽しみ続けてもらうためにどうしてとかいうことをやるの、ということです。
たとえば、利用を始めてもらう、まだ利用してないユーザーさんに初めて我が社のサービスを使ってもらうっていうときに、おんなじマーケティング——すべての人にですね、おんなじ刺激を与える、おんなじ言葉を使えるとか、おんなじコミュニケーションをするというのに比べて、年代・性別による最適化——セグメンテーションという言葉を聞いたことがあるよね——セグメント別にコミュニケーションの仕方とか、刺激の仕方とかを変えたほうが全然効果があるよね、という。でもこれ、20年前の常識なんですね。今、この常識が急速に古くなってるんです。
で、どうなってるのかっていうとですね、個々人に最適化するっていうほうに(移ってきました)。当然だけど、全然効果があるし、(それが)できる時代になってきた。特にネットのサービスにおいてはですね。それで、セグメントによる最適化と比べると、(個々人への最適化では)利用を始めてもらう力は3.8倍伸びるんです。
「その個人は他にどういうゲームをやってるの?」とか「他にやってるゲームからどれくらいの難しさ」とか「どういうタイプのものが好きなのか」とか。そして、それを出してみて反応しなかったらすぐ変えるってのね。個別最適化であります。たとえば、誰に影響を受けている、ゲームのコニュニティの中で誰の影響を受けているか、誰とつながっているのか。その人にとって難しすぎないか、その人は一般的に何に興味があるか。何にインセンティブを感じるのかっていうようなことを、個別に最適化していく。そして、その人が反応したかどうかっていうのをリアルタイムにその、反応の具合を見て、「これ見せたけど、遊ばなかった。じゃあ別のを」っていう感じで、ダイナミックにほぼリアルタイムで変えていく。これを個別最適化といいます。それが3.8倍。
もう1つ、マーケティングの3つめの「楽しみ続けてもらう力」。これはどうなのかというと、昨年の半年間に、我が社のゲームで実験を繰り返して導き出した数字なんですが、セグメントによる最適化と個別最適化とで9.7倍の力の差があることがわかってきました。で、ゲームだけでなく——たとえばニュースもそうなんですね。この人はAKBのニュースならだいたい見て、読んでくれるなと。ところが、あるAKBのニュースを見せても全然反応しなかった。あっ、どういうこと?と。(こうして)AKBのニュースの中でも個別にこの人が反応するものが、リアルタイムでわかってくるんです。
個別に最適化して、個々人全部ばらばらの内容を届けようじゃないの、というようなことをするとですね、ニュースを読んでくれる力、読み続けるっていう確率が10倍に上がるっていうわけですね。で、これは実数として私たちも驚いたんですけど、こんなに如実に出るとは思わなかった。
あのー、それでですね、これがセグメント最適化から個別最適化へということなんですが……個別最適化。これが、どうなんだろ、クリエイティブに応用できないんだろうかと。デザインとクリエイティブにこれを取り入れようとしているところは、まだないんだよね。私はおんなじニュースでも、おんなじゲームでも、トーンとかUX/UIとか、もう完璧に個々人にカスタマイズする。
たとえば、5000万人に向けて5000万通りの絵やUXは用意できないけれども、無数の組み合わせからですね、いくつかのパターンの組み合わせからその人にベストなものをカスタマイズするとか——それをできた会社があったら、たぶんですねぇ、21世紀後半というのはそういうことができないと生き残れない時代になるかもしれないなと。21世紀後半とまでいかないですかね、あと10年くらいでそういう時代が来るんじゃないのかな、というのが私の仮説なんですね。
で、それをどうやってやろうかっていうところ。まだまだ解は導き出されていないんだけれども、どうもこのへんにフロンティアがありそうだぞっていうのが、私の今の仮説であります。どうなんだろ。これちょっとチャレンジね。