【萬物相】大英博物館のドイツ人館長

【萬物相】大英博物館のドイツ人館長

 1980年代に国立現代美術館長を2回務めた李慶成(イ・ギョンソン)氏の回顧録に、あまり読みたくない話が出てきた。果川のソウル大公園に国立現代美術館を建てたときのことだ。ソウル市が土地を提供しようとしない中、李氏が政府の方針だということを前面に押し出して美術館を建てようとすると、ソウル市の高官がこう言い放ったという。「きれいに年を取らないと!」 当時、李氏は還暦を越えていた。「芸林の総帥」たる国立現代美術館長が、公務員の目には、ただの街中の老人と映っていたのだ。

 韓国にはたった一つしかない国立現代美術館長のポストが空席になってから、1年になる。昨年10月に館長が解職されたが、後任をめぐってかなり論争になった。人事革新処が挙げた館長候補者を、文化観光部(省に相当)の長官が「不適格」とはねつけ、長官が個人的に知っている人物を座らせようとしたという後日談もあった。長官が「外国人にも館長応募の機会を保障したい」と言うと、今度は「現代美術館長はサッカーの国家代表チームの監督か」と騒がしい。

 月刊の『ソウル・アート・ガイド』10月号は、「国立現代美術館の外国人館長、どう思いますか」という特集を載せた。美術界の専門家6人に尋ねたところ、5人が反対した。「国の精神文化の拠点機関を外国人に任せるのは、精神文化を自ら植民地化する行為」「国民の魂を形成していく機関は、少なくとも韓国人が務めるべき」「国立現代美術館に対する冒涜(ぼうとく)にして、美術界を侮る仕打ち」なのだそうだ。

 国立現代美術館長がそれほど重要かつ神聖なポストなら、まず美術界で、そのポストにふさわしい人物を育てなければならない。そうでなければ視野を広げるべきで、「外部から迎えるのは駄目」と言えるはずがない。英国の自尊心・大英博物館は、ドイツの美術史学者ハートビッヒ・フィッシャー氏を新館長に迎え入れたという。フィッシャー館長は芸術史・考古学・哲学に精通し、4カ国語を操るが、英国を根拠地として活動した経歴はない。それでも英国では「卓越した博物館長たり得る人物で、大英博物館を率いるには適任」と歓迎された。

 実際のところ、韓国が能力ある外国人美術館長を選任したとしても、その人物が韓国に来るかどうかは分からない。韓国美術界に根深く残るイデオロギー・出身校・分野ごとの派閥、上級機関の執拗(しつよう)な干渉、外国に比べ極めて少ない作品購入費といった点を見ると、わずか1カ月で荷物をまとめて帰ってしまうかもしれない。それでも「外国人美術館長就任論」には意味がある。美術関係者自ら、自分の中の壁を壊すきっかけをつくる、という点だ。新たに公募した美術館長の最終候補5人の中に、外国人も2人含まれているという。韓国人になろうと外国人になろうと、韓国政府と美術界がどれだけ開かれた姿勢で議論するかによって、国立現代美術館の未来も違ってくることだろう。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【萬物相】大英博物館のドイツ人館長

right

関連ニュース