中国:屠氏、初のノーベル自然科学受賞へ 国挙げ成果誇示

毎日新聞 2015年10月05日 22時35分(最終更新 10月06日 01時06分)

屠※※氏(※は口へんに幼)=AP
屠※※氏(※は口へんに幼)=AP

 【北京・工藤哲】中国国営新華社通信は5日、中国の女性薬学者の屠※※氏(84)のノーベル医学生理学賞受賞決定を速報した。(※は口へんに幼)

 自然科学分野での受賞は中国の悲願で、新華社は「中国医学界が今まで獲得した中で最高の賞であり、中国医薬の成果だ」と強調した。

 中国メディアによると、屠氏は浙江省寧波市出身。北京大で薬学を学び、現在は中国中医科学院の首席研究員で終身研究員の肩書も持つ。薬草からマラリア治療に効果があり、後にアルテミシニンと呼ばれる成分の抽出に成功した。

 また長年、中国の漢方薬と西洋医学の融合に関する研究を進めてきた。2011年には医学分野で権威のある米国のラスカー賞も受賞している。

 中国メディアは屠氏が博士でもなく、留学経験もなく、中国科学院などの会員でもないことから「三無科学者」と伝えている。

 1960〜70年代のベトナム戦争では、マラリアによって北ベトナムの兵士の多くが死亡したことから、中国側に支援要請があり、中国はこの時期にマラリアの治療薬の研究に着手。30代だった屠氏も加わった。

 多くの知識人が迫害された文化大革命の混乱期にも研究を続け、「190回」失敗しながら、マラリア特効薬の開発に貢献。多くの人の命を救うことにつながった。

 アルテミシニンは現在、アフリカなどで広く普及し、高い治癒率を誇る。新華社は「中国の神薬」と表現し「中国の薬草がもたらした成果は非常に立派だ」とたたえた。

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