[東京 5日 ロイター] - 新興国通貨の対ドルでの下落が、日本企業の収益を圧迫している。これまで米利上げ観測の強まりでブラジル・レアルBRL=やロシア・ルーブルRUB=などが下落してきたが、部品や材料の調達が「外国から外国」の場合、基軸通貨のドルに対する下落はコスト増となる。
現地での販売が多ければ、価格転嫁も簡単ではない。米金融政策の見通しは揺れているものの、円安下でも思わぬ利益圧迫要因となりそうだ。
<現地生産化のメリット・デメリット>
ホンダ(7267.T)は歴史的なレアル安に直面している。年間12万台の生産能力を持つブラジルの四輪車工場では主にドル建てで部品を調達しており、ドル高/レアル安によって一台あたりの部品調達コストが上昇する。生産車両のほとんどはブラジル国内で販売しているため、コスト上昇分を販売価格に転嫁することはなかなか難しいという。
「現地生産が増えて、良くも悪くもドル/円の変動に対する影響は受けにくくなったが、足元は新興国通貨安のダメージがある」──。ホンダの関係者はこう漏らす。
7月末に公表した2016年3月期の営業利益見通しでは、ドル/円のプラス効果が680億円となる一方、対ドルでのレアル安、カナダドルCAD=D4安、メキシコ・ペソMXN=安などが1040億円のマイナスになる。ドル/円よりも、ドル/その他通貨ペアからの影響の方が大きい構図だ。
同社の今期ドル/円想定レートは現時点で115円。円安が1円進めば、営業利益ベースで年間約110億円のプラス要因になる。ドルは7月初めから9月末までの終値平均で122.10円台となった。
一方、同期間にレアルは対ドルで20%超下落、過去最安値を更新した。カナダドルは5%超、メキシコ・ペソも6%超それぞれ下がっている。東海東京調査センターの自動車担当アナリスト、杉浦誠司氏は、ホンダの7─9月期の為替影響について「新興国通貨の対ドルでの下落が、ドル/円の円安メリットの大半を相殺してしまう可能性がある」と指摘する。
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