【萬物相】「韓国版ブラックフライデー」、人気商品は割引対象外

【萬物相】「韓国版ブラックフライデー」、人気商品は割引対象外

 数年前、家族と米ロサンゼルスに滞在していた時のことだ。「ブラックフライデー」のセールシーズン終盤に大型おもちゃ店「トイザらス」に行った。娘が欲しがっていた「おままごとキッチンセット」を買うためだった。ところが、韓国の大型スーパー1店舗分くらいある売場は「もぬけの殻」だった。買い物客が殺到して、すべて買って行ってしまった後だったのだ。娘が欲しがっていたおもちゃも残っていなかった。商品が店頭に出そろうのは3・4日後だという。ブラックフライデーが始まるやいなや、米国人が店に殺到する理由をこの時、実感した。

 ブラックフライデーとは米国で感謝祭(11月の第4木曜日)翌日の金曜日を指す。デパートや量販店が在庫一掃セールを開始する日のことだ。平均40%も割引となるため、米国人が最もたくさん買い物をする時期でもある。流通小売店はかつて金曜日午前6時に開店してセールを開始した。だが、その伝統は2011年、大手量販店ウォルマートが感謝祭の夜10時からセールを開始したことで破られた。

 ブラックフライデーという言葉を作ったのは店ではなく警察だ。フィラデルフィア警察が1960年代、感謝祭翌日に買い物客が道にあふれて警察の仕事が増えるという意味で、「ブラック(black=真っ暗な)」フライデーと呼び始めたという。これに気分を害した店側は「ビッグ(big)フライデー」にしようと呼びかけたが、一般的には「ブラック」で広まってしまった。だが、同じ単語でも意味は変わっていった。1981年にフィラデルフィアの地元紙が「店が赤字から黒字に転じる日」と解釈を変えてからは「ブラック」が良い意味になった。

 「韓国版ブラックフライデー」がおとといから始まった。韓国政府は消費を活性化させようと、米国のブラックフライデーのようなセールイベントを全国で同時に展開することを提案して始まった。政府は公式ホームページまで作り、PRに力を入れている。だが、消費者の反応はあまり良くない。割引率が50-70%に達するといううたい文句とは裏腹に、割引率が10-20%程度の商品が多いからだ。ブランド品や家電などの人気商品もほとんどが割引対象外だ。

 店側も政府に背中を押されてやっていることなので、あまり乗り気ではなさそうだ。政府は「割引率までは介入できない。最初から満足がいくようにするのは難しい」と話す。客を大勢招いたのに、ごちそうとは言いがたい代物ばかりだったら、次に呼ばれても客は期待しなくなるだろう。今年6月の中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)発生の影響で落ち込んだ消費者心理は、このところ回復の気配を見せている。消費者はやっと財布のひもを緩め始めたのに、中途半端な「官製セール」でかえって固く締めてしまうのではと心配になる。せかしたからといって消費者心理はおいそれと改善されるものではない。

方顕哲(パン・ヒョンチョル)論説委員
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