法曹界からは、金・元院長のこうした行動について、現行法違反だという指摘も出た。国情院職員法第17条は「職員は、在職中はもちろん退職した後も、職務上知り得た秘密を漏洩してはならない」と定めている。判事出身のある弁護士は「国情院職員法上、厳守すべき秘密の範囲は(法律上)かなり幅広く認定されている。在任中に知り得た情報を語ったのだから、違法の余地は十分」と語った。
金・元院長は2008年に、秘密漏洩の批判を浴びて国情院長ポストから退いた。元院長は、07年12月の大統領選挙前日に訪朝、金養建(キム・ヤンゴン)統一戦線部長と会って「李明博(イ・ミョンバク)候補(当時)の当選が確実視される」等の発言を行い、大統領選挙が終わった後、これを対話録にしてメディアに流した。政界から「李明博・大統領当選人に『コネ作り』をしているのではないか」という批判が起こると、元院長は謝罪文を発表し、退いた。さらに、この件に先立つ07年9月、アフガニスタンで起こったセンムル教会人質事件の時も、作戦に投入された国情院の要員(別名『サングラスマン』)を過度に露出させ、物議を醸した。3年後の11年には、日本の雑誌『世界』に、07年の南北首脳会談当時の交渉内容を寄稿し、職務上の機密漏洩の疑いで検察の取り調べを受けたこともあった。
元院長のこうした行動に対し、国情院の職員らは「なぜあんなことをするのか分からない」という反応をみせた。金・元院長と共に勤務していた人々は「元院長が最近、故郷の釜山市機張にオフィスを構えるなど、来年の総選挙への出馬を準備しているという話を聞いた。選挙を控えて『ノイズメイキング』をしているのではないか」と語った。金氏は国情院長時代にも、母校・機張中のホームページで自分の携帯電話の番号を公開し、また各種の行事に出席して物議を醸した。高麗大学北朝鮮学科の柳浩烈(ユ・ホヨル)教授は「個人的かつ政治的な理由で国家安全保障に関する秘密を漏らすというのは、あり得ないこと。そんな行動が積み重なって、こんにち国情院の政治的中立性に危機を招いた」と指摘した。