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ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識(3)“ふわふわ/もこもこ”も、どんと来い![境界線を調整]で実現するスピーディな切り抜き


人物や商品写真の切り抜き作業。いにしえからのPhotoshopperは、まずはパスを切って!や、チャンネルを使って選択範囲を作成しはじめると思いますが、それなりに時間がかかります。
今回は、“ふわふわ/もこもこ”にも対応しつつ、スピーディに切り抜くための「今のPhotoshopならこうします」をご紹介します。

こちらの写真を使って切り抜いてみます(鳥取砂丘で撮影。協力:山陰デザイン会議)。

before-after

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ざっくりとした選択範囲の作成

Photoshopには選択範囲を作成するたくさんの方法がありますが、ベテランの方ほど見過ごされているのが[クイック選択ツール]でしょう。

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[クイック選択ツール]はドラッグするだけで、選択範囲を作成してくれます。不要な部分はoptionキー(Altキー)+ドラッグすると選択範囲から削除されます。

細かいところは気にせず、“ざっくりと”選択範囲を作成するのがポイントです。

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ブラシプレビューを使ってブラシサイズを調整

[クイック選択ツール]の精度を高めるには、こまめにブラシサイズを調整します。ブラシサイズの調整は、第1回でご紹介した「キーボードショートカットでブラシプレビュー」を呼び出す方法がオススメです。

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境界線を調整(1)半径/スマート半径を設定

選択範囲を作成したら、切り抜き作業に移ります。
[オプションバー]の[境界線を調整]をクリックします。

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[境界線を調整]ダイアログボックスが開き、荒い状態で切り抜きが実行されます。

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ダイアログボックスの背面では、Photoshopのカンバスは拡大縮小やスクロールが可能です。

[エッジの検出]の[半径]の値を上げ、[スマート半径]オプションをチェックします。この時点でかなり“ふさふさ”感が出てきます。

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境界線を調整(2)半径とは?

円でもないのに半径?と思った方もいらっしゃると思います。

[半径を表示]オプションをチェックすると、

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[半径]に設定した値の領域が表示されます。

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つまり、この[半径]が切り抜きを行う領域なのです。使用する画像によって、半径の値を変更します。

さらに[スマート半径]にチェックをいれることで、半径に設定した領域でどこを残すか、どこを消すかをPhotoshopが判断してくれます。
なお、[半径を表示](と非表示)は、Jキーで切り替えできます。必要がなければ、確認しなくても結構です。

[半径を表示]オプションはオフにして次に進めましょう。

境界線を調整(3)検出領域を拡大

左側のヒモの部分を見ると、無残に欠けてしまっています。このヒモを残すように設定してみましょう。

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[半径調整ツール]を選択していることを確認し、ブラシサイズを調整して、ヒモの部分をドラッグします。

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ドラッグした領域が[半径]に加わり、ヒモの部分がキレイに抜けます。

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[半径を表示]オプションをオンにすると、ドラッグによって、どのように半径が広がったのかを確認できます。

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[半径]の領域を広げすぎた場合にはoption+ドラッグ(Alt+ドラッグ)すると、[調整消去ツール]して動作します。

このように最初の選択範囲として甘かったところを、[半径調整ツール]でドラッグして調整します。

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境界線を調整(4)出力先

[出力先]を「レイヤーマスク」に設定し、[OK]ボタンをクリックして[境界線を調整]を終了します。

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[レイヤー]パネルには、レイヤーマスクが追加されていることを確認できます。レイヤーマスクのサムネールをクリックして選択します。

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必要に応じてブラシツールなどで調整します。白で塗れば表示、黒で塗れば非表示になります。Xキーで切り替えながら進めます。

その際、[回転ビューツール]で、カンバスを回転させると腕の動きに沿って描きやすくなります。

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[回転ビューツール]には、前回ご紹介した(バネ仕掛けのツール切り替え)で、Rキーを使うことができます。

切り抜きの精度を高めるために

背面に塗りつぶしレイヤーを作成し、画像内で使われていないカラーを設定してみましょう。

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背景が透明グリッドや白の場合に比べ、背面に使っていないカラーを表示すると、不自然な部分が一目瞭然です。

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なお、ブルーバックなどで撮影した写真を切り抜く場合には[境界線を調整]ダイアログボックスの[不要なカラーを削除]オプションが役立ちます。

クイックマスク利用後には、キーボードショートカットで[境界線を調整]を呼び出す

今回は、[クイック選択ツール]を使ってざっくり選択範囲を作成後、オプションバーの[境界線を調整]ボタンをクリックする方法をご紹介しました。

「選択範囲の調整ならクイックマスクでしょ!」という方のための注意点です。

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Qキーを押して「クイックマスクモード」に切り替え、[ブラシツール]で選択範囲を調整、その後、クイックマスクをオフにすると、オプションバーに[境界線を調整]ボタンが表示されません。

クイックマスクをオフにしたとき、[ブラシツール]が選択されたままなのが原因です。[境界線を調整]ボタンを表示するには、[ツール]パネルで[長方形選択ツール]などの選択範囲系のツールを選択します。

[ブラシツール]のままでも、[選択範囲]メニューの[境界線を調整]をクリックして実行することができます。

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command+option+Rキー(Ctrl+Alt+Rキー)のキーボードショートカットを使うのがオススメです。

まとめ

[境界線を調整]を使った切り抜きは、非常にスピーディに作業することができます。

  • 選択範囲の作成に[クイック選択ツール]は意外に使える
  • “ふわふわ/もこもこ”の切り抜きに[境界線を調整]が最適
  • [境界線を調整]は、半径の値の調整がポイント
  • [境界線を調整]の出力先を「レイヤーマスク」にしておくと、後から調整しやすい
  • [境界線を調整]を呼び出すには、キーボードショートカットがオススメ(command+option+Rキー/Ctrl+Alt+Rキー)

[境界線を調整]はPhotoshop CS5から搭載されていますが、バージョンを重ねるにつれ、精度や処理速度が向上しています。

ぜひ、サンプルファイルやお手持ちの画像で試してみてください。

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鷹野 雅弘

1996年にDTP制作プロダクション「株式会社スイッチ」をスタート。 その後、Web制作、 コンサルティング業務にシフト。トレーニングやテクニカルライティング、書籍の企画や編集なども行っている。CSS Niteなどのセミナーイベントを企画運営のほか、DTP情報サイトDTP Transitを2005年から継続している。 テクニカルライターとして20冊以上の著書を持つ。主な著書に『10倍ラクするIllustrator仕事術(増強改訂版)』(共著、技術評論社)ほか。